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13部 番外編
海に行こうよ
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今日もルチアが水の神殿にやってきた。裸になるやいなや湖に飛び込んで、ラクアの娘達と泳ぎまくっている。キュリアやネルもたまにここに来るが、泳ぐことまではしない。ただ水につかるだけ。これほどまでに泳ぎまくっているルチアにラクアも驚いている。いつものようにルチアの体を拭いていると、娘達が言った。
「トト様、ルーちゃんも海につれていこーよ」
「いいでしょ?」
「海? 明日のことか。ルチアなら楽しめるかもね。海に行ってみるかい?」
ラクアはルチアに聞いた。ルチアは大きな瞳をラクアに向けたまま首をかしげている。瞳の色は黒かと思ったら青っぽかったり緑に見えたりする。不思議な瞳である。
「君はまだ海を見たことがないからわからないか。すごく広くて、こことは違って水面が絶えず動いているんだ。口で説明するより見た方が早い。明日、日が昇る頃に来たら一緒に連れていってあげるよ」
「いろんな生き物がいるのよ」
「イルカのお友達に会わせてあげる! だから明日来てね」
ルチアはうなずいて去って行った。
「一応ラーズには言っておくか」
ラクアは、明日ルチアを海に連れて行くかもしれないということをラーズに伝えて、オルガにも伝えてもらった。
そして翌日、ルチアがやってきたのでラクアは子供三人を連れて海に移動したのだった。
海を初めて見たルチアは、その広大さに目を輝かせた。寄せては返す波にびっくりしている。砂浜は歩きにくかったのでルチアはすぐ裸足になっていた。海の中には数人人が入っていて、ルチアは裸になろうとしていたのでラクアがあわてて止めていた。
「ルチア、ここでは裸になっちゃだめだよ。とりあえず着替えよう。おいで」
ラクアはすぐ海に入りたそうなルチアを制して、とりあえず海の神殿に連れて行ったのだった。
神殿では海の連中が待ち構えていた。今日は「遊びに来い」と何度もしつこく言われたので来ることにしたのだった。
「あれ? ガーベラ様は?」
「ガーベラ様がいない」
男達はガーベラを探してる。
「君達が興奮するからガーベラは連れて来なかったよ」
ラクアがいうと、男達はガーンとショックを受けていた。
「そんなー楽しみにしていたのにー」
大きな広間には海の神の長マリナールがいた。
「マリナールさま!」
「おう、よう来たな」
ユリアナとイオナがマリナールに寄っていき、マリナールは二人を同時に抱っこしていた。
「マリナール、この子が最近産まれたルチアだよ。ルチアは泳ぐのが大好きだから連れてきたんだ」
ラクアはマリナールにルチアを紹介した。
「かわいいのう。ルチアか。面白い髪だの。今日はたくさん遊んで行くといい」
「じゃあ着替えようか」
ラクアは娘達とルチアを別の服に着替えさせた。部屋から出るとレヴァーンが待ち構えていた。
「待ってたよ。ユリアナ、イオナ、今日もかわいいよ。あ、えーと」
レヴァーンはルチアを見た。
「ルチア、ルーちゃんって呼んでるの。ルーちゃんは泳ぐのすっごく上手なんだよ」
「だから連れてきたの」
ユリアナとイオナが説明した。
「そうなんだ。ルチアは二人よりは少し大きいんだね。じゃあ遊びに行こう」
「行こう行こう」
子供達は喜んで海へとかけだした。
海は湖とはかってが違うのでルチアも最初は泳ぐのが大変そうだったが、太陽が真上に昇る頃になると、すっかり波にも慣れて、しかも海の中を潜っていた。そしていろいろな生き物をひっ捕まえてきては他の者に見せて名前を聞いている。途中からマリナールがやってきて、海の水で渦をつくったり、水の塊で子供達を持ち上げたりして遊んでくれたのだが、ルチアはとにかくすごいはしゃぎっぷりだった。海の中から出ようともしない。海が相当気に入ったようで、他の海の神達もそんなルチアを微笑ましく見ている。
「あの子すごい体力だのう。海の方が向いとるんじゃないか?」
海岸にやってきたマリナールがラクアに言った。
「そうですね。ルチアの体力はすごいですよ。女神の中でも上位に来そうだな」
「久々に上位の女神が産まれたとアシュランがうれしげにいうとったぞ」
「え? アシュランと話したんですか?」
「ああ。面白いというとったが、なるほど面白い」
「上位の女神……そんなに影響力がある女神なのか」
ラクアの娘達は水の神である。親と同じ神の場合は女神の順位などには入らない。ルチアは親とは違う神である。アシュランが上位の女神というからには、ガーベラやダーナ、ディアメラほどの神力が将来ルチアの身に宿ると思っているのである。
海にイルカ達がやってきた。子供達はイルカに乗って遊びだした。ユリアナとイオナも、ルチアにつられて今日はいつもよりも楽しそうに遊びまくっている。
「すっかりなじんでおるのう。あの子には海も陸もないのかもしれんの。レヴァーンの嫁、あの子でもよいのう」
マリナールはひげをなでながらこんなことを言っていたのだった。
あまりに楽しそうに遊んでいるものだから、海の神達もすっかりルチアが好きになっていた。ラクアが何度か「そろそろ休憩しない?」と声をかけたのだが、ルチアはまったく陸にあがる気がないようだ。海の中というのは陸地よりも体力を使うはずなのだが。
「ルーちゃんはすごいな。いやー驚いた。あの子こっち側の方が向いてるんじゃないのかな?」
レヴァーンもそう言っていた。
夕方になると、さすがにラクアは強制的にルチアを陸にあげていた。ルチアは嫌がっていたが、陸にあがるとラクアの腕の中で寝てしまっていた。やはり疲れていたようだ。
「私もねむいー」
「ねむい」
ユリアナとイオナは目をこすっている。
「僕がだっこしてあげる」
目を輝かせているレヴァーンに、ラクアは速攻で「だめ」と言い、女の妖精に声をかけたのだった。
三人はしばらく海の神殿で寝かせてもらうことになった。ベッドで並んでいる三人の女の達子を見てラクアは、「娘が三人いる気分だな」などと思っていた。
神の国に日が沈み、火の神殿ではサラディンが「ルチア、今日来ないな」と気にしていた。毎日来ているのに来ないと気になるものである。
「そうね。ルーちゃんどうしたんだろうね」
とルティアナも気にしだした。
「はずれで迷子になってるんじゃないだろうな。ルティアナ、オルガかラーズの所に行って聞いてこい」
サラディンが娘に言った。
「お母さんじゃだめなの?」
「ガーベラは何も知らない気がする」
「じゃあ行ってきまーす」
ルティアナは出かけていき、しばらくして帰ってきた。
「ルーちゃん、今日は海に行ってるんだって」
「海? そうか。それならいい。そういうことは言っといてほしいもんだ」
サラディンはぶつくさ言っていた。
「お父さんったら、ルーちゃんのパパみたい」
ルティアナはひそかに笑っていた。
海の神殿では、娘達とルチアは結局そのまま爆睡してしまい、神殿に泊まっていた。
翌日になり、「じゃあ帰ろうか」とラクアが言うと、ルチアは顔を横に振っている。
「そろそろ帰らないと」
ルチアは顔を横に振って部屋を飛び出して行った。
「おーい」
「ルーちゃんここにいたいのかな」
「今日も遊びたいんじゃない?」
ユリアナとイオナが言った。
三人が海に行くと、ルチアはもうすでに海に入っていた。すっかり海が気に入ってしまったようだ。
「うーん、困ったな」
ラクアがちょっと困っていると、横にレヴァーンがやってきた。
「ラクア様、僕が三人を向こうにつれて行きますから、一人でお帰りくださっても大丈夫ですよ」
