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第八話 魔法研究
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屋根裏の小さな部屋で始まった、二人だけの魔法研究。
俺はアリアに言われるがまま、銅貨に【重い】という概念を付与する。
と、それはドンという鈍い音と共に木の机にめり込んだ。
「……すごい。成功ですね!」
アリアは興奮した様子で、その銅貨を指で突いてみる。
びくともしない。彼女が両手で持ち上げようとしても、まるで床に根が生えたかのように持ち上がらなかった。
「それでノアさん。今の付与でどのくらい消耗しましたか?」
「いや、それほどでも……。頭が少しぼーっとするくらいだ」
「なるほど。低級の、そして曖昧な概念なら、反動も少ない、と」
アリアは几帳面に羊皮紙にメモを取ると、今度は真剣な顔で俺に向き直った。
「では次が本番です。今度は私の定義で付与してください。いいですか?」
アリアの定義で付与?
よく分からないがやってみよう。
多分俺だけじゃこの能力を深く理解しようとはしなかった。
これは俺にとっても良い機会となるだろう。
「重くなれと漠然と念じるのではなく、『この銅貨は同じ体積の純金の塊と全く同じ質量になる』そうう強く、明確にイメージするのです」
「あ、あぁ」
たしか銅の比重は金の倍は違ったんだっけか。
俺は言われるがままイメージを開始する。
純金なら、俺もパーティーにいたころ見たことがあった。
まぁ。それらは全てアルドレットらの取り分だったわけだが。
いや、今はそんなことどうでもいい。目の前のことに集中だ。
純金。その輝き、密度、ずっしりとした重み。
俺はその具体的な定義を、銅貨に上書きするように念じた。
「――【純金の質量】」
ズシンッ。
先よりも重い音と共に、銅貨が机に円形の跡を刻んだ。
同時に、俺の体を今までで一番分かりやすい疲労感が襲う。
「今度は、さっきよりずっと疲れた……」
「やはり!」
アリアは、まるで世紀の発見でもしたかのように目を輝かせて羊皮紙にペンを走らせた。
「あなたの力の精度と強度は、付与する概念の定義の明確さに比例するんです! そして、定義が明確であるほど術者へのコストも増大する! これが、あなたの力の第一法則です!」
アリアは興奮して捲し立てた。
この少女は、俺が今まで出会った誰よりも俺の力のことを理解している。
しかも、まだ出会って間もない俺のことを、だ。
アルドレットたちが「小細工」と笑い、俺自身でさえ持て余していたこの力を、彼女は解き明かそうとしてくれている。
俺が反動で少しぐったりしていると、アリアはゴソゴソとカバンを探り小さな紙袋を取り出した。
「……エネルギーを消費したら、補給するのが合理的です」
少しだけ顔を赤らめぶっきらぼうに言いながら、彼女は袋の中から甘い香りのするパンを一つ差し出した。
街の評判のパン屋で、俺も休日に一度だけ買ったことがある、蜂蜜がたっぷりかかったパンだった。
「あ、あぁ……ありがとう」
俺たちは、屋根裏部屋の窓から差し込む月明かりの下で、その甘いパンを半分こにして食べる。
昼間は口もほとんど利かないというのに、こうして一緒にパンを食べているのはなんだか少しだけ可笑しかった。
俺はアリアに言われるがまま、銅貨に【重い】という概念を付与する。
と、それはドンという鈍い音と共に木の机にめり込んだ。
「……すごい。成功ですね!」
アリアは興奮した様子で、その銅貨を指で突いてみる。
びくともしない。彼女が両手で持ち上げようとしても、まるで床に根が生えたかのように持ち上がらなかった。
「それでノアさん。今の付与でどのくらい消耗しましたか?」
「いや、それほどでも……。頭が少しぼーっとするくらいだ」
「なるほど。低級の、そして曖昧な概念なら、反動も少ない、と」
アリアは几帳面に羊皮紙にメモを取ると、今度は真剣な顔で俺に向き直った。
「では次が本番です。今度は私の定義で付与してください。いいですか?」
アリアの定義で付与?
よく分からないがやってみよう。
多分俺だけじゃこの能力を深く理解しようとはしなかった。
これは俺にとっても良い機会となるだろう。
「重くなれと漠然と念じるのではなく、『この銅貨は同じ体積の純金の塊と全く同じ質量になる』そうう強く、明確にイメージするのです」
「あ、あぁ」
たしか銅の比重は金の倍は違ったんだっけか。
俺は言われるがままイメージを開始する。
純金なら、俺もパーティーにいたころ見たことがあった。
まぁ。それらは全てアルドレットらの取り分だったわけだが。
いや、今はそんなことどうでもいい。目の前のことに集中だ。
純金。その輝き、密度、ずっしりとした重み。
俺はその具体的な定義を、銅貨に上書きするように念じた。
「――【純金の質量】」
ズシンッ。
先よりも重い音と共に、銅貨が机に円形の跡を刻んだ。
同時に、俺の体を今までで一番分かりやすい疲労感が襲う。
「今度は、さっきよりずっと疲れた……」
「やはり!」
アリアは、まるで世紀の発見でもしたかのように目を輝かせて羊皮紙にペンを走らせた。
「あなたの力の精度と強度は、付与する概念の定義の明確さに比例するんです! そして、定義が明確であるほど術者へのコストも増大する! これが、あなたの力の第一法則です!」
アリアは興奮して捲し立てた。
この少女は、俺が今まで出会った誰よりも俺の力のことを理解している。
しかも、まだ出会って間もない俺のことを、だ。
アルドレットたちが「小細工」と笑い、俺自身でさえ持て余していたこの力を、彼女は解き明かそうとしてくれている。
俺が反動で少しぐったりしていると、アリアはゴソゴソとカバンを探り小さな紙袋を取り出した。
「……エネルギーを消費したら、補給するのが合理的です」
少しだけ顔を赤らめぶっきらぼうに言いながら、彼女は袋の中から甘い香りのするパンを一つ差し出した。
街の評判のパン屋で、俺も休日に一度だけ買ったことがある、蜂蜜がたっぷりかかったパンだった。
「あ、あぁ……ありがとう」
俺たちは、屋根裏部屋の窓から差し込む月明かりの下で、その甘いパンを半分こにして食べる。
昼間は口もほとんど利かないというのに、こうして一緒にパンを食べているのはなんだか少しだけ可笑しかった。
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