土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第7章 背面軍の奮闘と熊本城完全解囲

第10話

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 少し話が変わる。

 林忠崇大尉は植木にたどり着いた後も、やはり多忙だった。
 部下の中隊長3名は、どうのこうの言っても小隊長の少尉だったのが、西南戦争勃発に伴い大尉に昇任して、中隊長に任命された者ばかりだった。
 また、小隊長も、下士官の分隊長の曹長を、戦時昇任させて少尉に任命したものばかりで、中には西南戦争前は伍長だったのに、戦時昇任と上官の戦死が相まって、少尉として小隊長を務める者までいる始末だった。

 こうなると、あいつは元は伍長だというのに、分隊長から小隊長にまで特進するとはなんだ、というやっかみまで部隊内に生まれる。
 林大尉は積極的に部隊内に入り、苦情を受け付け、相談に乗ってやりという状況で、山県有朋と川村純義両参軍からの海兵隊は後方警備と予備として使う、という温情に心から感謝する有様だった。
 実際、植木にいる海兵隊を最前線に投入しても、田原坂攻防戦の頃の奮闘を期待するのはとても無理だ、と林大尉は感じていた。
 この間に部隊内の軋轢を緩和し、前線で使えるようにしなければ、と林大尉は黙々と任務に精励した。
 その一方で。

 郵便報知新聞の従軍記者、犬養毅は、あの新選組の副長、土方歳三少佐に自分が取材できることに喜んで、取材に赴いたものの、すぐに土方少佐に取材を打ち切られたことに困惑していた。
 一体、何が悪かったのだろうか、と考え込んだが、自分では思いつかない。
 取りあえず、周囲の者に取材して、自分は話を聞いていくことにした。

 いろいろ周囲の者から話を聞くうちに、おぼろげながら自分でもわかってきたことがあった。
 海兵隊の幹部の多くが、旧幕府系の人材で占められていること、それもあって西郷軍から、海兵隊はいろいろ恨まれているらしいこと、新選組は京の治安維持で名を轟かせたが、それ故に敵味方を含めた薩長からいろいろ恨みも含めた複雑な感情を抱かれていること、土方少佐と共にいた林大尉は、自分はすぐに思い当らなかったが、元大名で戊辰戦争で滅藩処分を唯一受けた請西藩の元藩主であること等々が、自分にも段々と分かってきた。

「自分が、戊辰の復讐云々、と気軽に土方少佐に聞いてはいけなかったのだ。
 まずは、虚心坦懐に、相手のこの戦争に対する思いを、自分は聞くべきだったのだ」
 と犬養は反省した末に考えた。

 かといって、土方少佐にいきなり再取材を申し込むのは、斬られることはないだろうがやはり怖い。
 この際は林大尉から話を聞くべきだろうと犬養は考え、林大尉の様子をうかがったが、多忙を極めているらしく、中々取材できそうにない。
 その間にも植木での戦闘は続いており、その取材もせねばならない。
 何だかんだで、林大尉に実際に犬養が取材できたのは、4月9日になってからだった。

「再度、取材を受けていただき恐縮です」
 まずは、林大尉に対して、犬養は低姿勢に努めた。
「いろいろ思うところが、この戦争ではおありと思います。
 率直なところを、私に聞かせていただきたい」

「私の思うところは、速やかに戦争を終わらせること、そして、お互いに恨みをできる限り水に流し、血を流すのは止めようということです」
 犬養の問いに、林大尉は答えた。
「戊辰の恨みが、私に無いとは言いません。
 ですが、日本人同士争って、外国に乗ぜられる訳にはいきません。
 速やかに日本人同士の恨みは、水に流すべきです」

「ありがとうございます」
 犬養は考えた。
 この人は、本当にいい人のようだ、今後もこの人との交友を大事にしたいものだ。
 一方、林大尉も考えた。
 この人とは、立場は違うが、いい関係を築けるのではないか。

 実際、西南戦争後も、この2人の交流は折に触れて続くのだが、それはあらためて語るべき話になる。
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