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第一章
1話 ③モテモテ先生
しおりを挟む「ヴォンヴァート……くん?」
「え、えっと……」
やべえ、何て言えばいいんだ。俺も転生したんだってか? つうかこいつなんで死んでんだ? 敵グループから俺が守ってやったのこいつだよな? 絡まれてたからボコボコにして……そんで俺が死ぬ原因になったやつ……。
つまりこいつのせいで俺は……そう考えたらなんかムカついてきたな。
「一発殴らせろ」
「え!? なんで!?」
「いいから殴らせろ。こっちは死んでんだ一発くらいいーだろ」
「え、えっと……えっと」
せんやは目をうろちょろさせてから、顔を赤くしてぽそりと呟く。
「ヴォンヴァートってこんなキャラだったっけ? って言うかこんなにイケメンだったっけ? 推しじゃなかったからストーリーあんま見てなかったけど……こんなにかっこよかったら推しになってたと思うんだけどな」
「ぺちゃくちゃ何喋ってんだ」
「え、いや、えっと! 殴るのは勘弁して欲しいかな!?」
せんやは困ったような顔を浮かべた後、頬を赤く染めながら言う。
「でもその代わり……」
「ん?」
せんやが俺の肩に手をかけ、踵を上げて背伸びをして、顔が近付いてきて。
頬に柔らかい感触が触れるのとともに、ちゅっと聞いたこともない音が近くでなる。
「????????」
俺は滝のような汗を流してせんやの顔を眺めるだけだ。
「これで許して」
「…………??????」
「君が怒ってる理由は分かんないけど」
いや、こっちも訳が分からん。ただ気色悪い。
ぞわぞわぞわっと遅れて皮膚が粟立つ。
せんやの顔をその後も何も言わずじっと眺めていれば、相手はどんどん顔を赤く染めて、目を瞑る。
「??????」
上を向き、唇を少し尖らせるそれを見て、ぞっとした。
俺は奴の両頬に両手を伸ばし――
「――いってええええええええええええええ!?」
思いっきり摘んで左右に引っ張り、ぐるぐると回しまくる。
「気色悪い気色悪い気色悪い気色悪い」
「な、なななな、なんで!? なんで効かないの!?」
「効く?」
「ら、来世ポイントを使ってみんなに可愛いって思われるようにして、どこかにキスしたらメロメロになるようにしたんだ!」
せんやは混乱しているのか目をぐるぐるさせながら言う。
「なるほど女子にモテるならまだしもテメエが男に可愛い可愛い言われてたのはヒロインの力ではなくて追加設定によるものだったのか」
パッと手を離すと、「へ?」と間抜けな声を出してせんやは呆ける。両頬を押さえながらわざとらしい上目遣いで眺めてくるのを見て、ゲンコツでもくれてやろうかと拳を作れば、サッと距離を取られた。
「き、君も、まさか」
「そうだ、転生してきた」
「だからゲームのヴォンヴァートと違うのか! どんな追加設定したんだよ!」
「頭が良くなる、喧嘩に強くなる、世界一のイケメンになる、吸血鬼になる、このよっつだ!」
「バカみたいな使い方だな」
頭が良くなると言ったのは、試験の答えが分かることを先生だと言うこの男に悟られない為だ。こう言うところには頭が回るんだよなぁ。
「お前だって男にモテてどうすんだよ」
「俺は攻略キャラを全員攻略してみせるって決めてるんだよ!」
「だからなんで?」
「心は乙女だから!」
「ぶふっ」
拳を見せて高らかに言うせんやを見て思わず吹き出してしまう。
「まあ、いいんじゃねえの。楽しそうだし。頑張れよ、チヨちゃん」
「バカにしないのか?」
「何で?」
「だって、男が乙女ゲーにハマってるとか、みんなバカにするし」
ハマってたのか。
「バカにしてねえ訳じゃねえけど。別に悪いことではねえだろ。好きなもんは好きでいーだろ。俺だって喧嘩ばっかしてて周りに嫌そうな顔する奴いたけどさ、喧嘩は好きだしやめられねえよ」
「喧嘩……お前名前は?」
「前世の名前なんて知ってどうすんだよ。あきづきせんや、くん」
「な、なっ……!」
せんやは顔を真っ赤にして後退する。
「お前知り合いだったのか!? つぅかその名前で呼ぶな! 俺は女の子みたいな名前がいいんだよ!」
「いやいや男って感じの名前の方がいーだろ」
「俺は嫌なんだよ!」
「まあまあ、これからみんなにはチヨちゃんって呼ばれるんだからいーだろ。せ・ん・や」
「俺は先生だぞ、先生って呼べ!」
「偶にならいいぞ」
「こらああああ!」
手を振りながら背を向ける。相手も先生と言う立場だしこれから仕事があるのだろう。引き止められることはなかった。
せんやとは仲良くなれる気がするな。ただ乙女ゲーム思考なのはちょっと……前世のイメージと違いすぎてなんかムズムズするけど。
そう思いながら今日から暮らすことになる寮へ向かう。もともと保護された後も学園の敷地内にある寮に暮らしていたが小等部、中等部の時も一年毎に部屋替えが行われていた。ルームメイトのほとんどが普通科に行ってしまったので会う機会はほとんどないだろう。
そんなことを考えながら、寮への道が分からず空中画面を表示してからマップを開く。そんな時だった。
「よお、先生と何話してたんだ?」
教室の手前で声を掛けられた。派手なオレンジ色の髪と灰色の目、左耳の黒いピアスが特徴的なキャラだった。
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