乙女ゲームの攻略キャラに転生したけど、他の攻略キャラ達の好感度が上がる一方で……!?

隍沸喰(隍沸かゆ)

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第一章

8話 ⑤予感的中

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 シロくんに顎を掴まれてジーッと見つめられる。赤い瞳を見ていると圧を感じる。姫野恋、よく兎と似てるなんて思えたな……。
「し、シーシェンに……」
 視線から逃れたくて言っちまう。けど、前の記憶の話だし。
「通報したよ」
「え」
「何か問題がある?」
「あ、味のある食事をするためにはあいつの血が必要なんだよ! 通報なんてされたら困る!」
「でももうしたから、ごめんね。今後は僕の血を混ぜようね」
「いや、あいつが元になってるらしいから、あいつの魔力が必要で……」
「試してみないと分からないよ? 僕もシーシェン先生と同じで全魔法が使えるし、魔術師みんな元々はアルマタクトの魔力なんだから、個人差があるとしたら、魔法の属性くらいだ。つまり、シーシェン先生の魔力と僕の魔力はほぼ同じってこと」
「…………」
「僕がいるなら、シーシェン先生は捕まっても問題はないね」
「いや……問題多ありだ。シーシェンだけでも厄介なのにシロくんとなんて……」
「何の話? …………まさか、魔力を混ぜるために血じゃなくて唾液を使ったの?」
 絶対零度再び。
「そ、その、ディープキスとやらで1回だけな? 他は血だぞ。それにシロくんが本当に俺の味を取り戻せるか分からねぇんだし……!」
「じゃあ今試してみようか。血を流すより簡単だからね」
 え。
 シロくんは人差し指と中指で胸ポケットから飴を取り出して確認させるように見せてくる。
「苺味のキスだなんていい思い出になりそうだ」
「…………ほ、本気ではないよな?」
「もちろん本気だよ」
 いつの間にか袋を剥いていたシロくんは飴を口に含むとすぐに俺の両肩を掴んだ。
 ま、待て!? さっきも本気がどうたら言った後に——
「んんっ……!? んんんんん!?」
 シロくんはしっかりキスしてきたけど、俺は絶対に口は開けねぇ! 絶対に!
「んびゃあああああッ!?」
 って思ってたけど、首周りをくすぐられて腰を抜かした上に叫んでしまった——ぬるっと口の中にシロくんの舌が入ってくる。
「ん……ふっ!?」
 う、嘘だろ本当にシロくんとこんな……!
 熱の他にも甘い苺の味を感じ始めた、本当に味感じる……っ、でもシーシェンの代わりにシロくんにこう言うことを求めるわけにはいかねぇ!
「ちょ、シロく——」
 シロくんは不慣れらしく息継ぎに顔が離れた間に顔を背ける。
「味はした?」
「…………っ」
「したんだね」
 顔をほてらせたシロくんは俺の首元に顔を埋めてくる。
「ディープキスって気持ちいいね。ヴォンヴァートくんとならいつでもしたいな」
「——私もヴォンヴァートくんとしたいんですけど」
 ぎゃあっと思わず悲鳴をあげてしまう。シロくんの奥にシーシェンが立っていた。
「お前通報されたんじゃ……」
「教師名簿から通報ボタンを押されただけですからね。誤タップ判定されましたよ。でもすごく嫌な予感がしたので探していました。思っていた相手ではなかったけど」
 シーシェンは口元に手をやってシロくんをじっと見ている。
「あの子はどこですか?」
「オロクならもうヴォンヴァートくんのことを好きじゃないですよ」
 シロくんがにこっとシーシェンに人の良い笑みを向ける。
「あの子が相手じゃないのなら、勝てる気しかしないよ」
 シーシェンも負けず劣らず良い笑みを返して、俺とシロくんをベリッと剥がした。俺を背に隠す。
「シーシェン、俺の人格融合について知ってたか?」
