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心音と共に、
楽しかった一日の終わり
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ビデオ通話なんて、そういえば家族と以外にしたことないな。
……ちょっと、普通に顔を合わせるよりも恥ずかしさがある。
けど。じゃないと心音が話してくれなさそうなので、スマホをちょちょいといじって、私の顔をスマホの画面に映し出す。
勉強机の奥にスマホをいい感じに立てかける。
「ど、どうもー」
思ったよりも可愛くない私の顔に、画面から顔を背けそうになるも、それを耐えつつ手を軽くスマホに対して振る。
心音は自分の顔を映し出してはくれないけど。
まぁ。心音を見入っちゃって課題が進まない未来が予知できたから、それでよかったのだろう。
『こんばんは。伊奈さん』
「ど、どもー。じゃあ、早速だけど。今、英語やっているの。最初から詰まっているので教えて下さい!」
『りょーかいです』
力のない心音の声。いつものことだけど。
本当に教える気あるのかなと、私は声を抑えつつも思わず笑ってしまう。
「あっ」
すぐに鏡となっているスマホに気付き、バッと下を向く。
『伊奈さん。可愛い』
私をおかしがる心音の声。
変な顔してたかなって思いつつも、ゆっくり顔を上げて。
「えへへ」
スマホに向けて、今度は普通に笑ってみせる。
※
それからの心音との時間は、楽しいけど……どちらかというと、辛いっていう思いの方が勝ってしまった。
しょうがない……よね。多分。
だって課題は本来、楽しいものじゃない。
勉強できるようになれば楽しいのかもしれないけど……。
課題に詰まって、心音に解き方を聞く。
ずっとそれの繰り返し。
疲れたら、心音の優しい声を聞いて癒されていた。
思い返せば、楽しい思いの方が強かったのかも。
時計を見る。
もう夜の十一時だった。
いやー。かなり頑張ったよ私。
えらいえらい。この調子で明日もやればすぐにでも終わりそうだ。
「心音。今日は、もう終わりだよね?」
課題も一段落ついたので、さっき心音から『そろそろ終わりましょうか』と言われたところだ。
『はい。じゃあ、また明日も、電話しましょう』
「はーい。じゃあ、今日はおやす!」
『伊奈さん。ちょっと、こっちに手を振ってみて下さいよ』
「えっ」
言われて。
別に恥ずかしがる必要もない。
いや。恥ずかしいけど。顔熱いけど。
心音の頼みだし、それらを振り切って手を振ってみる。
「うぉー。またあしたー!」
ちょっと声量を上げながら、振り続ける。
心音の反応はゼロだ。
恥ずかしいから目を閉じて。
若干ヤケクソ気味に両手で振る。
微かな笑い声が聞こえたような気がした。
『はい。また明日』
「う、うん」
手を振るのをやめて、スマホに顔を近づける。
『じゃあ、切りますね。おやすみなさい』
「おやすみ。心音」
……。
数秒の間を空けて、電話が切れる。
「あぁ……。切れちゃったか……」
当たり前のことなのに、目の前に事実として存在しているのに、さっきまでの騒がしいってほどじゃないけど、そう言った賑やかさが遠くに飛んで行ってしまったようで悲しくなってしまう。
……明日。明日泊まれる。だから、いいか。
私は立ち上がって、歯を磨きに行った。
歯磨き描写はカットして、歯磨き終了。
もう風呂には入っていたので、そのまま部屋へ戻る。
部屋の電気をパチンと消し、布団の中へと潜る。
いつもならすぐに眠りにつくところだが。今日はそう、うまくはいかない。
なぜ? 明日のことを考えると、本当にそわそわしてしまうからだ。
だから中々、眠りにつけない。
「ねーんねーん、ころーりーよ、おこーろーりよー」
子守唄を歌ってみる。
……ダメだ。
というか余計に目が冴えてしまった。
心音はもう眠れたのかな?
眠れてるだろうな。
いつもはこれよりも寝るの早いし。
もう無理にでも寝ようと、布団を思い切り被ろうとした。
ちょうどその時に。
──ブー。
突如として、スマホが音を鳴らす。
この静寂を切り裂くその音は、いつもよりも大きく感じてしまった。
こんな時間に? 変なチェーンメールとかかな?
