158 / 236
158.
しおりを挟む
これなら一人で暮らすには十分すぎるくらいの広さが
あるだろうし、部屋数も多いだろう。
何より家賃が掛からないというのが嬉しいところだ。
そんなことを考えながら眺めていると、ふいに声を掛けられたのでそちらに目を向けると、そこには一人の女性が立っていた。
年齢は20代前半といったところだろうか?
美人ではあるがどこか冷たい印象を受ける顔立ちをしているように思えた。
彼女は俺の前まで歩いてくると、
じっとこちらを見つめてきた。
その視線に耐えられず目を逸らそうとした瞬間、
突然抱きしめられてしまった。
いきなりのことで驚いていると、耳元で囁かれた。
「ごめんね……辛かったよね……」
そう言って頭を撫でられると涙が止まらなくなった。
そしてそのまましばらくの間泣き続けたのだった。
やがて落ち着いてくると、今度は恥ずかしくなって
きたため慌てて離れようとしたのだが、
彼女は離してくれなかった。
むしろより強く抱き締められてしまったため身動きが
取れなくなってしまったのだ。
どうしたものかと思っていると、彼女はクスリと
笑って言った。
「安心して、ここにはあなたを傷つける人はいないわ」
そう言われて少し安心したが、同時に不安にもなった。
なぜなら、もしこのままここに置いてもらえなかったら
どうしようと思ったからだ。
だが、そんな心配はすぐに杞憂に終わった。
というのも、この屋敷の主人であるレイラさんという
人が事情を説明してくれたおかげで
無事に迎え入れてもらうことができたからだ。
「えっと、それじゃあ改めまして……これからお世話になります!」
元気よく挨拶すると、彼女は微笑みながら頷いてくれた。
その後、屋敷に案内された俺達はそれぞれ個室を与えられた。
ベッドと机、クローゼットが置かれただけのシンプルな部屋だったが、掃除が行き届いており清潔感があって好感が持てた。それに、窓から差し込む陽射しが暖かくて心地良い感じだ。
こんな環境で暮らせるなんて幸せ者だなと思いながら、ベッドに横になるとすぐに眠りに落ちていった。
翌朝目が覚めると、既に太陽が高く昇っていたことに気づいた俺は慌てて身支度を整えてから部屋を飛び出した。
向かう先は食堂だ。
というのも、
「リュート様、どちらにいらっしゃいますか?」
「ここだよ」
俺が答えると、アリアは慌てて駆け寄ってきた。どうやら探させてしまったらしいなと思い申し訳なく思っていると、彼女は笑顔で話しかけてきた。
「おはようございます、ご主人様♡」
その言葉にドキッとしたが平静を装って返事をすることにする。
朝食を食べた後は街に出かけることにした。
特に目的があるわけではないが、ぶらぶら散歩するだけでも楽しいものだしな。
そう思いながら歩いているうちに商店街の方まで
来てしまっていたようだ。
様々な店が立ち並んでいる中を歩いているうちに、
ふと目についたものがあったため足を止める。
「いらっしゃい! うちの商品はどれも一級品ばかりだよ!」
と大きな声で呼び込みをする店主の姿があった。
俺はその声に惹かれるように近づいていくと、
そこにあったのは色とりどりの果物が並べられている棚だった。中でも一際目立つ場所に置いてあったものを手に取ると、
それは赤く色づいた林檎のような果実だった。
表面はつるりとしていて光沢があり、とても美味しそうに見える。
試しに一口齧ってみると、途端に口の中に甘酸っぱい
味が広がった。
食感もシャキシャキとしていて歯応えが良く、
瑞々しい果汁が溢れ出してくるようだった。
あまりの美味しさに感動すら覚えるほどだった。
それからしばらく夢中になって食べ続け、気がつくと全て平らげてしまっていた。
満足して帰ろうとすると、背後から声をかけられたため振り返る。
そこにいたのは、昨日会ったばかりの人物であった。
声をかけてきた人物は、昨日ギルドで会った受付嬢のアリアだ。
彼女に連れられてやってきた場所は、街の外れにある
小さな家だった。
中に入ると、リビングルームと思われる部屋に通される。
そこにはテーブルを囲むように椅子が置かれていたため、
そこに腰掛けることにした。
しばらくして飲み物を用意してもらったところで、本題に入ることになった。
彼女によると、俺を引き取りたいという申し出があったそうだ。しかし、その相手が誰なのか分からず困っているということだったので、俺の方からそれについて質問をしてみることにした。
すると、返ってきた答えは意外なものだった。
なんと、相手はこの国の王女だというではないか。
驚きのあまり声も出ない俺に、彼女はさらに続けてこう言った。
彼女曰く、先日の舞踏会にて、俺の姿を見た瞬間に一目惚れしてしまったのだという。
そこで、なんとかもう一度会いたいと思っていたところ、
偶然にも俺と再会することになったので、
これはもう運命としか思えなかったらしい。
そんなわけで、ぜひとも直接会って話がしたいと
いうことだったので、こうしてわざわざ訪ねて
きてくれたということだ。
それを聞いて、ますます頭が混乱してきた。
どうして自分なんかを気に入ってくれたのか
全くわからないし、そもそも会ったこともないはずなのに
何故だろうと不思議に思ったのだが、
とりあえず会ってみることにした。
というわけで、今に至るというわけだ。
あるだろうし、部屋数も多いだろう。
何より家賃が掛からないというのが嬉しいところだ。
そんなことを考えながら眺めていると、ふいに声を掛けられたのでそちらに目を向けると、そこには一人の女性が立っていた。
年齢は20代前半といったところだろうか?
美人ではあるがどこか冷たい印象を受ける顔立ちをしているように思えた。
彼女は俺の前まで歩いてくると、
じっとこちらを見つめてきた。
その視線に耐えられず目を逸らそうとした瞬間、
突然抱きしめられてしまった。
いきなりのことで驚いていると、耳元で囁かれた。
「ごめんね……辛かったよね……」
そう言って頭を撫でられると涙が止まらなくなった。
そしてそのまましばらくの間泣き続けたのだった。
やがて落ち着いてくると、今度は恥ずかしくなって
きたため慌てて離れようとしたのだが、
彼女は離してくれなかった。
むしろより強く抱き締められてしまったため身動きが
取れなくなってしまったのだ。
どうしたものかと思っていると、彼女はクスリと
笑って言った。
「安心して、ここにはあなたを傷つける人はいないわ」
そう言われて少し安心したが、同時に不安にもなった。
なぜなら、もしこのままここに置いてもらえなかったら
どうしようと思ったからだ。
だが、そんな心配はすぐに杞憂に終わった。
というのも、この屋敷の主人であるレイラさんという
人が事情を説明してくれたおかげで
無事に迎え入れてもらうことができたからだ。
「えっと、それじゃあ改めまして……これからお世話になります!」
元気よく挨拶すると、彼女は微笑みながら頷いてくれた。
その後、屋敷に案内された俺達はそれぞれ個室を与えられた。
ベッドと机、クローゼットが置かれただけのシンプルな部屋だったが、掃除が行き届いており清潔感があって好感が持てた。それに、窓から差し込む陽射しが暖かくて心地良い感じだ。
こんな環境で暮らせるなんて幸せ者だなと思いながら、ベッドに横になるとすぐに眠りに落ちていった。
翌朝目が覚めると、既に太陽が高く昇っていたことに気づいた俺は慌てて身支度を整えてから部屋を飛び出した。
向かう先は食堂だ。
というのも、
「リュート様、どちらにいらっしゃいますか?」
「ここだよ」
俺が答えると、アリアは慌てて駆け寄ってきた。どうやら探させてしまったらしいなと思い申し訳なく思っていると、彼女は笑顔で話しかけてきた。
「おはようございます、ご主人様♡」
その言葉にドキッとしたが平静を装って返事をすることにする。
朝食を食べた後は街に出かけることにした。
特に目的があるわけではないが、ぶらぶら散歩するだけでも楽しいものだしな。
そう思いながら歩いているうちに商店街の方まで
来てしまっていたようだ。
様々な店が立ち並んでいる中を歩いているうちに、
ふと目についたものがあったため足を止める。
「いらっしゃい! うちの商品はどれも一級品ばかりだよ!」
と大きな声で呼び込みをする店主の姿があった。
俺はその声に惹かれるように近づいていくと、
そこにあったのは色とりどりの果物が並べられている棚だった。中でも一際目立つ場所に置いてあったものを手に取ると、
それは赤く色づいた林檎のような果実だった。
表面はつるりとしていて光沢があり、とても美味しそうに見える。
試しに一口齧ってみると、途端に口の中に甘酸っぱい
味が広がった。
食感もシャキシャキとしていて歯応えが良く、
瑞々しい果汁が溢れ出してくるようだった。
あまりの美味しさに感動すら覚えるほどだった。
それからしばらく夢中になって食べ続け、気がつくと全て平らげてしまっていた。
満足して帰ろうとすると、背後から声をかけられたため振り返る。
そこにいたのは、昨日会ったばかりの人物であった。
声をかけてきた人物は、昨日ギルドで会った受付嬢のアリアだ。
彼女に連れられてやってきた場所は、街の外れにある
小さな家だった。
中に入ると、リビングルームと思われる部屋に通される。
そこにはテーブルを囲むように椅子が置かれていたため、
そこに腰掛けることにした。
しばらくして飲み物を用意してもらったところで、本題に入ることになった。
彼女によると、俺を引き取りたいという申し出があったそうだ。しかし、その相手が誰なのか分からず困っているということだったので、俺の方からそれについて質問をしてみることにした。
すると、返ってきた答えは意外なものだった。
なんと、相手はこの国の王女だというではないか。
驚きのあまり声も出ない俺に、彼女はさらに続けてこう言った。
彼女曰く、先日の舞踏会にて、俺の姿を見た瞬間に一目惚れしてしまったのだという。
そこで、なんとかもう一度会いたいと思っていたところ、
偶然にも俺と再会することになったので、
これはもう運命としか思えなかったらしい。
そんなわけで、ぜひとも直接会って話がしたいと
いうことだったので、こうしてわざわざ訪ねて
きてくれたということだ。
それを聞いて、ますます頭が混乱してきた。
どうして自分なんかを気に入ってくれたのか
全くわからないし、そもそも会ったこともないはずなのに
何故だろうと不思議に思ったのだが、
とりあえず会ってみることにした。
というわけで、今に至るというわけだ。
0
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる