乙女ゲームの攻略キャラに転生したけど、他の攻略キャラ達の好感度が上がる一方で……!?

隍沸喰(隍沸かゆ)

文字の大きさ
49 / 52
第一章

8話 ⑥友達

しおりを挟む

「じょ、冗談だよな!? ウォーゼンがオロクをって!?」
 甘やかしが激しい気がしたけどそう言う!?
「そんなに気にする必要が? 君だって色んな人に好かれているでしょう? あの子は昔から人気がある。幼い頃君も夢中になって大変だった」
「……え?」
「ぬいぐるみを貰ったとかどうとかで。私だって作れるのに。君にあげた後も君は私があげたぬいぐるみには見向きもしなかった」
「それって、もしかしてクマのぬいぐるみ?」
「そうだ、あの子に貰ったと手放さなかった」
 …………。じゃ、じゃあシーシェンの奴は俺とオロクとぬいぐるみのこと覚えてたってことかよ!?
「ウォーゼンがオロクに何をすると思ってるんだよ?」
「君とキスしたことを知ったなら自分もと思ってるんじゃないですか?」
「あいつらがキスするなんて……考えられねぇ」
「あの子が君を好きだと言うことは知られてませんよね?」
「え? な、なんでだ? 俺なんかを好きになるからって言ってはいたが……」
「君への恨みは膨らんでいると思いますよ?」
 な、何ぃッ!?
「前の俺へのだろ?」
「いいえ。君がアルマタクトである時点で恨んでいます」
「あ? なんで俺がアルマタクトだからって恨まれなきゃなんねぇんだよ」
 今更だけどシーシェンに耳を近づける。しかしシーシェンは小声にせずに答える。
「アルマタクトは君が生まれた時から感情を持ち始めました、君とこの子が出会ってから、アルマタクトはこの子の感情を奪ったんです」
「か、感情を? どう言うことだ?」
「ウォーゼンさまはこの間の実験で俺の感情を取り戻してくれたんだよ」
 困り顔をしたままオロクがそう言った。
 感情って、なんだよそれ……。ずっとお前の考えてることが分からなかったのは、俺が奪ったからってことか?
「お、俺とお前が出会ったから?」
「うん。だから、ウォーゼンさまは俺と君を引き離したんだ。君のそばにいれば感情が戻るなんて知らなかったから」
 そばにいれば感情が戻る? もしかして、好感度が0%になったり100%になったりしてたのはそのせいか!?
「で、でもお前俺から離れても——か、感情戻ったり……」
 オロクは俺が好感度見れるなんて知らねぇ、なんて説明すれば……
「遅れて感情が戻ることもあったよ」
 なんとなく言いたいことを察してくれたのか答えてくれる。やっぱり! 好感度は正しかったんだ、バグなんかじゃなかった……。じゃあ、あの好感度は本物……。
「そう言えば、寮で僕が話しかけてもヴォンヴァートくんの写真をずっと眺めてたことがあったね」
 シロくんが思案しながら口を挟む。
「……俺がお前の感情を」
「君じゃなくてアルマタクトだよ」
「でも俺はアルマタクトから生まれたから……」
「シーシェン先生どうしてアルマタクトはオロクの感情を奪ったんですか?」
 3人とも固唾を飲んでシーシェンの答えを待つ。
「一目惚れだそうですよ」
「……………」
「……………」
「……………」
 当人のオロクも、俺もシロくんもジト目でシーシェンを見つめる。シーシェンはこほんと咳払いしてから続けた。
「人気があると言ったでしょう」
「待て、アルマタクトの意思をどう聞くんだ!」
「君も会ったことがあるでしょう?」
 そう問いかけられたオロクの顔が、心配になるくらい真っ青になる。震えながら俺の腕に両手で縋ってくる。なんか可哀想だ。
「大丈夫か? オロク。誰に会ったんだよ?」
「気持ち悪い……吐きそう」
 そんなに!?
「前のヴォンヴァートくんの融合した人格の一つで、アルマタクト実験の最初の成功体。ヴォンヴァートくんが君を嫌がらなかったのはアレの感情が入っていたからですよね。どんな気分なんですか? 自分を拒絶しない理由の正体が最も嫌っている相手からの好意だったと知った時は」
「おい、やめろ。それに、確かに俺達はこいつに恋愛感情はねえけど、前の俺は……その」
 これをはっきりとオロクに知らせるのは、残酷か? でも、こんなに震えてるオロクが嫌いな相手からの好意だと勘違いするなんて許せねぇ。
「好きだったんだ、オロクのこと。人格が分離するまでは気づけなかったけど、前の俺はオロクが好きだった」
「ヴォンヴァートくん……」
「だから、嫌いな奴からの好意だと思わないでやってくれ」
 オロクがぽろぽろと泣きながらこくこくと頷く。
「でも少なくとも彼の感情は前のヴォンヴァートくんに入っていたはずです」
「シーシェン、いい加減にしろ」
 怒気を込めて言えば、シーシェンはわずかに口角を上げた。
「ウォーゼンも、よくあんなものの相手ができる……」
 そうだウォーゼン!!
「ウォーゼンに何されてんだ! オロク!」
 オロクは俺が顔を近づけたからか顔を赤く染める。オロクに表情があるせいで、やりづらい。嬉しいことだけど……。
「ウォーゼンさまは、俺と一緒に寝るのと、キスを……その」
 もじもじしていたオロクがパッと口を押さえたのを見てガンッと頭を殴られたようなショックを受ける。
 恋愛的なショックではねえ。でも前の俺と両想いだったことやこいつの涙を知ってる身としては複雑だ。
 本当にキスされてんのかよ。お前。
「て、抵抗は?」
「ヴォンヴァートくんを忘れさせてくれるって言うから……苦しくて辛いからつい縋っちゃうんだ」
「うっ……そ、そうか、そうなのか」
 オロクが俺と目を合わせるたびに泣きそうな顔をするせいで、強く責められない。そもそも責める資格もねぇんだよ俺には……。
「今のヴォンヴァートくんに縋っちゃうかも」
 オロクがぎゅっと両手で俺の手を握ってくる。こう言ってるけど、結局目的は俺じゃなくて前の俺なんだよな~……。
「却下で。そのままウォーゼンに慰めてもらえ」
「でもしつこくて」
「お前しつこいの好きだっただろ」
「ヴォンヴァートくんだからだよ」
「頑張って忘れろ」
 つんと額をつつくとオロクはしぶしぶ俺の手を離す。
「そろそろ戻りましょう。君の出番が近いので」
 シーシェンが俺の手を取ってさっさと歩いていく。分かりやすくシロくんとオロクから離そうとしてるな。
「シーシェン、アルマタクト実験の成功体ってどんな奴?」
「……あまり話したくはないけど、私が君を連れて逃げた理由ですよ」
 シーシェンが俺の手をぎゅっと強く握りしめる。あのシーシェンが逃げ出したくなる相手ってことか? シーシェンから緊張感が伝わってきてごくりと喉を鳴らす。
「あの子に関わらなければ大丈夫です」
「でも……」
「ウォーゼンを応援しましょう。それとも、あの子がまだ好きなんですか?」
「そう言うわけじゃねぇけど……」
「君が分離していなかったら失恋していたと思うとゾッとします」
「……お前案外俺のこと好きなんだな」
「はい?」
 シーシェンは少し不機嫌だ。俺がオロクを好きだったって知って怒ってるのかもしれねぇ。
 オロクのためにも俺と姫野恋とは距離を置くしかねぇな。

 って思ってたのに、試合に圧勝してから、誰もいないだろう保健室で眠っちまおうと思って来てみれば——……

「ヴォンヴァートくん」

 俺と同じ考えだったらしい姫野恋が眠っているベッドにオロクは乗り上げて姫野恋にキスをしようとしている。

 ——うあああああああっ!! オロクのアホおおおおおッ!!

 オロクの首根っこを掴んでそのまま保健室から出てトイレへ連れ込む。
「お、お前! ヴォンヴァートのことを忘れる努力をしろよ!」
「ヴォンヴァートくん……」
 うるっと涙目になるオロクにうっと声が漏れる。
「せ、せめて俺にしとけ、あいつは絶対チヨ先生しか見えてねえ!」
「そんなことない、優しくしてくれた」
「どう優しくされたんだよ」
「頭撫でてくれた、俺が泣いてたら、隣にいてくれた。ヴォンヴァートくんと一緒にいた時みたいだった」
「あいつをヴォンヴァートの代わりにするんじゃねぇよ!」
 しゅん、とオロクが縮こまる。うっ……泣かないでくれ頼むから。
「あ、あのな、別に他の恋をするなって言ってるわけじゃねぇんだ、ただ、ヴォンヴァートを探しながら誰かを好きになるのはどうかと……」
「…………」
 オロクがきゅっと唇を締める。
「じゃあ、ウォーゼン様にお願いすればいい?」
「…………そ、それは、すごくいやだけど」
「どうして?」
「お、お前とウォーゼンがそんなことしてただけでも驚きなのにその先を想像しろってのか!」
「勝手に変な想像しないでくれない?」
「お前ええ!」
「ヴォンヴァートくんだって誰かと恋人になったとしても想像されるのはいやだろ?」
「いやまあ、それはそうなんだが……」
 あいつと恋人になる気はあるのかお前! これはつっこんでいいのか? やりにきぃ!
「ウォーゼンさま、優しいよ? ヴォンヴァートくんと重ねてないし」
「分かってるけど……」
「もしかして、俺のこと好きなの?」
「へ」
 なんでそうなるんだよ! ちげぇ!
「ち、ちが——」
「ごめんね、俺が好きなのは前のヴォンヴァートくんだから」
「——…………」
 散々俺たちに重ねといてそう言うこと言うのかッ!! こいつほんとムカつく、前の時と変わらねぇ腹立たしさ!
「も、もういい! 勝手にしろ!」
 前の俺が惨めだからって、こいつのことを俺が世話する必要はねぇ!
「ありがとう、ヴォンヴァートくん」
「…………」
 そ、そう言うところだぞ。
 前のお前だったら無表情か、感情のない笑みを向けて来たシーンだな。なのに今のお前は、俺に本当に感謝してるって分かるし、まだ悲しんでるってことも分かる。
 ドキッとするくらいには、かわいいかもしれねぇ。
「またなオロク」
 オロクが嬉しそうに笑うと俺も口角が上がる。
 少しくらいは構ってやってもいいかもしれねぇ。友達としてくらいなら、いいよな?

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う

ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。 次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた オチ決定しました〜☺️ ※印はR18です(際どいやつもつけてます) 毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目 凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日) 訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎ 11/24 大変際どかったためR18に移行しました 12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです

悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました

藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。 (あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。 ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。 しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。 気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は── 異世界転生ラブラブコメディです。 ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~

トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。 しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。 貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。 虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。 そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる? エブリスタにも掲載しています。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...