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第二部
第16話 女神様の言えないことの1つや2つ
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「というか、何でいきなりこんなこと訊きたいと思ったんだ?」
「……い、言いません」
しらを切る気らしいが、そうは問屋が卸さない。
僕は少し悪戯がかった気持ちを胸に、鞄を肩に掛け直して「ふーん」と軽く返事をした。
「そっかそっか。僕はちゃんとお前の質問に答えたのに、お前は黙秘権を行使するのか」
「ゔっ……。に、日本には、そういう法律があるのです。言いたくないことを訊かれた際に黙秘権を行使するのは、何の問題も──」
「嘘はつかずにまっすぐであれ。だっけ?」
「……っ、そ、それは!」
「ああそうだ。日本には黙秘権という権利がある。けど、それだとお前のポリシーに反するんじゃないのか?」
「う、うぅぅ~~……」
少々意地悪しすぎただろうか。
けれど、お昼休みのことと言い、今の質問のことと言い。少しぐらい、僕からも反撃させてもらわないと納得がいかない。
……ま、ここまで言えばさすがの美桜も、
「……い……言いません!」
「え……」
完全に想定外の黙秘権行使続行宣言に、僕は腑抜けた声が漏れる。
今まで、自身のポリシーに反するような言動はせず、モットーを大事に日々を過ごしてきた美桜が、初めて反したのだ。
驚きのあまり、理由を訊くことを忘れるほどに彼女の行動は想定外だったのだ。
……彼女と付き合いだして約9年。こんなこと、事例が無かったから余計にだ。
「……言っておきますが、私にだって言えないことの1つや2つはあるんですからね」
美桜は軽く放心状態だった僕に向けて人差し指を力強く向けてきた。
「いくら私が曲げることが嫌いだったとしても、曲げないといけないときだってあるんです。私だって欲求を持つ人間ですから。……そうでないと今の環境を守れませんから」
「何か言ったか?」
「な、なんでもありません。とにかく、です。このことはいくら相手が湊君であったとしても言うわけにはいきません。乙女の秘密は、探るものではないですよ?」
僕に向けていた人差し指を、今度は少し照れ隠しをするように唇の前に持ってくる。
乙女の秘密。まさか美桜からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
決して自惚れていたわけではないが、美桜ならば僕相手になら何でも話してくれるものだと、勝手に思い込んでいた。
今回の家出騒動だってそうだ。
いくら『いつか話す』と約束してくれても、それは単に口約束でしかない。
どちらかが拒否すれば、そんなものは虚無となる。理屈だけで考えれば思いついたって不自然ではない。
けれど、思いつかなかったのは、相手が美桜だったからだ。
僕にだけ『素』をみせる彼女のことを、勝手に自己解釈していたにすぎないのだ。
「……そうだよな。言えないことの、1つや2つはあるよな」
僕だってそうだ──美桜と同じく、君に言えていないことの1つや2つはある。
お互いに何でも言えるのが『幼馴染』というわけではない。
相手のことを勝手に判断するのは間違ってるよな。……美桜のこと、少しばかり侮っていたのかもしれない。
「……わかりましたか? では、改めて買い出しに行きましょう。思っていた以上に、時間を食ってしまいました」
「おう」
前を凛々しく歩く彼女の背中はとても綺麗で可憐だ。
そんな彼女のことをもう少し知る努力をしなくちゃいけないかもな。僕も。
そして──僕のことを知らない君に、僕のことを教える努力もしなくちゃいけないときが……いずれ、来るんだろうか。
「……い、言いません」
しらを切る気らしいが、そうは問屋が卸さない。
僕は少し悪戯がかった気持ちを胸に、鞄を肩に掛け直して「ふーん」と軽く返事をした。
「そっかそっか。僕はちゃんとお前の質問に答えたのに、お前は黙秘権を行使するのか」
「ゔっ……。に、日本には、そういう法律があるのです。言いたくないことを訊かれた際に黙秘権を行使するのは、何の問題も──」
「嘘はつかずにまっすぐであれ。だっけ?」
「……っ、そ、それは!」
「ああそうだ。日本には黙秘権という権利がある。けど、それだとお前のポリシーに反するんじゃないのか?」
「う、うぅぅ~~……」
少々意地悪しすぎただろうか。
けれど、お昼休みのことと言い、今の質問のことと言い。少しぐらい、僕からも反撃させてもらわないと納得がいかない。
……ま、ここまで言えばさすがの美桜も、
「……い……言いません!」
「え……」
完全に想定外の黙秘権行使続行宣言に、僕は腑抜けた声が漏れる。
今まで、自身のポリシーに反するような言動はせず、モットーを大事に日々を過ごしてきた美桜が、初めて反したのだ。
驚きのあまり、理由を訊くことを忘れるほどに彼女の行動は想定外だったのだ。
……彼女と付き合いだして約9年。こんなこと、事例が無かったから余計にだ。
「……言っておきますが、私にだって言えないことの1つや2つはあるんですからね」
美桜は軽く放心状態だった僕に向けて人差し指を力強く向けてきた。
「いくら私が曲げることが嫌いだったとしても、曲げないといけないときだってあるんです。私だって欲求を持つ人間ですから。……そうでないと今の環境を守れませんから」
「何か言ったか?」
「な、なんでもありません。とにかく、です。このことはいくら相手が湊君であったとしても言うわけにはいきません。乙女の秘密は、探るものではないですよ?」
僕に向けていた人差し指を、今度は少し照れ隠しをするように唇の前に持ってくる。
乙女の秘密。まさか美桜からそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
決して自惚れていたわけではないが、美桜ならば僕相手になら何でも話してくれるものだと、勝手に思い込んでいた。
今回の家出騒動だってそうだ。
いくら『いつか話す』と約束してくれても、それは単に口約束でしかない。
どちらかが拒否すれば、そんなものは虚無となる。理屈だけで考えれば思いついたって不自然ではない。
けれど、思いつかなかったのは、相手が美桜だったからだ。
僕にだけ『素』をみせる彼女のことを、勝手に自己解釈していたにすぎないのだ。
「……そうだよな。言えないことの、1つや2つはあるよな」
僕だってそうだ──美桜と同じく、君に言えていないことの1つや2つはある。
お互いに何でも言えるのが『幼馴染』というわけではない。
相手のことを勝手に判断するのは間違ってるよな。……美桜のこと、少しばかり侮っていたのかもしれない。
「……わかりましたか? では、改めて買い出しに行きましょう。思っていた以上に、時間を食ってしまいました」
「おう」
前を凛々しく歩く彼女の背中はとても綺麗で可憐だ。
そんな彼女のことをもう少し知る努力をしなくちゃいけないかもな。僕も。
そして──僕のことを知らない君に、僕のことを教える努力もしなくちゃいけないときが……いずれ、来るんだろうか。
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