クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン

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第12話 結婚発表

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「ぽかぽか陽気が気持ちいいのう」

 馬車に同上している高齢の男性が寝ころびながら述べる。
 白髪に口髭を蓄えている小柄な老人だ。
 
「そうっすね。ここ数日雨だったから尚更っすね」

 今度は高齢の男性の傍らに座る青年が話す。

「どうじゃ、同じように寝ころばんか? 気持ちいいぞ」
「はは、確かに気持ちよさそうですね」

 俺に向かって話しかけてきたので、適当に濁す。
 今、この馬車は田舎街から帝都へと向かっている最中だった。

「もうお一方はどうじゃ?」
「魅力的な提案ですが、ここは土足の床でもありますから……」

 同上している20代くらいの細目の男が答える。

「師匠みたいな、不潔な人間ばかりじゃないんすよ」
「なにが不潔じゃ、師匠をつかまえて。全く、こんな弟子を持ってわしは幸せものじゃわい。お嬢さんはどうじゃ?」
「結構です」

 フードを深くまで被った女性も断る。
 同上してからずっとフードを深くまで被っているので、容姿や年齢もはっきりとわからなかった。
 ただ今の声の感じだと、まだ若そうだ。
 傍らに剣を携えているので、剣を使うのだろうくらいしかわからない。

「みなさん、帝都まではどういった用事で?」

 細目の男が問いかける。

「わしらは剣士の武者修行として世界を廻っとる最中での。そこの未熟者のロイを知り合いの道場に連れていって、鍛えようかと考えとる」
「自分は老い先短い師匠の世界旅行に付き合って、身の回りの世話をして上げてるんです」
「全く口の減らん弟子じゃわい」
「ははは」

 細目の男は苦笑いする。
 こちらに視線を向けてきたので今度は俺が答える。

「最近冒険者になったんですが、帝都の方が稼げると聞いて。まあ、実力がないと稼ぐのは難しいとは思うですけど」

 奈落から転移したのが田舎街だった。
 早速冒険者登録していくつか依頼をこなしたが、あまり報酬のいいものはなく、帝都の噂を聞いて向かっている最中だった。
 異世界召喚した国からは距離があるらしく、とりあえずは目立たないようにだけ気をつけて動いている。

「冒険者、いいですね! 実は私も冒険者をしていまして。といっても生きていく日銭を稼ぐだけの細々したものですが」
「そうやって世界を転々と廻っとるのかの?」
「ええ、見慣れない土地に行くのが好きで。一か所に留まれない性分でして、ははは」

 そうやって世界を廻る冒険者がいることは聞いていた。
 ただ、生きていく日銭を稼ぐだけというのは謙遜だろう。
 先ほどまでいたのが田舎街ではあるが、そこにいた冒険者たちと比べると細目の青年のレベルは72と随分と高い。
 ランクでいえばAランク相当と思われ、田舎街には一人も相当するような冒険者はいなかったからだ。

 細目は女性にも視線を向けるが、女性が答えることはなかった。

「どうじゃ、皆さん、紅茶でも飲まんか?」
「まあ用意するのは俺なんすけどね」
「馬鹿弟子は無視していいからの」
「すみません、いただきます」
「私も」
「いただきます」
「じゃあ、ロイよろしく頼む」
「はいはい」

 ロイと呼ばれる青年は手際よく紅茶の準備をしていく。
 火魔法でうまいこと火をかけてお湯を沸騰させて、そこに茶葉を入れる。
 紅茶のいい香りが風に運ばれて漂ってくる。
 
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「どうも」

 給された紅茶を早速飲む。
 異世界に来てはじめて飲む紅茶だ。
 普通にうまい。

「美味しいです」
「ありがとうっす」
「これだけがロイの取柄での」
「うるさいっす」

 心地よい陽気に包まれながら飲む紅茶の味は格別だ。
 馬車は高地にさしかかり、下界に見える景色も素晴らしかった。

「ところで左利きですか?」

 俺は細目の男に問いかける。
 男は自身のグラスを掴む左手を見る。

「よくわかりましたね」
「そんな気がしただけです」

 ほとんど当てずっぽうだった。

「冒険者をされてるっていうことでしたが、武器はなにをお使いですか? ぱっと見では見当たらないので、もしかしたら魔術を使われるのかなと。それとも何か特殊な武器とか」
「ああ、私はこれですね」

 細目の男はそう述べて、革の鎧の胸部を開いて見せると、脇の下に二つ短剣があった。

「短剣使いの方でしたか。すみません、好奇心から不躾なことを聞いて」
「いえいえ、知らないことに興味を持つのはいいことですよ」

 男は紅茶を飲みながら答える。

「ところで、最近発表されましたが、皆さんご存じですか? ローゼンベルク公の令嬢の結婚発表。てあれ、相手だれだったっけ……」
「第5皇子のフェリクス様ですね」

 細目の男が答える。
 
「ほう、あのお転婆がついに結婚か! めでたいのう」
「興味ないっすけど、結婚式には参加してみたいっすね。ご馳走一杯食べられそうっす」
「万が一呼ばれたとしてもお前は連れて行かんわい」
「いや、師匠にはお世話という名の介護が必要っすから。付き添いが必要っす」
「言っとれ」

 俺は鞄の中から一枚の用紙を取り出す。

「なんですかそれは?」
「ああ、手配書です。ちょっと読み上げますね」

 なんのことかと俺に注目が集まる。

「A級マンハント依頼。討伐対象通称、首斬りのレフティ。20代の男性で中肉中背、細目の特徴を持つ強盗殺人犯。左利きで短剣を使用し、裕福な商人の商隊を主な標的としている。殺害時にはいつも首筋を狙うことから、首斬りのレフティという異名で呼ばれている。馬車に乗り合わせ、乗客を殺害後、荷物を奪うのが手口。商隊の護衛をも殲滅する能力を持つため、非常に危険。また一般の乗り合いを襲うことも有り。この犯人の捕獲または討伐を依頼する」

 読み上げた後、その場がシンとする。
 そして、少し間が空いた後に細目の男は笑いだした。

「あはははは、まさかその手配書の犯人が私だと言うんじゃないですよね。確かに私は細目の短剣使いの左利きで、手配書の特徴と同じです。ですが、他人の空似というのはよくあることですよ。断言します、全くの人違いです」
「そうですか……」

 俺は手配書を鞄にしまう。

「まあ、でも強盗殺人犯に間違われるのは正直気分がよくないです。ちょっと謝ってもらってもいいですか? 軽くでかまいませんので」
「いえ、謝る必要はないですね。ちなみにお名前はなんですか?」
「ゼインです。謝らないつもりですか?」

 ゼインは眉間にシワを寄せて怒気を発する。

「謝る必要はないと言ったのです」
「若気の至りというのはよくあることです。私もまだ若年なのでよくミスは犯します。ですが、ミスをしてもその後が肝心です。いくら冒険者に成りたてだといっても、君のその態度はいただけないですね」
「間違ってないですし」
「おい、お前下手にでてりゃいい加減にしろよ。そこまで言うなら証拠を出せ! もし、何も証拠を出せないようならダダじゃおかないぞ!」

 ついに烈火のごとく怒りだす。

「あっ、すいません。やっぱり謝ることはありました」
「なんだ、やはり非を認めるのかよ。じゃあ、最初からイキって否定するんじゃないよ!」

 それ見たことかという顔をして勝ち誇る。

「すみません、先ほどの結婚発表、実は嘘なんです。結婚の予定自体は事実なんですけど、それはまだ発表されていなくて秘匿されているんですよ」
「はあ!?」

 ゼインは絶句し、その細い目を最大限に見開いた。
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