24 / 194
第一部
第24話 変わり者の魔女
しおりを挟む
「…………」
唖然とした、何とも言えない微妙な空気が流れる中、レクター・ウェインは、咄嗟に手を伸ばし掴んだリリアーナの右腕を見やり、浅い溜め息をついた。
――どうするかな? これ。
取り押さえたリリアーナの右腕は空中に停止し、左手の方はセシリアの持つ大皿をむんずと掴んでいた。
リリアーナが唐突に立ち上がり、両手を伸ばすのを見て、反射的に腕を掴んだ。
特に、凶器のようなものは持っていなかった。
ただ、皿を掴みたかっただけなのだろうと察せられたので、力は緩めたが、念の為、離してはいない。
驚くほど細く、力を込めたら簡単に折れそうな華奢な腕は、しかし、振り払う素振りも見せなかった。
どういうつもりだ、と顔に目をやると、唇は引き結ばれ、厚いベールで目元が隠されてはいるが、視線は真っ直ぐセシリアに向けられている。
ラッドは眉を顰めてはいるが、立ち上がる素振りはなく、成り行きを見定めるつもりらしい。オデイエはぎょっとしたようにリリアーナを見つめ、キャリエールは憐れむような目をしていた。
(キャリエールの言う通り、やはり、この女は頭がおかしいんだろうか?)
子ども達も目を見開き、不安げにこちらを見つめていた。
しかし、何と言っても、最も当惑しているのは、いきなり皿を掴まれたセシリアだ。
「あの、その……、すぐに、配り終えますので」
「いえ!どうしても今、一枚いただきたいのです。どうか、お願いいたします!」
「いえ……あの……ほんとうに、」
セシリアの困惑ぶりを見兼ねたキャリエールが、助け舟を出した。
「令嬢、すぐに配ってくれますから、一旦、座りましょう。ね?」
冷ややかな瞳に反し、口調は子供に諭し言い聞かせるようだったが、リアーナはふるふると首を横に振った。
「あの……わたくしに先に一枚食べさせてくだされば、あとはもう、空気のように静かにじっとしております。これ以降は、決してご迷惑をおかけいたしません。ですから、お願い致します」
最後の方は自信なさげな、消え入りそうな声だった。
セシリアは困惑に目をいっぱいに見開き、訳がわからない、と言った様子だ。
「あの、どうして……?そんな……」
「わたくし、本当にとてつもなく、たまらなく空腹なんです。お願い致します! セシリア様!」
懇願するリリアーナに奪われまいと、セシリアは皿を引いているようだが、リリアーナの方も決して離すまいと力を込め、掴んだ左手は血の気が失せ、白くなっている。
セシリアの狼狽ぶりは見ていて気の毒になるほどだった。その目は見開かれ、うっすらと涙まで浮かんでいる。
「どうされたんですか、貴女は、一体、どうして……」
オデイエが、これ見よがしな溜め息をついた。
「令嬢、もういい加減にしてください。迷惑です。何なんですか? 呼ばれてもないのに無理やりみたいに付いてきて、こんな騒ぎまで起こして」
オデイエにじろりと睨まれ、リリアーナが怯んだことが掴んだ右腕越しに伝わったが、なおもベールで覆われた頭を横に振る。
「あの……セシリア様。こちらのお宅、新しくて、とても綺麗なお宅ですね。お掃除も、とても丁寧にされているようにお見受けします」
やはり、頭がおかしいんだな、と憐みに似た感情が湧く。この状況で家を褒め始める理由が、全く思い当たらない。
「はあ……どうも……」
セシリアも訝し気に眉を寄せる。リリアーナはさらに口を開いた。
「でも、ネズミがいるのですか?」
その瞬間、ひゅっと息を呑む音が聞こえた。
どこから――?と思う間もなく、ぞっとするような嫌な声が、耳に響く。
「……なぜ?」
