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第65話 召喚
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「はい、グレイス様にお会いしたいと。アルトリウス公爵とルシリオン公爵がいらっしゃっています」
「…………お通しして」
「かしこまりました」
しばらくすると部屋に二人の公爵が通される。
「この度は急な来訪にも関わらず、面会の許可をいただきまして誠にありがとうございます」
二人の公爵はそう言うと俺に深々と頭を下げた。
王族を別にしてオルデア王国には三大公爵家というものがある。
一つは我がカイマン家であり、残り二つがアルトリウス公爵家とルシリオン公爵家であった。
それぞれの公爵家の力は均衡しており、それぞれが対抗し、外敵がある時には協力もしながら切磋琢磨してきた。
俺は公爵家の子どもといえど、三男で当主ですらない。
ましては少し前まで変態令息とも呼ばれていた男だ。
二人の公爵が俺に頭を下げるなど以前までは考えられなかったことだった。
「頭を上げてください。お二人は私よりも遥かに身分は上です。一体どういう風の吹き回しか怖くなるのですが……」
十中八九、イザベラ妃のクーデター絡みの話だろうとは思うが、俺は探りを入れる。
「王政の混乱に関してご報告と相談に参りました」
「なるほど……」
俺はコーヒーを口に含む。
「まずはイザベラ妃ですがクーデターの疑いがある為、拘束しております。同時にオルデア王に対して警備と毒見の強化を行い、体調が芳しくない所から上級治癒魔術師に治療に当たらせております」
情勢がカイマン家有利に働き、俺という人物の台頭もある為、対抗するのは悪手だと判断して先手を打ってきたということだろう。
「御家は両方ともオルデア王への身辺の警戒の強化に反対の立場だったと思いますが、どのような考えの変化があったのでしょうか?」
「王は最近明らかに体調を崩しております。表立った暗殺の動きがなかったので問題ないと判断した我々が間違っておりました」
都合がいいとは思う。
彼らがカイマン家に否定的なイザベラ妃を担ぎ、カイマン家の排除に動いたことは知っている。
想像以上にイザベラ妃が暴走して扱いに苦慮していたようだが、この変わり身の早さには逆に感心するな。
今の俺ならアルトリウス公爵家とルシリオン公爵家を潰すのは可能だろう。
過去の因縁もあるので、潰してスッキリ爽快というのもいいかもしれない。
だが、それをすれば今は従順に振る舞っている彼らは間違いなく牙をむいてくる。
そうなれば不要な軋轢が生じるばかりか、下手すると国を二分しかねない。
そのような事態は望むべきものではなかった。
幸いなことにアルトリウス公爵とルシリオン公爵は、この迅速な判断と行動から鑑みるに二人とも馬鹿ではなさそうだ。
裏での考えや心情はどうであれ、政治ゲームを思惑通りに興じてはくれるだろう。
「承知しました。それで後、相談というのはなんでしょうか?」
「一週間後にイザベラ妃の審問会を行うことになっております。その審問会にグレイス殿も参加いただければと」
「その最終裁定は王が行うのですよね? 俺は別にいらないのでは」
「そちらは王の要望となっております」
「そうですか……」
イザベラ妃は現在王族でそれに連なる利害関係者は多くいるし、つい最近まで国を牛耳っていたのだ。
ほとんどが寝返るだろうが、一大勢力を国に誇っていた。
窮鼠猫を噛むではないが、良からぬ考えを起こすものがでないとは限らない。
それに対する抑止力、あるいは、一種の後ろ盾として俺を召喚したいということなのだろう。
「承知しました。それでは当日参加させていただきます」
「よろしくお願いいたします。それでは私たちはこれで……」
要件だけ伝えると二人の公爵は洋服を直しながら席を立った。
表情や声色にはそのような気配は微塵も見せはしないが、本来はこんな所に来たくもないし、滞在もしたくないのだろう。
不要な会話をせずに利害のみで接する姿勢はスマートにも感じた。
「あ、そうそう。一つお伝え忘れてました」
アルトリウス公爵は部屋を出る直前になってこちらを振り返る。
「イザベラ妃の裁定が終わった後には英雄グレイス殿を称えて、王都を上げて祝祭を上げようと言われておりました。主役になりますので是非ご参加ください」
