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訪問者
訪問者④
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ニコラスは廃城に戻ってすぐトニを探していたがさっぱり見つけられなかった。ベニートに鉱石を持っていったらそこでトニは狩りに行ったことを教えられた。
「人がたくさん来るから新鮮な肉を取ってくるとか言ってたぞ」
ベニートはボソボソと話すので聞き取りにくいがそう言っていたと解釈した。
「どの辺りまで行ったのかは流石にわからないかぁ」
ボヤくニコラスにベニートは「んー、鹿を狩るって話だったな。川を渡って西に行った辺りじゃないかね」と答えた。ニコラスはこの答えに実はかなり驚いていた。なんせベニートは廃城から出ることはおろか、この鍛冶兼自室から出ることもあまり多くはないのだ。それを鹿の生息地まで把握していた。
「なるほど。確かにそっちに鹿が居たな」
驚きを隠して答えたニコラスに、ベニートは頷き、受け取った鉱石を部屋の隅へと運んでいく。
「ロセから聞いただけだがな。鹿ならそっちに居るらしいからな」
「ああ、ロセか。確かにあの娘はこの辺りを随分把握しているようだし、正しそうだ」
薬師なので、多くの時間を散策に費やしている。きっとこれまでもそういう生活をしていたのだろう。ロセは森の中での禁止事項や危険な場所を熟知しているのが話しぶりで伝わってくることも多かった。口は悪いが、薬師としてはかなり出来る方だとニコラスも認めていた。
「じゃあ、ちょっと探してみるか」
出ていこうとしたニコラスを追うようにベニートの声がした。
「あんなに人を集めてお前さん方は何をするつもりなんだ?」
ややトゲを含んだ言い方にニコラスは足を止めて振り返った。
「ただ守りたいものがあるから集まってもらっただけさ。人が増えれば物が増え、それを狙う輩も引き寄せる。門を作ったが、それだけでは不十分だし男手はあったほうがいい」
じっと黙って聞いていたベニートが「それだけか?」とまだ納得していない様子で返した。
「逆に他に何があるっていうんだい?」
「さぁ。ただ、元騎士団でしかも近衛だったんだろ? こんな辺鄙なところに集まる理由が知りたくもなるじゃないか」
ニコラスは顎に手を当て、しばらく考えて、口を開いた。
「そんなに理由が知りたいなら教えよう。理由はダグマだ。我々はダグマの元で沢山の苦難を乗り越えてきた。そのダグマが来いと言うなら行くまでだ。まぁ、既に家族を持ったりした者は来なくていいと言うことだったからここに集まったのはごく一部だが」
話し終えて納得したかとニコラスが問うと、ベニートは「いや、全然」と言うのでニコラスは笑ってしまっていた。
「そうか。まぁ、納得できないならそれでもいいさ。なんにせよ、この冬は快適な寝床にうまい食事、それから安全まで保証されてるんだ。悪くはないだろう」
ベニートは肩をすくめて「確かにこのままいけばそうなる。悪いことが起きないことを祈ってるがな」と、言うので心配性なんだなとニコラスは返し再び扉を目指す。
「トニのところへ行ってくるよ。鹿肉で宴だ、楽しみにしててくれ」
「酒は断っているんで肉だけもらおう」
「そりゃ、いい心掛けだ」
軽妙な返事をしながら消えていく背中をベニートはしばらく見つめていた。姿が見えなくなると考え込む仕草をしてから首を振り、立ち上がった。
並べられた青銅製の矢じりや剣を眺め、ため息をつくのだった。
「戦いに行くような依頼ばかりしおって……」
「人がたくさん来るから新鮮な肉を取ってくるとか言ってたぞ」
ベニートはボソボソと話すので聞き取りにくいがそう言っていたと解釈した。
「どの辺りまで行ったのかは流石にわからないかぁ」
ボヤくニコラスにベニートは「んー、鹿を狩るって話だったな。川を渡って西に行った辺りじゃないかね」と答えた。ニコラスはこの答えに実はかなり驚いていた。なんせベニートは廃城から出ることはおろか、この鍛冶兼自室から出ることもあまり多くはないのだ。それを鹿の生息地まで把握していた。
「なるほど。確かにそっちに鹿が居たな」
驚きを隠して答えたニコラスに、ベニートは頷き、受け取った鉱石を部屋の隅へと運んでいく。
「ロセから聞いただけだがな。鹿ならそっちに居るらしいからな」
「ああ、ロセか。確かにあの娘はこの辺りを随分把握しているようだし、正しそうだ」
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「じゃあ、ちょっと探してみるか」
出ていこうとしたニコラスを追うようにベニートの声がした。
「あんなに人を集めてお前さん方は何をするつもりなんだ?」
ややトゲを含んだ言い方にニコラスは足を止めて振り返った。
「ただ守りたいものがあるから集まってもらっただけさ。人が増えれば物が増え、それを狙う輩も引き寄せる。門を作ったが、それだけでは不十分だし男手はあったほうがいい」
じっと黙って聞いていたベニートが「それだけか?」とまだ納得していない様子で返した。
「逆に他に何があるっていうんだい?」
「さぁ。ただ、元騎士団でしかも近衛だったんだろ? こんな辺鄙なところに集まる理由が知りたくもなるじゃないか」
ニコラスは顎に手を当て、しばらく考えて、口を開いた。
「そんなに理由が知りたいなら教えよう。理由はダグマだ。我々はダグマの元で沢山の苦難を乗り越えてきた。そのダグマが来いと言うなら行くまでだ。まぁ、既に家族を持ったりした者は来なくていいと言うことだったからここに集まったのはごく一部だが」
話し終えて納得したかとニコラスが問うと、ベニートは「いや、全然」と言うのでニコラスは笑ってしまっていた。
「そうか。まぁ、納得できないならそれでもいいさ。なんにせよ、この冬は快適な寝床にうまい食事、それから安全まで保証されてるんだ。悪くはないだろう」
ベニートは肩をすくめて「確かにこのままいけばそうなる。悪いことが起きないことを祈ってるがな」と、言うので心配性なんだなとニコラスは返し再び扉を目指す。
「トニのところへ行ってくるよ。鹿肉で宴だ、楽しみにしててくれ」
「酒は断っているんで肉だけもらおう」
「そりゃ、いい心掛けだ」
軽妙な返事をしながら消えていく背中をベニートはしばらく見つめていた。姿が見えなくなると考え込む仕草をしてから首を振り、立ち上がった。
並べられた青銅製の矢じりや剣を眺め、ため息をつくのだった。
「戦いに行くような依頼ばかりしおって……」
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