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帰郷
帰郷⑤
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一緒に来ていたロセが「リル! あんたって男は最低ね。アデリーをこの人に売ったんでしょ?」と、前に出てきた。アデリーの横に立つとリルを上から下まで眺めて、首を振った。
「アデリーを売ったお金で服を新調したってわけね。昔から金の亡者だったもの、納得だわ」
ゴードンがロセとリルを交互に見て、リルに顎を上げて「追っ払え。痴話喧嘩をしたいなら違う場所でやるんだな」と命じた。
「いえ、俺には関係ない女なんで邪魔ならこの高い金を払っている人達に外に出すように言えば良いんです」
傭兵を指してそう告げると、次にダグマをも指さして言う。
「この人がアデリーに入れ知恵しているはず。一緒に追い出すのが良いでしょう」
ダグマは表情一つ変えず、リルを眺めていた。アデリーですらリルが裏切ることに驚かなくなっていた。ゴードンは椅子にふんぞり返ったまま、面倒くさそうに傭兵たちに手を振った。
「だそうだ。外に追い出せ」
傭兵が動こうとしたその時、ニコラスがロセの手を引き、背に隠した。ダグマも背負っていた槍を鞘から抜くと近づいてこようとしていた傭兵の鼻先に切っ先を向ける。槍を構えたままゴードンに視線を移し、低くよく通る声で告げる。
「悪いが出ていくのはお前たちだ。ここは元々アデリーのもの。屋敷の不法占拠だ。直ちに立ち去るがいい」
椅子から身を乗り出して半分立ち上がったゴードンに、トニや他の騎士団たちも抜刀し、それに触発されたゴードン側の傭兵も剣を抜いた。一触即発の空気だ。
「なんだ楯突くつもりか! 身の程知らずの奴らだ」
傭兵を自分のものと勘違いしているのか威勢がいいリルを、ロセがニコラスの背後から顔だけ出して「あんたはほんとなんなのよ! 身の程知らずなのはあんたでしょ」と噛みついた。
「うるさい女だ」
二人の口喧嘩にゴードンのこめかみに血管が浮かび上がる。そのまま苛立ちを爆発させ「ええい、うるさい! 関係ない奴らは黙っとけ。アデリー以外の奴らを始末しろ」と、叫ぶと傭兵が一斉にダグマ達に斬りかかる。元騎士団の面々も賽を投げられたと言わんばかりに傭兵たちをなぎ倒していく。ある者は足を払われ、ある者は大量の血を噴き上げながらひっくり返る。あっという間に傭兵たちは制圧され、うめき声を上げるか息絶えるかして床に転がっていた。
「な! どうなっている。リルよ、お前も剣を抜け!」
雇った傭兵が皆打倒されたことで動揺したゴードンが立ち上がり、リルを盾に喚き散らす。リルも慌てた様子で腰から剣を抜いたが、アデリーが見てもかなり引け腰で、なんとも情けない構えだった。剣に慣れていないのは一目瞭然だ。これなら石工の道具で構えたほうが様になっていたかもしれない。
「ダグマ達が戦えるなんて聞いてないぞ! 隠していたなんて卑怯だ」
リルの言葉に呆れて「卑怯なあんたが言う?」とロセ。
「黙ってろ!」
アデリーはそんなロセの手に短剣が握られていることに気がついた。
「ロセ……?」
小声で問いかけたが、ロセはアデリーを見なかった。ただ、リルに「あんたが私を追ってこなきゃこんなことにはならなかったんだわ」と、呟いた。
ロセは腰の高さに短剣を構えていた。両手で柄を持つとそのまま走り出した。
「ロセ!」
アデリーは叫び名を呼んだが、ロセは少しも揺るがない。リルは驚き、それでも反射的に剣を振り翳した。ニコラスが機敏に槍でリルの剣を弾き、その隙にロセがリルの懐に突っ込んで行った。
「ああ……ロセ」
アデリーは自分が刺された時のことが過ぎり、駆け寄りたいのに震えて足が動いてくれずに立ち尽くしていた。返り討ちにあったアデリーのように剣を奪われたらロセも傷を負ってしまう。しかし、リルは数歩後退してから膝が抜けて倒れていった。
「さぁ、ロセ。それをくれ」
肩で息をし興奮しているロセから、ニコラスがそっと短剣を取り上げ床に捨てる。短剣には血液に混じってどす黒い液体が滴り落ちていた。誰も指摘しないが、ロセが薬師であるのは周知のこと。黒い液体は毒だとアデリーは理解した。
「終わらせたわ。そうよ、終わらせたのよ」
「ああ。君が終わらせたんだ。大丈夫、誰も責めないよ」
ニコラスに肩を抱かれ、ロセは興奮したままアデリーを見た。
