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弓師トニ
弓師トニ②
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驚いた二人の顔があまりに間の抜けた感じになっていたからか、ニコラスまで驚いた顔をした。
「そんなに驚くことか? リルはロセのことを幼馴染と言ったらしいじゃないか。その割にはほとんど目も合わさないどころか、話もしてなかったろ? 俺だって違和感を覚えていたが、君らはなにも感じてなかったのか」
そう言われれば思い当たる節はある。朝の挨拶すらロセはリルにほとんどしていなかった。でもそれはアデリーにもしなかったので、その時はそこまで不思議には思わずにいた。でも、二人が立ち話をしているとか、昔話をしているとか、そういう光景も目にしていなかった。
「私はリルの言葉を信じ切っちゃってたみたいです。今思えば確かに全然親しくなかったもの」
「そうじゃな。ロセはよくワシのところに来てくれたが、ここの人の話を聞かせてくれる時、リルの名前は出てこなかった」
二人は合点がいって、複雑な表情になった。もっと早くに警戒していれば良かったのに、すっかり騙されていたのだ。
「二人もわかったと思うけど、息を吐くようにデタラメを言えるやつってのは居るんだ。それに対抗するには、日頃からの観察力が必要なんだよ。特にアデリーは気をつけるんだな」
名指しで注意されて目を丸くした。確かにリルにはすっかり騙されたけれど、それはベニートも同じなのに、アデリーにだけ釘を刺す意味がわからなかった。
それなのに、ベニートはアデリーを横から見つめて「確かに」と、納得していた。
「どうしてお二人共私限定で気をつけるように言うのでしょう?」
ニコラスとベニートは顔を見合わせて、それからニコラスが肩を上げた。
「そりゃ、君がやたらと純粋だからさ。俺達は多少なりとも世間に揉まれてきたからな。悪い出来事だってそれなりにあってきた。しかし君はどうだ? あまりそういう体験をしてこなかったんじゃないか?」
確かに領主の子であったから、屋敷でぬくぬく暮らしていたことは否定できない。
「でも、屋敷を襲撃されて逃げてきましたから、全然そういう体験がないわけではないわ」
なんとなく反論したい気分だった。世間知らずだと言われているみたいで変に自尊心が傷つけられた気持ちになったのだ。ただ、実際は自分でも世間知らずだと認めていたのだから、ただ恥ずかしさと悔しさが混ざっただけだったのかもしれない。
「アデリー、純粋なのは悪いことじゃないぞ。ワシはお前さんのそういうところが好ましいと思っているし」
ベニートはシワシワの手でアデリーの手を取って、二回ほど優しく叩いて力付けた。
「俺もそう思うよ。俺はとっくに純粋さなんて消えちまったし、アデリーのそういうところはなんだかキラキラして見える。ただ、なんだ、心配なだけだ」
その後、傷口はどれくらいで塞がりそうなのかニコラスが聞いてきたので、話が変わったのを機会にベニートが部屋から出ていった。どうやらただアデリーの体調を確認しにきただけだったらしい。
「もう出血はしていないし、かさぶたになっているんです。完全に跡が消えるかはわからないってロセが話していました」
ニコラスは美しい顔を歪めて「リルめ。アデリーの体に傷跡が残ったりしたら探し出して首を締めてやる」と吐き出した。
「あ、ニコラスさん。ニコラスさんが勧めてくれたお陰で装飾品の殆どは残っています。あの時助言してくださって、本当に感謝しています」
「たまたまだけど……いや、そういう話をリルに立ち聞きされてたか? もし、全部ダグマが預かることになったらリルは手出しできない。となると、量は減ったが、アデリーがまだ持っている今がチャンスと思ったのかもな」
ロセが確か上の方の階にいるリルを目撃している。となると、ニコラスの言っていることも見当違いではないかもしれない。
「リルにやむにやまれぬ理由があったならまだいいんですけど…」
「それなら許せるのか? それはダメだ。人を傷付けてまで盗みを働かなきゃならないなんて、そんな理由どこを探したってありゃしないぞ」
それはそうなのだが、リルを信じていた自分を正当化したい気持ちもあり、ついついリルに寛容になってしまう。
「そんなに驚くことか? リルはロセのことを幼馴染と言ったらしいじゃないか。その割にはほとんど目も合わさないどころか、話もしてなかったろ? 俺だって違和感を覚えていたが、君らはなにも感じてなかったのか」
そう言われれば思い当たる節はある。朝の挨拶すらロセはリルにほとんどしていなかった。でもそれはアデリーにもしなかったので、その時はそこまで不思議には思わずにいた。でも、二人が立ち話をしているとか、昔話をしているとか、そういう光景も目にしていなかった。
「私はリルの言葉を信じ切っちゃってたみたいです。今思えば確かに全然親しくなかったもの」
「そうじゃな。ロセはよくワシのところに来てくれたが、ここの人の話を聞かせてくれる時、リルの名前は出てこなかった」
二人は合点がいって、複雑な表情になった。もっと早くに警戒していれば良かったのに、すっかり騙されていたのだ。
「二人もわかったと思うけど、息を吐くようにデタラメを言えるやつってのは居るんだ。それに対抗するには、日頃からの観察力が必要なんだよ。特にアデリーは気をつけるんだな」
名指しで注意されて目を丸くした。確かにリルにはすっかり騙されたけれど、それはベニートも同じなのに、アデリーにだけ釘を刺す意味がわからなかった。
それなのに、ベニートはアデリーを横から見つめて「確かに」と、納得していた。
「どうしてお二人共私限定で気をつけるように言うのでしょう?」
ニコラスとベニートは顔を見合わせて、それからニコラスが肩を上げた。
「そりゃ、君がやたらと純粋だからさ。俺達は多少なりとも世間に揉まれてきたからな。悪い出来事だってそれなりにあってきた。しかし君はどうだ? あまりそういう体験をしてこなかったんじゃないか?」
確かに領主の子であったから、屋敷でぬくぬく暮らしていたことは否定できない。
「でも、屋敷を襲撃されて逃げてきましたから、全然そういう体験がないわけではないわ」
なんとなく反論したい気分だった。世間知らずだと言われているみたいで変に自尊心が傷つけられた気持ちになったのだ。ただ、実際は自分でも世間知らずだと認めていたのだから、ただ恥ずかしさと悔しさが混ざっただけだったのかもしれない。
「アデリー、純粋なのは悪いことじゃないぞ。ワシはお前さんのそういうところが好ましいと思っているし」
ベニートはシワシワの手でアデリーの手を取って、二回ほど優しく叩いて力付けた。
「俺もそう思うよ。俺はとっくに純粋さなんて消えちまったし、アデリーのそういうところはなんだかキラキラして見える。ただ、なんだ、心配なだけだ」
その後、傷口はどれくらいで塞がりそうなのかニコラスが聞いてきたので、話が変わったのを機会にベニートが部屋から出ていった。どうやらただアデリーの体調を確認しにきただけだったらしい。
「もう出血はしていないし、かさぶたになっているんです。完全に跡が消えるかはわからないってロセが話していました」
ニコラスは美しい顔を歪めて「リルめ。アデリーの体に傷跡が残ったりしたら探し出して首を締めてやる」と吐き出した。
「あ、ニコラスさん。ニコラスさんが勧めてくれたお陰で装飾品の殆どは残っています。あの時助言してくださって、本当に感謝しています」
「たまたまだけど……いや、そういう話をリルに立ち聞きされてたか? もし、全部ダグマが預かることになったらリルは手出しできない。となると、量は減ったが、アデリーがまだ持っている今がチャンスと思ったのかもな」
ロセが確か上の方の階にいるリルを目撃している。となると、ニコラスの言っていることも見当違いではないかもしれない。
「リルにやむにやまれぬ理由があったならまだいいんですけど…」
「それなら許せるのか? それはダメだ。人を傷付けてまで盗みを働かなきゃならないなんて、そんな理由どこを探したってありゃしないぞ」
それはそうなのだが、リルを信じていた自分を正当化したい気持ちもあり、ついついリルに寛容になってしまう。
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