土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第3章 新選組の旗の再生と台湾出兵

第2話

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「それでは行ってくる」
 土方歳三はできる限り軽く、妻の琴に声をかけた。
 琴は気丈にも夫を少しでも心配させないように心がけてはいるが、夫を心配しているのが見え見えの有様だった。
「ご心配なく、勇志も喜多も手がかかりませんし、甥のみならず村の人も協力してくれるので田畑も大丈夫です。
 心置きなく台湾へ赴いてください」

 言っていることは立派だが、言葉尻が微妙に震えていることが琴の内心を表していた。
 土方は、却って自分が出発した後のことが心配になってくるな、と思ったが、あえて触れない方が、琴にとってよいだろうと割り切って、それ以上は琴に声をかけず、振り返らずに家を出ることにした。

 台湾に赴く第一屯田兵中隊の集合場所になっている第一屯田兵中隊練兵所に土方がたどり着いたときには、まだ集合時刻の1時間前だったこともあり、ほとんど屯田兵はいなかった。
 だが、時間が経つにつれて三々五々と屯田兵が集まってきた。
 集まった屯田兵は予め定められた小隊別、分隊別、班別に集合していく。

 班ともなってくると生活も共にしているので(各班単位で協同して耕作等は実行するのが当たり前だった)、班単位で練兵所に来る屯田兵も多い。
 中には別れを惜しむあまり、妻子や親兄弟が、練兵所にまでついてきている屯田兵がいた。
 そして、どんどん各班の編成が完了し、更に、各小隊も順次編成されていった。

 屯田兵中隊は4個小隊で、更に各1個小隊は4個分隊で、各1個分隊は4名ないし5名からなる3個班でとそれぞれ編成されている。
 土方が、その光景を、無言で眺めているうちに、集合時間までに4個小隊は全て編成を完結していた。
 それぞれの各小隊長から、全員そろった旨の報告を受けた後、屯田兵の家族もいることから、土方は一言言ったうえで、練兵所を出発することにした。

「この土地に、我々が来てから、丸4年が経とうとしている。
 その間、屯田兵の諸君は、私が指示する数々の訓練に黙々と耐えてきた。
 その結果、今や君たち屯田兵は、日本のみならず世界に通用する精兵になった、と私は確信している。
 台湾に赴いて、これまでの訓練の成果を、我々は存分に発揮しようではないか。
 そして、私は君たちにここに約束する。
 少しでも犠牲を少なくするように私は努めて、君たち全員とは言わないが、できる限り多くの者が、ここに帰還できるように、私は努力しよう。
 だが、君たち自身も無事に帰れるように軍務に精励しなければならない。
 幾ら私が努力しても、君たち自身の努力も無ければ、無事の帰還はおぼつかない。
 この言葉を胸に刻んで戦い、そして、生き抜いてほしい。
 では、今から出発しよう」
「応」
 土方の訓示に、屯田兵たちは、相次いで短く答えた。

 土方率いる第一屯田兵中隊は、まずは陸路で小樽へ、更に海路で長崎へ、と進んでいくことになっていた。
 長崎に到着した後は、第一屯田兵中隊は、独立海兵大隊の隷下に再編制され、それ以降は、独立海兵大隊の指揮下におかれることになっている。

 土方は、部下と共に行軍しながら、考えに沈んだ。
 まさか、屯田兵の初陣が、台湾出兵になるとは、思わなかったな。
 そして、古屋佐久左衛門さんが、独立海兵大隊長になられているとは。
 戊辰戦争時、古屋さんに、ブリュネ大尉と共に降伏を勧めた際に、こんなことになるとは、思わなかったな。
 それにしても。

 自分も、部下達も、あの屯田兵村に、無事に生きて還らねばならんな。
 戊辰戦争時と違って、自分には、琴という妻がいて、勇志と喜多という子がいる。
 部下達も、妻子や親兄弟がいる者ばかりだ。
 自分も部下達も、家族の下に生きて還れるように、自分は努めねば。
 土方は、あらためて内心でそう固く誓った。
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