土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第6章 激闘、田原坂

第13話

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 横平山から田原坂に急行し、自らの眼前に広がる光景に、桐野利秋は歯噛みをするしかなかった。
 桐野の眼前を、田原坂正面を突破した政府軍が進撃している。
 桐野の脳裏には、ありとあらゆる罵詈雑言が思い浮かぶ。
 そして、その罵詈雑言が、政府軍と自分に振りかかってくる。

 政府軍に対しては、まだまだ西郷軍が田原坂で政府軍を食い止めることが可能だ、と自らは考えていたのだが、実は突破するだけの力を有していた、とはという思いからくるものだった。
 一方、自分に対しては、何故、横平山奪還に自ら率いる精鋭の4番大隊を投入してしまったのか、せめてもう少し早く見切りをつけて、守勢に徹するなり、田原坂正面に4番大隊を向かわせるべきなり、何故に自分はしなかったのだという悔恨の想いからくるものだった、

 そして、桐野の眼には、政府軍の進撃を食い止めよう、と田原坂後方に一時下がっていた6番大隊等も、最前線に赴いて奮闘している状況が入ってはいた。
 しかし、一度、政府軍に傾いてしまった戦場の勢いを、完全に食い止められるものではない。
 一旦、政府軍の攻勢を何とかして足止めした上で、戦線の再整理を図るしかない有様だった。

 幸いにも横平山から追撃が行われる気配はない。
 裏返せば、4番大隊は後方を全く気にせずに、田原坂正面を突破した政府軍の阻止に、桐野らが専念できる状況だということだった。
「政府軍に対して側面攻撃を行う。
 ただし、無理はするな。
 政府軍の足止めが出来れば充分だ」
 現状から、そう桐野は決断して、4番大隊を政府軍への側面攻撃に突入させた。

 桐野直卒の4番大隊の側面攻撃は、確かに政府軍の勢いを削いだ。
 だが、一度勢いづいた政府軍の攻勢を食い止めるには、必ずしも充分なものとはいえず、政府軍の更なる対応を生み出した。

「伝習隊も、田原坂突破作戦に、今から参加しろ、との命令か」
 その対応から生じた命令を受けた古屋佐久左衛門は、憮然とした表情を浮かべた。
 今更、田原坂突破作戦に参加しろ、というのはどういう考えなのだろうか。

 この田原坂突破作戦は、陸軍のみで行うはずではなかったのか。
 陸軍は功績を独占したがるくせに、苦戦すると海兵隊にすぐ応援を求めるとは、どういう神経なのだろうか。
 古屋は、理解に苦しんだ。

 しかし、この時の古屋の思いが伝わったら、山県有朋参軍以下の陸軍の幹部は酷い誤解だ、と古屋に対して、反論に努めただろう。
 実際には、海兵隊が田原坂緒戦や横平山攻防戦で酷い損害を、既に被っていたことから、海兵隊は休養させ、今回の田原坂突破作戦は、陸軍のみで行おう、と山県以下の陸軍の幹部は考えて計画を立案し、実施したのだが。
 西郷軍の猛反撃を受けたことから、止む無く海兵隊にも、陸軍は参戦を求めたというのが真相だったのだ。
 その一方で、その頃、桐野の面前では。

「捨て奸を行いたいと思います。どうか、私達の最期の我が儘をお許しください」
 桐野の部下の4番大隊の小隊長の1人が、敢えて朗らかな顔をして、桐野の前に赴いて発言していた。
 その小隊長の部下の何人かも、その小隊長の後ろに付き従っていた。
 更に言えば、その部下全員が、小隊長と共に殉じる覚悟を固めているのが明らかな顔色をしていた。

「今更、そんなことをする必要はない。最終決断を下したのは俺なのだから」
 彼らの言葉に対し、桐野は渋った。
 しかし、その小隊長らは、透徹したような顔色をして、重ねて桐野に言った。

「横平山の奪還を諦めるという桐野大隊長の決断にあの時、従うべきでした。
 しかし、私達が猛反対したために、今の苦境を招いてしまったのです。
 その責任を、私達に執らせてください。
 私達の最期の我が儘を、お許しください」
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