【第一章】狂気の王と永遠の愛(接吻)を

逢生ありす

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悠久の王・キュリオ編

狂い始めた歯車Ⅳ

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そんなことを考えながら脇机にミルクボトルを戻すと、キュリオは水の入ったグラスに口をつける。己の水分補給は手短に済ませ、彼女の背中を優しく擦りながら窓辺へ向かった。

(こうしているとアオイはすぐに眠くなるんだ)

いつものやりとりを思い出しながら幸せを噛みしめるように彼女の顔に顔を寄せる。日の光が赤子の眠気を奪ってしまわぬよう遮光のカーテンをサラリと手繰り寄せた。
ゆったりと歩きながら瞼が完全に閉じる時を待つが、彼女の長い睫毛が幾度となく頬に触れ、不思議に思ったキュリオはアオイの顔を覗きこんだ。

「おや? 眠くないのかな?」

そこまで言ってようやく思い出す。

「あぁ、アオイは大樹の露を口にしたのだったね」

普段は精霊しか口にしないと言われている大樹の露。そのお蔭で彼女らは他に何も食さずとも長い時を生きられるのだという。精霊の国にのみ存在する聖なる物のひとつだが、精霊王の差し出すものならば何も心配する事はないはずだ。

「もしかしたらしばらくは気が溢れて眠れないかもしれないな」

昨夜のようなことはもう二度と経験したくない。しかしまた起らない可能性など誰にもわかりはしないのだ。だが、アオイを目覚めさせた大樹の露の効果がしばらく体に残れば幾分安心できる気がする。

「けれどお前の体はまだ本調子ではない。今はゆっくり休むのが一番だ」

アオイを腕に抱いたままキュリオはベッドへ横になる。美しい銀の髪がシーツに広がり、その上に小さな赤子の体が乗っているが、そんなことキュリオは微塵も気にならない。鼻が触れてしまいそうな程に顔を近づけ、キラキラしたアオイの瞳を見ていると静かな湖面のように心が安らいでいくのがわかる。

「やはりお前と二人きりがいい……」

「……アオイはこんな私をどう思っているのだろうね……」

(……嫌われてしまう……だろうか……)

軽快なリズムを刻む赤子の心音に安堵したキュリオは急速な眠気に襲われていく。そして、まるで彼女の眼差しに癒されるようにキュリオはゆっくり眠りに落ちて行った――
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