52 / 72
52、クインとアレン 想いの先には
しおりを挟む
アレンはグラハの間を出て、エルティーナの自室へと向かう。
エルティーナを抱き上げる時は、必ず腕に乗せ自らの身体には接触しないようにしていた。でも今はエルティーナは寝ている(失神している)ので、腕に乗せ身体どうしを密着させ、アレンにエルティーナの体重がかかるように抱いている。
出きるだけ長く抱いていたいと思い。人があまり通らなく、エルティーナの自室へ行くにはかなり遠回りになる回廊をアレンは選ぶ。
ボルタージュ国は今が一年のうちで一番穏やかな季節。
王宮の庭園には色とりどりの花が咲きほこり、針葉樹も広葉樹もふかい生命を感じる新緑の葉を太陽に向けて名一杯広げ、光を取り込んでいる。
今の時分、太陽は真上にあるため、回廊に影はできない。その為、美しく磨かれた大理石の長い回廊は、その石 本来の色や年輪のように流れる芸術的な模様を浮かび上がらせていた。
「いい風だな……」アレンは自らが不意に思った言葉に驚き、自然に唇が弧を描く。
自然や季節、気候を美しいと感じるようになったのは、あの庭園でエルティーナと再会してからだった。
あの時あの瞬間に、全てのものに色がついた。
天使のように妖精のように美しく成長したエルティーナ。本当にこれ以上、好きになるとは思っていなかったから驚く。
かすかに香るエルティーナの匂いがアレンのまわりを優しく包みこむ。
その香りに包まれながら、アレンはエルティーナの柔らかい身体を起きない程度の力でゆっくりと力を入れて抱きしめる……。
柔らかい柔らかい拘束……。
(「………幸せだな。エル様……どうか起きないでください……もう少し……このままで……あと少し…貴女に触れていたい…」)
長く続く回廊は、二人の味方だった。珍しく誰も通らず、鳥の鳴き声さえない空間…。
まさにそこだけが、この世界から切り取られた二人だけの空間となっていた。
エルティーナを身体中で感じ大満足のアレンは、彼女の自室近くになる頃に密着して抱き上げていたのをやめ、抱き方を変える。
帝王学などの勉強は本来エルティーナの自室でやる為、何故いきなり場所が変わってしまったのか。理由を聞かされていないナシルは心配だったのだろう、エルティーナの部屋の前で待っていた。
アレンはそれを見て「悪い事をしたな」と思いながら歩いていく。
「アレン様!? エルティーナ様に何かあったのですか?? 」
緊張したナシルの声が聞こえてくる。
「エルティーナ様は寝ていらっしゃるだけだ。帝王学はラズラ様も一緒に受ける事になった為、朝食をとったグラハの間でそのままされていた。
授業は最後まで受けられている。
午後からの予定は無い。少しお疲れのようだから、自ら目覚めるまで起こさないでほしい」
エルティーナを気遣うアレンに、感謝の気持ちをこめてナシルは腰を折る。
「アレン様、中に」
ナシルに促されてエルティーナを抱いたまま部屋に入る。部屋の真ん中に位置するソファにエルティーナを横たえようとすると、ナシルに止められる。
「アレン様。エルティーナ様はよく寝入っているようですので、ソファーでは身体に負担がかかりよくありません。
私どもではエルティーナ様を運べませんので、申し訳ございませんが寝室のベッドに下ろして頂けませんか?」
ナシルの願いにアレンは拒否反応が出る。
「流石に、私が寝室に入るのは問題があると思うが………」
「私も一緒に中に入りますし、ドアは全開にしておきますので大丈夫です。どうぞ、よろしくお願い致します」
「…分かった運ぼう。ドアを開けてくれ」
穏やかなアレンの声にナシルはゆっくり頷く。
ただ、運ぶ為だけでもアレンにとっては禁断の場所である。今朝の夢の話の一件もあり、どうしても生々しい情事を想像してしまいエルティーナに対して申しわけなくなり萎縮する。
「アレン様、こちらに」
ナシルの言葉にしたがいエルティーナをベッドに優しく、大切に横たわす。手の甲に柔らかなベッドの感触が伝わり、小さくきしむ音が静寂の部屋に響く。
隣りにナシルがいて、寝室の扉は両扉が最大に開いている。
太陽の光を取り込み暗い部屋に光の道を作っていても、アレンの気持ちは高ぶり熱くなる。
変な気分にならないように、出きるだけ周りを見ないように心がけた。
アレンがそんな葛藤をしていた同時、エルティーナをベッドに下ろすのを見ていたナシルは、不思議そうにアレンを観察していた。
(本当にアレン様の腕力に惚れ惚れするわ。なかなか体重のおありになるエルティーナ様を腕の力だけで体勢を変えてベッドに下ろすなんて。 何処にそんな力がおありなのかしら? 聞いてみたいわ…。
それにいつも遠くから見ていても美しいお姿だと感心していましたが。間近でみたら凄い迫力の美貌ね~。眼福、眼福。
天使のように美しいエルティーナ様と並ぶと、物語の一場面を切り取ったかのようだわ……綺麗……)
エルティーナを横たえた後、アレンは身を起こす。名残惜しそうにエルティーナを見ている自分に対して笑いが込み上げる。
ナシルに目を向けると幸せそうに微笑んでいた。
「ふふっ。アレン様とエルティーナ様が並ぶと本当に見ているだけで幸せな気分になります。なんと申しましょうか…、色彩の対比が美しいのですね」
エルティーナ付きの侍女達がアレンを大絶賛するのは何度も聞いてきたが、行儀作法に厳しいナシルからのそういった発言は皆無だった為、アレンは驚いた。
あまりに驚いているアレンにナシルは戸惑う。
「こう言う発言は、お嫌ですか?」
「エルティーナ様の側に居て、似合うと言われ嫌な訳はない。もちろん嬉しい。驚いたのは、貴女からそう言う類の話を今まで一度も聞いたことがなかったからだ」
「もちろん口には出しません。でもずっと思ってはおりました。
……エルティーナ様だけでも、アレン様だけでも、お美しいですが、お二人が並ぶ時が一番美しいと私は感じます」
ナシルの言葉はアレンの心に深く響く。見目も美しくありたいと思うのは、エルティーナ様の側にいたいからだ。
ナシルの言葉を何度も反芻する。アレンは溢れる思いを胸に「ありがとう」と言葉に乗せた。
アレンが退出した寝室でナシルはゆっくりとエルティーナの髪を解く。
柔らかく金色に輝く髪を見て、ナシルはそっとキスを落とし、小さな小さな声で願いを口にする。
「幸せになってくださいませ。エルティーナ様」……と。
半年後の別れはアレンとだけではない。ナシル達との別れも待っている。
他国に嫁ぐ場合のみ乳母や侍女を連れていける。しかし伯爵家に降嫁するエルティーナにはついて行けない。
結婚が決まり嬉しい以上に、エルティーナと離れる寂しさが思っていた以上に辛くて仕方がなかった。
アレンはエルティーナが目覚めるまで側に居ることが出来ない。エルティーナが起きていてもいなくても、夕方くらいに訪れる旨を侍女に伝え部屋を退出した。
アレンが自室までの回廊を歩いていると、回廊に面している庭園のベンチに父であるクイン・メルタージュが座っていた。
「アレン。久しぶりだね。同じ王宮にいても会わないもんだ」
「お久ぶりです、父上。何故ここに?」
「アレンを待っていたのだよ。エルティーナ様は午後から何も予定がないから、お前の身体があくかと思ってね。
例の件を調べた最終報告を今から陛下と話すのだけど、アレンも一緒にどうかと思ってね」
「一緒に行きます」
「うん」
クインとアレンは王の政務室まで連れ立って行くことになった。
何も話さずしばらく歩いた時、クインから先に口をひらいた。
「アレン、病気は大丈夫か?」
突然の父からの気遣いに驚く。今日はよく病気のことにふれる日だな…と感じる。
「とくに変わりなくです。悪くはなっていませんが、良くもないです」
「……そうか。…アレン。
その…エルティーナ様の護衛を続けるのに、宦官になる必要はないと思うのだが…別に今のままでも……。
フリゲルン伯爵もエルティーナ様と床を共にすれば彼女が純潔だと分かるだろうし、お前に対しても信用が出来ると思う」
「父にも、死んだ母にも悪いとは思います。だがフリゲルン伯爵だけに分かった所で何の意味もない。
王女であるエルティーナ様に私が護衛に付くのはおかしくはないですが、フリゲルン家に降嫁し、王族でなくなるエルティーナ様に伯爵家よりも位の上の私が付くのはおかしい。何もなくても周りは噂をし、彼女を貶めていく」
「……そう…だね…」
「そういう噂や中傷から守るのは、私がエルティーナ様の側から離れればいいと、重々承知してます。
…でもそれだけは出来ない。…何も望まない……ただ側に…居たい」
「お前の病の事は、エルティーナ様もご存知だし…一緒になろうとは思わないのか?
病の所為で長く一緒にいられなくとも。彼女なら、それまでの時を大切に過ごして頂けると思うよ。
なんせ吐血しているお前を押し倒していたくらいの方だし……」
クインの言い方に、軽く吹き出す。それから笑うのを隠すため口を軽く押さえた。
「……父上、そのようないい方は、エルティーナ様が猛獣みたいですよ。
……エルティーナ様と一緒になろうとは思いません。後、数年程度しか生きれない私と…この先何十年もの時があるエルティーナ様と夫婦にはなれない。
今の関係だから我慢が出来ます。夫婦になれば今のようには堪えられない。どうしても先に進みたくなる。何も残せない私が欲望を満足させる為だけに、彼女のあるべき未来をつぶしたくはありません。
この頃…我慢しきれなくて、抱き上げたりはしていますが……」
「分かったよ。もう言わない。お前が王宮に入ったら、もしかしたらエルティーナ様以外の女性を好きになるかもと思ったが…やはり無理だったか……エルティーナ様が素晴らし過ぎるからな。
はぁぁ~ あそこまで美しく育たなければ…むしろ不美人だったら、行くあてがないから、お前にとでもなったろうに……残念だよ」
「エルティーナ様に恋をしたら、他の女性と恋は出来ない」
「そうだな……」
それ以降、クインとアレンは何も話さず王の政務室に到着した。
エルティーナを抱き上げる時は、必ず腕に乗せ自らの身体には接触しないようにしていた。でも今はエルティーナは寝ている(失神している)ので、腕に乗せ身体どうしを密着させ、アレンにエルティーナの体重がかかるように抱いている。
出きるだけ長く抱いていたいと思い。人があまり通らなく、エルティーナの自室へ行くにはかなり遠回りになる回廊をアレンは選ぶ。
ボルタージュ国は今が一年のうちで一番穏やかな季節。
王宮の庭園には色とりどりの花が咲きほこり、針葉樹も広葉樹もふかい生命を感じる新緑の葉を太陽に向けて名一杯広げ、光を取り込んでいる。
今の時分、太陽は真上にあるため、回廊に影はできない。その為、美しく磨かれた大理石の長い回廊は、その石 本来の色や年輪のように流れる芸術的な模様を浮かび上がらせていた。
「いい風だな……」アレンは自らが不意に思った言葉に驚き、自然に唇が弧を描く。
自然や季節、気候を美しいと感じるようになったのは、あの庭園でエルティーナと再会してからだった。
あの時あの瞬間に、全てのものに色がついた。
天使のように妖精のように美しく成長したエルティーナ。本当にこれ以上、好きになるとは思っていなかったから驚く。
かすかに香るエルティーナの匂いがアレンのまわりを優しく包みこむ。
その香りに包まれながら、アレンはエルティーナの柔らかい身体を起きない程度の力でゆっくりと力を入れて抱きしめる……。
柔らかい柔らかい拘束……。
(「………幸せだな。エル様……どうか起きないでください……もう少し……このままで……あと少し…貴女に触れていたい…」)
長く続く回廊は、二人の味方だった。珍しく誰も通らず、鳥の鳴き声さえない空間…。
まさにそこだけが、この世界から切り取られた二人だけの空間となっていた。
エルティーナを身体中で感じ大満足のアレンは、彼女の自室近くになる頃に密着して抱き上げていたのをやめ、抱き方を変える。
帝王学などの勉強は本来エルティーナの自室でやる為、何故いきなり場所が変わってしまったのか。理由を聞かされていないナシルは心配だったのだろう、エルティーナの部屋の前で待っていた。
アレンはそれを見て「悪い事をしたな」と思いながら歩いていく。
「アレン様!? エルティーナ様に何かあったのですか?? 」
緊張したナシルの声が聞こえてくる。
「エルティーナ様は寝ていらっしゃるだけだ。帝王学はラズラ様も一緒に受ける事になった為、朝食をとったグラハの間でそのままされていた。
授業は最後まで受けられている。
午後からの予定は無い。少しお疲れのようだから、自ら目覚めるまで起こさないでほしい」
エルティーナを気遣うアレンに、感謝の気持ちをこめてナシルは腰を折る。
「アレン様、中に」
ナシルに促されてエルティーナを抱いたまま部屋に入る。部屋の真ん中に位置するソファにエルティーナを横たえようとすると、ナシルに止められる。
「アレン様。エルティーナ様はよく寝入っているようですので、ソファーでは身体に負担がかかりよくありません。
私どもではエルティーナ様を運べませんので、申し訳ございませんが寝室のベッドに下ろして頂けませんか?」
ナシルの願いにアレンは拒否反応が出る。
「流石に、私が寝室に入るのは問題があると思うが………」
「私も一緒に中に入りますし、ドアは全開にしておきますので大丈夫です。どうぞ、よろしくお願い致します」
「…分かった運ぼう。ドアを開けてくれ」
穏やかなアレンの声にナシルはゆっくり頷く。
ただ、運ぶ為だけでもアレンにとっては禁断の場所である。今朝の夢の話の一件もあり、どうしても生々しい情事を想像してしまいエルティーナに対して申しわけなくなり萎縮する。
「アレン様、こちらに」
ナシルの言葉にしたがいエルティーナをベッドに優しく、大切に横たわす。手の甲に柔らかなベッドの感触が伝わり、小さくきしむ音が静寂の部屋に響く。
隣りにナシルがいて、寝室の扉は両扉が最大に開いている。
太陽の光を取り込み暗い部屋に光の道を作っていても、アレンの気持ちは高ぶり熱くなる。
変な気分にならないように、出きるだけ周りを見ないように心がけた。
アレンがそんな葛藤をしていた同時、エルティーナをベッドに下ろすのを見ていたナシルは、不思議そうにアレンを観察していた。
(本当にアレン様の腕力に惚れ惚れするわ。なかなか体重のおありになるエルティーナ様を腕の力だけで体勢を変えてベッドに下ろすなんて。 何処にそんな力がおありなのかしら? 聞いてみたいわ…。
それにいつも遠くから見ていても美しいお姿だと感心していましたが。間近でみたら凄い迫力の美貌ね~。眼福、眼福。
天使のように美しいエルティーナ様と並ぶと、物語の一場面を切り取ったかのようだわ……綺麗……)
エルティーナを横たえた後、アレンは身を起こす。名残惜しそうにエルティーナを見ている自分に対して笑いが込み上げる。
ナシルに目を向けると幸せそうに微笑んでいた。
「ふふっ。アレン様とエルティーナ様が並ぶと本当に見ているだけで幸せな気分になります。なんと申しましょうか…、色彩の対比が美しいのですね」
エルティーナ付きの侍女達がアレンを大絶賛するのは何度も聞いてきたが、行儀作法に厳しいナシルからのそういった発言は皆無だった為、アレンは驚いた。
あまりに驚いているアレンにナシルは戸惑う。
「こう言う発言は、お嫌ですか?」
「エルティーナ様の側に居て、似合うと言われ嫌な訳はない。もちろん嬉しい。驚いたのは、貴女からそう言う類の話を今まで一度も聞いたことがなかったからだ」
「もちろん口には出しません。でもずっと思ってはおりました。
……エルティーナ様だけでも、アレン様だけでも、お美しいですが、お二人が並ぶ時が一番美しいと私は感じます」
ナシルの言葉はアレンの心に深く響く。見目も美しくありたいと思うのは、エルティーナ様の側にいたいからだ。
ナシルの言葉を何度も反芻する。アレンは溢れる思いを胸に「ありがとう」と言葉に乗せた。
アレンが退出した寝室でナシルはゆっくりとエルティーナの髪を解く。
柔らかく金色に輝く髪を見て、ナシルはそっとキスを落とし、小さな小さな声で願いを口にする。
「幸せになってくださいませ。エルティーナ様」……と。
半年後の別れはアレンとだけではない。ナシル達との別れも待っている。
他国に嫁ぐ場合のみ乳母や侍女を連れていける。しかし伯爵家に降嫁するエルティーナにはついて行けない。
結婚が決まり嬉しい以上に、エルティーナと離れる寂しさが思っていた以上に辛くて仕方がなかった。
アレンはエルティーナが目覚めるまで側に居ることが出来ない。エルティーナが起きていてもいなくても、夕方くらいに訪れる旨を侍女に伝え部屋を退出した。
アレンが自室までの回廊を歩いていると、回廊に面している庭園のベンチに父であるクイン・メルタージュが座っていた。
「アレン。久しぶりだね。同じ王宮にいても会わないもんだ」
「お久ぶりです、父上。何故ここに?」
「アレンを待っていたのだよ。エルティーナ様は午後から何も予定がないから、お前の身体があくかと思ってね。
例の件を調べた最終報告を今から陛下と話すのだけど、アレンも一緒にどうかと思ってね」
「一緒に行きます」
「うん」
クインとアレンは王の政務室まで連れ立って行くことになった。
何も話さずしばらく歩いた時、クインから先に口をひらいた。
「アレン、病気は大丈夫か?」
突然の父からの気遣いに驚く。今日はよく病気のことにふれる日だな…と感じる。
「とくに変わりなくです。悪くはなっていませんが、良くもないです」
「……そうか。…アレン。
その…エルティーナ様の護衛を続けるのに、宦官になる必要はないと思うのだが…別に今のままでも……。
フリゲルン伯爵もエルティーナ様と床を共にすれば彼女が純潔だと分かるだろうし、お前に対しても信用が出来ると思う」
「父にも、死んだ母にも悪いとは思います。だがフリゲルン伯爵だけに分かった所で何の意味もない。
王女であるエルティーナ様に私が護衛に付くのはおかしくはないですが、フリゲルン家に降嫁し、王族でなくなるエルティーナ様に伯爵家よりも位の上の私が付くのはおかしい。何もなくても周りは噂をし、彼女を貶めていく」
「……そう…だね…」
「そういう噂や中傷から守るのは、私がエルティーナ様の側から離れればいいと、重々承知してます。
…でもそれだけは出来ない。…何も望まない……ただ側に…居たい」
「お前の病の事は、エルティーナ様もご存知だし…一緒になろうとは思わないのか?
病の所為で長く一緒にいられなくとも。彼女なら、それまでの時を大切に過ごして頂けると思うよ。
なんせ吐血しているお前を押し倒していたくらいの方だし……」
クインの言い方に、軽く吹き出す。それから笑うのを隠すため口を軽く押さえた。
「……父上、そのようないい方は、エルティーナ様が猛獣みたいですよ。
……エルティーナ様と一緒になろうとは思いません。後、数年程度しか生きれない私と…この先何十年もの時があるエルティーナ様と夫婦にはなれない。
今の関係だから我慢が出来ます。夫婦になれば今のようには堪えられない。どうしても先に進みたくなる。何も残せない私が欲望を満足させる為だけに、彼女のあるべき未来をつぶしたくはありません。
この頃…我慢しきれなくて、抱き上げたりはしていますが……」
「分かったよ。もう言わない。お前が王宮に入ったら、もしかしたらエルティーナ様以外の女性を好きになるかもと思ったが…やはり無理だったか……エルティーナ様が素晴らし過ぎるからな。
はぁぁ~ あそこまで美しく育たなければ…むしろ不美人だったら、行くあてがないから、お前にとでもなったろうに……残念だよ」
「エルティーナ様に恋をしたら、他の女性と恋は出来ない」
「そうだな……」
それ以降、クインとアレンは何も話さず王の政務室に到着した。
0
あなたにおすすめの小説
王宮に薬を届けに行ったなら
佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。
カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。
この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。
慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。
弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。
「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」
驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。
「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」
※ベリーズカフェにも掲載中です。そちらではラナの設定が変わっています。(貴族→庶民)それにより、内容も少し変更しておりますのであわせてお楽しみください。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
はじめまして、旦那様。離婚はいつになさいます?
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
「はじめてお目にかかります。……旦那様」
「……あぁ、君がアグリア、か」
「それで……、離縁はいつになさいます?」
領地の未来を守るため、同じく子爵家の次男で軍人のシオンと期間限定の契約婚をした貧乏貴族令嬢アグリア。
両家の顔合わせなし、婚礼なし、一切の付き合いもなし。それどころかシオン本人とすら一度も顔を合わせることなく結婚したアグリアだったが、長らく戦地へと行っていたシオンと初対面することになった。
帰ってきたその日、アグリアは約束通り離縁を申し出たのだが――。
形だけの結婚をしたはずのふたりは、愛で結ばれた本物の夫婦になれるのか。
★HOTランキング最高2位をいただきました! ありがとうございます!
※書き上げ済みなので完結保証。他サイトでも掲載中です。
人質姫と忘れんぼ王子
雪野 結莉
恋愛
何故か、同じ親から生まれた姉妹のはずなのに、第二王女の私は冷遇され、第一王女のお姉様ばかりが可愛がられる。
やりたいことすらやらせてもらえず、諦めた人生を送っていたが、戦争に負けてお金の為に私は売られることとなった。
お姉様は悠々と今まで通りの生活を送るのに…。
初めて投稿します。
書きたいシーンがあり、そのために書き始めました。
初めての投稿のため、何度も改稿するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
小説家になろう様にも掲載しております。
読んでくださった方が、表紙を作ってくださいました。
新○文庫風に作ったそうです。
気に入っています(╹◡╹)
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる