勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音

文字の大きさ
87 / 236

87.

しおりを挟む
「お父様の元に送ってあげますね、バイバイ、リュート」
そう呟いた彼女の目は虚ろで、まるで人形のようだった。
このままでは本当に殺されてしまう、
と思ったその時、どこからか声が聞こえた。
笛の音が聞こえ出す。
「な、何、この音」
動揺して武器が手から落ちたので俺は慌てて起き上がるとそのままナイフを蹴った。
「あら、なかなか、いい男じゃない? 魔王様♡」
戸惑い声のした方を見ると笛を手に持った若いダークエルフが立っていた。
「クロード様の守り手だったミーシャと申しますわ、魔王様、このような所で申し訳ございません」
その言葉に何とか頷けば
「ご命令を、そのものを殺せと」
そう言われて俯いた。
俺は甘いかもしれない。
だがこれ以上殺す必要はないだろうと思ってしまった。
情がない訳では無い。
追放される前はこいつらといたのだから……。
「俺の気持ちが変わらないうちに行け」
と言ったところで目が覚めた。
夢を見ていたのだと気づいた途端、安堵のため息が出た。
それにしても嫌な夢を見たものだ。
俺はため息をつく。
相手も勇者パーティーなのだから相対する可能性もあるだろうと俺は気を引き締めるのでした。
そんな事を考えている間に、馬車はゆっくりと進んでいきますが、まだ街までは距離があるみたいです。
俺は、周りを見渡しながら、風景を楽しんでいるフリをして、
今後の予定を考えていましたが、ふと思い立ち、
フィリアの方を見てみると目が合いました。
思わず目を逸らすのですが、また、視線を感じます。
再びフィリアの方を見るとニッコリ笑ってきました。
正直言って気まずい雰囲気の中、沈黙に耐えかねたのか、
フィリアが話しかけてきます。
「お腹すきましたわ、貴方」
(はぁ~、まったくこの女ときたら!)
心の中で文句を言いながら返事をすることにします。
どうせ拒否権などないのだから仕方ないとはいえど、
もう少しどうにかならないものかと思いつつ答えることに
したのですけれどね。
俺はため息を着くと
「なぁ、ソフィア、俺魔王だぞ?」
と尋ねると 彼女、いいえ、俺の妻、否、妻はニヤリと笑うと答えた。
それは、妖艶で美しい微笑みで、とても淫靡な魅力を放っていた、 それだけで俺はドキッとしてしまいます。
心臓が高鳴るような感覚を覚える中、 彼女は、意を決して言うことにした。
「はい、私はあなた様に永遠の忠誠を誓い、あなたの忠実な下僕であり続けましょう」
ソフィアはそう言って深々と頭を下げてくるので、 俺はその頭をそっと撫でてやった。
すると嬉しそうに目を細めるのを見て胸がキュンとなるのを感じた。
(可愛い過ぎるだろ!!)
そんなことを考えていたせいか顔が熱くなり、
赤くなっているのがわかる。
それを誤魔化すように咳ばらいをすると、
話題を変えることにした。
そして俺はあることを思いついた。
これならいけるかもと思い提案することにする。
「フィリア、お前が俺に勝てたら、考えてやってもいいぞ」
そう言いつつも内心ほくそ笑んでいたのだった。
だが、それも束の間の事だった。
次の瞬間、腹部に強い衝撃を感じたかと思うと、
俺は後方へと吹き飛ばされていた。
何が起こったのか理解できないまま仰向けに倒れ伏すと、
そのまま意識が遠のいていくのがわかった。
薄れゆく意識の中で最後に見たものは、こちらを見下ろす、
愛しい人の姿だった。
こうして俺は負けたのだ。
完膚なきまでに叩きのめされて、完敗したのだ。
もう何もやる気が起きず、ただぼんやりと天井を眺めていると、 視界に入ってくるものがあった。
それは見覚えのある顔だった。
その人物とは、先ほど戦った。
フィリアと名乗る少女だったのだ。
いや、正確には、フィリアの姿形をした。
別の存在だったのだが、そんなことはどうでもいい。
問題はそこではないのだ。
「父さん悪趣味ですよ、さっさと妻のからだから出てくれませんか? それとも何か理由でもあるんですか?」
そういうや否や身体が光りだしたかと思うと、
見慣れた彼の身体に戻っていた。
「乗っ取りではないぞ、憑依と言いたまえ我が子よ」
そして、フィリアを一瞥するとため息をついて言った。
それから、立ち上がり服を整えると、部屋を出ていくことにした。その際、フィリアの方に視線を向けると、ビクッと肩を震わせて後ずさったのが見え、罪悪感を覚えたものの無視して部屋を出ることにした。
(まあ、仕方ないよな)
そう思いながら自室へと向かう途中で、使用人の一人に出会ったので挨拶をすることにした。
彼は執事見習いだそうで、名前はジョンというらしい。
年齢は20歳前後といったところだろうか、
優しそうな顔つきをしている。
そんなことを考えているうちに目的地についたようなので中に入ることにした。
部屋に入ると、まず目に飛び込んできたのは、大量の書物だった。
「ここは書斎です、好きに使って構いませんよ」
そう言って微笑むと本棚を指差した。
どうやらそこに並んでる本を自由に読んでいいということらしい、なのでさっそく一冊手に取ってみることにする。
表紙には『魔法の詠唱』と書かれているが、
一体どういう意味なのだろうか?
ページを開いてみると、そこには見たこともない文字や
記号が並んでいた。
どうやらこの本には魔法の使い方について書かれているようだが、俺にはさっぱり理解できなかった。
それでも諦めずに読み進めていると、気になる記述を
見つけたので、それについて聞いてみることにした。
【聖魔法】……対象の状態異常を取り除くことができる。
僧侶が使えることが多いが、適正さえあれば誰でも習得できる。
なるほど、これは使えるかもしれないと思った俺は、
早速試してみることにした。
やり方としては、頭の中でイメージし、魔力を込めるだけのようだ。
簡単そうだなと思ったが実際にやってみると意外と難しいことがわかった、魔力の流れが上手く掴めないのだ。
何度か挑戦していると段々とコツがわかってきた気がする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...