義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日

文字の大きさ
43 / 86
義姉妹の学校生活

てんちゃんの挨拶

しおりを挟む
 私が教室に入ると、少しざわついた。
 ちらちらと見られているのをなんとなく分かる。

 ……見ないで欲しい。なぜだか胃がきゅーって引き締まってしまう。
 私の長すぎる髪のせいで、見られているのだと思うけど。
 多分、私くらい髪の毛が長い人ってこの学校にいないんじゃないかな。
 散髪屋には怖くて行けないので、自分で前髪と横髪を切っていたら、もうこんな長さである。
 てんちゃんに切ってもらおうかな。なんて思いつつ、私は自分の席へと向かった。

 ……左から二番目の前から二番目。
 前の席はてんちゃんで、後ろの席は藤崎さんだ。
 その場所に、私は周りの視線を気にしつつもちょこんと座った。

「ねぇねぇ。さっき、瑞樹さんの妹、ちょっとご機嫌斜めじゃなかった?」

 私が座ってから束の間。
 肩をトントンと叩いて、藤崎さんは問うてくる。

「……緊張しているんじゃないですか?」

 適当な返事をする。

 ……おそらくだけど。
 あれは、てんちゃんは嫉妬していたんだと思う。
 違ったらあの態度は本当に何なんだって感じ。

 嫉妬だとしたら、ちょっと嬉しいけど、ちょっと不安だ。
 てんちゃんは本当に私のことが好きって認識できたのと同時に、てんちゃんに嫌われたかもしれないからだ。
 ……嫉妬するも何も、私は藤崎さんに学校案内を頼んでいただけなのに。

「よかったー。嫌われたのかもしれないと思ったー」
「あ。はい。そうですね」

 鵜呑みにしたっぽい。
 なんか単純な人かも。

 なんて思っていたら、教室のドアがガラガラと少し大きめの音を立て、目をやると、さっきのおばさん先生が教室に入ってきていた。
 このクラスの担任なのだろう。
 途端に散り散りになっていたクラスの人たちが、慌てるように席に着く。

「では、朝礼を始めたいと思います」

 そう切り出して。

「まずは、転校生の紹介ですね!」

 いや、いきなりかよ。
 ……なぜか何人かの生徒が、私のことを見ているのが気になる。
 私、転校生じゃないんですけど。

「じゃあ。入ってきてください」

 その言葉に、「はい」と廊下で声が聞こえて、てんちゃんが教室に入ってきた。
 どこか体はカチコチしていて、やっぱり緊張しているようだった。
 先生の横に立ち、ピシッと背筋を伸ばす。

「じゃあ。自己紹介、お願いできる?」
「は、はい!」

「て、てんかわ──あ! 姫川楓です!」

 間違えてる。
 可愛い。

 あたふたしてる。
 さらに可愛い。

 恥ずかしそうに下を向いてる。
 さらにさらに可愛い。

「え、えっと。親のいろいろな都合で、このあたりに引っ越してきました! これからよろしくお願いします!」

 拍手がぱちぱちと巻き起こる。
 
 だが、それと同時に、
 どこからか「可愛い」と聞こえてくる。
 それは女子の声だった。
 拍手に混じったその声は聞こえにくかったけど、たしかにそう聞こえた。

 んー……不安だ。
 てんちゃん、色んな人にに狙われそう。
 やっぱり可愛いもん。

 てんちゃんは顔を紅潮させながら、てくてくと私の前の席に座った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

処理中です...