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オマケ
因果応報1
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王宮で催されるパーティーホールは着飾った貴族達でごった返していた。
ソフィアはこの場所にはトラウマがあり、気が進まなかったがヴィンセントの顔を立てて出席していた。以前、階段から突き落とされた事実をヴィンセントは知らない。しかし、階段から落ちたことは知っているので今夜は片時も離れようとはしなかった。
「出席せずとも問題なかったのだが……」
ダンスホールで二曲踊ったあと、ヴィンセントはソフィアを連れて移動していた。
「ヴィンセントのお知り合いの方々とお話出来るのは楽しいわ」
そこに偽りはない。仕事を手伝っていることもあり、ヴィンセントから語られる人の顔と名が一致するのは絵画に色が加えられるようでワクワクとした。
「前にここに来た時──」
ヴィンセントは二階に続く大階段に足をかけながら言う。
「ソフィアと踊りたいと思っていたが言い出せなかったのを思い出した。リベンジ出来て嬉しいよ」
顔を上げるとヴィンセントと目が合い、ソフィアはこの目に見つめてもらいたかったことを思い出していた。
「私も踊りたかったわ。記憶って書き換えられるのね」
寂しさも今は昔、幸福に上書きされて色褪せていく。
階段を登り切ると、女性たちが輪になって話していた。色とりどりのドレスを避けながら進もうとするが、ソフィアは動きを止めた。
「ソフィア……?」
どうしたのかとヴィンセントも足を止める。ソフィアの顔を窺おうとしたヴィンセントに少し離れたところから声がかかった。
「よお、ヴィンセント。我々にその美しい奥さんを紹介してくれないのか?」
親しみを込めてヴィンセントに話しかけるその男性の横にはにこやかに微笑む女性が佇んでいた。ヴィンセントはその女性に、腕を体の前で組み正式な挨拶をする。
「久しぶりにお目にかかれて光栄です。アイリーン様」
「こちらこそ。ヴィンセント様の美しさには惚れ惚れいたしますけれど、今は奥さまの美しさに夢中ですわ」
そう言い終えて、アイリーンはソフィアに挨拶し、続けて途方もないことを言った。
「心配しておりましたのよ。前にお見かけした時、イヴァンヌ・ニコリッチ嬢からひどい仕打ちを受けていたでしょう? 階段から突き落とすなんて牢獄行きでいいと思うのよ。本当に──」
ここで顔色を変えたヴィンセントが口を挟んだ。
「階段から突き落とす? それは……」
「ああ、ヴィンセントは知らんのか。我々は見ていたんだが、君の愛妻を突き落としたんだよ。ほら、クリスティン・アントワープ様の取り巻きがね」
ややつぶらな瞳でアイリーンがソフィアを気の毒そうに見ていた。
「もし、あなたが訴える気があるならば私たちは証言いたします。いつでも相談してくださいね」
「そうそう。あれは明らかに故意だからな。我らと雑談していたみんなにも証言するように言うから、いつでも言ってくれたまえ」
夫妻の言葉にヴィンセントは明らかに狼狽していた。
「なぜ、あの時言ってくれなかったのだ」
夫妻は顔を見合わせて、それから男のほうが肩をすくめた。
「それはクリスティン・アントワープ様とヴィンセントが親しい間柄だったから。クリスティン様の取り巻きが酷いことをしたと言っても信じないだろ?」
愕然としているヴィンセントを横目に、夫妻はソフィアの美しさを褒め称え、また会いたいと言ってから去っていった。
「あの、ヴィンセント?」
ぼんやりとしたままのヴィンセントにソフィアが声を掛けると、ヴィンセントはうつむいた。
「知らなかったでは済まされないな。ソフィア、君を苦しめたのは私の視野の狭さだ」
元気のないヴィンセントにソフィアはもたれかかって「終わったことです。今、幸せなのに過去を振り返る必要はないわ」と言い切った。
「帰ろうか。ソフィアに嫌なことを思い出させたくない。それに今イヴァンヌ・ニコリッチに会ったら……私は階段から突き落とすだけでは済ませそうもない。あらゆる痛みを与え──」
「ヴィンセント。本当に良いの。ヴィンセントにはそのようなことをしてほしくないわ。牢獄に入れられたら一緒には居られないもの。ずっとそばに居て欲しい。そうね、帰りましょう」
ヴィンセントが拳を握っているのをソフィアも気がついていたが、とにかく怒りを鎮めて欲しかった。
「そうだな……帰ろう」
ヴィンセントが帰ることに同意したことで、ソフィアはこのことに幕引きがなされたと思っていた。
ソフィアはこの場所にはトラウマがあり、気が進まなかったがヴィンセントの顔を立てて出席していた。以前、階段から突き落とされた事実をヴィンセントは知らない。しかし、階段から落ちたことは知っているので今夜は片時も離れようとはしなかった。
「出席せずとも問題なかったのだが……」
ダンスホールで二曲踊ったあと、ヴィンセントはソフィアを連れて移動していた。
「ヴィンセントのお知り合いの方々とお話出来るのは楽しいわ」
そこに偽りはない。仕事を手伝っていることもあり、ヴィンセントから語られる人の顔と名が一致するのは絵画に色が加えられるようでワクワクとした。
「前にここに来た時──」
ヴィンセントは二階に続く大階段に足をかけながら言う。
「ソフィアと踊りたいと思っていたが言い出せなかったのを思い出した。リベンジ出来て嬉しいよ」
顔を上げるとヴィンセントと目が合い、ソフィアはこの目に見つめてもらいたかったことを思い出していた。
「私も踊りたかったわ。記憶って書き換えられるのね」
寂しさも今は昔、幸福に上書きされて色褪せていく。
階段を登り切ると、女性たちが輪になって話していた。色とりどりのドレスを避けながら進もうとするが、ソフィアは動きを止めた。
「ソフィア……?」
どうしたのかとヴィンセントも足を止める。ソフィアの顔を窺おうとしたヴィンセントに少し離れたところから声がかかった。
「よお、ヴィンセント。我々にその美しい奥さんを紹介してくれないのか?」
親しみを込めてヴィンセントに話しかけるその男性の横にはにこやかに微笑む女性が佇んでいた。ヴィンセントはその女性に、腕を体の前で組み正式な挨拶をする。
「久しぶりにお目にかかれて光栄です。アイリーン様」
「こちらこそ。ヴィンセント様の美しさには惚れ惚れいたしますけれど、今は奥さまの美しさに夢中ですわ」
そう言い終えて、アイリーンはソフィアに挨拶し、続けて途方もないことを言った。
「心配しておりましたのよ。前にお見かけした時、イヴァンヌ・ニコリッチ嬢からひどい仕打ちを受けていたでしょう? 階段から突き落とすなんて牢獄行きでいいと思うのよ。本当に──」
ここで顔色を変えたヴィンセントが口を挟んだ。
「階段から突き落とす? それは……」
「ああ、ヴィンセントは知らんのか。我々は見ていたんだが、君の愛妻を突き落としたんだよ。ほら、クリスティン・アントワープ様の取り巻きがね」
ややつぶらな瞳でアイリーンがソフィアを気の毒そうに見ていた。
「もし、あなたが訴える気があるならば私たちは証言いたします。いつでも相談してくださいね」
「そうそう。あれは明らかに故意だからな。我らと雑談していたみんなにも証言するように言うから、いつでも言ってくれたまえ」
夫妻の言葉にヴィンセントは明らかに狼狽していた。
「なぜ、あの時言ってくれなかったのだ」
夫妻は顔を見合わせて、それから男のほうが肩をすくめた。
「それはクリスティン・アントワープ様とヴィンセントが親しい間柄だったから。クリスティン様の取り巻きが酷いことをしたと言っても信じないだろ?」
愕然としているヴィンセントを横目に、夫妻はソフィアの美しさを褒め称え、また会いたいと言ってから去っていった。
「あの、ヴィンセント?」
ぼんやりとしたままのヴィンセントにソフィアが声を掛けると、ヴィンセントはうつむいた。
「知らなかったでは済まされないな。ソフィア、君を苦しめたのは私の視野の狭さだ」
元気のないヴィンセントにソフィアはもたれかかって「終わったことです。今、幸せなのに過去を振り返る必要はないわ」と言い切った。
「帰ろうか。ソフィアに嫌なことを思い出させたくない。それに今イヴァンヌ・ニコリッチに会ったら……私は階段から突き落とすだけでは済ませそうもない。あらゆる痛みを与え──」
「ヴィンセント。本当に良いの。ヴィンセントにはそのようなことをしてほしくないわ。牢獄に入れられたら一緒には居られないもの。ずっとそばに居て欲しい。そうね、帰りましょう」
ヴィンセントが拳を握っているのをソフィアも気がついていたが、とにかく怒りを鎮めて欲しかった。
「そうだな……帰ろう」
ヴィンセントが帰ることに同意したことで、ソフィアはこのことに幕引きがなされたと思っていた。
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