それが、セシリアの口から発せられたと理解するまで、少し時間が必要だった。
続いて、獣の咆哮のような唸り声。
大皿は、思い切りテーブルに叩き落とされた。
おそらくその衝撃で、リリアーナの左手も離れる。
皿とクッキーは、テーブルにぶつかり、弾けるように砕け散った。
「どうしてよ……!? どうして!? どうして!? どうして!? どうして!?」
見やると、セシリアの両目からは、滂沱の涙が溢れ出ていた。
聞こえてくる耳をつんざく獣のような金切り声は、セシリアの口の動きと合っているのに、いつもと違い過ぎるそれは、俄かには信じ難い。
目が離せず、ただ、その顔を凝視した。
「どうして!?――っロイは帰ってこないのに、あんた達だけ!? あんた達が死ねば良かった!」
ビュンっと頭の横を皿が飛び、後ろの壁に当たって、激しい音を立てて砕け散る。
セシリアが、テーブルの上の物を掴んで、めちゃくちゃに投げつけ始めた。
リリアーナの手を離し、最低限の動きで飛んでくる皿やらスプーンやらを避けながら、思考を巡らせる。
セシリアはかなり興奮している。
無理に押さえつけると暴れ、怪我をさせるかもしれない。
ロイ・カントには恩がある。それは避けたい。
セシリアとの間には大きなテーブルがある。乗り越えるのは容易だが、そこまでするほどのこともないだろう。
叫び尽くし、暴れ尽くし、落ち着き始めたところで、無難に取り押さえ事情を聞こう、と判断した。
目の端に、同じように考えたと思われるラッドが、子ども達を抱きかかえ保護しているのが見えた。オデイエとキャリエールは、飛んでくるものを反射的に避けながら、驚愕の表情を浮かべ、セシリアを凝視している。
この二人にはショックが大きいだろう。ロイともセシリアとも親しかったからな――。
「あんた達のせいで! あんた達が呪われてるから! ロイは死んだ!! 人殺し!!悪魔!! 死ね!! 死ね!! 皆、皆、死んじゃえ――!!」
視界の中心では、セシリアが呪いの言葉を吐きながら、テーブルの上のものをめちゃくちゃに投げ、暴れ続けていた。
頭が痛いな――と舌打ちしたい気分になる。
また、面倒事だ。仕事ばかり増える。
これも報告書が必要だろうか。要らないか、いや、一応書けって言われそうな気がする。
だから、来たくなかったのだ。セシリアの目、一見、好意的に見えたが、そんな筈がないことは、分かっていた。
リリアーナが来るなどと言い出さなければ、絶対に断っていたのに。
やはり今日はラッドに任せて、溜まりまくっている書類仕事でもしておくべきだった。
そこまで考えたところで、セシリアの手が、熱湯の入ったポットを掴み、振りかぶった。
熱い紅茶を振りまきながら、ポットが隣のリリアーナの顔の辺りをめがけて飛んでいる。
流石に避けるだろうが、片付けが大変だな、誰がするんだ? 後で何人か手配するか?
嘆息を落としながら、念の為ちらりと左を見やり、仰天した。
まったく、避けようとしている素振りがなかった。
呆然と固まって、ポットの射程内に立ち尽くしている。
――これほど鈍くさい人間が、この世にいるのか!?
ポットが一瞬前までリリアーナの頭があったところを通過して、ガチャンと大きな音を立てて床で砕けた。
抱き留めて床に伏せさせた体は見た目通り華奢で、ふわりと軽く、柔らかく弱々しい。
この体にあのポットが激突して、熱湯をかぶっていたら、医者は必須である。報告書も簡単なものでは済まなかっただろう。
伏せた姿勢のまま、リリアーナの背に回した腕を抜き、このくらい自力で避けろ、と腹立たしい気分で顔を上げると、驚きに見開かれた瞳と目が合った。
――目が、合った?
伏せさせた拍子に、ベールのついた帽子がふっ飛んだんだな、と気付いたのは、ずっとずっと後のことである。
伸し掛かるような体勢で、リリアーナの顔を間近に見た途端、後頭部を鈍器で殴られたように、世界が真っ白に染まった。
飛び上がるように体を離し起き上がり、まずは頭に何も当たっていないことを確認した。
その後は、とにかく、動転した。
自分でも何故そうなったか理解不能だが、この時は、動転しまくった。
今のは不可抗力で!とか、ポットが飛んでくるのが見えたので!とかいう言い訳めいた間抜けな台詞が、次々と頭を掠めては消えたが、幸いにも、口からは出なかった。
その間もリリアーナの顔から目が離せなかったが、リリアーナは手をついて体を起こしながら、その吸い込まれそうな瞳を何度か瞬くと俺から視線を外した。
テーブルの下から少し頭を出し、セシリアの方を向く。
しまった、手を差し出して、助け起こすべきだった、と思うのに、体はどういう訳か、動かない。
穴が開くほど凝視しても、横を向いた輪郭の中に一つの瑕疵も見付けられずにいると、長い睫毛に縁取られた瞳が、驚きに見開かれた。
視線を辿ると、セシリアがクッキーを両掌いっぱいに掴み取っている。
「やめて!」
立ち上がろうとするリリアーナがセシリアに向けて叫ぶ声が響いた途端、ようやく、事態の重さを理解した。
テーブルを乗り越え、クッキーを口に押し込む両手を後ろ手に捉えた瞬間、セシリアの喉が、ゴクリと動いた。
唖然とした、何とも言えない微妙な空気が流れる中、レクター・ウェインは、咄嗟に手を伸ばし掴んだリリアーナの右腕を見やり、浅い溜め息をついた。
――どうするかな? これ。
取り押さえたリリアーナの右腕は空中に停止し、左手の方はセシリアの持つ大皿をむんずと掴んでいた。
リリアーナが唐突に立ち上がり、両手を伸ばすのを見て、反射的に腕を掴んだ。
特に、凶器のようなものは持っていなかった。
ただ、皿を掴みたかっただけなのだろうと察せられたので、力は緩めたが、念の為、離してはいない。
驚くほど細く、力を込めたら簡単に折れそうな華奢な腕は、しかし、振り払う素振りも見せなかった。
どういうつもりだ、と顔に目をやると、唇は引き結ばれ、厚いベールで目元が隠されてはいるが、視線は真っ直ぐセシリアに向けられている。
ラッドは眉を顰めてはいるが、立ち上がる素振りはなく、成り行きを見定めるつもりらしい。オデイエはぎょっとしたようにリリアーナを見つめ、キャリエールは憐れむような目をしていた。
(キャリエールの言う通り、やはり、この女は頭がおかしいんだろうか?)
子ども達も目を見開き、不安げにこちらを見つめていた。
しかし、何と言っても、最も当惑しているのは、いきなり皿を掴まれたセシリアだ。
「あの、その……、すぐに、配り終えますので」
「いえ!どうしても今、一枚いただきたいのです。どうか、お願いいたします!」
「いえ……あの……ほんとうに、」
セシリアの困惑ぶりを見兼ねたキャリエールが、助け舟を出した。
「令嬢、すぐに配ってくれますから、一旦、座りましょう。ね?」
冷ややかな瞳に反し、口調は子供に諭し言い聞かせるようだったが、リアーナはふるふると首を横に振った。
「あの……わたくしに先に一枚食べさせてくだされば、あとはもう、空気のように静かにじっとしております。これ以降は、決してご迷惑をおかけいたしません。ですから、お願い致します」
最後の方は自信なさげな、消え入りそうな声だった。
セシリアは困惑に目をいっぱいに見開き、訳がわからない、と言った様子だ。
「あの、どうして……?そんな……」
「わたくし、本当にとてつもなく、たまらなく空腹なんです。お願い致します! セシリア様!」
懇願するリリアーナに奪われまいと、セシリアは皿を引いているようだが、リリアーナの方も決して離すまいと力を込め、掴んだ左手は血の気が失せ、白くなっている。
セシリアの狼狽ぶりは見ていて気の毒になるほどだった。その目は見開かれ、うっすらと涙まで浮かんでいる。
「どうされたんですか、貴女は、一体、どうして……」
オデイエが、これ見よがしな溜め息をついた。
「令嬢、もういい加減にしてください。迷惑です。何なんですか? 呼ばれてもないのに無理やりみたいに付いてきて、こんな騒ぎまで起こして」
オデイエにじろりと睨まれ、リリアーナが怯んだことが掴んだ右腕越しに伝わったが、なおもベールで覆われた頭を横に振る。
「あの……セシリア様。こちらのお宅、新しくて、とても綺麗なお宅ですね。お掃除も、とても丁寧にされているようにお見受けします」
やはり、頭がおかしいんだな、と憐みに似た感情が湧く。この状況で家を褒め始める理由が、全く思い当たらない。
「はあ……どうも……」
セシリアも訝し気に眉を寄せる。リリアーナはさらに口を開いた。
「でも、ネズミがいるのですか?」
その瞬間、ひゅっと息を呑む音が聞こえた。
どこから――?と思う間もなく、ぞっとするような嫌な声が、耳に響く。
「……なぜ?」
それが、セシリアの口から発せられたと理解するまで、少し時間が必要だった。
続いて、獣の咆哮のような唸り声。
大皿は、思い切りテーブルに叩き落とされた。
おそらくその衝撃で、リリアーナの左手も離れる。
皿とクッキーは、テーブルにぶつかり、弾けるように砕け散った。
「どうしてよ……!? どうして!? どうして!? どうして!? どうして!?」
見やると、セシリアの両目からは、滂沱の涙が溢れ出ていた。
聞こえてくる耳をつんざく獣のような金切り声は、セシリアの口の動きと合っているのに、いつもと違い過ぎるそれは、俄かには信じ難い。
目が離せず、ただ、その顔を凝視した。
「どうして!?――っロイは帰ってこないのに、あんた達だけ!? あんた達が死ねば良かった!」
ビュンっと頭の横を皿が飛び、後ろの壁に当たって、激しい音を立てて砕け散る。
セシリアが、テーブルの上の物を掴んで、めちゃくちゃに投げつけ始めた。
リリアーナの手を離し、最低限の動きで飛んでくる皿やらスプーンやらを避けながら、思考を巡らせる。
セシリアはかなり興奮している。
無理に押さえつけると暴れ、怪我をさせるかもしれない。
ロイ・カントには恩がある。それは避けたい。
セシリアとの間には大きなテーブルがある。乗り越えるのは容易だが、そこまでするほどのこともないだろう。
叫び尽くし、暴れ尽くし、落ち着き始めたところで、無難に取り押さえ事情を聞こう、と判断した。
目の端に、同じように考えたと思われるラッドが、子ども達を抱きかかえ保護しているのが見えた。オデイエとキャリエールは、飛んでくるものを反射的に避けながら、驚愕の表情を浮かべ、セシリアを凝視している。
この二人にはショックが大きいだろう。ロイともセシリアとも親しかったからな――。
「あんた達のせいで! あんた達が呪われてるから! ロイは死んだ!! 人殺し!!悪魔!! 死ね!! 死ね!! 皆、皆、死んじゃえ――!!」
視界の中心では、セシリアが呪いの言葉を吐きながら、テーブルの上のものをめちゃくちゃに投げ、暴れ続けていた。
頭が痛いな――と舌打ちしたい気分になる。
また、面倒事だ。仕事ばかり増える。
これも報告書が必要だろうか。要らないか、いや、一応書けって言われそうな気がする。
だから、来たくなかったのだ。セシリアの目、一見、好意的に見えたが、そんな筈がないことは、分かっていた。
リリアーナが来るなどと言い出さなければ、絶対に断っていたのに。
やはり今日はラッドに任せて、溜まりまくっている書類仕事でもしておくべきだった。
そこまで考えたところで、セシリアの手が、熱湯の入ったポットを掴み、振りかぶった。
熱い紅茶を振りまきながら、ポットが隣のリリアーナの顔の辺りをめがけて飛んでいる。
流石に避けるだろうが、片付けが大変だな、誰がするんだ? 後で何人か手配するか?
