異世界でも馬とともに

ひろうま

文字の大きさ
60 / 94
第4章 大侵略の前兆

閑話9~神竜様と模擬戦~(エレン視点)

しおりを挟む
長かったリーソン滞在を終え、昨夜セラネスに戻って来た。
今日はギルドマスターのボルムさんに、活動に関する報告をする日だ。
久しぶりのギルドには大勢の人がいた。私たちが来ることを知って集まった人がほとんどだろう。
私にしてみれば、あまり気持ち良いものではないが、何度も経験したので慣れてしまった。

「あら?」
アリスが何か見付けたらしく、急に人混みの方へ歩き出した。
アリスは何か気になると周りが見えなくなるようで、こういうこともしょっちゅうだ。
私は慌てて追いかけた。
向かっている先には小さいドラゴンがいた。アリスは可愛いもの好きだから、多分あれがターゲットだろう。
「可愛いドラゴンですね……はっ!神竜様!」
「神竜様!?」
一瞬アリスの言葉が理解できなかったが、近くに行くと、確かにそのドラゴンは神竜様に間違いなかった。
神竜様は封印されていたはずではなかったのか?
頭を下げながら、そんなことを考えていた。

信じられないことに、神竜様は人間――ユウマというらしい――の従魔になったようだ。
私は彼に向けて殺気を放ったが、彼は全く動じていなかった。
さすが、神竜様を従魔にするだけのことはあるなと関心し掛けたところ、神竜様が殺気を放ってきた。
こ、これが、神竜様……私たちとは格が違う。
周りの冒険者も巻き込まれてしまたようだが、ユウマは全く気にせず神竜様を諫めていた。
悔しいが、彼の力は確かなようだ。
それに、彼のことは、ボルムさんも認めているように見える。
私は彼に興味を引かれ、模擬戦を持ちかけた。
彼は戦闘は得意ではないということだったので、私が3回全力で攻撃して彼がそれを耐えるという形にした。
後から思うと、そんなことをしなくても私は彼を認め始めていたのだが、竜人としてのプライドが無条件に人間を認めることを良しとしなかったのだろう。

ボルムさんへの報告が終わった後、ユウマと対峙する。
と言っても、彼は表情一つ変えていない……強者の余裕なのか?
まずは、スキルを使用しない通常の一撃。『通常の』と言っても、大抵の相手はこれだけで倒れる。
まあ、これは耐えるか……これで倒れたら、正直期待外れだったから、耐えてくれて良かった。
次は、ブースト(力・素早さ)スキルを用いての全力攻撃。
これは力と素早さを一時的に3倍にするスキルだが、次の行動の後は能力値は戻り、クーリングタイムも長い。使い所が難しいスキルだが、今回は打って付けだろう。
彼はこれも耐えた。ただし、ユウマは戦闘向きでないというのは本当の様で、速さには全く付いて行けていない感じだ。
しかし、ある程度予想はしていたものの、本当に全くダメージを与えられないのは驚いた。
これは、何からのダメージカットスキルを持っているとしか思えない。
神竜様のブレスも耐えたと言っていたので、物理のみに対応している訳ではなさそうだ。
ということは、もう手がない?
いや、ダメージを与えるのではなく、状態異常はどうだろうか。
私のブレス(雷)は、耐性が無ければ確実に麻痺にさせる追加効果を持つ。
セコいと言われそうだが、ここは麻痺にさせて『耐えられなかった』と言い張る作戦にするしかない。
後は、彼が麻痺耐性を持っていないことを祈るだけだ。
ブレスを吐くためには、準備の時間も必要だが、今回は時間の制限はないからこれは問題ない。
それより、ブレスを吐くには竜化しなければならないのが問題だ。
多くの人に竜化するところを見られるのは恥ずかしいし、竜化したら裸になってしまうため元に戻るのが困難になるからである。
だが、この際仕方がないだろう。

私は、晒のみになると、竜化してブレスを吐くため、魔力を蓄えていった。
必要な魔力の量が膨大であることが、準備の時間が掛かることと並び、ブレスを実戦で使い難くしている要因だ。
ようやく準備が整ったので、私は思いっきりブレスを吐いた。
どうだ……?
彼が固まっているが、これは麻痺しているのか?
これはもしかしたら、と思った直後、少し緑がかった白い光が彼を包んだ。これは、キュアの魔法!
私は、ガックリと膝を着いた。

「私の負けだわ。」
彼が私に近付いて来たのがわかったので、私は彼にそう伝えた。
「ありがとうございます。キュア掛けても、一度麻痺したから、それを突かれるかもしれないと思ったんですが。」
「……。」
実は、それも一瞬頭をよぎったが、さすがにそこまでやると自分のプライドにも傷が付くと思い直したのだ。
「ところで、元の姿に戻らないんですか?」
「あれを見て、それ言えるの?」
私は、破れた晒を見ながら、そう言った。
「し、失礼しました。」
「まあ、大勢の目の前でこんなことした私が悪いんだけど……。で、私に何を要求するの?」
「特に考えてなかったんですけど、エレンさんの可愛い姿を見て、お願いしたいことができました。」
「可愛い?バカにしてるの?私は今ドラゴンの姿なんだけど。」
この姿を可愛いという奴なんかいない。
「ドラゴンの姿だから可愛いんじゃないですか。」
「……。そ、それでお願いとは?」
彼の言葉に、一瞬引いてしまったが、気を取り直して話を進めた。
「撫でさせてください!」
「何それ!?公開処刑なの?でも、言い出したのは私だから、仕方ないわね。好きにどうぞ。」
「ありがとうございます!」
私を撫でようとした者は、これまで誰もいない。なので、ちょっと緊張する。
しかし、彼が撫で始めると、すごく心が落ち着いていく。何これ、気持ちいい!
ところが、あまりの気持ち良さに身体が警戒したのか、ビクッと動いた。
すると、反射的に、彼は撫でるのをやめてしまった。
でも、もっと撫でてもらいたい!
「も、もう少し撫でさせてあげても良いわよ!」
無意識に、そんな言葉が私の口から溢れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...