レヴァーンは目を輝かせている。
ラクアは横目でラヴァーンを見ている。
「本当に大丈夫ですって、5日後くらいに連れて行きますから」
「ルチアーお昼には絶対帰るからねー」
ラクアは海にいるルチアに声をかけていた。ルチアに押し切られて、その日の夕方、ようやくラクアは三人を連れて自分の神殿に戻った。ルチアは水の神殿に戻るなり床に寝転んで寝てしまった。
「おいおい」
「ルーちゃんってほんと面白いね!」
「みんな大好きだっていってたよ!」
「そりゃあれだけあっちになじめば好かれるよ。今日はルチアもここに泊めとこうか」
「一緒にねるー」
ラクアは子供達のベッドにルチアを寝かせて、娘二人はその横に寝転んで一緒に寝たのだった。
その翌日にはルチアは夕方火の神殿にやってきた。サラディンもルチアが来ると安心するものである。
「海は楽しかったか?」
とサラディンが聞くと、ルチアは大きくうなずいていた。
ルチアが海を好きになったのはいいのだが、その後朝ラクアの元に来ては、ルチアは海に連れて行ってほしいとアピールするようになった。ラクアもこれほどまでにルチアが海好きになるとは予想していなかったようだ。
ルチアの行動範囲は広いようなので、無理だというと自分で海に行きかねない。空を飛ぶと海までかなりの距離がある。道中何かあった場合が困ると思い、ラクアはルチアを海に連れて行った。
「いやールーちゃん、ほんと良い子だな。良い子が産まれてくれたよ」
とラクアの娘達を狙っているレヴァーンは喜んでいる。
ラクアはマリナールにルチアのことを相談した。マリナールは「それならいい手がある」と青い丸い石がついた首飾りをルチアに渡した。
「ルチア、これは海の神殿に移動する神器じゃ、これがあればいつでもここに来られるぞ」
というと、ルチアはぱっとうれしそうな顔をした。
「帰りはわしがラクアの神殿に送ってやろう。ただし、わしと約束してもらわねばならん。ここに来たら、わしか、エヴァ、他の誰でもいいから自分が来たことを知らせること。海に入るときは、一人で入ってはならん。絶対に誰かと一緒に入ること。わしが今日はだめだと言ったら、すぐに向こうに帰ること、どうじゃ、守れるか?」
マリナールが聞くと、ルチアはうなずいていた。
「ならこれをやろう。ラクア、つけてやってくれ」
ラクアは神器をルチアの首につけてやった。ルチアはうれしそうだ。
こうして、ルチアは自分一人でも海に来ることができるようになった。
その数日後、海の神殿にやってきたルチアは、神殿にいた女神の腕をつかんで引っ張っていた。
「え? 何? 何?」
捕まえていたのはマリナールの孫、海ではちょっと問題児のセスティナである。ルチアはセスティナに海を指していた。
「え? 私と遊んでほしいっていうの? あいにく、私は子供とは遊ばないのよ。遊ばない。遊ばないって言ってるでしょ!」
ルチアはセスティナの腕を放そうとしない。
「放しなさいってば。ちょっとー」
ルチアは強引にセスティナを海に連れて行った。セスティナは大人なのだが、子供のルチアに力で負けている。
「あなたすごい力ね。そんなに遊んでほしいの? しょうがないわね。なら、私ともぐりっこで遊びましょう。どちらが長く海で潜っていられるかって遊びよ。いい?」
と聞くと、ルチアは目を輝かせてうなずいている。
「じゃあ海に入るわよー」
二人は海に入り、背丈の三倍ほどの深さの所まできてから海に潜った。
(ふふふ、海の女神の私に勝てるわけないじゃない。おばかさんね)
セスティナは、ルチアがすぐ水面にあがるだろうと思っていたのだが、ルチアは結構長い間海の底に潜っていた。そしてセスティナに近づいてきて、セスティナの脇をくすぐっていた。意表をつかれたセスティナは、「ぶぶっ」と吹きだして、水面に顔を出した。続いてルチアが上がっている。ルチアはやったあとばかりにガッツポーズをしていた。
「今のはずるいわ。あなたはなんて恐ろしい子なの。私を本気にさせるなんて。いいわ。真剣に勝負よ。もっと深い所に行くわよ。怖かったら……」
ルチアは勝手に泳いでまた潜っていた。
「話を最後まで聞きなさいよ」
セスティナも一緒に潜っていた。ルチアはまたセスティナをくすぐろうとしていたので、逆にセスティナがルチアをくすぐっていた。
今度はルチアが先に水面にあがっていた。
「私の勝ちね。ふっ」
近くにイルカがやってきて、ルチアはイルカに乗ろうとした。
「乗り方がなってないわよ。そんなに背びれをぎゅっとつかんじゃだめよ。優しくしなきゃ」
なんだかんだ言いながらもセスティナはルチアに世話を焼いている。結構長いこと二人は遊んでいたので、ルチアの様子を見に来た海の伝令神ワイアットは、その様子を見てぷっと笑っていた。
さてオルガだが、ラクアから海のことは聞いていたのが、最近ルチアの寝顔しか見ていなかった。自分よりの女神ではないため一緒に行動することもなく、ちょっと寂しく思っている。
「親離れが早かったなあ。ルチアが海に行ってる間コウモリ達はどこにいるんだろう?」
7匹の色違いのコウモリ達は、ルチアがいない間はラーズやサーラにつきまとっていた。今は二人は神殿の中にいたので、コウモリ達も神殿の中を飛び回っている。
「中でフンをしないでくれよ。神獣ってフンはするのかな?」
ラーズは首をかしげている。
「黄色こい! 青こい! 赤こい!」
サーラはコウモリを呼んで遊んでいた。
「おもろいね。ねーニンゲンカイいこうよ。この子達つれてさ」
サーラがラーズに言った。
「別ガーベラにみせよう!」
「見せなくても知ってるからいいよ」
「みせたいー」
「彼女がこっちに来ても、ルチアには会えないだろうなあ」
なにせラーズもルチアにたまにしか会っていないくらいである。
「サーラだってルーちゃんにあえないよ! いもーとなのに」
「ははは、しょうがないさ。サーラじゃもうルチアの遊び相手にならないもんなあ」
ラーズは苦笑していたのだった。
「トト様、ルーちゃんも海につれていこーよ」
「いいでしょ?」
「海? 明日のことか。ルチアなら楽しめるかもね。海に行ってみるかい?」
ラクアはルチアに聞いた。ルチアは大きな瞳をラクアに向けたまま首をかしげている。瞳の色は黒かと思ったら青っぽかったり緑に見えたりする。不思議な瞳である。
「君はまだ海を見たことがないからわからないか。すごく広くて、こことは違って水面が絶えず動いているんだ。口で説明するより見た方が早い。明日、日が昇る頃に来たら一緒に連れていってあげるよ」
「いろんな生き物がいるのよ」
「イルカのお友達に会わせてあげる! だから明日来てね」
ルチアはうなずいて去って行った。
「一応ラーズには言っておくか」
ラクアは、明日ルチアを海に連れて行くかもしれないということをラーズに伝えて、オルガにも伝えてもらった。
そして翌日、ルチアがやってきたのでラクアは子供三人を連れて海に移動したのだった。
海を初めて見たルチアは、その広大さに目を輝かせた。寄せては返す波にびっくりしている。砂浜は歩きにくかったのでルチアはすぐ裸足になっていた。海の中には数人人が入っていて、ルチアは裸になろうとしていたのでラクアがあわてて止めていた。
「ルチア、ここでは裸になっちゃだめだよ。とりあえず着替えよう。おいで」
ラクアはすぐ海に入りたそうなルチアを制して、とりあえず海の神殿に連れて行ったのだった。
神殿では海の連中が待ち構えていた。今日は「遊びに来い」と何度もしつこく言われたので来ることにしたのだった。
「あれ? ガーベラ様は?」
「ガーベラ様がいない」
男達はガーベラを探してる。
「君達が興奮するからガーベラは連れて来なかったよ」
ラクアがいうと、男達はガーンとショックを受けていた。
「そんなー楽しみにしていたのにー」
大きな広間には海の神の長マリナールがいた。
「マリナールさま!」
「おう、よう来たな」
ユリアナとイオナがマリナールに寄っていき、マリナールは二人を同時に抱っこしていた。
「マリナール、この子が最近産まれたルチアだよ。ルチアは泳ぐのが大好きだから連れてきたんだ」
ラクアはマリナールにルチアを紹介した。
「かわいいのう。ルチアか。面白い髪だの。今日はたくさん遊んで行くといい」
「じゃあ着替えようか」
ラクアは娘達とルチアを別の服に着替えさせた。部屋から出るとレヴァーンが待ち構えていた。
「待ってたよ。ユリアナ、イオナ、今日もかわいいよ。あ、えーと」
レヴァーンはルチアを見た。
「ルチア、ルーちゃんって呼んでるの。ルーちゃんは泳ぐのすっごく上手なんだよ」
「だから連れてきたの」
ユリアナとイオナが説明した。
「そうなんだ。ルチアは二人よりは少し大きいんだね。じゃあ遊びに行こう」
「行こう行こう」
子供達は喜んで海へとかけだした。
海は湖とはかってが違うのでルチアも最初は泳ぐのが大変そうだったが、太陽が真上に昇る頃になると、すっかり波にも慣れて、しかも海の中を潜っていた。そしていろいろな生き物をひっ捕まえてきては他の者に見せて名前を聞いている。途中からマリナールがやってきて、海の水で渦をつくったり、水の塊で子供達を持ち上げたりして遊んでくれたのだが、ルチアはとにかくすごいはしゃぎっぷりだった。海の中から出ようともしない。海が相当気に入ったようで、他の海の神達もそんなルチアを微笑ましく見ている。
「あの子すごい体力だのう。海の方が向いとるんじゃないか?」
海岸にやってきたマリナールがラクアに言った。
「そうですね。ルチアの体力はすごいですよ。女神の中でも上位に来そうだな」
「久々に上位の女神が産まれたとアシュランがうれしげにいうとったぞ」
「え? アシュランと話したんですか?」
「ああ。面白いというとったが、なるほど面白い」
「上位の女神……そんなに影響力がある女神なのか」
ラクアの娘達は水の神である。親と同じ神の場合は女神の順位などには入らない。ルチアは親とは違う神である。アシュランが上位の女神というからには、ガーベラやダーナ、ディアメラほどの神力が将来ルチアの身に宿ると思っているのである。
海にイルカ達がやってきた。子供達はイルカに乗って遊びだした。ユリアナとイオナも、ルチアにつられて今日はいつもよりも楽しそうに遊びまくっている。
「すっかりなじんでおるのう。あの子には海も陸もないのかもしれんの。レヴァーンの嫁、あの子でもよいのう」
マリナールはひげをなでながらこんなことを言っていたのだった。
あまりに楽しそうに遊んでいるものだから、海の神達もすっかりルチアが好きになっていた。ラクアが何度か「そろそろ休憩しない?」と声をかけたのだが、ルチアはまったく陸にあがる気がないようだ。海の中というのは陸地よりも体力を使うはずなのだが。
「ルーちゃんはすごいな。いやー驚いた。あの子こっち側の方が向いてるんじゃないのかな?」
レヴァーンもそう言っていた。
夕方になると、さすがにラクアは強制的にルチアを陸にあげていた。ルチアは嫌がっていたが、陸にあがるとラクアの腕の中で寝てしまっていた。やはり疲れていたようだ。
「私もねむいー」
「ねむい」
ユリアナとイオナは目をこすっている。
「僕がだっこしてあげる」
目を輝かせているレヴァーンに、ラクアは速攻で「だめ」と言い、女の妖精に声をかけたのだった。
三人はしばらく海の神殿で寝かせてもらうことになった。ベッドで並んでいる三人の女の達子を見てラクアは、「娘が三人いる気分だな」などと思っていた。
神の国に日が沈み、火の神殿ではサラディンが「ルチア、今日来ないな」と気にしていた。毎日来ているのに来ないと気になるものである。
「そうね。ルーちゃんどうしたんだろうね」
とルティアナも気にしだした。
「はずれで迷子になってるんじゃないだろうな。ルティアナ、オルガかラーズの所に行って聞いてこい」
サラディンが娘に言った。
「お母さんじゃだめなの?」
「ガーベラは何も知らない気がする」
「じゃあ行ってきまーす」
ルティアナは出かけていき、しばらくして帰ってきた。
「ルーちゃん、今日は海に行ってるんだって」
「海? そうか。それならいい。そういうことは言っといてほしいもんだ」
サラディンはぶつくさ言っていた。
「お父さんったら、ルーちゃんのパパみたい」
ルティアナはひそかに笑っていた。
海の神殿では、娘達とルチアは結局そのまま爆睡してしまい、神殿に泊まっていた。
翌日になり、「じゃあ帰ろうか」とラクアが言うと、ルチアは顔を横に振っている。
「そろそろ帰らないと」
ルチアは顔を横に振って部屋を飛び出して行った。
「おーい」
「ルーちゃんここにいたいのかな」
「今日も遊びたいんじゃない?」
ユリアナとイオナが言った。
三人が海に行くと、ルチアはもうすでに海に入っていた。すっかり海が気に入ってしまったようだ。
「うーん、困ったな」
ラクアがちょっと困っていると、横にレヴァーンがやってきた。
「ラクア様、僕が三人を向こうにつれて行きますから、一人でお帰りくださっても大丈夫ですよ」
レヴァーンは目を輝かせている。
ラクアは横目でラヴァーンを見ている。
「本当に大丈夫ですって、5日後くらいに連れて行きますから」
「ルチアーお昼には絶対帰るからねー」
ラクアは海にいるルチアに声をかけていた。ルチアに押し切られて、その日の夕方、ようやくラクアは三人を連れて自分の神殿に戻った。ルチアは水の神殿に戻るなり床に寝転んで寝てしまった。
「おいおい」
「ルーちゃんってほんと面白いね!」
「みんな大好きだっていってたよ!」
「そりゃあれだけあっちになじめば好かれるよ。今日はルチアもここに泊めとこうか」
「一緒にねるー」
ラクアは子供達のベッドにルチアを寝かせて、娘二人はその横に寝転んで一緒に寝たのだった。
その翌日にはルチアは夕方火の神殿にやってきた。サラディンもルチアが来ると安心するものである。
「海は楽しかったか?」
とサラディンが聞くと、ルチアは大きくうなずいていた。
ルチアが海を好きになったのはいいのだが、その後朝ラクアの元に来ては、ルチアは海に連れて行ってほしいとアピールするようになった。ラクアもこれほどまでにルチアが海好きになるとは予想していなかったようだ。
ルチアの行動範囲は広いようなので、無理だというと自分で海に行きかねない。空を飛ぶと海までかなりの距離がある。道中何かあった場合が困ると思い、ラクアはルチアを海に連れて行った。
「いやールーちゃん、ほんと良い子だな。良い子が産まれてくれたよ」
とラクアの娘達を狙っているレヴァーンは喜んでいる。
ラクアはマリナールにルチアのことを相談した。マリナールは「それならいい手がある」と青い丸い石がついた首飾りをルチアに渡した。
「ルチア、これは海の神殿に移動する神器じゃ、これがあればいつでもここに来られるぞ」
というと、ルチアはぱっとうれしそうな顔をした。
「帰りはわしがラクアの神殿に送ってやろう。ただし、わしと約束してもらわねばならん。ここに来たら、わしか、エヴァ、他の誰でもいいから自分が来たことを知らせること。海に入るときは、一人で入ってはならん。絶対に誰かと一緒に入ること。わしが今日はだめだと言ったら、すぐに向こうに帰ること、どうじゃ、守れるか?」
マリナールが聞くと、ルチアはうなずいていた。
「ならこれをやろう。ラクア、つけてやってくれ」
ラクアは神器をルチアの首につけてやった。ルチアはうれしそうだ。
こうして、ルチアは自分一人でも海に来ることができるようになった。
その数日後、海の神殿にやってきたルチアは、神殿にいた女神の腕をつかんで引っ張っていた。
「え? 何? 何?」
捕まえていたのはマリナールの孫、海ではちょっと問題児のセスティナである。ルチアはセスティナに海を指していた。
「え? 私と遊んでほしいっていうの? あいにく、私は子供とは遊ばないのよ。遊ばない。遊ばないって言ってるでしょ!」
ルチアはセスティナの腕を放そうとしない。
「放しなさいってば。ちょっとー」
ルチアは強引にセスティナを海に連れて行った。セスティナは大人なのだが、子供のルチアに力で負けている。
「あなたすごい力ね。そんなに遊んでほしいの? しょうがないわね。なら、私ともぐりっこで遊びましょう。どちらが長く海で潜っていられるかって遊びよ。いい?」
と聞くと、ルチアは目を輝かせてうなずいている。
「じゃあ海に入るわよー」
二人は海に入り、背丈の三倍ほどの深さの所まできてから海に潜った。
(ふふふ、海の女神の私に勝てるわけないじゃない。おばかさんね)
セスティナは、ルチアがすぐ水面にあがるだろうと思っていたのだが、ルチアは結構長い間海の底に潜っていた。そしてセスティナに近づいてきて、セスティナの脇をくすぐっていた。意表をつかれたセスティナは、「ぶぶっ」と吹きだして、水面に顔を出した。続いてルチアが上がっている。ルチアはやったあとばかりにガッツポーズをしていた。
「今のはずるいわ。あなたはなんて恐ろしい子なの。私を本気にさせるなんて。いいわ。真剣に勝負よ。もっと深い所に行くわよ。怖かったら……」
ルチアは勝手に泳いでまた潜っていた。
「話を最後まで聞きなさいよ」
セスティナも一緒に潜っていた。ルチアはまたセスティナをくすぐろうとしていたので、逆にセスティナがルチアをくすぐっていた。
今度はルチアが先に水面にあがっていた。
「私の勝ちね。ふっ」
近くにイルカがやってきて、ルチアはイルカに乗ろうとした。
「乗り方がなってないわよ。そんなに背びれをぎゅっとつかんじゃだめよ。優しくしなきゃ」
なんだかんだ言いながらもセスティナはルチアに世話を焼いている。結構長いこと二人は遊んでいたので、ルチアの様子を見に来た海の伝令神ワイアットは、その様子を見てぷっと笑っていた。
さてオルガだが、ラクアから海のことは聞いていたのが、最近ルチアの寝顔しか見ていなかった。自分よりの女神ではないため一緒に行動することもなく、ちょっと寂しく思っている。
「親離れが早かったなあ。ルチアが海に行ってる間コウモリ達はどこにいるんだろう?」
7匹の色違いのコウモリ達は、ルチアがいない間はラーズやサーラにつきまとっていた。今は二人は神殿の中にいたので、コウモリ達も神殿の中を飛び回っている。
「中でフンをしないでくれよ。神獣ってフンはするのかな?」
ラーズは首をかしげている。
「黄色こい! 青こい! 赤こい!」
サーラはコウモリを呼んで遊んでいた。
「おもろいね。ねーニンゲンカイいこうよ。この子達つれてさ」
サーラがラーズに言った。
「別ガーベラにみせよう!」
「見せなくても知ってるからいいよ」
「みせたいー」
「彼女がこっちに来ても、ルチアには会えないだろうなあ」
なにせラーズもルチアにたまにしか会っていないくらいである。
「サーラだってルーちゃんにあえないよ! いもーとなのに」
「ははは、しょうがないさ。サーラじゃもうルチアの遊び相手にならないもんなあ」
ラーズは苦笑していたのだった。
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