47 / 120
第4章 西南戦争の勃発
第12話
しおりを挟む
「川村純義海軍大輔が、海軍省に戻られるまで、と言うよりも、海兵局と連絡がつくようになるまでは、我が海兵隊は総動員に移ることはできません。
まさか、ここまで急速に情勢が悪化するとは、誰も考えていなかったので、川村海軍大輔から、事前に総動員体制を海兵局の判断でとってもよい旨の了解を、我々は取っていなかったのですよ。
昨日、陸軍は出動命令を一部の部隊に下したとのことですが、海兵隊は出動待機命令を出すのが精一杯です。
そうなってくると、海兵隊の兵員等の輸送のために必要な船舶は、陸軍が海兵隊よりも先に抑えてしまう可能性が高いです」
大鳥圭介が、荒井郁之助局長に、丁寧に指摘した。
「そういえば、そうだな。
川村海軍大輔の説得に、一縷の望みを託したのが、結果的に裏目に出たか。
事前に川村海軍大輔に、海兵隊の総動員体制の許可を得ておくべきだったな」
荒井は嘆いた。
「川村海軍大輔とは、いつになったら連絡が取れますかね」
大鳥が言った。
「連絡がいつ取れるのかは、皆目分からんとしか、言いようがないな。
各屯田兵村には、電報で待機態勢を取るようには連絡してあるが、屯田兵村から動員して移動させる、となると川村海軍大輔の許可が、どうしても要る。
連絡が取れて、川村海軍大輔の了解や許可を取ってとなると。
そもそも、川村海軍大輔の了解や許可が取れてから、長崎に集結するまでにどれくらいかかる」
荒井は、その場にいる面々に問いかけた。
「ぎりぎり1個大隊、3個中隊ならある程度余裕をもって運べる船舶は、とりあえず東京港に集めて確保していますが、その船舶を小樽に向かわせ、更に長崎に、となると10日は見ておく必要があります」
「全く船舶も足りないな。それに時間もかかる」
輸送担当士官の言葉に、荒井局長は頭をまたも痛めることになった。
「三菱に打診したところでは、後、1個大隊程度を輸送できるだけの船舶は、東京とその近くで、何とか確保できるとのことです」
「それは至急押さえろ。
それまで、陸軍に取られたら、海兵隊が長崎に集結できるのにさらに時」間がかかることになるぞ。
わしが独断でやる」
輸送担当の士官と、荒井は更なるやり取りをした。
「とりあえずの輸送計画ですが。
2個大隊を、輸送可能な船舶を確保できる、との前提での素案は、何とかまとめてあります。
まず、横須賀にいる海兵中隊3個を至急、長崎に輸送します。
残りの船舶は小樽へ向かわせ、4個屯田兵中隊を小樽から乗船させて長崎へ輸送します。
また、横須賀からの海兵隊を長崎で下船させた船舶は速やかに小樽へ向かわせ、4個屯田兵中隊を小樽から乗船させて、長崎へ向かわせます。
更に、最初に小樽へ向かった船舶は長崎から折り返し小樽へ向かい、小樽で残りの2個屯田兵中隊を乗船させて、再度長崎へ向かいます。
川村純義海軍大輔の命令が出てから、4日後に3個海兵中隊が長崎へ到着、10日後に4個屯田兵中隊が長崎へ、18日後に4個屯田兵中隊が更に長崎へ到着、最後の2個屯田兵中隊が長崎へ到着するのは24日後です」
荒井局長の頭が少しは冷えた、と判断した輸送担当の士官は、言葉を選びながら、丁寧に発言した。
「結構、時間がかかるな」
荒井は、その言葉を聞いて、思わざるを得なかった。
北海道等から長崎に部隊をかき集めるのに、そんなに時間がかかるとは。
「はい、その間に志願兵は長崎に集結するように呼び掛けます。
志願兵中隊2個の編成が完了するのは、最後の2個屯田兵中隊が長崎へ到着するのとほぼ同時になるか、と私は思料します」
「それが精一杯ということか。
よし、それで詳細を詰めてくれ」
輸送担当士官の言葉に、荒井局長は、そう断じざるを得なかった。
まさか、ここまで急速に情勢が悪化するとは、誰も考えていなかったので、川村海軍大輔から、事前に総動員体制を海兵局の判断でとってもよい旨の了解を、我々は取っていなかったのですよ。
昨日、陸軍は出動命令を一部の部隊に下したとのことですが、海兵隊は出動待機命令を出すのが精一杯です。
そうなってくると、海兵隊の兵員等の輸送のために必要な船舶は、陸軍が海兵隊よりも先に抑えてしまう可能性が高いです」
大鳥圭介が、荒井郁之助局長に、丁寧に指摘した。
「そういえば、そうだな。
川村海軍大輔の説得に、一縷の望みを託したのが、結果的に裏目に出たか。
事前に川村海軍大輔に、海兵隊の総動員体制の許可を得ておくべきだったな」
荒井は嘆いた。
「川村海軍大輔とは、いつになったら連絡が取れますかね」
大鳥が言った。
「連絡がいつ取れるのかは、皆目分からんとしか、言いようがないな。
各屯田兵村には、電報で待機態勢を取るようには連絡してあるが、屯田兵村から動員して移動させる、となると川村海軍大輔の許可が、どうしても要る。
連絡が取れて、川村海軍大輔の了解や許可を取ってとなると。
そもそも、川村海軍大輔の了解や許可が取れてから、長崎に集結するまでにどれくらいかかる」
荒井は、その場にいる面々に問いかけた。
「ぎりぎり1個大隊、3個中隊ならある程度余裕をもって運べる船舶は、とりあえず東京港に集めて確保していますが、その船舶を小樽に向かわせ、更に長崎に、となると10日は見ておく必要があります」
「全く船舶も足りないな。それに時間もかかる」
輸送担当士官の言葉に、荒井局長は頭をまたも痛めることになった。
「三菱に打診したところでは、後、1個大隊程度を輸送できるだけの船舶は、東京とその近くで、何とか確保できるとのことです」
「それは至急押さえろ。
それまで、陸軍に取られたら、海兵隊が長崎に集結できるのにさらに時」間がかかることになるぞ。
わしが独断でやる」
輸送担当の士官と、荒井は更なるやり取りをした。
「とりあえずの輸送計画ですが。
2個大隊を、輸送可能な船舶を確保できる、との前提での素案は、何とかまとめてあります。
まず、横須賀にいる海兵中隊3個を至急、長崎に輸送します。
残りの船舶は小樽へ向かわせ、4個屯田兵中隊を小樽から乗船させて長崎へ輸送します。
また、横須賀からの海兵隊を長崎で下船させた船舶は速やかに小樽へ向かわせ、4個屯田兵中隊を小樽から乗船させて、長崎へ向かわせます。
更に、最初に小樽へ向かった船舶は長崎から折り返し小樽へ向かい、小樽で残りの2個屯田兵中隊を乗船させて、再度長崎へ向かいます。
川村純義海軍大輔の命令が出てから、4日後に3個海兵中隊が長崎へ到着、10日後に4個屯田兵中隊が長崎へ、18日後に4個屯田兵中隊が更に長崎へ到着、最後の2個屯田兵中隊が長崎へ到着するのは24日後です」
荒井局長の頭が少しは冷えた、と判断した輸送担当の士官は、言葉を選びながら、丁寧に発言した。
「結構、時間がかかるな」
荒井は、その言葉を聞いて、思わざるを得なかった。
北海道等から長崎に部隊をかき集めるのに、そんなに時間がかかるとは。
「はい、その間に志願兵は長崎に集結するように呼び掛けます。
志願兵中隊2個の編成が完了するのは、最後の2個屯田兵中隊が長崎へ到着するのとほぼ同時になるか、と私は思料します」
「それが精一杯ということか。
よし、それで詳細を詰めてくれ」
輸送担当士官の言葉に、荒井局長は、そう断じざるを得なかった。
0
あなたにおすすめの小説
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる