ダークファンタジア番外編

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14部

え? なんて言った?

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「あ、そういえば、対価について話をするの忘れていたなあ」
 神の国ラーズの神殿である。ラーズは雷獣の国の人間に自分の切り絵を頼んだ。だが、その対価に何を払うとかいう話をするのを忘れていた。
「価値としていくらくらいを考えたらいいだろうなあ。なにせ、最初に渡したのがジンラの酒だからな。私としても、宝石くらいはあげたいが」
 ラーズの神殿にはクーリーフンもいて、クーリーフンは苦笑していた。
「キリエたのしみだなー」
 サーラはラーズの話を聞いて楽しみにしている。
「先に渡した方がいいかな。生活には困ってなさそうだったが」
「一番喜ぶのは、ラーズが祭りとかに降臨してあげることじゃない? ラーズはあの国でも人気だよ。何かをあげるよりもその方が喜ぶと思うよ。王様も喜ぶだろうから彼の顔も立つし」
 神の降臨は、普通は頼んで実現するものでもない。大金を払ってもどうにかなるものではないので、話をすれば喜ぶこと間違いないだろう。お金は王家がアーロンに払えばすむ話である。
「そうかい? アシュランには一カ所ばかりいくなと言われてるし、それでもいいけどな」
「サーラも一緒に行く」
「サーラも行くか。そういう話はどうやって伝えたらいいかな」
「トルメンタに頼んだら?」
「そうだな。お礼降臨か……まあいいか」

 一方、カサンドラの神殿の外では、ヴォルフとソルがいた。珍しい組み合わせである。こちらも、切り絵の報酬をどうするか話していた。
「昨日ルチアと一緒に宝石を掘ったんだよ。それでどうかな」
 ヴォルフが言った。その宝石がどれくらいの価値があるのか、ヴォルフはさっぱり知らないが、多分結構な値段がするはずだろうと思っている。
「宝石かあ。いいね。僕も何かあげたいな。だって、あの切り絵とっても気に入ってるんだ」
「君はあそこに行くだけで喜ばれると思うよ」
 ヴォルフはそう言って去って行った。

 何かあげたい!

 ソルは生まれたばかりといってもいいくらいの神である。気に入った物に対して対価を払うということもしたことがなかったので、してみたいと思ったのだった。
 ソルはその話をサントスにしてみた。
「なるほど、そういうことなら雲の上の神殿に私と行こうよ」
「うん?」
 サントスは最近ソルと会話が出来るのがうれしくて仕方なかった。自分の神としての生に、「子供達と語らう」などという楽しいことが加わるなんて100年前までは思ってもいなかった。子供達が日々成長していくのを横で見ることができる。これも楽しすぎる。
 サントスは超ご機嫌でソルを連れてペガサスに乗り、雲の上の神殿に行った。アシュランの間にはアリアスもいた。二人は座って酒を飲んでいたようだ。
 ソルはアシュランの間に入ると、サントスの後ろに隠れてちょっと顔を出して頭を下げていた。
「こんにちは」
 サントスが挨拶をした。
「やあ」
 とアリアスが返した。
「倉庫の物が何か欲しいんです。いいですよね。お父さん」
「ん? うん」
 とアシュラン。
「それじゃ」
 サントスは用件だけ話すとさっさ部屋を出て行った。

 アシュランとアリアスはしばし沈黙し、目を合わせた。
「あいつ今なんて言った?」
、だと?」
「やはりそう言ったのか? びっくりした」
 アシュランはようやくびっくりした表情になった。
「お父さん……おとうさん?」
 アシュランはちょっと動揺しているようである。サントスはアシュランの子供なので、「お父さん」と呼んでも間違いはない。だが、子供達で「お父さん」と呼ぶのは、女の子達くらいのもので、男連中は「アシュラン」と呼んでいた。なぜ突然お父さんなどと呼びだしたのか。

「サントスは超ご機嫌か、怒ってるかのどちらかだな」
 アリアスが顎に指をあてて言った。
「何か怒らせるようなことをしたか?」
「いや、してないと思う」
「ほんとか~?」
「してないだろ?」
「私は知らんぞ」
「聞いてこい」
「仕方ないな」
 アリアスは部屋を出て行った。

 一方サントスとソルは神殿の中にある倉庫にいた。ソルがここに来るのは初めてである。
「あれ?」
 倉庫の中には様々な物が置かれてそれぞれ布がかけられていた。かなりの広さである。この神殿の大きさくらいといってもいいくらいだ。
「あのー広くないですか?」
 神殿の中の一部屋にしてはどう考えてもおかしい。
「気がついた? ここは空間がちょっと違っててね。広いんだよ。アシュランの木像やら、使わない家具とかが置いてあるんだ。アシュランが気に入らなかったものを置いてあるんだけど、それでもすごい作品だからね。なにせ全部ジェラルドが彫ったんだし」
 ソルは布をちらりとあげて中の作品を見た。どれもアシュランの全体像だが、ポーズがそれぞれ違う。大きさもいろいろである。
「好きなの選んでいいよ。それをあげたらいい」
「いいの?」
「いいよ。一生倉庫でいるよりもいいじゃないか」
「そうかな」
 そこにアリアスがやってきた。
「サントス、お父さんなんて言うからアシュランがびびってたぞ」
「ははは、余計なことを聞かれたくなかったからさ、あえて言ってみたんだ」
「そうなのか?」
 ソルは三十センチ四方の木箱をみつけて中をみていた。
「木像がたくさんある」
 サントスとアリアスはソルに近づいて木箱をのぞいた。様々な大きさのアシュランの木像やら、体のパーツなどもあった。
「昔ジェラルドが練習したやつだね。アシュランを掘った物は基本廃棄できないからね」
「これかわいい。これがいいな」
それは十五センチほどの高さの小さい木像である。机の上に飾るには手頃な大きさだ。
「こんなに小さいのでいいの?」
「うん」
「それをどうするんだ?」
アリアスが聞いた。
「人間との物々交換だよ。人間に頼むだけじゃなくて、対価をあげたいってソルが言うから」
「ははは、ソルよ。一番人間が喜ぶのは降臨してやることだぞ」
 アリアスが笑いながら言った。
「確かに」
とサントス。
「私が作る太陽の石も人間には大人気だ。欲しかったらいつでもやるぞ」
「ありがとう」
 アリアスはソルの頭をなでなでして去って行った。
「ジェラルド様は一杯作ったんだね」
「そうだね。昔一杯練習したみたいだからね。ジェラルドが彫ると時々動いたりするんだよね。倉庫でも動いてるのかな。そう思うとかわいそうな気もするけど」
「もっともらってもいい? 外に出してあげたい」
「いいよ」
 ソルは小さいアシュラン像を五体ほど抱えて、雲の上の神殿を後にした。

 アリアスはその後アシュランに、「ご機嫌の方だった」と報告し、アシュランは「そうか。びっくりしたー」と胸をなでおろしたのだった。
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