土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第5章 新選組の再集結

第6話

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 林忠崇海兵大尉は、島田魁と斎藤一に気が付くと、声を掛けた。
「元新選組の方ですね。
 島田魁さんと斎藤一さんとお見受けします」

 島田は内心、慌てた。
 自分の方は先程、林海兵大尉のことに気づかず、斎藤にたしなめられたばかりである、
 それなのに林海兵大尉は、自分の名前を覚えている。

「はい、そのとおりです。島田とお呼びください」
 島田は思わず直立不動の体勢で答えていた。
 斎藤も島田ほどではないが、驚いている。

「はい、斎藤一です。
 それにしても、私どもの名前まで覚えておられるとは」
「最終面接の前に、これまでの経歴等が記載された身上書に一通り目を通したうえで、面接は行いますからね。
 土方歳三少佐のこともあって、元新選組の経歴をお持ちの方は印象に残っていましたから。
 それに先程の沖田さん云々の会話、すぐに思い当りました」
 斎藤の問いかけに、林は屈託のない表情を浮かべながら、答えていた。

「それにしても、先程の素振りからの剣技を見て感服いたしました。
 一度、林大尉には、お手合わせをお願いしたいのですが」
 斎藤が言った。

「今すぐ行いませんか。
 お互い熱くなってしまってけがをしてはいけませんから、防具をつけて竹刀で行った方がいいでしょう。
 この練兵場の中には剣道場もあります。
 生憎、宿舎不足から剣道場まで寝具を敷いて仮宿舎に充てている有様ですが、防具は持ち出せるでしょう。
 お互いに防具をつけたうえで、ここでやるのはどうでしょうか」
 林が言った。

「早速、申し入れを受け入れていただき、ありがたいです。
 それから、私の方が年上とはいえ、一兵卒の身なので呼び捨てでお願いします」
「私もお願いします」
 斎藤と島田は、林に口々に言った。

 3人連れで剣道場に赴き、林と斎藤は防具を持ち出して、元の場所に戻り、2人は竹刀を向けあった。
 島田は固唾をのんで2人の試合を見守った。

「えい」
「応」
 お互いに正眼に構えて睨み合っているうちに、お互いの気が熟したのか、斎藤から林に攻撃を仕掛けていった。
 斎藤の正眼からの面への攻撃を、林は受け流し、あの突き技で斎藤に逆襲してきた。
 斎藤は、新選組内では、沖田総司や永倉新八と並び称され、三羽烏と謳われた腕前である。
 林の攻撃は斎藤にあっさり受け流され、斎藤の逆撃が決まるか、と島田には一瞬見えたが、林もそれを鮮やかに受け止めてみせる。
 数合お互いに打ち合ううちに、2人は汗を流しだした。
 それを見ていた島田には、2人共この試合に熱くなりすぎているのでは、と思えてきだした。

「それまで、それまで」
 そこまで考えた島田は、思わず声を出してしまっていた。
 その声で、林と斎藤は手合わせを止めた。

「いや、いい手合せでした。
 どうか今後、よろしくお願いします」
 林は我に返ったのか、竹刀を下した上で、落ち着いた声で斎藤に言った。
「こちらこそ、どうか、よろしくお願いいたします」
 斎藤も竹刀を下して、林に言った。

 その後、林は執務に赴き、斎藤と島田は宿舎に戻ることにした。

 島田は宿舎に戻りがけに斎藤に尋ねた。
「林大尉の腕前はどうですか」
「あれは、わしの腕では手が抜けん。
 下手に手を抜くと、わしが負けるな」
 斎藤は、半分独り言を言った。

「それほどですか」
 島田は一驚せざるを得なかった。

「お前も、仮にも剣道場の主を名乗るのなら、それくらいすぐに見抜け。
 お互い全力を尽くした状態の真剣勝負なら、最終的には、わしが林大尉に勝てる。
 しかし、それは紙一重だ。
 ちょっとわしの体調が悪かったりとか、何かあれば、わしの方が負けてもおかしくない。
 それにしても、いい上司に巡り合えた、今後が楽しみだ。
 土方さんに、林大尉の剣の腕のことは言わんといかんな」
 斎藤は微笑んで言った。
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