7 / 52
第一章
2話 ②チヨ・アキヅキに好意を持つ2
しおりを挟むサイフェンが額の汗を拭いながら、ふぅと息を吐いて言った。
「荷ほどきは大体済んだかな……。そろそろキッチンに向かおうか」
入学式は昼13時に終わっているので時間はまだある。ただ寮母さんも19時には帰ってしまうのでその間にキッチンを使わなければならない。ちなみに今は16時だ。頑張ったなサイフェン偉い偉い。
「材料の買い出しに行くか……」
めんどくせえけど……。料理すんのもめんどくせえけど……。
確か学園の敷地の中に町があった筈。魔法学園へ通う生徒の家族が住む町だ。生徒の入学が決まると希望した人だけ引っ越しできる。マップを眺めてその町をタップすればそんな説明が表示される。出かける準備でもしようとベッドから起き上がると、サイフェンが「大丈夫だよ」とスマホを取り出した。
「キッチンに材料を運ぶように連絡しておいたから」
「お前寮母さんにそんな酷いことを……」
「ち、違うよ! うちの召使いにお願いしたんだ……!」
うちの召使い?
「え、お金持ち……?」
「そ、そう言うのじゃないけど……」
なぜかもじもじしだす。
「どうして隠してるんだ?」
「だって……お金目当てで近づいてくる人が多いんだってみんなに注意されたから……」
ここで言うみんなが家族なのか召使いなのか分からないが……。
「大変だな」
「ヴォンヴァートくんは初めて僕に贈り物をしてくれたんだよ!」
目をキラキラと輝かせて傍に寄ってくる。
なんか贈ったっけ? と首を傾げれば、「ガトーショコラをくれたじゃないか!」と少し頬を膨らませながら言ってくる。
「あれはせんや……アキヅキ先生が贈ったものだろ? それにお前も貰ってただろ?」
「直接渡してくれたのは君が初めてだよ!」
ああ、こいつ隠れ美形だから隠れファンの女子からいろんなもの貰ってんだろうな。
「贈り物は危険だって言われてたけど、君がくれたものは危険じゃなかったし、おいしかったし……」
「いやだからそれはせん……先生が」
「わ、分かってるけど、たぶん君がああしてくれなかったら今までと同じで捨てちゃってたと思うんだ!」
捨ててたのかぁ……。
「だ、だから、君が同室だって知った時は運命だって思ったし、お友達になりたいって……」
サイフェンはどんどん距離を詰めてきて、両手を握られる。
「お、おい……」
「君となら、君とだったらもっと仲良くなれるって思――」
なんか耳元でピコンピコン言い出して、通知アイコンみたいなのが右端に現れる。でも今触れないんだよな……。
「ヴォンヴァートくん……」
「お、おい、近いぞ」
引き気味に言えば、サイフェンはハッとして「ご、ごめんなさい、僕……!」と離れていく。両手も離してくれたので通知アイコンをタップすれば――……
《おめでとうございます! サイフェン・ブロイズとの親密度が10%になりました!》
《おめでとうございます! サイフェン・ブロイズとの好感度が10%になりました!》
《おめでとうございます! サイフェン・ブロイズとの親密度が20%になりました!》
《おめでとうございます! サイフェン・ブロイズとの好感度が20%になりました!》
《おめでとうございます! サイフェン・ブロイズとの親密度が30%になりました!》
《おめでとうございます! サイフェン・ブロイズとの好感度が30%になりました!》
――何これコワッ!?
親密度と好感度って何が違うんだぁ? でもサイフェンの場合上がり方は一緒ってことか。通知オフにしとこ。
「材料準備してくれたって連絡来てたよ」
「じゃあ行くか。何作るんだ?」
「ガトーショコラ!」
被ってるって……後が怖い。
◇◇◇
「おいひいぃ~」
「そうか?」
サイフェンが蕩けるような声を出して溶けていく。
料理は面倒くさいが、前世では両親の帰りが遅い勢だった為料理はそれなりに出来る。サイフェンの用意したレシピがいいんだろうな。
寮のキッチンでガトーショコラを完成させ、今は袋に詰めている最中である。
すると、匂いに釣られてやってきたのか二人組が食堂に入ってきた。
「いい匂い~! 今日の飯はデザート付きかな? あれ?」
「あ? ヴォンヴァートにサイフェン?」
その二人組がこちらに気が付く。
「えっと……レア、レアりんと、コッコー?」
「誰だよそれ……」
「自己紹介しただろクソが」
レアりん口悪。
誰だっけ……と空中画面を確認する。濃い青髪青目の奴は《ジュレア・ダイズ》、見た目がチャラい灰色の髪のキャラは《コゴ・バリタカ》らしい。
「合ってんじゃん」
「「合ってねえよ!!」」
それよりこいつらフツーに台所入ってきやがった。
「ど、どうして二人が……?」
サイフェンがボウルで顔を隠しながら尋ねる。いや、ボウルの後ろに隠れているのか?
「部屋の窓開けたらいい匂いがしてさ~、食堂かもってジュレアと来たんだよね」
「へえ」
「エプロン似合ってんね、リリアちゃん!」
「あああん?」
「うおっ凄い顔。イケメンが台無しだよ」
コゴのセリフに残り二人が首を傾げる。
「リリアちゃん?」
「リリアってなんだ?」
「二人とも聞いてなかったの? 先生が言ってたじゃん、ヴォンヴァート・リリア・インシュベルンって! だからリリアちゃ――」
「テメエ黙れ!!」
口の中に残り物のガトーショコラを押し込めば、相手はポケッとした後、ぽああああと浄化されるような光を出し(目の錯覚)、「もう一個!」とねだってきた。
「余ったのなら食べていいぞ。ちょうどどう処分するか悩んでたし」
寮母さんにあげようとは思ってたけど、全部押し付けるのはちょっとな。
「これリリアちゃんが作ったの? 天才かようんま!」
「おいクソ野郎、こんなに作ってどうする気だ……?」
「明日みんなに配んだよ」
「ガトーショコラなら今日チヨが配っただろ!!」
あれ、こいつもしかして……。
まだ表示されている画面にちらりと目をやると、そこには――……
ジュレア・ダイズ
誕生日2/16 年齢16歳 趣味鍛錬 魔法雷魔法 寮コゴと同室
チヨ・アキヅキに好意を持つ。
親密度 0%
好感度 0%
やはりそうであったか。
20
あなたにおすすめの小説
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う
ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。
次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた
オチ決定しました〜☺️
※印はR18です(際どいやつもつけてます)
毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します
メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目
凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日)
訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎
11/24 大変際どかったためR18に移行しました
12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです
悪役令嬢のモブ兄に転生したら、攻略対象から溺愛されてしまいました
藍沢真啓/庚あき
BL
俺──ルシアン・イベリスは学園の卒業パーティで起こった、妹ルシアが我が国の王子で婚約者で友人でもあるジュリアンから断罪される光景を見て思い出す。
(あ、これ乙女ゲームの悪役令嬢断罪シーンだ)と。
ちなみに、普通だったら攻略対象の立ち位置にあるべき筈なのに、予算の関係かモブ兄の俺。
しかし、うちの可愛い妹は、ゲームとは別の展開をして、会場から立ち去るのを追いかけようとしたら、攻略対象の一人で親友のリュカ・チューベローズに引き止められ、そして……。
気づけば、親友にでろっでろに溺愛されてしまったモブ兄の運命は──
異世界転生ラブラブコメディです。
ご都合主義な展開が多いので、苦手な方はお気を付けください。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる