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14部
お母さんあのね
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「僕、前世は魔物だったんだよ」
ヴォルフがそう告白した時のゆりは、たいして驚きもしなかった。そういうこともあるのね、という感覚である。ならば今の世ではとことん楽しんでね、とヴォルフを応援していた。ゆりは魔物を見たこともないだろうし、魔物に対して拒否反応もさほどないのかもしれない。相手がハロルドだったならば、明らかに嫌悪の表情を浮かべるはずだ。長年、神と魔物は戦ってきたし、魔物により妖精達も命を落としている。
ヴォルフは自分でハロルドにそんなことを言う気はなかったが、もしゆりがハロルドにそのことを言ったとしても、別にかまわないと思っていた。ハロルドに今より嫌われてもかまわないし、逆に愛情を示される方が気持ち悪い。アシュランがもしそのことを知ったとしても、ヴォルフは悪さをしているわけではない。今は消滅させることもできないだろう。
最近ではルチアがヴォルフを誘いに来るようになった。すっかり遊び仲間として認識したらしい。ルチアの体力についていける兄弟は、確かにヴォルフだけかもしれない。ジェイクも体力はありそうだが、真面目でいつも戦いの稽古ばかりだった。
ルチアのヴォルフに対しての感情は、極めて純粋な好意だけである。
「僕、前世で魔物だったんだよ」とヴォルフが打ち明けたとしても、「だからなに?」といった反応を返すだけだろう。
(こっちのお母さんならなんていうだろう)
なぜ、言わなくていいことを言いたくなってしまうのか、ヴォルフにもわからない。自分の子供が魔物と関わりがあるなんて、上位の女神として、耐えられないと思うかもしれない。
「私の神殿から出て行ってくれないかしら」
そんなことまで言われるかもしれない。
「私にもう二度と話しかけないで。汚らわしいから」
そこまで言わないまでも、心の中ではそう思うかもしれない。
「とんだ汚点だわ。あなたを息子だなんてもう思わなー」
目の前にいた女が横にどっと倒れた。
「え?」
目の前に麗しの女神が立っていたのでヴォルフはびっくりしていた。女神は片足をあげていた。
「まあ、私ったらはしたないことをしてしまったわ。これは内緒にしておいてね」
女神ガーベラは足を降ろして言っていた。先ほど目の前にいた女は消えていた。ガーベラが足で蹴り飛ばしたのである。ガーベラはヴォルフの鼻をつまんでいた。
「麗しい私をあんな醜い女と間違えるなんてどうかしてるわよ」
「…………」
ガーベラは鼻から手を離してヴォルフと手をつないだ。
「いらっしゃい」
ガーベラはヴォルフの手を引いて行った。
ヴォルフは目を覚まし、横にガーベラが寝ていたのでびっくりしていた。
(いつの間にきたんだろう)
ガーベラも目を開けていた。
「何か心配なことでもあるの?」
ガーベラは寝転んだまま聞いた。
「ええっと……」
ヴォルフはもぞもぞしていた。
「私はあんまり子育てとかしたことないから、子供の気持ちとかわからないけど、あんな醜い女だと思われるのは心外だわ。スキンシップがたりないのかしら」
ガーベラは寝転んだままヴォルフを抱きしめた。ヴォルフの頬は赤くなっていた。
「お母さん、いつからここにいるの?」
「夜中に来たの。うなっていたから、あなたがどんな夢を見ているのか気になっちゃって。あれが私なんて冗談でしょ。せっかく近くにいるんだから、実際の私をみなさい」
「……うん」
「いいこいいこ」
部屋の入り口にかかっている布がばっと開いてルチアがやってきた。
ルチアは起きろとジェスチャーしている。
「今日はどこに遊びに行くの? 海?」
ガーベラが聞くとルチアは首を横に振っていた。
「何をして遊んだか教えてね」
ガーベラがヴォルフに言った。
「うん」
ルチアはヴォルフの腕を引っ張っていたので、ヴォルフはベッドから降りて部屋を出て行った。
ガーベラは、ゆりに、「ヴォルフを抱きしめてあげてね」と言われたので、一緒に寝てみたのだった。
(ヴォルフが不安を抱えていることに気がつくなんて、さすがだわ。もっと一緒に寝たほうがいいかしら)
などと思っていたら、クーリーフンがやってきた。
「なんでここで寝てるの。自分とこで寝なよ」
「別にいいじゃない。親子のスキンシップをしていたんだしー」
「過度なスキンシップはしちゃだめだよ」
「過度なって……ひどい。そうだわ。気分が落ち着くようなポプリでも作ってあげようかしら。フルールにお花を選んでもらいましょう」
