乙女ゲームの攻略キャラに転生したけど、他の攻略キャラ達の好感度が上がる一方で……!?

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第一章

7話①マフラー巻き巻き

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「シーシェンと何かあった?」
 せんやに2・3年の代表を紹介すると言われたが、その二人が遅れてくるらしく時間つぶしに指導室へ来るようにスマホに連絡があった。なんかクラスのグループが作られてたんだよいつの間にか。アカウントはサイフェンとアインにだけ教えてたんだけどな。
「何も」
「じゃあその首はどうしたのかな?」
「首?」
「それ見せながらここまで歩いてきたのか。あの教師すぐ訴えてやる」
 せんやはポケットから手鏡を取り出し見せてくる。
「ひえっ」
 あいつの執着怖すぎんだろ。
「バレてたんなら仕方がねえ。いろいろやられた」
「君って結構警戒心ないよね」
「なんか隠せるもの持ってない?」
「カットバンだと逆に目立つし……マフラーでも巻く?」
「なんで持ってんの?」
 2月なのか4月なのか分からねえ季節に持ち歩いてんのか? まあ2月はまだ寒いからな。
「そんなの誰かと一緒に巻くかもしれないからに決まってるじゃないか」
「長えと思った」
「ちなみに手編みだから」
「いつ用意したんだよ!!」
 大変だろこれ。
「マフラーあげるね。俺と一緒に巻かれてもいいからね」
「ああ。まあそういうのはいらねえけど」
「どうして俺にはそんなに冷たいの! アインと同じくらい可愛がってよ!」
「急に発狂するな」
 こいつに優しくしたら来世ポイント上がったりするかな。
「あ、そういやお前来世ポイントってどうしてる?」
「え、気にしてないけど」
「え」
「だってアルマタクトの世界に来たんだよ? もう今回の転生で満足したし」
「参考にならねえ」
 アインにも善行について聞いてみたけど結局教えてもらってないもんなぁ。
 そう言えばアインと言えば……
「いつも思ってたんだけどこの世界男同士の距離が近くね?」
「そりゃ腐向けに作り込まれてもいるから」
「へ?」
「腐向けってわけじゃないんだけど俺のしてた他の乙女ゲーに比べたらそう言う要素も少しは入ってるよ」
「ふむけ?」
「かわ……こほん、男同士が恋愛する系が好きな人向けってこと」
「なるほど……アインとザイドが初チューなのはそういう理由があったのか」
「え!? そうなの? どこ情報?」
「アインの兄ちゃんからの情報」
「ああ、アラカも2部で登場したキャラクターだよ」
「そうなのか」
「君の初チューは誰なのかな?」
「…………オロクだけど」
「…………」
 無言の笑顔が怖い。
「幼少期にシーシェンとしてたとかないの?」
「そんなわけあるか」
「アインとザイドもあるんだし君もあるのかなって」
「まあ……あったようななかったような……」
「え」
「シーシェンだったかウォーゼンだったか……」
「え、キスしたの!?」
「いや、キスはしてない……幼少期は研究所にいたし、ぬいぐるみもらったことがあるくらいだな」
「ぬいぐるみ……? そう言えばヴォンヴァートってクマのぬいぐるみ大切にしてたかも」
「多分シーシェンに貰ったから……シーシェンと腐向けってのがあったのかぁ?」
「貰った物を大切に持ってるわけ? やっぱり好きなの?」
「…………好きじゃねえ」
「なんで間があくの? 他の人ならすぐ違うって言うでしょ?」
「お前だから言うけど、なんと言うか……昔の俺って今の俺と違う気がして、アイツに対しての感情がよく分かんねえんだよな」
「あ、それ分かる。昔の自分ってなんか他人事なんだけど自分のことでもあって……なんか複雑な感じがするんだよな」
「そうなんだよ。だからたぶん……昔はシーシェンのこと好きだったと思うんだけど今はどうかと聞かれると困ると言うか」
「初恋が実は男の子だった腐向けパターンね」
「あるのかそんなの」
「俺がしてたゲームにはたまにあったよ」
「まあぬいぐるみくれた相手が好きだったって話だからウォーゼンの可能性もあるんだけど」
「シーシェンとの思い出の方が多いからそうだと思ってるってこと?」
「よく覚えてねえんだよな、研究所のことは……。ぬいぐるみ以外にも色々あったんだろうけど、印象深いのがそれってだけで……」
「小さい頃だしね。仕方ないよ」
 せんやが立ち上がって、俺の座る椅子に近づく。巻き余っていたマフラーの端を手に取って自分の首に巻いた。
「何してんだよ」
「夢だったんだ。こうするの」
 目を瞑ってうっとりしているせんやの横顔を眺めていると、せんやが目を開けてこちらを見てばっちりと目が合う。
「…………」
「…………」
「…………っ、――いってええええええええええ!」
 近いうえにせんやのやつが頬を赤く染めて変な雰囲気出してくるので両頬を摘まんでおいた。