そう言われたら参加しないわけにはいかないよな。
その言葉を最後に二人の公爵は颯爽と部屋を出ていった。
「…………お通しして」
「かしこまりました」
しばらくすると部屋に二人の公爵が通される。
「この度は急な来訪にも関わらず、面会の許可をいただきまして誠にありがとうございます」
二人の公爵はそう言うと俺に深々と頭を下げた。
王族を別にしてオルデア王国には三大公爵家というものがある。
一つは我がカイマン家であり、残り二つがアルトリウス公爵家とルシリオン公爵家であった。
それぞれの公爵家の力は均衡しており、それぞれが対抗し、外敵がある時には協力もしながら切磋琢磨してきた。
俺は公爵家の子どもといえど、三男で当主ですらない。
ましては少し前まで変態令息とも呼ばれていた男だ。
二人の公爵が俺に頭を下げるなど以前までは考えられなかったことだった。
「頭を上げてください。お二人は私よりも遥かに身分は上です。一体どういう風の吹き回しか怖くなるのですが……」
十中八九、イザベラ妃のクーデター絡みの話だろうとは思うが、俺は探りを入れる。
「王政の混乱に関してご報告と相談に参りました」
「なるほど……」
俺はコーヒーを口に含む。
「まずはイザベラ妃ですがクーデターの疑いがある為、拘束しております。同時にオルデア王に対して警備と毒見の強化を行い、体調が芳しくない所から上級治癒魔術師に治療に当たらせております」
情勢がカイマン家有利に働き、俺という人物の台頭もある為、対抗するのは悪手だと判断して先手を打ってきたということだろう。
「御家は両方ともオルデア王への身辺の警戒の強化に反対の立場だったと思いますが、どのような考えの変化があったのでしょうか?」
「王は最近明らかに体調を崩しております。表立った暗殺の動きがなかったので問題ないと判断した我々が間違っておりました」
都合がいいとは思う。
彼らがカイマン家に否定的なイザベラ妃を担ぎ、カイマン家の排除に動いたことは知っている。
想像以上にイザベラ妃が暴走して扱いに苦慮していたようだが、この変わり身の早さには逆に感心するな。
今の俺ならアルトリウス公爵家とルシリオン公爵家を潰すのは可能だろう。
過去の因縁もあるので、潰してスッキリ爽快というのもいいかもしれない。
だが、それをすれば今は従順に振る舞っている彼らは間違いなく牙をむいてくる。
そうなれば不要な軋轢が生じるばかりか、下手すると国を二分しかねない。
そのような事態は望むべきものではなかった。
幸いなことにアルトリウス公爵とルシリオン公爵は、この迅速な判断と行動から鑑みるに二人とも馬鹿ではなさそうだ。
裏での考えや心情はどうであれ、政治ゲームを思惑通りに興じてはくれるだろう。
「承知しました。それで後、相談というのはなんでしょうか?」
「一週間後にイザベラ妃の審問会を行うことになっております。その審問会にグレイス殿も参加いただければと」
「その最終裁定は王が行うのですよね? 俺は別にいらないのでは」
「そちらは王の要望となっております」
「そうですか……」
イザベラ妃は現在王族でそれに連なる利害関係者は多くいるし、つい最近まで国を牛耳っていたのだ。
ほとんどが寝返るだろうが、一大勢力を国に誇っていた。
窮鼠猫を噛むではないが、良からぬ考えを起こすものがでないとは限らない。
それに対する抑止力、あるいは、一種の後ろ盾として俺を召喚したいということなのだろう。
「承知しました。それでは当日参加させていただきます」
「よろしくお願いいたします。それでは私たちはこれで……」
要件だけ伝えると二人の公爵は洋服を直しながら席を立った。
表情や声色にはそのような気配は微塵も見せはしないが、本来はこんな所に来たくもないし、滞在もしたくないのだろう。
不要な会話をせずに利害のみで接する姿勢はスマートにも感じた。
「あ、そうそう。一つお伝え忘れてました」
アルトリウス公爵は部屋を出る直前になってこちらを振り返る。
「イザベラ妃の裁定が終わった後には英雄グレイス殿を称えて、王都を上げて祝祭を上げようと言われておりました。主役になりますので是非ご参加ください」
そう言われたら参加しないわけにはいかないよな。
その言葉を最後に二人の公爵は颯爽と部屋を出ていった。
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