嘆息を落としながら、念の為ちらりと左を見やり、仰天した。
まったく、避けようとしている素振りがなかった。
呆然と固まって、ポットの射程内に立ち尽くしている。
――これほど鈍くさい人間が、この世にいるのか!?
ポットが一瞬前までリリアーナの頭があったところを通過して、ガチャンと大きな音を立てて床で砕けた。
抱き留めて床に伏せさせた体は見た目通り華奢で、ふわりと軽く、柔らかく弱々しい。
この体にあのポットが激突して、熱湯をかぶっていたら、医者は必須である。報告書も簡単なものでは済まなかっただろう。
伏せた姿勢のまま、リリアーナの背に回した腕を抜き、このくらい自力で避けろ、と腹立たしい気分で顔を上げると、驚きに見開かれた瞳と目が合った。
――目が、合った?
伏せさせた拍子に、ベールのついた帽子がふっ飛んだんだな、と気付いたのは、ずっとずっと後のことである。
伸し掛かるような体勢で、リリアーナの顔を間近に見た途端、後頭部を鈍器で殴られたように、世界が真っ白に染まった。
飛び上がるように体を離し起き上がり、まずは頭に何も当たっていないことを確認した。
その後は、とにかく、動転した。
自分でも何故そうなったか理解不能だが、この時は、動転しまくった。
今のは不可抗力で!とか、ポットが飛んでくるのが見えたので!とかいう言い訳めいた間抜けな台詞が、次々と頭を掠めては消えたが、幸いにも、口からは出なかった。
その間もリリアーナの顔から目が離せなかったが、リリアーナは手をついて体を起こしながら、その吸い込まれそうな瞳を何度か瞬くと俺から視線を外した。
テーブルの下から少し頭を出し、セシリアの方を向く。
しまった、手を差し出して、助け起こすべきだった、と思うのに、体はどういう訳か、動かない。
穴が開くほど凝視しても、横を向いた輪郭の中に一つの瑕疵も見付けられずにいると、長い睫毛に縁取られた瞳が、驚きに見開かれた。
視線を辿ると、セシリアがクッキーを両掌いっぱいに掴み取っている。
「やめて!」
立ち上がろうとするリリアーナがセシリアに向けて叫ぶ声が響いた途端、ようやく、事態の重さを理解した。
テーブルを乗り越え、クッキーを口に押し込む両手を後ろ手に捉えた瞬間、セシリアの喉が、ゴクリと動いた。
2
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
転生皇女セラフィナ
秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。
目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。
赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。
皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。
前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。
しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。
一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。
「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」
そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。
言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。
それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。
転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~
古堂 素央
恋愛
【完結】
「なんでわたしを突き落とさないのよ」
学園の廊下で、見知らぬ女生徒に声をかけられた公爵令嬢ハナコ。
階段から転げ落ちたことをきっかけに、ハナコは自分が乙女ゲームの世界に生まれ変わったことを知る。しかもハナコは悪役令嬢のポジションで。
しかしなぜかヒロインそっちのけでぐいぐいハナコに迫ってくる攻略対象の王子。その上、王子は前世でハナコがこっぴどく振った瓶底眼鏡の山田そっくりで。
ギロチンエンドか瓶底眼鏡とゴールインするか。選択を迫られる中、他の攻略対象の好感度まで上がっていって!?
悪役令嬢? 断罪ざまぁ? いいえ、冴えない王子と結ばれるくらいなら、ノシつけてヒロインに押しつけます!
黒ヒロインの陰謀を交わしつつ、無事ハナコは王子の魔の手から逃げ切ることはできるのか!?
【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる