女神と共に、相談を!

沢谷 暖日

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心音と共に、

課題を頑張ろう!

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 あの後。普通に母さんが五時半に迎えに来た。
 別れを惜しみつつ、明日があるから別にいいと前を向いた。
 それで、家に帰ってご飯を食べて、現在は午後八時。
 ベッドに正座をして、さっきのことを色々と妄想している。

 あの時、泊まるって、もう勢いで言ってしまったけど。
 ……これって、凄いことなんじゃ⁉︎
 冷静に考えて。いや考えなくともこれは凄い。
 同じ部屋で、一緒に寝て。次の日、一緒に学校に行く。
 このワードの破壊力。事の凄さが、それだけで分かってしまう。
 夜って、人がはっちゃける時間でもあるから、告白もそのテンションに押されて出来るのではないか、と思ってしまう。
 確かに、明日また朝と昼に会うってことになったら、今日みたいに絶対告白ができなかった気しかしない。
 勢いで、泊まりたいって言ったのは本当に大正解だったと言える。

「明日はやるぞやるぞやるぞーー!」

 意気込んで、私は己を高めるためにそう叫ぶ。
 と、その後すぐに、枕元の携帯が震える。
 心音だろうなって思って、それを取る。

『お姉。ちょっと静かにね』

 違かった……。
 うるさい私にお咎めをいれる私の妹。楓花だった。

『ごめんしゃい』
『よろしいでしょう』

 スマホをまた枕元に戻す。
 心音は、今はご飯の時間らしい。
 早く戻って来ないかなー。お話ししたいよー。

「──って」

 今からでも課題をするべきか。
 心音でも、結構課題に時間かかってたっぽいしな。
 私がやったら心音よりも、さらに時間がかかりそうだ。
 ……しょうがない。明日のために、課題をしよう。

 私は正座を崩して、ベッドから降りる。
 リュックの中から、見るだけで頭が痛くなる課題の数々、そして絶対書く必要の無いであろう反省文を取り出して、机の上にバッと広げた。

「っし。やろっか。明日のために」


     ※


 さて。意気込んでから何時間経っただろうか。
 ……時計を見れば八時半。
 十分くらいしか経ってなかった。
 だが。その十数分の間、私は無駄に時間を食っていたわけじゃない。
 頭を悩ませて、素晴らしい考えを思いついたのだ。

『ここねー! 課題の写真撮って私に送ってー!』

 そう。渡された課題が一緒。
 つまり写すことができる。
 私は頭がいいんじゃないか。
 ……頭が悪いからこういうことを思いついたって点には触れないでおこう。
 晩御飯中の心音はいつ返信くれるのかって。
 そう思っていたけど。すぐに返信が届いた。

『ダメです。自分の力でやってください』
『なぜーー!』

『自分に身につかないですよ。伊奈さん、ただでさえ、授業中ぼーっとしてるじゃないですか。明日の夕方まで時間はたっぷりありますよ。頑張りましょう!』
『ど正論っすね。……けど、難しいんだってばー』

『自業自得じゃないですかそれー。……じゃあ、電話を繋いでください。私がヒントとか出してあげるので、一緒に終わらせましょう』

 お優しい方である。

『なんて女神なんだー!』

 嬉々として、電話のマークに手を伸ばす。
 それを押そうとしたとこで、私はハッと気付く。

『心音さ。電話できるの?』

 心音は通常時は、私とハグしないと会話できないはず。
 電話って。確かに間接的なツールだから、実際に話す時よりも恥ずかしさというのは軽減されるものなのだろうか。

『恥ずかしいですけど。伊奈さんが、ビデオ通話にして自分の顔を画面上に映し出してください。私は毛布を伊奈さんに見立ててぎゅーします。そしたら、多分、話せると思いますよ』

 よくわからないその理論。
 心音がそうしているところを想像する。
 私を毛布に見立てて……ぐへへ。
 顔が、めっちゃ崩れてしまう。ぐへ。

『可愛いー! じゃあ! 心音さんもビデオにしてその様子見せてください!』
『それは無理です。恥ずかしいので。ビデオにするのは伊奈さんだけです』

「そっかー。残念」

 しょうがないなと思った。
 心音に勉強を教えてもらう。それだけで素晴らしいことだ。
 それ以上を求めるのは、また今度。いつか来た日で。

 にしても心音は私に、だんだんと心を開いてくれている気がする。
 今までも凄く開いてくれていたと思うけど。
 今日は、かなりそれを実感している。
 キスとか、今のこととか。

「嬉しっ」

 その事実に私は笑いながら、心音に電話をかける。

 プルルル。プルルル。プルルル。

 心音はスマホの前にいるはずなのに、中々出てくれない。

 プルルル。プルルル。プルル──。

 コール音が途絶える。
 切られた? いや、ザーッと向こう側で微かにノイズが聞こえる。
 ちゃんと電話に出てくれた様だ。
 やがて数秒経過したのちに。

『……伊奈さん。勉強、始めましょ』

 細くて華奢な心音の声が聞こえた。
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