土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第2章 海兵隊の整備

第5話

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 大鳥圭介が、そんなことを考えた時から、少し時が流れていた。

 長崎にいる古屋佐久左衛門は、腹を括らざるを得なかった。
 大鳥圭介が本当は言いたくないという表情をしていたのは、そういうことだったのか、と今に至って、古屋には心から合点がいった。
 本当に、古屋自身も吐き気がすると言っては言い過ぎかもしれないが、いい気分にはなれなかった。
 だが、これまでの経緯からすると動かざるを得なかった。

「鎮圧のために出動するぞ。わずか200名程の小部隊なのは事実だが、出来る限りのことをする」
「了解しました。私としては飯の種を失うわけにはいきませんので、できる限り奮闘します」
 第1小隊長を務める梶原雄之助少尉は答えた。
 全身に入れ墨を入れていて、元はやくざだったという噂のある(本当は火消しだったらしい)梶原が、そういうと何とも言えない圧迫感があった。

 少し時をさかのぼる。
「第1海兵中隊を引き連れて、長崎に駐屯してほしい。
 駐屯地は確保しておく」
「了解したが、裏がありそうだな」
「古屋少佐は知る必要が無い。
 したがって、私としては理由を告げるわけにはいかない、というか、知ってほしくない」
「大鳥がそこまでいうのなら、黙って行かせてもらう」
 古屋と大鳥は、そんなやり取りをした。

 その時、古屋は大鳥の内心を半分推察できていた。
 海兵隊の存在意義を示すために、大鳥らは暗躍せざるをえなかった。
 征韓論を巡るごたごたから、西郷隆盛や江藤新平等は、抗議の辞職をして、故郷に帰った。
 いずれ彼らは武装蜂起する可能性が高い。
 海兵隊は、その鎮圧のために、海兵1個中隊を長崎に駐屯させることにしたのだ。
 彼らの武装蜂起を鎮圧することで、海兵隊の存在意義を示そうとしているのだ、
 そう古屋は、推察はしていたのだが。

 実際に、江藤新平の武装蜂起が佐賀で起こった。
 更に、その鎮圧部隊の一員として、海兵隊が動くとなると、古屋にとって、話は別だった。
 江藤に呼応した元佐賀藩の士族は、数千人に達するという情報が、古屋の耳にも入っていた。

 2月15日に、佐賀県庁において熊本鎮台兵と武装蜂起した士族との戦闘が起こったとの情報が入ったことから、長崎にいる海兵隊は出動することになった。
 長崎にいた山口尚芳外務少輔(山口は佐賀の乱に参加すると疑われた武雄藩の士族等の説得に当たることになった)の護衛もかねて、武雄藩にまず海兵隊は向かった。
 幸いなことに武雄藩の士族はほとんど動いておらず、古屋らの海兵隊は、そのまま佐賀に向かうことが出来た。

 古屋は、ほっとしつつ佐賀へと進軍した。
 最終的に、3月1日には佐賀に、海兵隊は山口と共に入城できた。
 更に海兵隊は幸いなことに、結果的には、一発の銃弾も撃つことなく、佐賀の乱の終結を迎えることが出来た。

「おもしろくねえなあ、佐賀藩の奴らを殺して、戊辰戦争の恨みを晴らせると思っていたのに」
「全くだ」
 かくして、佐賀の乱が無事に鎮圧された後、佐賀でしばらく警備に当たり、治安が回復されたと判断され、長崎の駐屯地に、海兵隊は戻ることになったのだが。
 海兵隊が長崎に向かう途中で、梶原らが、そんな物騒な会話をしているのが古屋の耳に入ってきた。

 古屋は思った。
 これは、日本各地で起こる不平士族らの反乱の多分皮切りに過ぎまい。
 まだまだ日本各地で、不平士族を中心とする武装蜂起は起こるはずだ。
 梶原らは、今回は銃を撃たずにすんだから、そんなことを言えるのだろうが。

 次に不平士族の蜂起が起きたら、この程度では、済まないのではないだろうか。
 特に、もしも、西郷隆盛を首魁とする薩摩の不平士族が決起したら、どんな事態が起こるか。
 古屋は、背中に冷たいものが流れるのを感じていた。
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