65 / 82
心音と共に、
ソワソワの時間
しおりを挟む
部屋をウロウロ。
時計を見てはウロウロ。
時計を見てはウロウロ。
それを繰り返してる。ウロウロ。
時計が指すのは八時半。
あと三十分もあるらしい。
──あるらしい? いや、ある。
先程、家を出たとラインがあった。
三十分。いつもは短いその時間が、今となっては遥か遠くの手の届かない物のように思えてならない。
「そうだ!」
私はウロウロを止める。
今日、持っていくものを確認しよう!
それなら時間も潰せる。
宿題はもうリュックに詰めたから、あと何か持っていくものあるかな。
と、私は部屋を見回す。
何もなさそうだった。
いや待て。
今一度、準備物の確認だ。
英語の課題、数学の課題。
地理の課題に現代文。
それと反省文の用紙二枚。
やる事多いな。
……えっと、後は、スマホは必要だし。
なんならスマホは必要最低限な気がする。
これがないと心音とのコミュニケーションができない──。
いや待て。
私がスマホを忘れたということにしよう。
心音は私とハグをしなければ声に出して会話ができない。
つまり、コミュニケーションをとるためには、常時ハグの状態じゃなければいけない!
「あ……」
待て待て。
これだと、筆談になる可能性もあるのか。
むしろそっちかな。
残念。スマホ忘れたフリ作戦は諦めよう。
「はぁ……」
なんか今日の私は不安定だ。
気分が上がったり下がったり。
蝶々が飛んでる時の様な心持ちだ。
考えてからこの表現は微妙かなと思う。
……まぁいいか。
伝家の宝刀『まぁいいか』。
便利な言葉だと思った。
心音と一緒にいる時に必要なもの。
おやつとか……?
んー。勝手に家のものを持ち出すのもな。
ゲーム機とか……?
心音はあまりしなさそうだしな。
トランプとか……?
あ、トランプどっかに失くしたままだ。
じゃあ、何も無いじゃないか。
「心音がいるから……それで、いいのかな」
いいのだろう。
時計を見れば四十五分。
よし。半分を切ったな。
もう持ち物はこれで十分だし。リュックに詰め込んだ。
じゃあ、後は、待つのみ。
けれど暇なので私の格好を確認する。
黒のハイネック、黒のショーパン。
ブラックに染まった私である。
けど、洒落た服はこれくらいしか無かった。
香水とかつけようかな。
とか思ったけど、やめておいた。
なんだかそれは張り切りすぎだ。
あー。楽しみだー。
女の子の家に遊びに行くだけで、こんなにも張り切っている人は私だけだろう。
これって、一般的にはちょっと変なことなのかも。
……一般的ってなんだっけ。
そもそも論、そこが不明瞭だった。
同性の恋愛なんて、きっと自分達が計り知れないほど前からあったもので、それを一般的から除外するのは何処か違う気もする。
好きだから、それでいいと、私は勝手に思っている。
こんな複雑なことを考えても、私に得はない。
時計を見て、そろそろかなと思い、リュックをしょって階段を降りる。
迷わず玄関に向かい、靴箱からスニーカーを取り出した。
ドアを開けて振り向いて。
「いってきまーす!」
家の中に明るく呼びかける。
母親の力ない声が聞こえてきた。
多分まだ寝ぼけておるな。
ま、今は心音だ。
外へと出て、私は彼女の到着を待つ。
同時に少し緊張の波が押し寄せてくる。
心音ママと話すのもだけど、やっぱり心音だ。
先週、遊園地に行く時に会ったのも緊張はしたが、だけど今は、それとは違う色の緊張感を覚えていた。
家の敷地外に行って道路を見渡してみる。
するとこちらに一台、見たことのある車が向かってきていた。
すぐに心音の家の車だと理解をする。
私は少し後ずさりその車が来るのを待つ。
ショーパンの小さいポケットに入ったスマホがバイブレーションを起こしたと同時に、先の車が私の前でブレーキをした。
ちなみに私から見て、車が向いているのは左方向。
助手席側の窓が下りてきて、そこから心音ママが顔を覗かせた。
「お久しぶり! どうぞ、乗っていって!」
陽気に言い放たれ、「おねがいしまーす」と割と丁寧にお辞儀をし、心音のいる後部座席へと私は入っていった。
時計を見てはウロウロ。
時計を見てはウロウロ。
それを繰り返してる。ウロウロ。
時計が指すのは八時半。
あと三十分もあるらしい。
──あるらしい? いや、ある。
先程、家を出たとラインがあった。
三十分。いつもは短いその時間が、今となっては遥か遠くの手の届かない物のように思えてならない。
「そうだ!」
私はウロウロを止める。
今日、持っていくものを確認しよう!
