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第一章
7話 ⑥焦り
しおりを挟む「ど、どうしてお前がここに!!」
オロクはすぐそこの地面に倒れている。
「お前オロクに何かしたのか!」
「しくしく泣いて可哀想だったからな。気絶させてやったが? お前こいつのこと気になるのか?」
「当たり前だろ! こいつは友達だ!」
「リリア。友達は選んだ方がいいぜ?」
頰を撫でてくる手をパシンッと振り払う。オロクを抱えようと両手を伸ばすとその両手を掴まれる。ウォーゼンの顔がぐんっと近くに迫る。ゴツンッと額に強い痛みがぶつけられる。
「イッテ!?」
「女々しくお前の背中に抱きついて頬擦りする姿、腹立たしい。虫けら如きが俺のものに触れるなんて」
「誰がお前のものだ!」
「今日こそは絶対にお前を連れ帰る。そして全てを手に入れてやる」
周囲に突然仮面をつけた奴らが現れる。ウォーゼンの手下だ。近づいてくる手下共を殴って撃退する。
「おいオロクさっさと起きろ!」
オロクを庇いながらだと結構やりにくい——ッ!
「こいつが心配か? リリア」
「なッ!?」
振り返るとウォーゼンがいつの間にかオロクを担いでいた。
「俺はお前が思ってる以上に部下想いなんだぜ?」
俺に背を向けるウォーゼンに唖然とする。「待て」オロクはスパイだって話で、ならウォーゼンとも面識があるかもしれなくて、でも闇魔術組織が仲間想いだなんて信じられるはずがねえ。
「待てウォーゼン! そいつに何する気だ!」
「連れ帰るだけだろ。そんなにこいつが大切か?」
「何度も言わせるな! そいつは友達なんだよ!」
「友達同士はキスをするのか?」
「え……?」
ドスの効いた低い声がその場に響いて緊張感が走る。
「さっき話してただろ? こいつとキスしたって」
相手は背中を向けているのに冷や汗が止まらない。流石に闇魔術組織のボスなだけあるな……。
「俺もしたことねえのに……。お前に散々手ェ出してたなんてな。躾は必要だろ?」
「お前となんて誰がするか!」
「黙れ。返して欲しいんなら、俺ともしてみろよ、今ここで」
「…………はあっ!?」
くるりと振り返るウォーゼンは至って真剣そうな顔だ、真剣と言うより怖い。一睨みされただけでも縮み上がりそうなくらい。こいつめちゃくちゃ強いんじゃねえ? ちょっとワクワクしてきた。
「殴り合いならしてやるよッ! それにそいつがお前の部下ってお前が漏らしたんだぞ、スパイってことは黙っててやるから返せ!」
本当は知ってたけど、こいつはそんなこと知らねえだろうからな。
「知られて困ることはねえ。こいつが学校に行けなくなるだけだろ」
うっ……。オロクが学校を楽しんでるかなんて知らねえけど、ゲーム的に改心するんだし人生に影響しそうなのは確かだ。
「お、お前とキスしろって?」
「できるもんなら」
「…………」
絶対に無理!! 俺はこれからはずっとせんやだけとするって決めたんだからな!! 今!
「殴り合いにしろ!」
「お前のいうこと聞く義理はねえな。お前が代わりに来るならいいが?」
俺がアルマタクトに何にも関係のねえ奴だったら代わりになんていくらでもなってやるのに。そうだ、交渉なんていらねえだろ! ウォーゼンから無理やり奪い返せばいいじゃねえか!
バッと距離を詰めてオロクの腕を掴む。それをウォーゼンにすぐさま振り払われる。
「何してんだお前?」
目がイッてる……。こええ……。
「交渉する気がねえならもう行かせてもらう」
「お、おい待てッ!! オロク……っ!!」
ウォーゼンが一瞬にして姿を消して、オロクももちろん一緒に消えてしまう。
う、嘘だろ? 本当に連れ去られた?
オロクはスパイだから大丈夫だよな? でもオロクじゃなかったら俺は簡単に友達を攫われたことに——いや、オロクが無事かどうかなんて分からねえ。
「オロクッ!!」
くそ、どこ行きやがったんだ! 分からねえ、何にも分からねえッ!!
「ヴォンヴァートくん!」
キリクゥの声が聞こえて、キリクゥとせんやが走ってくる姿を捉える。
「シロくん、せんや、オロクが……!」
「……! オロクがどうかしたのか!?」
キリクゥとせんやに、オロクが泣いたことは伏せて連れ去られたことだけを伝える。
キリクゥがオロクへ連絡を取ろうとしている。SSクラスと合流して、せんやが先生たちに生徒が連れ去られた報告をすると、シーシェンたちも駆けつける。
シーシェンの腕を引いてコソコソと話す。
「オロクとウォーゼンって面識あるか? 本当にウォーゼンは部下想いか?」
焦る気持ちを抑えながら、真剣な口調でシーシェンに聞くと、シーシェンは目を見開いて俺の様子をジロジロと見る。
「そんなにあの子が気になるのか?」
「ウォーゼンにも言ったが、友達なんだよ、そりゃ気になるだろ。シロくんやアインやザイド、三人衆が連れ去られても心配する」
「ウォーゼンとあの子のことは心配する必要はないよ。ウォーゼンは部下想いではないが部下には慕われている方だ。あの子とウォーゼンは毎日連絡を取ってるはずだ」
「え? なんでそんなこと知ってんの?」
「闇魔術組織の情報は集められますから。スパイ行為は特に警戒しているよ」
爽やかににこっと笑いかけてくるが普通に胡散臭い。
「シーシェン先生、秋月先生が呼んでいます」
シーシェンと俺の間に入るシロくん。なんかいい匂いがした。
「じゃあまた後で、ヴォンヴァートくん」
シーシェンは手を振ってせんやの方へ向かう。
「ヴォンヴァートくん。オロクから返事はまだ来てない、オロクが連れ去られたから僕たち1年生は2年生のSSクラスと合流して、シェルター入り口前で敵の侵入を防ぐことになった。敵の狙いはアルマタクトと君だけど、学園の中心部にあるシェルター出入り口前なら君よりアルマタクトを優先するはずだ」
「アルマタクトを囮にするってことかよ?」
「そうだよ。アルマタクトには簡単には辿り着けない、だから囮に向いている。オロクのことは3年生と先生が敵から情報を集めて救出する」
「分かった……」
シーシェンが言うにはオロクは大丈夫らしいし、心配だけど無理に3年生と先生たちとオロクを探す必要はねえ。俺が捕まったらもっと大変なことになるからな。
キリクゥとSSクラスの連中と一緒に俺は2年生のSSクラスと、シェルター入り口前で合流した。眩しい金髪が見えて手を上げる。
「アラさん!」
「ヴォンヴァートくん、良かった。無事だったんだな」
アラさんの笑顔を見ると少しだけ落ち着いた、ほっと息をつく。夜はシェルターへ避難して眠って、朝になると地上でシェルター入り口を警備することになった。
シェルターへ入ると三人衆やアイン、ザイドに心配された。素直にせんやのことが心配だったと伝えたら、納得してくれた。せんやが魔法を使ってるところを誰も見たことがないんだから仕方がないんだろう。
「でもリリアくんは攫われるかもしれないんだよね? やっぱりみんなとここにいた方がいいよ」
俺の腕を掴んで引き留めようとするサイフェンの鼻をぐいっとつまむ。
「俺は大丈夫だ。俺は魔法無効化があるし、それなりに強いからな」
「でも油断は禁物だ」
ザイドが厳しい視線を俺に向ける。ザイドとアインは勝手に行動してピンチになった過去があるからな……。ザイドは強かったけどアインが結構足手纏いだったよな。
「でも、やっぱりせんやが心配で……」
「お前が実験体だってことはもうみんなが知ってる。一人で行く必要はねえだろ」
「え……」
「俺たちも行く」
ザイドは親指で自分を指し示す。その指がさし示しているのはザイドの周りにいるアインや三人衆も指してるみてぇだが。
「いやいらん足手纏いだ」
「何だと!?」
怒るなよ、いや怒るに決まってんだけど。
「一人生徒が連れ去られたんだ。ほら、俺たちのクラスにも来たことがあるだろ? オロクって奴……。すぐそこにいたのに、簡単に連れ去られちまった。お前たちの誰かがそんな目にあったらって考えると、怖いんだよ」
「リリア……。ここにいてよ、リリア! 俺たちだって君が心配だ。君に何かあったら、みんな君について行かなかったことに後悔する!」
「アイちゃん……」
「先生が心配なら、シェルター入り口前にいてもらえばいい。すぐに駆けつけられるだろ」
「……ウザイドくん」
そうだな、せんやが駆けつけられるほど近くにいるなら、ここにいた方がいい。オロクだって俺がいなかったら、SSクラスから離れることはなかったんだ。
「分かった。俺もお前たちといる」
グループトークからせんやに連絡して、交渉した結果、1年生と2年生のSSクラスたちとシェルター入り口前にいることになったらしい。それぞれの担任も近くを見張るらしいし、危険な目には合わないと思う。シーシェンがいて欲しかったけど、あいつは医療も担当してるし忙しそうだった。
朝になって、キリクゥとアラカたちSSクラスはシェルターの入り口へ向かった。扉が閉まるのを見届けて、キリクゥにせんやのことを頼んで俺はクラスメイトたちとシェルターの大部屋で過ごした。
大部屋を出てトイレへ向かう。せんややオロク、シロくんのことは心配だけど、今は待つしかねえ。
「——ヴォンヴァートくん!」
トイレを出ると廊下で呼び止められる。
「アラさん? 何かあったのか!?」
焦った様子のアラカに嫌な予感がして駆け寄ると、ガッと肩を掴まれた。
「秋月先生が連れ去られたんだ! 俺たちには待機命令が出たけど、君には伝えようと思って……!」
な、何だと!? 嘘だろ、せんやが……!?
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