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今度はこちらから攻めさせてもらうとしよう。
剣を一振りすると、斬撃が飛び、敵を切り裂いていった。
そして、最後の一匹となったところで、一気に間合いを詰め、斬りかかる。
「くっ、くそっ! 覚えてやがれ!!」
捨て台詞を残して逃げ出す盗賊たちを見送りながら、一息つくと少女の元へと駆け寄る。
幸い、大きな怪我はないようだったが、恐怖からか、気を失っているようだ。
無理もない、あんな目に遭ったのだから当然と言えば当然だ。
早く休ませてやるべきだろう。
そう思い、抱き上げると馬車まで運んでいくことにした。
あれから数日が経過したある日のこと、突然、来客があった。
訪ねて来たのは二人の男女で、片方は執事服を着た初老の男性、もう片方はメイド服を着込んだ若い女性だった。
何でもこの二人はある貴族の使用人なのだとか。その貴族というのが俺達に頼み事があるらしく、こうしてやって来たというわけなのだが、一体何の用事だろうか? 取り敢えず話を聞いてみる事にした。
「それで、どのようなご用件でしょうか?」
俺が尋ねると、男性は咳払いをした後、話し始めた。
「失礼ですが、貴方がリュート様で間違いありませんか?」
「はい、そうですけど……」
戸惑いながらも答えると、彼は安堵した様子で胸を撫で下ろしている様子だった。
何故、彼らが俺の事を知っているのだろうか?
疑問に思っていると、女性が代わりに答えてくれた。
「実はですね、私達は旦那様から貴方様をお連れするように言われているんです」
そう言って一枚の封筒を差し出してくる。
受け取って中を見ると、手紙が入っていた。
内容は簡単に言うと、屋敷に招待するから来て欲しいというものだった。
どうしてわざわざそんな事をするのか分からなかったが、断る理由もなかったので了承することにした。
数日後、俺達は屋敷の前に立っていた。
立派な門構えをしており、とても広い庭があるのが分かる。
ここに今日から住むことになるのかと思うと何だか感慨深いものがあるなと思っていると、不意に袖を引っ張られたのでそちらを向くと、
そこには不安そうに見上げてくる少女がいた。
大丈夫だという意味を込めて頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めて身を委ねてくる様子が可愛らしいと思う。
それから、気を取り直して中に入ることにした。
門の前には門番らしき男が立っており、こちらを一瞥すると無言で通してくれた。
「ようこそいらっしゃいました、リュート様」
玄関に入ると一人の男性が出迎えてくれた。
年齢は40代くらいに見えるが、背筋が伸びており若々しく見える。
身なりからして恐らくこの屋敷の主人なのだろうと思った。
彼の後ろに控えているのは先ほど入ってきた女性とは別のメイドさんだ。
彼女は無表情のまま静かに佇んでいるだけで、一言も喋らなかった。
ただ、俺のことを見つめる視線だけは感じられたので、何となく居心地の悪さを感じたが、
気にしても仕方がないので気にしないことにする。
それよりも今は目の前の人物と話をしなければならないと思ったからだ。
俺は覚悟を決めると彼に話しかけた。
「……それで、話というのは何でしょう?」
緊張しながら問いかけると、彼も真剣な表情になってこちらを見つめ返してきた。
その瞳からは強い意志のようなものを感じることができたため、俺も気を引き締めることにした。
(一体どんな話なのか……)
俺はゴクリと唾を飲み込むと彼の言葉を待った。やがて彼が口を開くのを見て身構えるのだった。
だが次の瞬間、彼から発せられた言葉に耳を疑った。
なんと驚くべきことに俺の身柄を保護してくれるというのだ!
これには驚いたものの素直に嬉しかったため喜んで申し出を受けることにした。
これからどうなるのか分からない不安はあるが少なくとも今の生活よりはマシになるだろうと考えていたからである。
そんなわけで当面の間はこの人の家でお世話になることになったのだがここで一つの問題が発生したのである。
そう、それは食事の問題であった。
というのもこれまで食べてきた料理は全て彼女が作ったものであり、当然ながら彼女がいないと食べることができないのだ。
そこでどうしたものかと考えていると、ふとあるアイデアが浮かんだ。
それは自分が料理を作ればいいのではないかというものだ。
我ながら名案だと思ったので早速試してみることにした。
台所を借りて調理を始めると、その様子を見ていた彼女が興味深げに声をかけてきた。
彼女は興味津々といった様子で目を輝かせていたが、残念ながら見せるわけにはいかないので適当に誤魔化しておいた。
そして完成したものを皿に盛り付けて持っていくと、彼女は目を丸くさせていた。
どうやら驚いているようだ。まあそれも無理はないだろう。なにせ見た目は完全に人間のそれなのだから。
ちなみに味の方も問題なく食べられるようになっていたので安心してほしい。
彼女は一口食べた後、目を見開いて固まっていたが、しばらくすると我に返ったようで慌ててお礼を言ってきた。
そこまで感謝されると悪い気はしないが、やはり照れ臭さの方が勝ってしまうため誤魔化すようにそっぽを向くと話題を変えることにする。
「そ、そういえば名前を聞いてなかったな。なんて呼べばいいんだ?」
そう聞くと、一瞬キョトンとした表情を浮かべた後、笑顔で答えてくれた。
「私はルリィと申します。どうぞよろしくお願いいたしますね、ご主人様♪」
そう言って頭を下げる彼女を見て、不覚にもドキッとしてしまった。
剣を一振りすると、斬撃が飛び、敵を切り裂いていった。
そして、最後の一匹となったところで、一気に間合いを詰め、斬りかかる。
「くっ、くそっ! 覚えてやがれ!!」
捨て台詞を残して逃げ出す盗賊たちを見送りながら、一息つくと少女の元へと駆け寄る。
幸い、大きな怪我はないようだったが、恐怖からか、気を失っているようだ。
無理もない、あんな目に遭ったのだから当然と言えば当然だ。
早く休ませてやるべきだろう。
そう思い、抱き上げると馬車まで運んでいくことにした。
あれから数日が経過したある日のこと、突然、来客があった。
訪ねて来たのは二人の男女で、片方は執事服を着た初老の男性、もう片方はメイド服を着込んだ若い女性だった。
何でもこの二人はある貴族の使用人なのだとか。その貴族というのが俺達に頼み事があるらしく、こうしてやって来たというわけなのだが、一体何の用事だろうか? 取り敢えず話を聞いてみる事にした。
「それで、どのようなご用件でしょうか?」
俺が尋ねると、男性は咳払いをした後、話し始めた。
「失礼ですが、貴方がリュート様で間違いありませんか?」
「はい、そうですけど……」
戸惑いながらも答えると、彼は安堵した様子で胸を撫で下ろしている様子だった。
何故、彼らが俺の事を知っているのだろうか?
疑問に思っていると、女性が代わりに答えてくれた。
「実はですね、私達は旦那様から貴方様をお連れするように言われているんです」
そう言って一枚の封筒を差し出してくる。
受け取って中を見ると、手紙が入っていた。
内容は簡単に言うと、屋敷に招待するから来て欲しいというものだった。
どうしてわざわざそんな事をするのか分からなかったが、断る理由もなかったので了承することにした。
数日後、俺達は屋敷の前に立っていた。
立派な門構えをしており、とても広い庭があるのが分かる。
ここに今日から住むことになるのかと思うと何だか感慨深いものがあるなと思っていると、不意に袖を引っ張られたのでそちらを向くと、
そこには不安そうに見上げてくる少女がいた。
大丈夫だという意味を込めて頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めて身を委ねてくる様子が可愛らしいと思う。
それから、気を取り直して中に入ることにした。
門の前には門番らしき男が立っており、こちらを一瞥すると無言で通してくれた。
「ようこそいらっしゃいました、リュート様」
玄関に入ると一人の男性が出迎えてくれた。
年齢は40代くらいに見えるが、背筋が伸びており若々しく見える。
身なりからして恐らくこの屋敷の主人なのだろうと思った。
彼の後ろに控えているのは先ほど入ってきた女性とは別のメイドさんだ。
彼女は無表情のまま静かに佇んでいるだけで、一言も喋らなかった。
ただ、俺のことを見つめる視線だけは感じられたので、何となく居心地の悪さを感じたが、
気にしても仕方がないので気にしないことにする。
それよりも今は目の前の人物と話をしなければならないと思ったからだ。
俺は覚悟を決めると彼に話しかけた。
「……それで、話というのは何でしょう?」
緊張しながら問いかけると、彼も真剣な表情になってこちらを見つめ返してきた。
その瞳からは強い意志のようなものを感じることができたため、俺も気を引き締めることにした。
(一体どんな話なのか……)
俺はゴクリと唾を飲み込むと彼の言葉を待った。やがて彼が口を開くのを見て身構えるのだった。
だが次の瞬間、彼から発せられた言葉に耳を疑った。
なんと驚くべきことに俺の身柄を保護してくれるというのだ!
これには驚いたものの素直に嬉しかったため喜んで申し出を受けることにした。
これからどうなるのか分からない不安はあるが少なくとも今の生活よりはマシになるだろうと考えていたからである。
そんなわけで当面の間はこの人の家でお世話になることになったのだがここで一つの問題が発生したのである。
そう、それは食事の問題であった。
というのもこれまで食べてきた料理は全て彼女が作ったものであり、当然ながら彼女がいないと食べることができないのだ。
そこでどうしたものかと考えていると、ふとあるアイデアが浮かんだ。
それは自分が料理を作ればいいのではないかというものだ。
我ながら名案だと思ったので早速試してみることにした。
台所を借りて調理を始めると、その様子を見ていた彼女が興味深げに声をかけてきた。
彼女は興味津々といった様子で目を輝かせていたが、残念ながら見せるわけにはいかないので適当に誤魔化しておいた。
そして完成したものを皿に盛り付けて持っていくと、彼女は目を丸くさせていた。
どうやら驚いているようだ。まあそれも無理はないだろう。なにせ見た目は完全に人間のそれなのだから。
ちなみに味の方も問題なく食べられるようになっていたので安心してほしい。
彼女は一口食べた後、目を見開いて固まっていたが、しばらくすると我に返ったようで慌ててお礼を言ってきた。
そこまで感謝されると悪い気はしないが、やはり照れ臭さの方が勝ってしまうため誤魔化すようにそっぽを向くと話題を変えることにする。
「そ、そういえば名前を聞いてなかったな。なんて呼べばいいんだ?」
そう聞くと、一瞬キョトンとした表情を浮かべた後、笑顔で答えてくれた。
「私はルリィと申します。どうぞよろしくお願いいたしますね、ご主人様♪」
そう言って頭を下げる彼女を見て、不覚にもドキッとしてしまった。
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