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第一章
5話 ⑧牛乳はNG ※R18
しおりを挟む適当にお湯に漬かっていれば、三人衆の声が聞こえてきて慌てて立ち上がり奥へ奥へと早歩きして、端の方へと逃げのびた。
息をついて近くのお湯に入れば、隣からくすくすと笑い声が聞こえてくる。
「オロク!」
「また会ったね」
「……っと、そうだ、さっきはありがとな」
「どういたしまして」
「って……あれ?」
「どうかした?」
オロクは不思議そうにこちらを見てくる。
「お前貸し切りだったんじゃ」
「キリクゥに会ったの? 一人で入るのは寂しかったからこっちに来たんだ」
「さみしい……」
オロクがそんなことを言うとは。
「でもせっかくの貸し切りなのにいいのかよ? もったいなくねえか?」
「一緒に入ってくれるなら行くけど」
「…………貸し切りか」
正直大勢人がいるし落ち着かないが我慢するほどじゃない。だが3人衆が行動を開始してしまったため大変落ち着かないし我慢しても限界。
「よし行こう」
「うん。さっそく向かおうか。こっちだ」
「お、おう」
オロクが立ち会がり進んでいってしまうので、俺も慌てて立ち上がってその後を追った。
隣に並ぼうとするがどんどん先を行かれてしまう。…………めっちゃ早歩きになってるんだけど。
「……お前俺のこと避けてね?」
「一緒に貸し切りのお風呂に入るのに?」
「で、でも……いつもの距離じゃないし」
「これがいつもの距離だけど?」
た、確かに。シロくんにはあの距離じゃなかったかも。
「でも……、……ス、してこなかったし」
「うん?」
「さっき、キ……ス、してこなかったし……」
「…………して欲しかったの?」
「はあ!? なんでそうなる!?」
露天風浴場の扉の前で大声を出せば、背中に三人衆の声が近づいてくる。慌ててオロクの腕を掴み扉の向こうへと姿を隠せば、足音と話し声は遠ざかっていった。
「…………」
「…………」
なんかオロクを壁に押し付ける形になっちまった……。
「…………」
黙って離れると、オロクは平然と露天風呂風のお風呂へと向かっていく。オロクは静かにお湯に漬かった。しばらくぼうっとその光景を眺めていると、オロクはこちらを見て言う。
「どうかした? 入らないの?」
「入る……」
なんでこんなに緊張しないといけないんだ。こいつ俺のこと好きなんだよな、どうして平然としてられるんだ? 待て待て落ち着け、もうコイツの好感度0だったじゃねえか。
お湯に漬かると、オロクは隣に移動してくる。肩が触れ合ってビクつき、平静を装っていれば、お湯の中の手にオロクの手が重ねられた。
「な、なんだよ」
「さっきの話の続き。俺にキスして欲しかった?」
「ち、違う! いつもはしてくるから、どうして……かなぁと思っただけで」
「ふうん」
「…………」
隣からの視線が痛い。思わず反対側に顔を背ける。
「お風呂あがったらビン牛乳買いに行こうよ」
「どうしてお前と一緒に行動することになってるんだ?」
「俺がいればあの3人から守ってあげられるよ?」
「…………」
それは確かにありがたい。
「でも俺牛乳は飲めねえし――」
――しまった、吸血鬼だってバレる!!
バッと振り返るが、相手は気にしてなさそうだ。
「そうなの? じゃあフルーツジュースは?」
「それも飲めない……」
「お茶でも水でもいいけど」
「…………飲めない」
「…………普段どうしてるの?」
――そう言えば、Aクラスには近々発表されるんだったよな。こいつはSSクラス……でも闇魔術組織のスパイだしもう知ってるかもしれないし、隠さなくてもいいのか。
「様子を見てから発表されるんだけど、俺吸血鬼なんだ」
「吸、血鬼……」
「血を吸う化け物みたいな?」
「血を吸うの?」
「血液が餌でもご飯でもあるから。まあ食えないわけじゃないんだけど味が分かんなくて……シーシェンの唾液があれば味は分かるけど」
「今なんて言った?」
「え」
「シーシェン先生の唾液があれば味が分かる? 口に入れたことがあるの? どうやって?」
「……指突っ込まれたり舌突っ込まれたり…………でもあれは無理やりで……」
「心配しないで。俺が訴えてあげる」
「待ってくれ!! そ、それは俺が困ると言うか」
ももまんじゅうの味を味わえていないのにあいつがいなくなると困る。唾液は嫌だがももまんじゅうと天秤にかけると我慢と言う手もあるような気がするし。
「……どうして困るの?」
「研究員だし、俺の体のことをよく分かっていると言うか」
「体のことをよく分かってる?」
オロクって笑わないイメージだったけど、笑顔こわ。今まで圧を与えてきた誰よりも怖いんですけど。
「好きなの?」
しかもどんどん距離が縮められてきている。
「そう言うわけじゃ……」
「どうして強く否定しないの?」
「強く否定しなければ好きってこともねえだろ!」
「じゃあ俺のことはバッサリ振ったのに言い淀んでるのは?」
「だ、だから。そんなの関係ね――」
「関係あるんでしょ? 先生のこと、好き?」
「………………好きじゃねえし」
「……………………」
「…………」
「…………」
オロクの何を考えているか分からなかった瞳が嫉妬に燃えている。その瞳を見た時、高揚感のようなものが胸を支配した。
それに戸惑っていて、オロクの顔が近づいてくるのを避けられないでいると、後頭部に手を回されがっちりと押さえ込まれる。
「お、オロ――」
何する気だ、そう言おうとしたが、それはオロクに飲み込まれた。
今まで舌なんか入れてこなかったくせに、無理やり口をこじ開けようとしてくる。
「ん……んんっやめ」
こいつ……またキスしてきやがった! なんでこう何度も男とキスしねえといけねえんだよ、ふざけんな!