「アデリー。リルは私が片付けなきゃならなかった。あなたも自分のことをやって」
それはアデリーにゴードンとの対峙を求めていた。顔をずらし、仲間を失って震え上がる老いた情けない姿のゴードンと目を合わせた。
「アデリーを売ったお金で服を新調したってわけね。昔から金の亡者だったもの、納得だわ」
ゴードンがロセとリルを交互に見て、リルに顎を上げて「追っ払え。痴話喧嘩をしたいなら違う場所でやるんだな」と命じた。
「いえ、俺には関係ない女なんで邪魔ならこの高い金を払っている人達に外に出すように言えば良いんです」
傭兵を指してそう告げると、次にダグマをも指さして言う。
「この人がアデリーに入れ知恵しているはず。一緒に追い出すのが良いでしょう」
ダグマは表情一つ変えず、リルを眺めていた。アデリーですらリルが裏切ることに驚かなくなっていた。ゴードンは椅子にふんぞり返ったまま、面倒くさそうに傭兵たちに手を振った。
「だそうだ。外に追い出せ」
傭兵が動こうとしたその時、ニコラスがロセの手を引き、背に隠した。ダグマも背負っていた槍を鞘から抜くと近づいてこようとしていた傭兵の鼻先に切っ先を向ける。槍を構えたままゴードンに視線を移し、低くよく通る声で告げる。
「悪いが出ていくのはお前たちだ。ここは元々アデリーのもの。屋敷の不法占拠だ。直ちに立ち去るがいい」
椅子から身を乗り出して半分立ち上がったゴードンに、トニや他の騎士団たちも抜刀し、それに触発されたゴードン側の傭兵も剣を抜いた。一触即発の空気だ。
「なんだ楯突くつもりか! 身の程知らずの奴らだ」
傭兵を自分のものと勘違いしているのか威勢がいいリルを、ロセがニコラスの背後から顔だけ出して「あんたはほんとなんなのよ! 身の程知らずなのはあんたでしょ」と噛みついた。
「うるさい女だ」
二人の口喧嘩にゴードンのこめかみに血管が浮かび上がる。そのまま苛立ちを爆発させ「ええい、うるさい! 関係ない奴らは黙っとけ。アデリー以外の奴らを始末しろ」と、叫ぶと傭兵が一斉にダグマ達に斬りかかる。元騎士団の面々も賽を投げられたと言わんばかりに傭兵たちをなぎ倒していく。ある者は足を払われ、ある者は大量の血を噴き上げながらひっくり返る。あっという間に傭兵たちは制圧され、うめき声を上げるか息絶えるかして床に転がっていた。
「な! どうなっている。リルよ、お前も剣を抜け!」
雇った傭兵が皆打倒されたことで動揺したゴードンが立ち上がり、リルを盾に喚き散らす。リルも慌てた様子で腰から剣を抜いたが、アデリーが見てもかなり引け腰で、なんとも情けない構えだった。剣に慣れていないのは一目瞭然だ。これなら石工の道具で構えたほうが様になっていたかもしれない。
「ダグマ達が戦えるなんて聞いてないぞ! 隠していたなんて卑怯だ」
リルの言葉に呆れて「卑怯なあんたが言う?」とロセ。
「黙ってろ!」
アデリーはそんなロセの手に短剣が握られていることに気がついた。
「ロセ……?」
小声で問いかけたが、ロセはアデリーを見なかった。ただ、リルに「あんたが私を追ってこなきゃこんなことにはならなかったんだわ」と、呟いた。
ロセは腰の高さに短剣を構えていた。両手で柄を持つとそのまま走り出した。
「ロセ!」
アデリーは叫び名を呼んだが、ロセは少しも揺るがない。リルは驚き、それでも反射的に剣を振り翳した。ニコラスが機敏に槍でリルの剣を弾き、その隙にロセがリルの懐に突っ込んで行った。
「ああ……ロセ」
アデリーは自分が刺された時のことが過ぎり、駆け寄りたいのに震えて足が動いてくれずに立ち尽くしていた。返り討ちにあったアデリーのように剣を奪われたらロセも傷を負ってしまう。しかし、リルは数歩後退してから膝が抜けて倒れていった。
「さぁ、ロセ。それをくれ」
肩で息をし興奮しているロセから、ニコラスがそっと短剣を取り上げ床に捨てる。短剣には血液に混じってどす黒い液体が滴り落ちていた。誰も指摘しないが、ロセが薬師であるのは周知のこと。黒い液体は毒だとアデリーは理解した。
「終わらせたわ。そうよ、終わらせたのよ」
「ああ。君が終わらせたんだ。大丈夫、誰も責めないよ」
ニコラスに肩を抱かれ、ロセは興奮したままアデリーを見た。
「アデリー。リルは私が片付けなきゃならなかった。あなたも自分のことをやって」
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