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第五部
第41話 女神様は伊月を弄り倒すようだ
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すると、今まで寝ていた鈴菜さんが「うぅ~ん……」と寝息を立てながらも、何とか目を開けた。
「おっ、起きたのか?」
「……まだ眠い、です」
「じゃあまだ寝てろ。騒がしくしないからさ」
「……ううん。少し、話に混ざりたいかな」
眠気まなこを摩りながら未だに膝枕は続行中の鈴菜さんは、寝る体勢を少し横へズラす。
まだ隈は消えていない。まだ眠いことには違いないだろうし、普段騒がしいわんこ系の伊月が「騒がしくしない」と豪語するほどに、鈴菜さんに少しでも休んでもらおうとしているのは明白だ。
それでも鈴菜さんは、先程伊月が言っていたように“普通の高校生”らしくこんなしょうもない会話に混ざることを志望した。
……本当はあのとき、起きてたりしてな。まぁ敢えて訊かないことにしよう。
「……仕方ないな。後で保健室行き決定な」
「はぁーい……」
伊月の気迫に負け、鈴菜さんは仕方なくといった形で了承した。
「そういえば訊いたことがありませんでしたが、お2人はどういった関係なのですか?」
「どう? 湊から聞いてるだろ。彼氏彼女の関係だよ」
「いえ、そういうわかりきっていることではなく──」
「あ、うん……」
鈴菜さんには勝った気迫も美桜相手には通用するはずもなく、逆に伊月が美桜の気迫に敗北を決したようだ。
さすがというか、諦めろとその言葉を残す他なかった。
「お2人先日の件から見て、相当仲がよろしいのだとわかりました。では、どうしてなのかと思いまして」
「……それ、ブーメランじゃね?」
「言ってやるな。本人様はまったく気づいてないから」
「……大変だな、お前は」
「もう慣れた」
おそらく今回も、ただただ、疑問に思ったことを消化させたい一心での行動だろう。
天然率100%の脅威を誇る、純粋さ故のブーメラン発言。……まぁ確かに、誰とも話したことないもんな。僕達が出会ったキッカケなんて。キッカケっていうキッカケは無いけど。
すると予想的中──美桜はきょとん、とした効果音と共に首を傾げた。
「どういう意味なのですか?」
「本当だな。美桜、伊月の言うことは無視していいから」
「おい! 随分と失礼すぎじゃありません!?」
「ダメですよ湊君。それでは質問が出来ないじゃないですか」
「ま、真城さん……!」
まるで女神様からのご処置を受けたみたいだ。
しかしこの『真城美桜』という存在を侮ってはいけない。ましてや油断などは絶対にだ──。
「ですが、この質問が了解次第のことは承知しました」
「承知しないで!? 断って!? 君は今、いけない勧誘に引っかかったカモだよ!?」
「鴨に謝ってください」
「そうだそうだー」
「そっちの鴨じゃない! 騙される立場の人のことを指すやつの方だ! それと湊! 何悪ノリしてんだ! 主犯はお前だろうが!」
「勝手に犯人にしたてあげてんじゃないよ……見苦しいなぁ」
「話が進まねぇんだよ!!」
伊月、そんなに大声出して疲れないのか? よくそんなに昼間っから叫べるな。
そしてそんな彼を差し置いて、美桜はいつの間にか弁当を膝上で開いていた。
「いただきます」
パチン、と両手を合わせて行儀良くお昼を食べようと箸を持つ。
「何で訊いてきた本人は弁当食おうとしてんの!?」
「お昼時間ですから」
「そうだな。お昼時間にお昼を食べちゃいけないなんてルールは存在しないからな」
これ以上無き、シンプルな理由。
「そうですよ。ですので、話を進めてくださって結構です」
「せめてどっちかに絞ってくれませんかね!?」
完全に僕達に弄ばれている伊月が新鮮ではあったが、さすがに弄りすぎたな。
普段であれば悪ノリに走る伊月も思わずため息を吐いた。
「……もう、いいですか? 帰っていい?」
「悪かった。悪かったから、美桜の質問に答えてやってくれ」
「……ったく」
「すみませんでした……」
ペコり、と美桜は素直に謝罪する。
友達同士の些細な小競り合い──それに『真面目な謝罪』など極稀にしかしなくてもいいのだということを、世間ずれした彼女が熟知しているはずがない。
それをわかっているからこそ、簡単に引くことが許されない。
美桜にとっては謝罪は謝罪。そこに上下のバランスなどの概念があるはずもないのだ。つまり──謝罪は謝罪。そのひと区分としてしか美桜の中には存在していないのだ。
「……女神様に逆らえないお前の気持ち、ちょっとわかる気がするわ」
「僕が忠犬みたいな言い方するな」
「その理論だとオレまで忠犬ってことになるだろうが!」
いやお前の場合は間違ってないだろ。
と、そんなツッコミを心の中で入れる。
「……愉快、ですね」
「違うぞ鈴菜。こういうときに相応しい呼び名は、『煩い』とか『喧しい』とか、そんな表現がお似合いだ」
「匙加減だと思うけど……?」
遂には鈴菜さんにまで突っ込まれたか。どんまい。
「おっ、起きたのか?」
「……まだ眠い、です」
「じゃあまだ寝てろ。騒がしくしないからさ」
「……ううん。少し、話に混ざりたいかな」
眠気まなこを摩りながら未だに膝枕は続行中の鈴菜さんは、寝る体勢を少し横へズラす。
まだ隈は消えていない。まだ眠いことには違いないだろうし、普段騒がしいわんこ系の伊月が「騒がしくしない」と豪語するほどに、鈴菜さんに少しでも休んでもらおうとしているのは明白だ。
それでも鈴菜さんは、先程伊月が言っていたように“普通の高校生”らしくこんなしょうもない会話に混ざることを志望した。
……本当はあのとき、起きてたりしてな。まぁ敢えて訊かないことにしよう。
「……仕方ないな。後で保健室行き決定な」
「はぁーい……」
伊月の気迫に負け、鈴菜さんは仕方なくといった形で了承した。
「そういえば訊いたことがありませんでしたが、お2人はどういった関係なのですか?」
「どう? 湊から聞いてるだろ。彼氏彼女の関係だよ」
「いえ、そういうわかりきっていることではなく──」
「あ、うん……」
鈴菜さんには勝った気迫も美桜相手には通用するはずもなく、逆に伊月が美桜の気迫に敗北を決したようだ。
さすがというか、諦めろとその言葉を残す他なかった。
「お2人先日の件から見て、相当仲がよろしいのだとわかりました。では、どうしてなのかと思いまして」
「……それ、ブーメランじゃね?」
「言ってやるな。本人様はまったく気づいてないから」
「……大変だな、お前は」
「もう慣れた」
おそらく今回も、ただただ、疑問に思ったことを消化させたい一心での行動だろう。
天然率100%の脅威を誇る、純粋さ故のブーメラン発言。……まぁ確かに、誰とも話したことないもんな。僕達が出会ったキッカケなんて。キッカケっていうキッカケは無いけど。
すると予想的中──美桜はきょとん、とした効果音と共に首を傾げた。
「どういう意味なのですか?」
「本当だな。美桜、伊月の言うことは無視していいから」
「おい! 随分と失礼すぎじゃありません!?」
「ダメですよ湊君。それでは質問が出来ないじゃないですか」
「ま、真城さん……!」
まるで女神様からのご処置を受けたみたいだ。
しかしこの『真城美桜』という存在を侮ってはいけない。ましてや油断などは絶対にだ──。
「ですが、この質問が了解次第のことは承知しました」
「承知しないで!? 断って!? 君は今、いけない勧誘に引っかかったカモだよ!?」
「鴨に謝ってください」
「そうだそうだー」
「そっちの鴨じゃない! 騙される立場の人のことを指すやつの方だ! それと湊! 何悪ノリしてんだ! 主犯はお前だろうが!」
「勝手に犯人にしたてあげてんじゃないよ……見苦しいなぁ」
「話が進まねぇんだよ!!」
伊月、そんなに大声出して疲れないのか? よくそんなに昼間っから叫べるな。
そしてそんな彼を差し置いて、美桜はいつの間にか弁当を膝上で開いていた。
「いただきます」
パチン、と両手を合わせて行儀良くお昼を食べようと箸を持つ。
「何で訊いてきた本人は弁当食おうとしてんの!?」
「お昼時間ですから」
「そうだな。お昼時間にお昼を食べちゃいけないなんてルールは存在しないからな」
これ以上無き、シンプルな理由。
「そうですよ。ですので、話を進めてくださって結構です」
「せめてどっちかに絞ってくれませんかね!?」
完全に僕達に弄ばれている伊月が新鮮ではあったが、さすがに弄りすぎたな。
普段であれば悪ノリに走る伊月も思わずため息を吐いた。
「……もう、いいですか? 帰っていい?」
「悪かった。悪かったから、美桜の質問に答えてやってくれ」
「……ったく」
「すみませんでした……」
ペコり、と美桜は素直に謝罪する。
友達同士の些細な小競り合い──それに『真面目な謝罪』など極稀にしかしなくてもいいのだということを、世間ずれした彼女が熟知しているはずがない。
それをわかっているからこそ、簡単に引くことが許されない。
美桜にとっては謝罪は謝罪。そこに上下のバランスなどの概念があるはずもないのだ。つまり──謝罪は謝罪。そのひと区分としてしか美桜の中には存在していないのだ。
「……女神様に逆らえないお前の気持ち、ちょっとわかる気がするわ」
「僕が忠犬みたいな言い方するな」
「その理論だとオレまで忠犬ってことになるだろうが!」
いやお前の場合は間違ってないだろ。
と、そんなツッコミを心の中で入れる。
「……愉快、ですね」
「違うぞ鈴菜。こういうときに相応しい呼び名は、『煩い』とか『喧しい』とか、そんな表現がお似合いだ」
「匙加減だと思うけど……?」
遂には鈴菜さんにまで突っ込まれたか。どんまい。
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