勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音

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そうして、気づいたら俺は道路の上に投げ捨てられた。
どうも、馬車の二台か何かから捨てられたらしい。
「ぐっ……痛いな、クソ……」
身体中擦り傷だらけになっているらしく全身が痛む。
いや、それ以前に、なんでこんな事になったんだ?
俺はあの女の誘いに乗っただけなのに、いやらしい事が出来ると思ってキスをしたところまでは覚えていたのだが、
身ぐるみも金も全部奪われてあられもない姿で、道端に投げ出されたのだ。
「あのアマ、今度会ったらぶっ殺してやる」
とりあえずそう叫んで魔王城が近いので歩き出す。
「くそっ、身体がいてぇな……畜生め」
全身打撲のような状態でフラフラと歩きながら悪態をつくと、
「おい、兄ちゃん大丈夫か?」
と声をかけられた。振り返るとそこには見知らぬ中年男性がいた。
男は親切そうな笑みを浮かべて手を差し伸べてきたので反射的に掴むと、立ち上がらせてくれた。
それから近くの酒場へと連れていかれた。
そこで手当てを受けた後、話を聞くことになった。
何でも彼は行商人で、仕入れのために街へ行く途中に怪我をした俺を見かけたのだという。
見ず知らずの人間に対して随分とお人好しだと思ったのだが、彼曰く困っている人がいたら助けるのは当たり前だそうだ。
そんな彼の様子に感銘を受けたのか、気づけば身の上話をしていたのである。
話を聞き終えた男性は何やら思案する様子を見せた後、こう切り出した。
「あんた、魔王・リュート様だろう」
「ッ!?」
その言葉に動揺を隠せない様子の彼に構わず言葉を続ける。
「俺は、あんたのファンなんだ。だから、あんたに頼みがあるんだよ」
そう言うと、懐から何かを取り出して差し出してきた。
「魔王城で俺を雇ってくれないか」
「はぁ?」
突然の申し出に困惑する俺を見てニヤリと笑うと、更に続けた。
「魔王城で働きたいんだよ、なぁ、頼むよ魔王様」
「いやいや、無理だって!第一、俺が本物の魔王かどうか分からないだろ?」
慌てて否定するも、全く聞く耳を持たない様子で詰め寄ってくる男に対して後退りするしかなかった。
だが、壁際に追いやられて逃げ場を失ってしまう。
(ヤバい……このままじゃ捕まる……!)
そう考えた時だった。
突然ドアが開き誰かが入ってきたのだ。
その人物を見てホッとした表情を浮かべる男と青ざめていく男の顔を見ながら恐る恐る声をかける。
「やぁ、どうかしたのかい?」
そこに立っていたのは、魔王城の参謀、ベルフェリアだった。
「魔王・リュート貴方って人は、帰りますよ」
「ああ、わかったよ」
「では、またね」
そう言って、魔王城に帰った。
数日後、俺は、ある部屋に向かっていた。
その部屋は、玉座の間である。
魔王城は、広いので移動が大変だ。
やっと、着いた。扉を開けると、そこには、魔王軍の幹部達がいた。
俺が席に着くと次々と頭を下げていく。
「魔王様、おはようございます」
「魔王様、本日のご予定ですが、午前は、書類整理、午後からは、謁見、会議、訓練となっております」
と、言ったのは、四天王の一人、リラだ。
「わかった、ありがとう」
と言うと、にっこり笑ってくれた。
そして、会議が始まった。
議題は、人間の動向についてだ。
人間の国の一つ、エルナト王国の王都にある冒険者ギルド本部からの依頼で、最近、魔王軍の領地内に出没し、
暴れ回っている盗賊団がいるというのだ。
その為、討伐隊を編成して、派遣することになった。
「和平の為に必要な事だ」
と言いながらも俯いた。
その様子を見たルティアは、
「分かりました。私が行きます」
と言った。
それを聞いた他の生徒達から驚きの声が上がる。
だが、反対する者はいなかった。
それは、彼女の実力を知っているからだ。
実際、彼女は、このクラスでもトップクラスの実力者なのだ。
しかも、今回は、単独での行動となる為、より危険が増す事になる。
しかし、それでも行くというのであれば、止める事はできなかった。
それに、これは、彼女の為にも、良い機会かもしれないと思った。
だから、敢えて止めなかった。
そして、出発の日が来た。
彼女は、見送りに来た皆に見送られながら旅立っていった。
その姿を見送っていると、後ろから声をかけられた。
振り向くとそこには、一人の女性が立っていた。
彼女の名前は、ミレニアといい、この国の王女様だ。
彼女とは、子供の頃からの付き合いであり、幼馴染みでもある。
昔からよく一緒に遊んでいた仲なのだが、最近は、疎遠になっていたので、こうして話すのは本当に久しぶりだ。
久しぶりに会ったせいか、緊張してしまい上手く話せないでいると、向こうから話しかけてきてくれた。
内容は、近況報告みたいなものだったが、楽しそうに話している姿を見て安心した。
やっぱり、元気そうで良かったと思っていると、急に真面目な顔になり、こちらを見据えてくる。
どうしたのかと思って身構えていると、意外な事を言われた。
「貴方にお願いがあります」
と言って頭を下げる姿に面食らってしまう。
一体何事かと思ったが、取り敢えず話を聞いてみる事にした。
その内容とは、自分の代わりに授業に出て欲しいというものだった。
どういう事なのか分からず戸惑っていると、説明してくれた。
どうやら、自分は、とある事情により外出する事ができないらしい。
そのため、代理として、自分に出席して欲しいという事だ。
正直言って断りたかったが、彼女の真剣な表情を見てしまうと断れなかった。
なので、引き受ける事にした。
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