胸を押し返そうとして、気が付く。今までのように突き飛ばしたら来世ポイントに影響するかもしれない。
それにガン見されてて……黒い目と目が合って動けなくなる。
オロクの一方の手はお湯の中にあるが、それがどこに移動したかはすぐに分かった。俺のお腹の上を這い、下腹へ移動し、さらに下へ……。
「なっ……ん、ふぅっ!」
声を上げよう口を開いたら、口の中に舌が入り込んでくる。口内をいっぱいにする生き物のように蠢くそれを何度も噛んだが、甘い血の味がするだけで一向に出ていく気配はない。シーシェンのようにはうまくない、不器用なそれに変な声が出る。
下の方も触り方が激しさを増し、目を瞑ってやっと動いた体で抵抗する。
「ん、オロ――てめ……ん、ん」
口の中からいやらしい音が鳴って、オロクの赤い舌が出ていく。力をなくした自分の舌と繋がる銀糸を眺めていると、オロクの唇がそれを飲み込んでから言った。
「……はぁ、ヴォンヴァート、くん。約束して」
「なん……だよ」
睨み上げるも、黒い瞳に見つめられて、緊張する。
「俺以外の人とキスしないで……」
「…………っ」
悲しげに歪む眉を見て、優越感が脳内を支配する。
「あと、それから……」
まだあるのかよ。
オロクの手が、熱くなった頬に冷たい感触を与えてくる。
「俺以外の人を好きにならないで……」
「……な、なに言って」
オロクの瞳が近づく。
「愛してる」
「……っ、…………っ!!」
愛おしそうに細められる黒い瞳を見て、爆発するような大きな心音が鳴り響く。思わず、ぎゅっと目を瞑ると、鼻先にオロクの鼻が触れてくる。
体をこわばらせながら仰け反ると、お湯がぱしゃんと跳ねる。
避けたと言うのにオロクはそれを追いかけてきて、また鼻を擦り寄らせる。そのまま音を立てて何度も唇に吸い付かれ、口の中に舌を入れられる。
長い間お湯に漬かっていたからか頭がぼうっとしてきた。
「ふ……ん、んぅ」
自らの口の中へ引きこもうと舌を絡め取ろうとするが何度も失敗するオロクのへたくそすぎるキスにじれったさを感じてしまう。
引き込まれるふりをして自ら舌を伸ばすと、安心したような優しいキスになる。
って何をしてるんだ俺は……。
くらくらする頭をしかりつけながらオロクの胸を押す。抵抗すると抵抗するだけオロクは押さえ込もうとしてくる。
最初に抵抗しておくべきだった。熱くて体に力が入らない。
そこで気が付いた。
お腹のあたりが熱くなっていることに。
「……っ、あ」
オロクはそれを手で触りながら唇を離し尋ねてくる。
「嬉しいな。こんなになってくれるなんて。……興奮した?」
「…………っ」
男にキスされて触られてこんなになるなんて、情けなくて情けなくて、でもそれ以上に情けなく泣くわけにはいかないと相手を睨み付ける。
「大丈夫。責任はとるから」
相手はにこりと微笑んで、そんなことを言う。
「ま、待て……!」
言葉の意味を理解した時にはもう遅い。オロクの手は激しさを増して、どこかにしがみつきたくなるような快楽を与えられる。思わず目の前のオロクの体にしがみつけば、相手はそれをあやすように首筋に優しいキスを落としてくる。
「…………っ、……っ」
俺も声を出すまいと、相手の首に口を押し付ける。
「は……あ、オロク……もう、やめ」
「やめていいの?」
「……だ、だめに決まってんだろっ」
「良かった」
くそ。くそ。俺が翻弄されるだなんて。しかも男に。オロクに。
くそ。オロクの野郎。オロクのやろおおお!
「ひ……あっ、あぐぅ…………………………っ」
「――いっ……」
絶頂に達する前に声を殺し、オロクの首に歯を立て背中に爪を立てる。
「はぁ……はぁ……」
「…………イった?」
「聞くな!!」
息を整えようと肩を揺らしていると、オロクの顔が近づいてきて唇に甘い感触が触れて離れていく。
「…………」
「…………」
「…………」
「顔真っ赤だね。もしかして逆上せてる? そろそろ上がろうか」
……好感度、0%なんだよな? どうしてこんな目に合ってるんだ俺。最初で抵抗しときゃあ良かった……。
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