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第11章:離婚届と独立宣言
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王国軍を退けたという報せは、瞬く間に谷中を駆け巡り、領民たちは歓喜に沸いた。そして、レオンが伝説の元騎士団長であったという事実に、誰もが驚き、そして納得した。彼がずっと私たちを守ってくれていたのだ、と。
私は、谷の中心にある広場に、全ての領民を集めた。隣には、静かに佇むレオンがいる。
集まった人々を前に、私は高らかに声を張り上げた。
「皆さん、聞いてください!先ほど、私たちは自らの故郷を、自らの手で守り抜きました!」
おおーっ!という歓声が上がる。私は、その声が静まるのを待って、続けた。
「もはや、私たちはあの腐敗した王国に付き従う必要はありません!彼らは、私たちから奪うことしか考えない!」
そうだ、そうだ!と、あちこちから声が飛ぶ。
私は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。それは、私がずっとしたためていたものだった。
「本日をもって、私、リナ・アーシェットは、カイル・フォン・エルグランド王子との婚約、及びエルグランド王国との関係を、完全に、そして永久に、解消することをここに宣言します!」
それは、この世界には存在しない「離婚届」を、私自身のやり方で叩きつけた瞬間だった。
「そして!」
私はさらに声を大きくする。
「私たちは、この『豊穣の谷』を首都とし、圧政に苦しむ周辺の領地と手を取り合い、新たな独立国家の建国を、ここに宣言いたします!」
私の言葉に、一瞬の静寂が訪れた。そして次の瞬間、地鳴りのような大歓声が谷を揺るがした。人々は泣き、笑い、新しい国の誕生を祝った。飢えと恐怖から解放され、自分たちの手で未来を掴む。その希望が、皆の心を一つにしたのだ。
熱狂する民衆の姿を見ながら、私はようやく肩の荷が下りたような気がした。
その夜。祝宴の喧騒から離れ、私は一人、丘の上にいた。
静かな夜の闇に、力強い足音が近づいてくる。振り返るまでもなく、レオンだと分かった。
「……レオン」
「リナ」
彼は私の前に来ると、おもむろに片膝をついた。それは、騎士が主君に忠誠を誓う時の、最も敬意のこもった礼だった。
「レオン、やめて。あなたはもう、誰かに仕えるような立場じゃないわ」
「いいや。俺は仕えたい。生涯をかけて、守りたい主君を見つけた」
彼は顔を上げ、まっすぐに私を見つめた。その琥珀色の瞳は、夜の闇の中でも、星のように輝いて見えた。
「リナ。俺は、王家の腐敗した権力争いに絶望し、騎士団を辞めた。ただ静かに、誰にも知られずに生きていこうと、この谷に来たんだ。だが、お前と出会って、俺はもう一度、信じるものを見つけた」
彼の声は、静かだが、確かな熱を帯びていた。
「お前こそが、俺が本当に守りたかった『正義』であり、『希望』だ。だから、リナ……。これからは、お前の騎士として、この身を捧げさせてほしい」
そして、彼は続けた。
「……そして、もし許されるなら。お前の、伴侶として。生涯、隣にいることを許してはくれないだろうか」
それは、今まで聞いたどんな言葉よりも不器用で、そして、誠実な愛の告白だった。
涙が、私の頬を伝う。
「……馬鹿ね、レオン。そんなの、もうとっくに決まってるじゃない」
私は涙で濡れた顔のまま、最高の笑顔で頷いた。
「私の隣は、あなただけの場所よ」
レオンは安堵したように息をつくと、私の手をとり、その甲にそっと口づけを落とした。
こうして、悪役令嬢は離婚届を叩きつけ、そして生涯の愛を手に入れたのだった。
私は、谷の中心にある広場に、全ての領民を集めた。隣には、静かに佇むレオンがいる。
集まった人々を前に、私は高らかに声を張り上げた。
「皆さん、聞いてください!先ほど、私たちは自らの故郷を、自らの手で守り抜きました!」
おおーっ!という歓声が上がる。私は、その声が静まるのを待って、続けた。
「もはや、私たちはあの腐敗した王国に付き従う必要はありません!彼らは、私たちから奪うことしか考えない!」
そうだ、そうだ!と、あちこちから声が飛ぶ。
私は懐から一枚の羊皮紙を取り出した。それは、私がずっとしたためていたものだった。
「本日をもって、私、リナ・アーシェットは、カイル・フォン・エルグランド王子との婚約、及びエルグランド王国との関係を、完全に、そして永久に、解消することをここに宣言します!」
それは、この世界には存在しない「離婚届」を、私自身のやり方で叩きつけた瞬間だった。
「そして!」
私はさらに声を大きくする。
「私たちは、この『豊穣の谷』を首都とし、圧政に苦しむ周辺の領地と手を取り合い、新たな独立国家の建国を、ここに宣言いたします!」
私の言葉に、一瞬の静寂が訪れた。そして次の瞬間、地鳴りのような大歓声が谷を揺るがした。人々は泣き、笑い、新しい国の誕生を祝った。飢えと恐怖から解放され、自分たちの手で未来を掴む。その希望が、皆の心を一つにしたのだ。
熱狂する民衆の姿を見ながら、私はようやく肩の荷が下りたような気がした。
その夜。祝宴の喧騒から離れ、私は一人、丘の上にいた。
静かな夜の闇に、力強い足音が近づいてくる。振り返るまでもなく、レオンだと分かった。
「……レオン」
「リナ」
彼は私の前に来ると、おもむろに片膝をついた。それは、騎士が主君に忠誠を誓う時の、最も敬意のこもった礼だった。
「レオン、やめて。あなたはもう、誰かに仕えるような立場じゃないわ」
「いいや。俺は仕えたい。生涯をかけて、守りたい主君を見つけた」
彼は顔を上げ、まっすぐに私を見つめた。その琥珀色の瞳は、夜の闇の中でも、星のように輝いて見えた。
「リナ。俺は、王家の腐敗した権力争いに絶望し、騎士団を辞めた。ただ静かに、誰にも知られずに生きていこうと、この谷に来たんだ。だが、お前と出会って、俺はもう一度、信じるものを見つけた」
彼の声は、静かだが、確かな熱を帯びていた。
「お前こそが、俺が本当に守りたかった『正義』であり、『希望』だ。だから、リナ……。これからは、お前の騎士として、この身を捧げさせてほしい」
そして、彼は続けた。
「……そして、もし許されるなら。お前の、伴侶として。生涯、隣にいることを許してはくれないだろうか」
それは、今まで聞いたどんな言葉よりも不器用で、そして、誠実な愛の告白だった。
涙が、私の頬を伝う。
「……馬鹿ね、レオン。そんなの、もうとっくに決まってるじゃない」
私は涙で濡れた顔のまま、最高の笑顔で頷いた。
「私の隣は、あなただけの場所よ」
レオンは安堵したように息をつくと、私の手をとり、その甲にそっと口づけを落とした。
こうして、悪役令嬢は離婚届を叩きつけ、そして生涯の愛を手に入れたのだった。
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