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秘密
秘密⑤
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気がついたらベットの上だった。しかも夜だったはずなのに、部屋の奥まで光が入り込んでいる。
「目覚めたか」
この声だけは悩む余地もなくダグマだとわかる。アデリーは声のする方へと顔を向けた。
「ダグマさん……ロセは」
腹部を蹴られていたのが気掛かりで真っ先にロセのことが浮かんだ。
ダグマはアデリーに眉根を上げてみせた。
「アザは出来たようだが元気だ。もう少ししたらお前の看病をしに来る」
少し熱があるのか、アデリーは頭がモヤモヤしていたが、その言葉で霧が晴れたように弾かれた。
「ロセが? 本当ですか?」
ダグマが横に居てくれることも嬉しいが、あのロセが来てくれるなんて。
「ああ。ずっとアデリーの近くに居たんだが、今は湯に浸かって食事をとっている」
話している間中、ダグマの表情がずっと冴えず、曇ったままだった。
「そうだったのですね……」
ダグマの顔色をうかがっていたら、逆に体調はどうかと聞かれた。
「熱っぽいです」
「腹は痛くないのか?」
「痛くないと言ったら嘘になります。でもそれほどでもないです。ちょっとヒリヒリします」
リルの事を思い出すとそれだけで震えてしまいそうになった。怖いのはもちろんのこと、なぜという疑問が渦巻き、気分も悪くなる。
「リルは夜のうちに遠くに逃げた。カルロと相談して大門を早いうちに再建することにした。それまでは男たちで交代で見張りをし侵入者を防ぐから安心しろ」
ダグマは人差し指の甲でそっとアデリーの頬を撫でた。
「お前の金細工は持っていかれたな。ロセの話を聞く限り、リルははじめからアデリーの財産目当てだったんじゃないだろうか。腹を刺すというより、お前の巾着を取るのに一緒に腹を切ったんだろう」
思い返しても、リルがプロポーズをするつもりがあったのかアデリーも悩むところだった。
「リルは誕生日だからプロポーズをしたいと言っていました。ロセにプロポーズをしたいから相談にのってほしいと呼び出されました。でも──」
そこまで離したところで扉が開かれた。
「アデリー、目覚めたならそう言いなさいよ!」
ツカツカと入ってきて、額に手を置いたロセは「熱があるわね。傷を治そうと体が戦っているのよ」と、アデリーを半ば無理やりベットに寝かせた。たった今体を起こしたばかりだったのに再び寝かされてアデリーはやや不満だった。なんせ体がギシギシとするのだ。ちょっと動きたいし、できれば体を起こしていたかった。
「ロセ。アデリーが蹴られたところは大丈夫かって気にしてるぞ」
「押すと痛いけどそれくらいよ。リルのことは許せない! ねぇ、なんであんなやつの部屋に行ったのよ」
蹴られたからなのか、ロセはリルをあんなやつ呼ばわりだ。今ならアデリーも一緒になってそう呼びたい気持ちはあるが。
「今ダグマさんにも話したのだけど、リルが誕生日にプロポーズしたいから手伝って欲しいって言ってきたのよ」
「誕生日? 誰の?」
「リルのよ」
ロセは身震いすると「嘘よ! リルの誕生日は、確か春先だったはず。うろ覚えだから間違えていたかしら。まぁいいわ。で、誰にプロポーズ? アデリーに?」と、まるで第三者的な物言いだ。
「あなたによ。幼馴染だからなかなかそういう空気にならないから相談に乗ってくれって」
ロセはまた身震いする。目を見開いて「意味がわからない。リルは確かに昔から知ってはいたけど……親しくなんかないわよ」と、憤慨した。これにはダグマも黙っておらず、険しい顔で口を開いた。
「だが、アイツはロセを探していると言ってここに来たんだぞ」
「昔からちょっと変わった奴なのよね。どうも楽して金を手に入れようって思うらしくて、一時期お爺ちゃんのところに通ってきてたのよ。薬師ってお金になるから習いたいってお金の話ばかり。初めはお爺ちゃんも教えたりしていたみたい。でもリルが来るたび薬の瓶が減るようになって、追い返すようになったって」
なんだか二人の関係は思っていたものとは違うようだ。辻褄は合っている。リルとロセは必要以上の会話すらしていなかった。
「じゃあ、幼馴染という関係ではなかったのか……」
今日はずっと険しい面持ちのダグマの顔がますます曇った。
「昔から知っているだけ。最近、用もないのに上の階あたりをうろついていたから、警戒していたのよ。だって、また薬を盗まれたら困るでしょ? 一昨日だって、薬を数えていたら足らないからリルの部屋まで押しかけたの」
アデリーは「一昨日?」と、そこを気にするとダグマはそうだと答えた。
「長い事眠っていたからな」
これにロセが付け加える。
「足らなくなったのは睡眠薬よ。たぶん飲まされたんだと思うわ」
そこで珍しくロセがチラチラとアデリーを覗う素振りを見せてから小声で続けた。
「その……悪かったわ。私が薬の管理をもっとしっかりしておくべきだった。これが毒薬だったら大変だったもの」
小声とはいえ、ロセが謝った。アデリーは驚くと共に「あなたも怪我をしたでしょう? 来てくれて助かったわ。感謝してる」と、返した。
「目覚めたか」
この声だけは悩む余地もなくダグマだとわかる。アデリーは声のする方へと顔を向けた。
「ダグマさん……ロセは」
腹部を蹴られていたのが気掛かりで真っ先にロセのことが浮かんだ。
ダグマはアデリーに眉根を上げてみせた。
「アザは出来たようだが元気だ。もう少ししたらお前の看病をしに来る」
少し熱があるのか、アデリーは頭がモヤモヤしていたが、その言葉で霧が晴れたように弾かれた。
「ロセが? 本当ですか?」
ダグマが横に居てくれることも嬉しいが、あのロセが来てくれるなんて。
「ああ。ずっとアデリーの近くに居たんだが、今は湯に浸かって食事をとっている」
話している間中、ダグマの表情がずっと冴えず、曇ったままだった。
「そうだったのですね……」
ダグマの顔色をうかがっていたら、逆に体調はどうかと聞かれた。
「熱っぽいです」
「腹は痛くないのか?」
「痛くないと言ったら嘘になります。でもそれほどでもないです。ちょっとヒリヒリします」
リルの事を思い出すとそれだけで震えてしまいそうになった。怖いのはもちろんのこと、なぜという疑問が渦巻き、気分も悪くなる。
「リルは夜のうちに遠くに逃げた。カルロと相談して大門を早いうちに再建することにした。それまでは男たちで交代で見張りをし侵入者を防ぐから安心しろ」
ダグマは人差し指の甲でそっとアデリーの頬を撫でた。
「お前の金細工は持っていかれたな。ロセの話を聞く限り、リルははじめからアデリーの財産目当てだったんじゃないだろうか。腹を刺すというより、お前の巾着を取るのに一緒に腹を切ったんだろう」
思い返しても、リルがプロポーズをするつもりがあったのかアデリーも悩むところだった。
「リルは誕生日だからプロポーズをしたいと言っていました。ロセにプロポーズをしたいから相談にのってほしいと呼び出されました。でも──」
そこまで離したところで扉が開かれた。
「アデリー、目覚めたならそう言いなさいよ!」
ツカツカと入ってきて、額に手を置いたロセは「熱があるわね。傷を治そうと体が戦っているのよ」と、アデリーを半ば無理やりベットに寝かせた。たった今体を起こしたばかりだったのに再び寝かされてアデリーはやや不満だった。なんせ体がギシギシとするのだ。ちょっと動きたいし、できれば体を起こしていたかった。
「ロセ。アデリーが蹴られたところは大丈夫かって気にしてるぞ」
「押すと痛いけどそれくらいよ。リルのことは許せない! ねぇ、なんであんなやつの部屋に行ったのよ」
蹴られたからなのか、ロセはリルをあんなやつ呼ばわりだ。今ならアデリーも一緒になってそう呼びたい気持ちはあるが。
「今ダグマさんにも話したのだけど、リルが誕生日にプロポーズしたいから手伝って欲しいって言ってきたのよ」
「誕生日? 誰の?」
「リルのよ」
ロセは身震いすると「嘘よ! リルの誕生日は、確か春先だったはず。うろ覚えだから間違えていたかしら。まぁいいわ。で、誰にプロポーズ? アデリーに?」と、まるで第三者的な物言いだ。
「あなたによ。幼馴染だからなかなかそういう空気にならないから相談に乗ってくれって」
ロセはまた身震いする。目を見開いて「意味がわからない。リルは確かに昔から知ってはいたけど……親しくなんかないわよ」と、憤慨した。これにはダグマも黙っておらず、険しい顔で口を開いた。
「だが、アイツはロセを探していると言ってここに来たんだぞ」
「昔からちょっと変わった奴なのよね。どうも楽して金を手に入れようって思うらしくて、一時期お爺ちゃんのところに通ってきてたのよ。薬師ってお金になるから習いたいってお金の話ばかり。初めはお爺ちゃんも教えたりしていたみたい。でもリルが来るたび薬の瓶が減るようになって、追い返すようになったって」
なんだか二人の関係は思っていたものとは違うようだ。辻褄は合っている。リルとロセは必要以上の会話すらしていなかった。
「じゃあ、幼馴染という関係ではなかったのか……」
今日はずっと険しい面持ちのダグマの顔がますます曇った。
「昔から知っているだけ。最近、用もないのに上の階あたりをうろついていたから、警戒していたのよ。だって、また薬を盗まれたら困るでしょ? 一昨日だって、薬を数えていたら足らないからリルの部屋まで押しかけたの」
アデリーは「一昨日?」と、そこを気にするとダグマはそうだと答えた。
「長い事眠っていたからな」
これにロセが付け加える。
「足らなくなったのは睡眠薬よ。たぶん飲まされたんだと思うわ」
そこで珍しくロセがチラチラとアデリーを覗う素振りを見せてから小声で続けた。
「その……悪かったわ。私が薬の管理をもっとしっかりしておくべきだった。これが毒薬だったら大変だったもの」
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