「もちろん。人格融合という言い方はあまり好きじゃないですけど。あの場に生まれたのは君自身だ」
「…………そ、そうなのかな……。で、でも今の俺はアルマタクトの一部の人格らしい。お前、前の俺が好きだったんじゃねぇのか?」
「ふむ……。今の君と前の君を比べるとしたら、邪魔者が消えて喜ばしいとしか言えませんね」
 シロくんといいシーシェンといい、前の俺じゃなくてもいいのかよ。前の俺を思って泣いてたオロクを見習えよ。
「俺はお前たち二人のことはこれっぽっちも好きじゃねぇよ! 俺のことなんかどうでもいいって言ってくれた方が気持ちが大きかったってことだろ!」
「そんなことはありませんよ。ヴォンヴァートくん。君が君であることは分かっていますから」
 両手で俺の顔を包んでまっすぐに見つめてくるシーシェン。少しだけ顔が熱くなった。
「は、離せ」
 シーシェンの手を振り払おうとしたら、足音が近づいてくることに気がついた。こんなところ見られたら面倒くせえことになる。シーシェンの手をすぐに振り払って、足音の方へ視線を向ける。
 黒い瞳と目が合うと、きゅぅっと眉が八の字になってぽろぽろと涙を流し始める。
 ……オ、ロク?
「ヴォンヴァートくん……」
 俺の前にいるシーシェンを押し退けてオロクが俺を抱きしめてくる。オロクの胸に頭を抱き込まれてしまった。
「お、オロク?」
「ヴォンヴァートくん、大好き」
「…………っ!?」
 かああああっと顔が熱くなって、慌ててオロクを突き放す。
「お、おおお、お前な! お前が好きなのは前の俺だって知ってるんだからな!!」
「分かってるよ。でもヴォンヴァートくんを見るとヴォンヴァートくんを思い出すから……」
「オロク……」
「君、さっき姫野と言う男にキスを迫ってませんでした?」
 ピタッと俺の動きの方が固まった。オロクを凝視すると、視線を逸らされる。
「オロクさん!? どう言うことだよ!?」
「だって、なんでか分からないけどあの人もヴォンヴァートくんの面影があるから。秋月先生とイチャイチャしてるとムカつく。俺とヴォンヴァートくんはできなかったことを先生としてる……。ヴォンヴァートくんと先生がイチャイチャしてるみたいでいやなんだ」
「…………」
 俺今すっげえ顔が熱いんだけど、でもすごく頭も痛い。お前そんなに前の俺のことが好きかよ。俺と姫野恋の繋がりなんて知らねえくせに感じ取ったってか、好きすぎだろ。
「お、お前なぁ……! もうお前のヴォンヴァートはいねえんだから、俺とも、ひ、姫野恋とも、きょ、距離を置くとかしろよ!」
「俺もそうしたかったんだけど、ヴォンヴァートくんに口直ししてほしくて」
「口直し? なんの?」
「学校から帰るとウォーゼンさまがずっと離してくれなくて……」
 オロクは本当に困ったと言う顔で悩んでいる。こんなに表情豊かなのは珍しいな。って待て。
「離してくれないからってなんで口直しなんだ?」
 すごく嫌な予感がする……。オロクを問いただそうとすると、シーシェンが口を挟んできた。
「ウォーゼンは昔からこの子のことを自分のものだと思っている」
「…………は?」
 あれ?
「この間、俺とオロクがキスしたことにすげえ怒ってたんだけど。……俺ともキスしようとしたけど……あいつ俺を連れ帰るって息巻いてたし、目的は俺だったんだよな?」
「まさか。アレは昔からこの子にしか目がない。君を挑発しただけだろう、君を連れ帰る目的も君がアルマタクトだからでしょう? 君がこの子とキスしたことを怒ったのはこの子に手を出したことへの嫉妬だろう?」
「…………」

『俺もしたことねえのに……。お前に散々手ェ出してたなんてな。躾は必要だろ?』

 俺も〝オロクと〟したことねえのに……。ってことかよ!? ええええええええッ!?

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