それなら時間も潰せる。
宿題はもうリュックに詰めたから、あと何か持っていくものあるかな。
と、私は部屋を見回す。
何もなさそうだった。
いや待て。
今一度、準備物の確認だ。
英語の課題、数学の課題。
地理の課題に現代文。
それと反省文の用紙二枚。
やる事多いな。
……えっと、後は、スマホは必要だし。
なんならスマホは必要最低限な気がする。
これがないと心音とのコミュニケーションができない──。
いや待て。
私がスマホを忘れたということにしよう。
心音は私とハグをしなければ声に出して会話ができない。
つまり、コミュニケーションをとるためには、常時ハグの状態じゃなければいけない!
「あ……」
待て待て。
これだと、筆談になる可能性もあるのか。
むしろそっちかな。
残念。スマホ忘れたフリ作戦は諦めよう。
「はぁ……」
なんか今日の私は不安定だ。
気分が上がったり下がったり。
蝶々が飛んでる時の様な心持ちだ。
考えてからこの表現は微妙かなと思う。
……まぁいいか。
伝家の宝刀『まぁいいか』。
便利な言葉だと思った。
心音と一緒にいる時に必要なもの。
おやつとか……?
んー。勝手に家のものを持ち出すのもな。
ゲーム機とか……?
心音はあまりしなさそうだしな。
トランプとか……?
あ、トランプどっかに失くしたままだ。
じゃあ、何も無いじゃないか。
「心音がいるから……それで、いいのかな」
いいのだろう。
時計を見れば四十五分。
よし。半分を切ったな。
もう持ち物はこれで十分だし。リュックに詰め込んだ。
じゃあ、後は、待つのみ。
けれど暇なので私の格好を確認する。
黒のハイネック、黒のショーパン。
ブラックに染まった私である。
けど、洒落た服はこれくらいしか無かった。
香水とかつけようかな。
とか思ったけど、やめておいた。
なんだかそれは張り切りすぎだ。
あー。楽しみだー。
女の子の家に遊びに行くだけで、こんなにも張り切っている人は私だけだろう。
これって、一般的にはちょっと変なことなのかも。
……一般的ってなんだっけ。
そもそも論、そこが不明瞭だった。
同性の恋愛なんて、きっと自分達が計り知れないほど前からあったもので、それを一般的から除外するのは何処か違う気もする。
好きだから、それでいいと、私は勝手に思っている。
こんな複雑なことを考えても、私に得はない。
時計を見て、そろそろかなと思い、リュックをしょって階段を降りる。
迷わず玄関に向かい、靴箱からスニーカーを取り出した。
ドアを開けて振り向いて。
「いってきまーす!」
家の中に明るく呼びかける。
母親の力ない声が聞こえてきた。
多分まだ寝ぼけておるな。
ま、今は心音だ。
外へと出て、私は彼女の到着を待つ。
同時に少し緊張の波が押し寄せてくる。
心音ママと話すのもだけど、やっぱり心音だ。
先週、遊園地に行く時に会ったのも緊張はしたが、だけど今は、それとは違う色の緊張感を覚えていた。
家の敷地外に行って道路を見渡してみる。
するとこちらに一台、見たことのある車が向かってきていた。
すぐに心音の家の車だと理解をする。
私は少し後ずさりその車が来るのを待つ。
ショーパンの小さいポケットに入ったスマホがバイブレーションを起こしたと同時に、先の車が私の前でブレーキをした。
ちなみに私から見て、車が向いているのは左方向。
助手席側の窓が下りてきて、そこから心音ママが顔を覗かせた。
「お久しぶり! どうぞ、乗っていって!」
陽気に言い放たれ、「おねがいしまーす」と割と丁寧にお辞儀をし、心音のいる後部座席へと私は入っていった。
0
あなたにおすすめの小説
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる