118 / 212
悠久の王・キュリオ編
止まらない愛錠
しおりを挟む
安心したような笑みを浮かべた美しい彼はそれから目を閉じたまま全く動かなくなってしまった。やがて規則正しい呼吸に肩にかかっていた長い髪がサラリと流れる。
「…………」
目の前に流れ落ちた銀の髪に赤子はそっと手を伸ばす。そして指先に触れた絹糸のような感触に目を輝かせている。
「……! きゃぁっ」
その感触がよほど気に入ったのかアオイはその後何度も彼の髪を撫で続けると、意識のないキュリオの顔に優しい笑みが浮かぶ。
やがて遊び疲れたアオイ。寝返りをうつと、カーテンのわずかな隙間から日の光の降り注ぐ窓辺へと目を向ける。すると突然、視界の中心に小さな影が飛び込んだ。よくよくと目を見張ると、それは色鮮やかな小鳥たちの姿だった。小鳥とアオイの視線が絡み合うと、気づいた彼女たちは赤子を窓の外へと誘うように美しい歌を唄う。
「……っ!」
アオイの目には何もかもが新鮮で、痛む体も気にならないほど心は弾み、興味に対する過度な好奇心が彼女の体を突き動かす。窓辺へ向かおうと懸命に腕を伸ばし、前に進もうとする小さな足はモゾモゾとシーツの上を撫でるように這う。
その懸命な姿に窓辺の小鳥たちも彼女を応援するように、さらに声高らかな音色を奏で始めた。
――どれくらい頑張っただろう。アオイの疲れ切った小さな手足の努力がとうとう報われる時がきた。
あと少し、あと少しでベッドから抜けられる……と思った彼女だが、シーツが足をとらえてなかなか離してくれない。強行突破を試みようとしたアオイが勢いよく身を乗り出すと……わずかに動いた真っ白なシーツがキュリオの腹部をかすめる。
「……ん……」
それは眠っていた美しい王の意識を徐々に覚醒させ、キュリオは朦朧とする中、記憶を呼び覚ますようにゆっくり瞬きを繰り返した。
(私は……眠ってしまっていたのか……?)
隣にいるはずの赤子へ視線を向けると、目の前の光景に一瞬にして目が覚めて大きく瞳を開くキュリオ。
「……っ!! 待ちなさい! アオイッッ!!」
ガバッと上半身を起こしたキュリオは必死に長い手を伸ばし、小さな体がベッドから落ちる寸前のところで彼女の寝間着を力強く掴んだ。もれなく彼の声に驚いた小鳥たちは鮮やかな翼を広げ窓辺から飛び立ってしまった。
「んぅ……」
視界から消え去ってしまった小鳥たちに彼女は不服そうな声をあげたが、キュリオの心音は激しい振動を繰り返し嫌な汗が流れた。
深く息をついたキュリオは両腕でアオイを抱き上げ、小さな体を強く抱きしめる。
「私の可愛いアオイ……君が自由に飛び立てないよう、私の腕の中に閉じ込めてしまいたいよ……」
アオイは背に腕をまわされ顔を覗きこまれる。そしてひんやりとしたキュリオの指先がアオイの柔らかな頬をツゥと撫でる。やがて彼のその瞳には妖しい光が宿り、沈黙が流れた。
「…………」
いつもは優しいキュリオの瞳と手がこの時ばかりは少し恐ろしく、アオイは彼の視線から逃れるように己の視線を彷徨わせた――。
「…………」
目の前に流れ落ちた銀の髪に赤子はそっと手を伸ばす。そして指先に触れた絹糸のような感触に目を輝かせている。
「……! きゃぁっ」
その感触がよほど気に入ったのかアオイはその後何度も彼の髪を撫で続けると、意識のないキュリオの顔に優しい笑みが浮かぶ。
やがて遊び疲れたアオイ。寝返りをうつと、カーテンのわずかな隙間から日の光の降り注ぐ窓辺へと目を向ける。すると突然、視界の中心に小さな影が飛び込んだ。よくよくと目を見張ると、それは色鮮やかな小鳥たちの姿だった。小鳥とアオイの視線が絡み合うと、気づいた彼女たちは赤子を窓の外へと誘うように美しい歌を唄う。
「……っ!」
アオイの目には何もかもが新鮮で、痛む体も気にならないほど心は弾み、興味に対する過度な好奇心が彼女の体を突き動かす。窓辺へ向かおうと懸命に腕を伸ばし、前に進もうとする小さな足はモゾモゾとシーツの上を撫でるように這う。
その懸命な姿に窓辺の小鳥たちも彼女を応援するように、さらに声高らかな音色を奏で始めた。
――どれくらい頑張っただろう。アオイの疲れ切った小さな手足の努力がとうとう報われる時がきた。
あと少し、あと少しでベッドから抜けられる……と思った彼女だが、シーツが足をとらえてなかなか離してくれない。強行突破を試みようとしたアオイが勢いよく身を乗り出すと……わずかに動いた真っ白なシーツがキュリオの腹部をかすめる。
「……ん……」
それは眠っていた美しい王の意識を徐々に覚醒させ、キュリオは朦朧とする中、記憶を呼び覚ますようにゆっくり瞬きを繰り返した。
(私は……眠ってしまっていたのか……?)
隣にいるはずの赤子へ視線を向けると、目の前の光景に一瞬にして目が覚めて大きく瞳を開くキュリオ。
「……っ!! 待ちなさい! アオイッッ!!」
ガバッと上半身を起こしたキュリオは必死に長い手を伸ばし、小さな体がベッドから落ちる寸前のところで彼女の寝間着を力強く掴んだ。もれなく彼の声に驚いた小鳥たちは鮮やかな翼を広げ窓辺から飛び立ってしまった。
「んぅ……」
視界から消え去ってしまった小鳥たちに彼女は不服そうな声をあげたが、キュリオの心音は激しい振動を繰り返し嫌な汗が流れた。
深く息をついたキュリオは両腕でアオイを抱き上げ、小さな体を強く抱きしめる。
「私の可愛いアオイ……君が自由に飛び立てないよう、私の腕の中に閉じ込めてしまいたいよ……」
アオイは背に腕をまわされ顔を覗きこまれる。そしてひんやりとしたキュリオの指先がアオイの柔らかな頬をツゥと撫でる。やがて彼のその瞳には妖しい光が宿り、沈黙が流れた。
「…………」
いつもは優しいキュリオの瞳と手がこの時ばかりは少し恐ろしく、アオイは彼の視線から逃れるように己の視線を彷徨わせた――。
0
あなたにおすすめの小説
【男装歴10年】異世界で冒険者パーティやってみた【好きな人がいます】
リコピン
ファンタジー
前世の兄と共に異世界転生したセリナ。子どもの頃に親を失い、兄のシオンと二人で生きていくため、セリナは男装し「セリ」と名乗るように。それから十年、セリとシオンは、仲間を集め冒険者パーティを組んでいた。
これは、異世界転生した女の子がお仕事頑張ったり、恋をして性別カミングアウトのタイミングにモダモダしたりしながら過ごす、ありふれた毎日のお話。
※日常ほのぼの?系のお話を目指しています。
※同性愛表現があります。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
【完結】家庭菜園士の強野菜無双!俺の野菜は激強い、魔王も勇者もチート野菜で一捻り!
鏑木 うりこ
ファンタジー
幸田と向田はトラックにドン☆されて異世界転生した。
勇者チートハーレムモノのラノベが好きな幸田は勇者に、まったりスローライフモノのラノベが好きな向田には……「家庭菜園士」が女神様より授けられた!
「家庭菜園だけかよーー!」
元向田、現タトは叫ぶがまあ念願のスローライフは叶いそうである?
大変!第2回次世代ファンタジーカップのタグをつけたはずなのに、ついてないぞ……。あまりに衝撃すぎて倒れた……(;´Д`)もうだめだー
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。
絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。
今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。
オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、
婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。
※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。
※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。
※途中からダブルヒロインになります。
イラストはMasquer様に描いて頂きました。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる