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病室の中で
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生まれた時から俺は外の世界を見た事がなかった。
テレビの中でしか情報を得る事が出来ない。
いろんな出来事があっても、遠い国の出来事のようだ。
俺の世界は、窓の向こう側に映る止まった世界の中にいる。
病院で暮らしていて、時々家族が見舞いに来てくれていた。
だからなのか、最初から受け入れていた…受け入れるしか俺にはなかった。
学校というものに行った事はない、家庭教師が決まった時間に病室にやって来て勉強を教えてくれる。
世間話もしない、用事が終わったらすぐに帰る関係だ。
何年も週に一回続けていると話す事もないのかもしれない。
遊びに来ているわけではないから、当然と言われたら当然だ。
でも、ちょっと寂しいと思う事もなくはないが仕方ない。
「早く良くなるといいわね」と母さんに頭を撫でられた。
10歳までは素直に信じていた、でも…さすがに18歳になったら嫌でも分かってしまう。
俺はもう、何も知らない無知な子供ではない、永遠に退院する事は叶わない。
それどころか、俺は20歳まで生きる事が出来ないと知っている。
偶然、個室で両親と担当医が話しているのを聞いてしまった。
詳しくは聞き取れなかったが、俺の名前は聞こえた。
本人が聞いちゃいけない内容なんだと頭で分かっていても、足が縫い付けられたかのように動かない。
泣き崩れる母さんの声が、静かな廊下に響き渡っていたのをよく覚えている。
俺の頭では意外とすんなり頭に入ってきた……きっと、そうなんだろうなと心の何処かで思っていたからだろうか。
この体は脆くて、不具合が起きるとすぐに壊れてしまう。
だから、病院にずっと居なきゃいけない…少しでも長く生きるために。
その日から、両親は今まで以上に優しくなった。
俺は、知らないフリをして今まで通りに接した。
何の病気かは分からないが、残り僅かな時間を一日一日大切に生きようと思った。
大部屋だが、俺以外は新しく入院した人達できっとまた入れ替わる。
友達になっても、お別れは思ったより早く訪れる。
友達が出来ても、別れる痛みをずっと味わうなら最初から友達にならなければいい。
薬の副作用の痛みよりも、遥かに心の方が痛い。
俺だけが何も変わらず、そこにいる……ずっとずっと…
退院が出来ないだけで、病院の中なら自由に出入り出来る。
休憩室で飲み物を買っていると、別の病室の子達の話し声が聞こえた。
漫画の話をしているのか、高校生くらいの女の子達が楽しそうに話している。
漫画のキャラクター、その内容に耳を傾けながら冷えたオレンジジュースに口付ける。
盗み聞きをするつもりはないが、たまたま聞こえただけだ…誰に言うわけではない言い訳を心の中で思う。
内容からしてファンタジーラブストーリーだろうか、あまり聞くと悪いからジュースが飲み終わるとゴミ箱に缶を捨てて病室に戻った。
漫画は休憩室の漫画を見た事があるが、女の子が好きそうな漫画は読んでいないな。
正直、意識して少女漫画を避けていたところもある。
女の子が好きそうな恋愛系が多い、今の俺には絶対に手に入らないもの。
フィクションの漫画に何言ってるんだと、自分でも可笑しく思う。
少年漫画だって、俺には手が届かないもののは変わらない。
俺が体験出来ない世界を体験出来るようで、漫画は好きだった。
食わず嫌いはいけないな、機会があったら読んでみようかな。
何の漫画だっただろうかと考えながら、ベッドに入る。
テレビを付けて、暇つぶしにと両親が買ってくれた雑誌をペラペラと捲る。
無音なのは寂しくて、BGM代わりにしているからテレビの内容には関心がない。
あまり楽しい内容ではないが、ファッションには興味があり…そこだけ見ていた。
こういう服は、足が長い人が似合うよな…俺じゃあちょっと無理そうかな。
今日は雑誌を見ていても、どこか上の空だった。
たまたま付けたチャンネルでアニメがやっていた。
『イヴ!!』
そのセリフに、雑誌に向けていた視線をテレビに向けた。
小さなテレビの画面には、茶髪のロングヘアーの女と黒髪の武装している男が映っていた。
男は女の事を「エマ様」と呼んでいて、その二人の名前はついさっき聞いたばかりだった。
休憩室で話していた子達が言っていたのはこの話だったのか。
優男風の男は腰に下げている剣を鞘から引き抜いて魔物からエマを守っていた。
エマはこの国のお姫様らしく、男はエマを守る騎士のようだ。
聖騎士と呼ばれて英雄である男…イヴは魔騎士と呼ばれる真っ黒な騎士と戦っているという話らしい。
途中からしか見ていないから詳しくは分からない。
エマにも聖女の力があるみたいで、癒しの力があるらしい。
魔術が当たり前の世界で、レベルによって魔力の大きさが違う。
聖騎士は全ての力が並外れていて、聖女は癒しの力が強い。
それだけ分かってアニメは終わった、どんな話なのだろうと興味が湧いた。
来週にまたやるだろうが、最初の物語が知りたかった。
翌日、休憩室でオレンジジュースを買って椅子に座っていると漫画が置いてある棚が目に入った。
もしかしたら、あるかもしれないとアニメの原作である漫画を探した。
それぞれ一冊しかないから、誰かが借りてしまったら返却まで見れない。
一週間という返却期間はあるが、いつ借りたか分からないまま待っていなければいけない。
今すぐ読みたくても、どうする事も出来ないからそうなったら大人しく待つしかない。
すると「聖なる騎士と王女の祝福」というタイトルが見えた。
確かアニメはそういう名前だったな、10巻まである。
1巻手に取って、椅子に座って本を読み始めた…俺が借りたら外に見たい人がいたら困ってしまう。
時間ならある、夢中になって読めば10巻なんてあっという間だ。
ペラペラと時間を忘れるほどに夢中になり、5巻まで読んだところで本を閉じて窓を見るとすっかり暗くなっていた。
あまり遅いと、看護師さんが心配してしまうから、続きは明日にして本を戻してから病室に向かった。
物語は俺を新しい世界に連れて行ってくれる。
まるでその世界にいるかのようだ、名前がないモブでいい…俺もその世界で生きたい。
外を思いっきり走り回って、心の底から笑いたい。
生きたい…死にたくない…俺にとって、この人生はかけがえのない大切なものだった。
20歳の誕生日を前に、俺の体は悲鳴を上げていた。
ボロボロになった体を必死に機械が繋ぎ止める。
一雫の涙を流し、俺の意識は消えてなくなった。
記憶も全て失い、全く違う人物に生まれ変わるんだとなんとなく理解していた。
再び生きるために、今の俺には最大の感謝とお別れを…
テレビの中でしか情報を得る事が出来ない。
いろんな出来事があっても、遠い国の出来事のようだ。
俺の世界は、窓の向こう側に映る止まった世界の中にいる。
病院で暮らしていて、時々家族が見舞いに来てくれていた。
だからなのか、最初から受け入れていた…受け入れるしか俺にはなかった。
学校というものに行った事はない、家庭教師が決まった時間に病室にやって来て勉強を教えてくれる。
世間話もしない、用事が終わったらすぐに帰る関係だ。
何年も週に一回続けていると話す事もないのかもしれない。
遊びに来ているわけではないから、当然と言われたら当然だ。
でも、ちょっと寂しいと思う事もなくはないが仕方ない。
「早く良くなるといいわね」と母さんに頭を撫でられた。
10歳までは素直に信じていた、でも…さすがに18歳になったら嫌でも分かってしまう。
俺はもう、何も知らない無知な子供ではない、永遠に退院する事は叶わない。
それどころか、俺は20歳まで生きる事が出来ないと知っている。
偶然、個室で両親と担当医が話しているのを聞いてしまった。
詳しくは聞き取れなかったが、俺の名前は聞こえた。
本人が聞いちゃいけない内容なんだと頭で分かっていても、足が縫い付けられたかのように動かない。
泣き崩れる母さんの声が、静かな廊下に響き渡っていたのをよく覚えている。
俺の頭では意外とすんなり頭に入ってきた……きっと、そうなんだろうなと心の何処かで思っていたからだろうか。
この体は脆くて、不具合が起きるとすぐに壊れてしまう。
だから、病院にずっと居なきゃいけない…少しでも長く生きるために。
その日から、両親は今まで以上に優しくなった。
俺は、知らないフリをして今まで通りに接した。
何の病気かは分からないが、残り僅かな時間を一日一日大切に生きようと思った。
大部屋だが、俺以外は新しく入院した人達できっとまた入れ替わる。
友達になっても、お別れは思ったより早く訪れる。
友達が出来ても、別れる痛みをずっと味わうなら最初から友達にならなければいい。
薬の副作用の痛みよりも、遥かに心の方が痛い。
俺だけが何も変わらず、そこにいる……ずっとずっと…
