土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第4章 西南戦争の勃発

第12話

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「川村純義海軍大輔が、海軍省に戻られるまで、と言うよりも、海兵局と連絡がつくようになるまでは、我が海兵隊は総動員に移ることはできません。
 まさか、ここまで急速に情勢が悪化するとは、誰も考えていなかったので、川村海軍大輔から、事前に総動員体制を海兵局の判断でとってもよい旨の了解を、我々は取っていなかったのですよ。
 昨日、陸軍は出動命令を一部の部隊に下したとのことですが、海兵隊は出動待機命令を出すのが精一杯です。
 そうなってくると、海兵隊の兵員等の輸送のために必要な船舶は、陸軍が海兵隊よりも先に抑えてしまう可能性が高いです」
 大鳥圭介が、荒井郁之助局長に、丁寧に指摘した。

「そういえば、そうだな。
 川村海軍大輔の説得に、一縷の望みを託したのが、結果的に裏目に出たか。
 事前に川村海軍大輔に、海兵隊の総動員体制の許可を得ておくべきだったな」
 荒井は嘆いた。

「川村海軍大輔とは、いつになったら連絡が取れますかね」
 大鳥が言った。

「連絡がいつ取れるのかは、皆目分からんとしか、言いようがないな。
 各屯田兵村には、電報で待機態勢を取るようには連絡してあるが、屯田兵村から動員して移動させる、となると川村海軍大輔の許可が、どうしても要る。
 連絡が取れて、川村海軍大輔の了解や許可を取ってとなると。
 そもそも、川村海軍大輔の了解や許可が取れてから、長崎に集結するまでにどれくらいかかる」
 荒井は、その場にいる面々に問いかけた。

「ぎりぎり1個大隊、3個中隊ならある程度余裕をもって運べる船舶は、とりあえず東京港に集めて確保していますが、その船舶を小樽に向かわせ、更に長崎に、となると10日は見ておく必要があります」
「全く船舶も足りないな。それに時間もかかる」
 輸送担当士官の言葉に、荒井局長は頭をまたも痛めることになった。

「三菱に打診したところでは、後、1個大隊程度を輸送できるだけの船舶は、東京とその近くで、何とか確保できるとのことです」
「それは至急押さえろ。
 それまで、陸軍に取られたら、海兵隊が長崎に集結できるのにさらに時」間がかかることになるぞ。
 わしが独断でやる」
 輸送担当の士官と、荒井は更なるやり取りをした。

「とりあえずの輸送計画ですが。
 2個大隊を、輸送可能な船舶を確保できる、との前提での素案は、何とかまとめてあります。
 まず、横須賀にいる海兵中隊3個を至急、長崎に輸送します。
 残りの船舶は小樽へ向かわせ、4個屯田兵中隊を小樽から乗船させて長崎へ輸送します。
 また、横須賀からの海兵隊を長崎で下船させた船舶は速やかに小樽へ向かわせ、4個屯田兵中隊を小樽から乗船させて、長崎へ向かわせます。
 更に、最初に小樽へ向かった船舶は長崎から折り返し小樽へ向かい、小樽で残りの2個屯田兵中隊を乗船させて、再度長崎へ向かいます。
 川村純義海軍大輔の命令が出てから、4日後に3個海兵中隊が長崎へ到着、10日後に4個屯田兵中隊が長崎へ、18日後に4個屯田兵中隊が更に長崎へ到着、最後の2個屯田兵中隊が長崎へ到着するのは24日後です」
 荒井局長の頭が少しは冷えた、と判断した輸送担当の士官は、言葉を選びながら、丁寧に発言した。

「結構、時間がかかるな」
 荒井は、その言葉を聞いて、思わざるを得なかった。
 北海道等から長崎に部隊をかき集めるのに、そんなに時間がかかるとは。

「はい、その間に志願兵は長崎に集結するように呼び掛けます。
 志願兵中隊2個の編成が完了するのは、最後の2個屯田兵中隊が長崎へ到着するのとほぼ同時になるか、と私は思料します」
「それが精一杯ということか。
 よし、それで詳細を詰めてくれ」
 輸送担当士官の言葉に、荒井局長は、そう断じざるを得なかった。
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