土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第3章 新選組の旗の再生と台湾出兵

第8話

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 土方歳三と古屋作左衛門が、そんなやり取りを台湾でしていた頃、東京では、荒井郁之助は、大鳥圭介と額を寄せ合い、台湾にいる海兵隊の現状について、最新の情報をもとに秘密裡の相談をしていた。

「速やかに台湾から撤退するしかない、と上申するしかない、というのが大鳥少佐の判断か」
「台湾に陸海軍を派遣してから3か月経たない8月上旬の時点で、兵の3割以上がマラリアに倒れている現状で、他にどんな意見を上申しろと。
 だから、あれほど派兵前に言っていたではないですか。
 医師の観点からも、台湾出兵には断固、反対せざるを得ないと」

 荒井は、大鳥の返答に、大鳥は、医師としての腕はそれほどでもないどころか、超やぶ医レベルで、信用できない言葉だ、とふと思ったが、それを指摘する時では無かろう、とも思った。

「政府は、どう考えているのです。
 陸軍の方が海兵隊よりもっと悲惨な状況にあり、軍医を追加で派遣するという話ではないですか」
「追加の軍医は全部で23名を確保し、その内8名は海兵隊の応援だ。
 これで何とかしのげて欲しい、と願っているがな」
 大鳥の問いかけに、荒井はそう答えた。

「その代り、新たに確保できた製氷機6台を、全て陸軍に譲るという交換条件でしたね。
 全く海兵隊より大所帯の陸軍が製氷機1台の準備もせずに台湾に派兵して、植民地化を呼号するとは。
 本当に呆れてしまいます」
「俺も同感で、大鳥が呆れるのも無理はない」
 大鳥の辛らつな言葉に、荒井は同意しつつ、言葉を繋いだ。

「台湾出兵を主導した大久保利通も、完全に政府内で孤立化しつつある。
 長州系は、木戸孝允の意向を受けて、完全に台湾からの撤退で意見が固まった。
 幾ら伊藤博文らが大久保にすりよってはいても、ここまで西郷従道がかばいようがない失態を犯してはな。
 海兵隊と陸軍とで比較すると、海兵隊の方が圧倒的に比率的に戦病死者が少ない。
 新聞がこの事実を大々的に報道してしまっては、陸軍も事実だけに隠し切れない。
 そして、山県有朋らもこの件に関しては、西郷個人に責任を押しつけて陸軍本体を守るしかないということで、陸軍省を反西郷で固めてしまった。
 そして、西郷をけしかけて独断出兵に走らせたのは、大久保の責任だ。
 更に付け加えると、正確な兵力等は不明だが、清国が最悪の場合には対日戦まで覚悟して台湾に陸海軍兵力を派遣しつつあるのは間違いない。
 何しろ、英米等の諸外国は完全に局外中立を宣言してしまった。
 清国の先遣兵力は沈葆楨が率いて、既に台湾に到着済みだ。
 今の時点での日清戦争は、どう見ても無理筋で、唯一の救いは、清国に対日戦の決意が出来ていないことだけだ。
 大久保は自分が清国に渡航することで、清国と直接に交渉して、名誉ある台湾からの撤退を果して、西郷をかばうと共に自分の地位を保全しようと画策しているらしい」

 荒井の長広舌に、大鳥は、皮肉で答えた。
「うまくいけばいいですけど、清国に足元を見られるのがオチでは?」
「全くその通りだが、日本全体のことを考えると、名誉ある形にして台湾からの撤退を図らねばならない、というのも現実ではあるからな。
 ここで、何の成果も無しに、台湾から日本軍は逃げ帰りました、というのでは確かにまずい。
 新聞にどんどん情報を流して、反大久保をあおり過ぎたせいで、台湾出兵自体が政府非難につながってしまった」
「自縄自縛とはこのことかもしれませんな」

 荒井と大鳥は、秘密裏に新聞に台湾出兵の情報を漏えいすることで、海兵隊の早期の台湾からの撤兵を画策していたのだが、今になってその反動に自ら苦しむ羽目になっていた。
 一刻も早く台湾から撤兵すべきだが、どうすればよいか。
 荒井と大鳥は苦悩していた。
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