退院が出来ないだけで、病院の中なら自由に出入り出来る。
休憩室で飲み物を買っていると、別の病室の子達の話し声が聞こえた。
漫画の話をしているのか、高校生くらいの女の子達が楽しそうに話している。
漫画のキャラクター、その内容に耳を傾けながら冷えたオレンジジュースに口付ける。
盗み聞きをするつもりはないが、たまたま聞こえただけだ…誰に言うわけではない言い訳を心の中で思う。
内容からしてファンタジーラブストーリーだろうか、あまり聞くと悪いからジュースが飲み終わるとゴミ箱に缶を捨てて病室に戻った。
漫画は休憩室の漫画を見た事があるが、女の子が好きそうな漫画は読んでいないな。
正直、意識して少女漫画を避けていたところもある。
女の子が好きそうな恋愛系が多い、今の俺には絶対に手に入らないもの。
フィクションの漫画に何言ってるんだと、自分でも可笑しく思う。
少年漫画だって、俺には手が届かないもののは変わらない。
俺が体験出来ない世界を体験出来るようで、漫画は好きだった。
食わず嫌いはいけないな、機会があったら読んでみようかな。
何の漫画だっただろうかと考えながら、ベッドに入る。
テレビを付けて、暇つぶしにと両親が買ってくれた雑誌をペラペラと捲る。
無音なのは寂しくて、BGM代わりにしているからテレビの内容には関心がない。
あまり楽しい内容ではないが、ファッションには興味があり…そこだけ見ていた。
こういう服は、足が長い人が似合うよな…俺じゃあちょっと無理そうかな。
今日は雑誌を見ていても、どこか上の空だった。
たまたま付けたチャンネルでアニメがやっていた。
『イヴ!!』
そのセリフに、雑誌に向けていた視線をテレビに向けた。
小さなテレビの画面には、茶髪のロングヘアーの女と黒髪の武装している男が映っていた。
男は女の事を「エマ様」と呼んでいて、その二人の名前はついさっき聞いたばかりだった。
休憩室で話していた子達が言っていたのはこの話だったのか。
優男風の男は腰に下げている剣を鞘から引き抜いて魔物からエマを守っていた。
エマはこの国のお姫様らしく、男はエマを守る騎士のようだ。
聖騎士と呼ばれて英雄である男…イヴは魔騎士と呼ばれる真っ黒な騎士と戦っているという話らしい。
途中からしか見ていないから詳しくは分からない。
エマにも聖女の力があるみたいで、癒しの力があるらしい。
魔術が当たり前の世界で、レベルによって魔力の大きさが違う。
聖騎士は全ての力が並外れていて、聖女は癒しの力が強い。
それだけ分かってアニメは終わった、どんな話なのだろうと興味が湧いた。
来週にまたやるだろうが、最初の物語が知りたかった。
翌日、休憩室でオレンジジュースを買って椅子に座っていると漫画が置いてある棚が目に入った。
もしかしたら、あるかもしれないとアニメの原作である漫画を探した。
それぞれ一冊しかないから、誰かが借りてしまったら返却まで見れない。
一週間という返却期間はあるが、いつ借りたか分からないまま待っていなければいけない。
今すぐ読みたくても、どうする事も出来ないからそうなったら大人しく待つしかない。
すると「聖なる騎士と王女の祝福」というタイトルが見えた。
確かアニメはそういう名前だったな、10巻まである。
1巻手に取って、椅子に座って本を読み始めた…俺が借りたら外に見たい人がいたら困ってしまう。
時間ならある、夢中になって読めば10巻なんてあっという間だ。
ペラペラと時間を忘れるほどに夢中になり、5巻まで読んだところで本を閉じて窓を見るとすっかり暗くなっていた。
あまり遅いと、看護師さんが心配してしまうから、続きは明日にして本を戻してから病室に向かった。
物語は俺を新しい世界に連れて行ってくれる。
まるでその世界にいるかのようだ、名前がないモブでいい…俺もその世界で生きたい。
外を思いっきり走り回って、心の底から笑いたい。
生きたい…死にたくない…俺にとって、この人生はかけがえのない大切なものだった。
20歳の誕生日を前に、俺の体は悲鳴を上げていた。
ボロボロになった体を必死に機械が繋ぎ止める。
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記憶も全て失い、全く違う人物に生まれ変わるんだとなんとなく理解していた。
再び生きるために、今の俺には最大の感謝とお別れを…
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