 せんやが離れ、マフラーが首を絞めてきたので外すと、せんやがぱちくりと目を見開いて言った。
「あ、もう痕消えてる」
「マジ?」
「吸血鬼だからかなおりが速いんだね。良かったね、消えて」
「でもここに来るまでの間見られてるじゃねえか……」
「俺的にはすぐに訴えてもいいんだけど」
「やめろ。ももまんじゅうが食べれなくなるだろ」
 唾液は嫌だけど血液なら抵抗ないんだよな。吸血鬼だし。
「レンはももまんじゅうが好きなの? 俺が作ってあげるね」
「お前変なの入れるだろ」
「入れないよ?」
「レアりん……ジュレアに変なの入れただろ?」
「変なのじゃないよ。ただ元気になるただの魔法のただの薬だよ」
「テメエ……」
 始終笑顔で怖い、鳥肌が立ったぞ。
「そろそろ時間だから、待ち合わせ場所に向かおうか」
「どこで待ち合わせてるんだ?」
「職員棟の近くの庭」
「へえ」
 職員棟の近くに庭なんかあったっけ。小等部が近いイメージしかねえ。
「あ、そうだ2年生の代表は……会えば分かるからいっか」
 庭に着くと、2・3年の代表はもう来ていたらしい、二人の人影を発見して近づいていく。
 眩しい金髪が見えて、「あ」と声が漏れる。
「兄ちゃん」
「え?」
 せんやがぐりんとこちらに振り向く。
「え、あ。いや。アインの兄ちゃんの略」
「ふーん、へー。そう」
「何だよ」
 何か言いたいことがあるなら言えよ。
 睨んでみたがせんやは答える気はないらしい。
 でもせんやが嫌がってるならアインの兄ちゃんのことはこれから呼び方を変えた方がいいか? うーん、アニイちゃん? アラカだからアラ兄さん?
「昨日ぶりだね、ヴォンヴァートくん。あの後お風呂はゆっくり浸かれた?」
 全体的にゆっくりは浸かれなかったな。
「あ、ああ。まあ、少しだけなら。アラ兄さんはゆっくり浸かれ——」
「アラ〝兄さん〟?」
 いつも声を高めに出してぶりっ子しているせんやが聞いたことのない低い声を出す。
「な、何が悪いんだよ。言いたいことあるなら言えよ……!」
 こそっと耳打ちすると、せんやはにっこりと微笑んで顔を上げる。
「アラさんとかでいいんじゃないかな? アインのお兄さんなのかもしれないけど君にとっては兄要素はいらないよね他人だもん」
「あ、アラさん」
「うん? 先生と喧嘩したの?」
 アラカがせんやの顔色を窺おうとしてせんやの顔を覗き込む。とたんにせんやが頬を赤く染めて目をキラキラさせた。
「アラカくんとヴォンヴァートくんは知り合いだから自己紹介は必要ないよね。アラカくんは2年の代表。あと3年の代表の――」
 にこにこ人に好かれそうな笑顔を浮かべてせんやが話し始めると、それを遮るようにアラカの隣にいた体格のいい男子生徒が一歩前に出た。
「ゼンエ・シャラバンだ。お前ら1年に実力者がいるだの騒がれているが、俺たちは納得していないからな」
 敵意剥き出しだ。まあ3年からしたら1年生に学園の一二の実力者がいるって言われたら嫌だろうな。
「その俺たちって俺のことも含まれてる? 俺は別にそう言うのどうでもいいよ」
「アラカ、貴様のことなど言っていない。へらへらするな、虫唾が走る」
「あはは、ひっど」
 この二人は仲が悪いのか?
 2・3年は1・2年の頃から一緒に実戦を行ってきたって言ってたよな?
「アキヅキ先生、どうしてヴォンヴァートくんと俺たちを会わせたんですか? ヴォンヴァートくんが1年代表?」
「いや……代表はキリクゥ……くんだよ。今のところは」
 今のところは?
 首を傾げると、アラカが答えた。
「学年別個人戦で代表が決まるんだ」
「へえ」
 学年別個人戦か……オロクと会うことにはなるけど、それはさておき、喧嘩し放題ってことだよなぁ! 来世ポイントは大分回復したしここらでやっておくか!
 そんなこんな喜んでいると、せんやは二人に、俺が吸血鬼であり保護対象であることや、のちのちそれを発表するか決めることを簡易的に説明した。
「緊急の時はクラスメイトに知らせてもいいから、ヴォンヴァートくんを守ってほしいんだ」
「分かりました。不本意ですが任務なら仕方がありません」
 ゼンエがせんやの言葉に頷く。
 喧嘩一番強いし、魔法は効かねえし、守られる必要はねえって思ってるんだけど、闇魔術組織は手段を選ばねえ、油断は禁物だ。
「闇魔術組織には優秀な研究員が多くいる、危険な魔術や薬もある、君達に危険が及ばないように俺達も気を付けるけど、君達も気を付けて」
「はい」
 ゼンエが頷き、ふと疑問に思う。
「驚かねえのか?」
「闇魔術組織で生まれた生命体と言うのは珍しいが、闇魔術組織で実験されていた生徒も何人かいる。今更驚きはしない」
「そうか」
「俺は驚いたよ」
 自らに指を指してアラカが嬉しそうに言う。なんで嬉しそうなのかは分からねえ。
「いや、アラさんが一番驚いてないように見えたぜ……」
「そお?」
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