最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン

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第34話 授かった神託

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「はあー、これからどうしよ……」
「そうね……」

 下山した後に腹ごしらえをした後の洋食屋で二人座りながら呟く。
 結局時間と体力を無駄にしただけの結果に終わり、俺たちは徒労感に襲われていた。

「今日はもう、何もする気も起こらないからとりあえず宿探そうか」
「そうね、ゆっくり休みましょ」
「明日は…………そうだ、行きたいところあるからちょっと付き合ってくれる?」
「え、それって…………グレイスが連れっていってくれるならどこへでも!」

 生気を無くしていたエリーゼの目が途端に力を取り戻した。
 なんだか嬉しそうな顔をしている。
 やっぱり人間って目的を持つことは大事なんだな。

 結局、その日は宿をとって翌日の英気を養うことになった。



 
【シオンside】
 
「…………であるからして」

 講堂に僧が一同集められている。
 その僧たちにリュウゲン副僧正が講話をしていた。

「くっ……やっぱり納得できないわ……」

 そんな中、シオンは唇を噛みしめていた。
 どうしてもエリーゼを門前払いしたことが納得できなかったのだ。
 彼女は本来なら国賓待遇で迎えなければいけない人物だったはずだ。
 できれば今からでも走って詫びて、再度こちらに招き入れたかった。

「でも……命令は絶対だから……」

 ラグナ教にとって階位は絶対で、リュウゲン副僧正が駄目と言えば駄目になのだ。
 それを覆せるのは後、ギョクレイ大僧正しかいないが彼は今、星詠ほしよみと呼ばれる大事な儀式の最中で何人たりともその邪魔をすることはできなかった。

 そうして、悶々としながら講話を聞いてる時のことだった――
 
 講堂の扉がキィっと開く音がする。
 僧たちの視線が集中したその先には、銀髪の長髪をたなびかせ、簡素なワンピースを着て緋色と白色の双眼をもった美少女が立っていた。
 突然の来訪者に講堂がざわつく。

「誰だあれ?」
「え、もしかして……」
「まさか、そんな時期じゃないしな……」

 僧たちから戸惑いの声が上がる中、遂に美少女が口を開く。

「苦しゅうない、楽にするのだ。僧務の最中失礼するのだ」

 そう彼女が声を発した途端、僧たちは彼女の素性を把握して一斉に彼女に向けて平伏する。
 それは副僧正のリュウゲンも別ではなかった。

 平伏後の一時の静寂の後で、僧を代表してリュウゲンが少女に問いかける。

「これはこれはイリス様、ご機嫌麗しゅうございます。竜様たちへの貢物はまだ先になりますが、今回は一体どのようなご要件でございましょう?」
「若い男と女が総本山を訪れたはずなのだ。彼らはどこにいるのだ?」
「若い男女でございますか? そのような来訪者はおりませんが……」

 そこでシオンは立ち上がって叫ぶように声を上げる。

「嘘よ! ラグナ郷の救世主のナディア様のご子女と、公爵家の子息がいらっしゃったわ!」
「ナディア様のご子女だと! 聞いてないぞ!」
「一体どういうことだ?」
「なんでそれをイリス様が……」

 講堂内は騒然となる。

「静まれい!」

 それをリュウゲンが一喝する。
 講堂内シーンと静まり返る。

「来訪者には犯罪者がいて総本山には相応しくないため、お引き取りいただいた。それだけのことだ!」
「グレイスとエリーゼがここに相応しくないだと? お前の目は節穴なのだ」

 イリスは不愉快そうに眉を曲げて、冷たく言い放つ。

「……ですが、イリス様、あのグレイスという男は……」
「グレイスは私の使い人。グレースへの侮辱は私への侮辱になるのだ!」
「使い人ですと!」
「我ら以外に竜様が使い人を認めたというのか!」
「なんということだ!」

 講堂内はまた騒然となる。
 
 すると、そこにまた一人小柄な6歳ほどの背丈の人物が現れた。
 彼は一見小さな子どもに見えるが、その顔には老人のようなしわが刻まれている。
 彼こそがラグナ教の大僧正であるギョクレイであった。

「これはこれはイリス様、ようこそおいで下さいました。今日はラグナ郷の歴史的な日になりますので、是非ごゆっくりしていってください。皆の衆、喜べ! 遂に星詠みの神託が下ったぞ!」
「「「「「うぉおおおおおおおお!!!」」」」」

 大僧正の宣言に僧たちから大歓声が湧き送る。
 ラグナ郷の大僧正は代々、星詠みと呼ばれる予言や神託を授かる能力を得た人間が務める。
 ここ数百年の間、星詠みで神託が下ることはなかった。
 そんな中での悲願の神託だった。

「一体どのような神託でございましょう!」
「是非お聞かせください!」

 僧たちはすごい勢いで大僧正に殺到する。
 
「いいでしょう。皆の衆、心して聞きなさい。下った神託はこのようなものです」

 大僧正のその言葉の後、講堂内は糸が張り詰めたような緊張感に包まれる。
 彼はゆっくりと言葉をつむいだ。

『彼方より来たる 若き英雄
 剣を掲げ 竜と出会う
 約束の竜は 翼を広げ
 運命の友と 空を舞う

 戦いの予兆 闇は迫り
 二つの力が 光を呼ぶ
 未来の地に 英雄現れ
 竜と共に 闇を討つ

 その日 伝説は現実となり
 ラグナに新たな風が吹く

 但し英雄がすぐに去りし時 ラグナは滅ぶ』
 
 神託の宣告の後、講堂内で興奮が爆発する。

「遂に英雄が現れるんだ!」
「ラグナ郷が救われる!」
「ラグナに新たな風が吹くんだ!」

 僧たちは口々に神託への感想を口にする。
 中には感動で涙を流しているものさえいた。
 そんな中、シオンは講堂中に響き渡る大声を出す。

「みんなちょっと待ってぇ!」

 皆がシオンに集中する。
 
「私、今日会ったわよ。その英雄に……」

 驚愕の視線がシオンに注がれる。
 
「え? どこで!?」
「誰だよそれ!」

 初耳だったのだろう。
 大僧正のギョクレイも目を見開いていた。
 
「だから、さっき報告した来訪者よ! エリーゼ様と旅の同行をしてたグレイス様に間違いないわ!」
「確かにグレイスが英雄というなら納得なのだ」

 イリスはうんうんと頷いた。

「でも、みんな神託を最後まで聞いてたでしょ。『但し英雄がすぐに去りし時 ラグナは滅ぶ』って」
「ああ、そうだな」
「それがどうかしたのか?」

 僧たちは疑問の声を上げる。
 シオンは話すか話さまいか少し迷った様子を見せたのち、意を決したように――

「グレイス様、門前払いを食らって総本山を去ってしまったわよ」

 シオンから提示された事実によって講堂内の空気は一気に凍り、静まり返った。
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