と、思いながら届いた通知に目をやった。
『伊奈さん。なんだか眠れなくて。寝ちゃいましたかね?』
……心音も、眠れなかったらしい。
今日は、一体どれくらい、心音に頬を緩まされただろうか。
「私もだよ」
思わず出た呟きを、そのまま文字として心音に送信した。
結局、私たちが眠りについたのは。これよりもう少し後のことだ。
……ちょっと、普通に顔を合わせるよりも恥ずかしさがある。
けど。じゃないと心音が話してくれなさそうなので、スマホをちょちょいといじって、私の顔をスマホの画面に映し出す。
勉強机の奥にスマホをいい感じに立てかける。
「ど、どうもー」
思ったよりも可愛くない私の顔に、画面から顔を背けそうになるも、それを耐えつつ手を軽くスマホに対して振る。
心音は自分の顔を映し出してはくれないけど。
まぁ。心音を見入っちゃって課題が進まない未来が予知できたから、それでよかったのだろう。
『こんばんは。伊奈さん』
「ど、どもー。じゃあ、早速だけど。今、英語やっているの。最初から詰まっているので教えて下さい!」
『りょーかいです』
力のない心音の声。いつものことだけど。
本当に教える気あるのかなと、私は声を抑えつつも思わず笑ってしまう。
「あっ」
すぐに鏡となっているスマホに気付き、バッと下を向く。
『伊奈さん。可愛い』
私をおかしがる心音の声。
変な顔してたかなって思いつつも、ゆっくり顔を上げて。
「えへへ」
スマホに向けて、今度は普通に笑ってみせる。
※
それからの心音との時間は、楽しいけど……どちらかというと、辛いっていう思いの方が勝ってしまった。
しょうがない……よね。多分。
だって課題は本来、楽しいものじゃない。
勉強できるようになれば楽しいのかもしれないけど……。
課題に詰まって、心音に解き方を聞く。
ずっとそれの繰り返し。
疲れたら、心音の優しい声を聞いて癒されていた。
思い返せば、楽しい思いの方が強かったのかも。
時計を見る。
もう夜の十一時だった。
いやー。かなり頑張ったよ私。
えらいえらい。この調子で明日もやればすぐにでも終わりそうだ。
「心音。今日は、もう終わりだよね?」
課題も一段落ついたので、さっき心音から『そろそろ終わりましょうか』と言われたところだ。
『はい。じゃあ、また明日も、電話しましょう』
「はーい。じゃあ、今日はおやす!」
『伊奈さん。ちょっと、こっちに手を振ってみて下さいよ』
「えっ」
言われて。
別に恥ずかしがる必要もない。
いや。恥ずかしいけど。顔熱いけど。
心音の頼みだし、それらを振り切って手を振ってみる。
「うぉー。またあしたー!」
ちょっと声量を上げながら、振り続ける。
心音の反応はゼロだ。
恥ずかしいから目を閉じて。
若干ヤケクソ気味に両手で振る。
微かな笑い声が聞こえたような気がした。
『はい。また明日』
「う、うん」
手を振るのをやめて、スマホに顔を近づける。
『じゃあ、切りますね。おやすみなさい』
「おやすみ。心音」
……。
数秒の間を空けて、電話が切れる。
「あぁ……。切れちゃったか……」
当たり前のことなのに、目の前に事実として存在しているのに、さっきまでの騒がしいってほどじゃないけど、そう言った賑やかさが遠くに飛んで行ってしまったようで悲しくなってしまう。
……明日。明日泊まれる。だから、いいか。
私は立ち上がって、歯を磨きに行った。
歯磨き描写はカットして、歯磨き終了。
もう風呂には入っていたので、そのまま部屋へ戻る。
部屋の電気をパチンと消し、布団の中へと潜る。
いつもならすぐに眠りにつくところだが。今日はそう、うまくはいかない。
なぜ? 明日のことを考えると、本当にそわそわしてしまうからだ。
だから中々、眠りにつけない。
「ねーんねーん、ころーりーよ、おこーろーりよー」
子守唄を歌ってみる。
……ダメだ。
というか余計に目が冴えてしまった。
心音はもう眠れたのかな?
眠れてるだろうな。
いつもはこれよりも寝るの早いし。
もう無理にでも寝ようと、布団を思い切り被ろうとした。
ちょうどその時に。
──ブー。
突如として、スマホが音を鳴らす。
この静寂を切り裂くその音は、いつもよりも大きく感じてしまった。
こんな時間に? 変なチェーンメールとかかな?
と、思いながら届いた通知に目をやった。
『伊奈さん。なんだか眠れなくて。寝ちゃいましたかね?』
……心音も、眠れなかったらしい。
今日は、一体どれくらい、心音に頬を緩まされただろうか。
「私もだよ」
思わず出た呟きを、そのまま文字として心音に送信した。
結局、私たちが眠りについたのは。これよりもう少し後のことだ。
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