フルールは男ガーベラの娘である。ガーベラはようやく起き上がり、ヴォルフの部屋を出て行ったのだった。
ヴォルフがそう告白した時のゆりは、たいして驚きもしなかった。そういうこともあるのね、という感覚である。ならば今の世ではとことん楽しんでね、とヴォルフを応援していた。ゆりは魔物を見たこともないだろうし、魔物に対して拒否反応もさほどないのかもしれない。相手がハロルドだったならば、明らかに嫌悪の表情を浮かべるはずだ。長年、神と魔物は戦ってきたし、魔物により妖精達も命を落としている。
ヴォルフは自分でハロルドにそんなことを言う気はなかったが、もしゆりがハロルドにそのことを言ったとしても、別にかまわないと思っていた。ハロルドに今より嫌われてもかまわないし、逆に愛情を示される方が気持ち悪い。アシュランがもしそのことを知ったとしても、ヴォルフは悪さをしているわけではない。今は消滅させることもできないだろう。
最近ではルチアがヴォルフを誘いに来るようになった。すっかり遊び仲間として認識したらしい。ルチアの体力についていける兄弟は、確かにヴォルフだけかもしれない。ジェイクも体力はありそうだが、真面目でいつも戦いの稽古ばかりだった。
ルチアのヴォルフに対しての感情は、極めて純粋な好意だけである。
「僕、前世で魔物だったんだよ」とヴォルフが打ち明けたとしても、「だからなに?」といった反応を返すだけだろう。
(こっちのお母さんならなんていうだろう)
なぜ、言わなくていいことを言いたくなってしまうのか、ヴォルフにもわからない。自分の子供が魔物と関わりがあるなんて、上位の女神として、耐えられないと思うかもしれない。
「私の神殿から出て行ってくれないかしら」
そんなことまで言われるかもしれない。
「私にもう二度と話しかけないで。汚らわしいから」
そこまで言わないまでも、心の中ではそう思うかもしれない。
「とんだ汚点だわ。あなたを息子だなんてもう思わなー」
目の前にいた女が横にどっと倒れた。
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「まあ、私ったらはしたないことをしてしまったわ。これは内緒にしておいてね」
女神ガーベラは足を降ろして言っていた。先ほど目の前にいた女は消えていた。ガーベラが足で蹴り飛ばしたのである。ガーベラはヴォルフの鼻をつまんでいた。
「麗しい私をあんな醜い女と間違えるなんてどうかしてるわよ」
「…………」
ガーベラは鼻から手を離してヴォルフと手をつないだ。
「いらっしゃい」
ガーベラはヴォルフの手を引いて行った。
ヴォルフは目を覚まし、横にガーベラが寝ていたのでびっくりしていた。
(いつの間にきたんだろう)
ガーベラも目を開けていた。
「何か心配なことでもあるの?」
ガーベラは寝転んだまま聞いた。
「ええっと……」
ヴォルフはもぞもぞしていた。
「私はあんまり子育てとかしたことないから、子供の気持ちとかわからないけど、あんな醜い女だと思われるのは心外だわ。スキンシップがたりないのかしら」
ガーベラは寝転んだままヴォルフを抱きしめた。ヴォルフの頬は赤くなっていた。
「お母さん、いつからここにいるの?」
「夜中に来たの。うなっていたから、あなたがどんな夢を見ているのか気になっちゃって。あれが私なんて冗談でしょ。せっかく近くにいるんだから、実際の私をみなさい」
「……うん」
「いいこいいこ」
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ルチアは起きろとジェスチャーしている。
「今日はどこに遊びに行くの? 海?」
ガーベラが聞くとルチアは首を横に振っていた。
「何をして遊んだか教えてね」
ガーベラがヴォルフに言った。
「うん」
ルチアはヴォルフの腕を引っ張っていたので、ヴォルフはベッドから降りて部屋を出て行った。
ガーベラは、ゆりに、「ヴォルフを抱きしめてあげてね」と言われたので、一緒に寝てみたのだった。
(ヴォルフが不安を抱えていることに気がつくなんて、さすがだわ。もっと一緒に寝たほうがいいかしら)
などと思っていたら、クーリーフンがやってきた。
「なんでここで寝てるの。自分とこで寝なよ」
「別にいいじゃない。親子のスキンシップをしていたんだしー」
「過度なスキンシップはしちゃだめだよ」
「過度なって……ひどい。そうだわ。気分が落ち着くようなポプリでも作ってあげようかしら。フルールにお花を選んでもらいましょう」
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