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第二部
第46話 決意(レクター・ウェイン&ブルソール視点)
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その部屋のドアの前にすっくと立ち、アリスタは申し訳なさそうに言った。
「リリアーナ様はただいま、アナベルのことで泣いていらっしゃいます。だから、お会いになりたくないそうです」
「…………」
――は? 意味がさっっぱり分からない俺は彼女の婚約者だが? 泣いていると聞いて慌てて飛んで来たんだが? むしろ抱き寄せてよしよしするのが普通だろう!――という心の声を口にした場合、使用人部屋で七十五日間に渡り笑い者にされるだけで事態はまったく好転しないことくらい、こんな変わり者の自分にも容易に想像できたので、しばしの絶句の後、俺は平静を装って頷いた。
「ああわかった。じゃあまた改める。花だけ渡しておいてくれ」
もちろん、わかってなどいない。改めたくもない。戻る途中の廊下で行き会ったロンサール伯爵に「あれー? ウェイン卿、リリアーナのとこ行ったんじゃないの?」と能天気に声を掛けられたが聞こえないフリでやり過ごし、騎士の控室として使われている応接室のひとつのドアをよろめくように開けた。はずみでドア枠にがつんと右肩をぶつけたが、そのままよろよろとソファに向かう。
「あっ……! ふっ、副団長!! お疲れ様です!! だっ、大丈夫ですか!? 今、すごい音がしましたけど……」
先に部屋にいたメイアンが、ソファからがばっと立ち上がった。
「ああ、問題ない」
もちろん事態は深刻な問題だらけだったが、まずは座ることが先決だ。じゃないと倒れる。よろよろとメイアンの向かいに腰を下ろし、俺は頭を抱える。
「……だっ、大丈夫そうには……見えませんけど……」
問題ない、と繰り返しながらちらと視線だけ上げると、メイアンの顔色もひどい。
「……そうですか……?」と蚊の鳴くような小声で言って、メイアンは腰を下ろす。しん……と静けさが部屋に降りた。
そう言えば、メイアンの様子が昨日からおかしい。カマユーが折を見て話しておくと言っていたが……カマユーのさっきのらしからぬ呆然ぶりを思い出す――たぶんあいつ、しばらく無理だな。そして、今の俺にとっても、激しくどうでもいい。
俺をじっと見やり、唇を舐めて湿らせてから、メイアンがぎこちなく口を開いた。
「………あのう……レ、レディ・リリアーナは、大丈夫ですか? アナベルが急に辞めたって聞きましたけど……」
「ああ」
いや、泣いているらしいんだけど会ってもらえないんだ――と口にした途端、暴れ狂う狂戦士化してしまいそうなので俺は手短に会話を切る。
最近、そうじゃないかと思ってはいたのだ。恐ろしすぎて考えたくもなかったが……こうなってはもう、間違いない。
――リリアーナが、怒っている。
……何がいけなかったんだろう。思い当たる節が……たくさんありすぎて怖い。
落ち着きなく視線を彷徨わせ、メイアンはまた口を開く。
「……そ、それじゃ、レディ・リリアーナの副団長への態度がおかしい……? なんてことは、あったり……なかったり……なんか……しません?……か?」
ぎょっとして思わず顔を上げると、青ざめたメイアンが目が合う。こいつ、どうしてそれを?――と思って、はっとする。
そう言えば、昨日のディクソン公爵邸でのリリアーナの挙動を、メイアンも目にしているのだ。
「……あ、ああ、昨日、な、何か怒っているようだったな……」
平静を装ったつもりが、超絶弱々しい声が出た。
いつもおっとりと微笑んでいるリリアーナが、まさかのテーブルに拳ドンっである。しかも、細い眉をむうっとひそめて俺を睨んでいた。
ああ……とまるで自分のことのように青くなって唇を噛んだメイアンは、ダークブラウンの瞳を何度も瞬かせる。そういった仕草をすると、メイアンは実年齢よりもずっと幼く見えた。まるで、年端もいかない子どもだ。
「……あ、あの! ……ふ、副団長、……ひとつ、訊いてもいいですか?」
もちろん、と俺は年長者らしく首を縦に振る。
「……お、お訊きしたいのは……ニーナ・ナディンさん、のことです……!」
ひどく思い詰めた調子で、メイアンはそこで言葉を切った。ごくり、と咽喉を鳴らして唾を呑み込んだかと思うと、黙ってしまう。
「………………」
「………………」
恐ろしくも長い沈黙が、その場を支配した。
ひどく思い詰めた眼差しを若い従騎士から向けられて、俺は自身の失態に気付く。
カマユーが無理でも、エルガーかアイルが同席している時に話すべきだった。
若い従騎士の子どものように澄んだ瞳を見つめ返して、俺はおそるおそる問う。
「…………誰? それ?」
有名人? と続けて尋ねる前に、「うわああああっ!」とメイアンは絶望的な悲鳴を上げた。
さすがに仰天し、胸がぎっくーっと冷える。
――なんてことだ。どうやら、絶対に知っていないとまずい人間だったらしい。
「い、いや、悪い、メイアン……俺は、その、己と関わりの浅い人間を覚えることが、極端に苦手なんだ。だ、だが、今後はできるかぎり改善しよう、約束する」
まるで、子どもがイヤイヤをするように、頭を抱えたメイアンは、ううっと嗚咽を漏らした。
「……そ、それで? その、ニーナ・ナディンとかいう人物が、一体どうした? 令嬢と何か関係でもあるのか?」
まるでぎょっとしたように真っ青な顏を上げたメイアンは、泣き出しそうな声で叫ぶ。
「……どっ、どうもしません……っ!! ぜんっぜん! まったく! 何も関係ありませんっ!!」
「……え、ええー? いや、しかし――」
脈絡がわからなすぎて怖い。人付き合いの繊細さと難しさを痛感する。
――それもこれもきっと、この俺の社交スキルが極端に低いせいなのだ。
この場にせめて、外見だけは人好きのするキャリエールでもいてくれれば……!――と心から願わずにいられなかった。
涙を堪えるように目を瞑って、メイアンはううっと呻きながら言う。
「とにかく、とにかくっ、おれっ、自分は……っ! 副団長がレディ・リリアーナとお幸せになれるように、全力を尽くします……っ! 何でもしますから……! だから……っ!!」
「……メイアン……! お前……!」
己の胸が、感動で震えるのがわかった。
――なんって善いやつだ……!
自らも悩みを抱えているようなのに、俺のことをそこまで気遣う……普通の男にできることではない。
年長者であり上司でもありながら、激しくどうでもいい――などと思っていたさっきまでの自分の器の小ささに気づき、愕然とする。できることなら、己の足で己を踏みつけてやりたいほどだった。
「……いや、メイアン……心配かけてすまない。だが、自分でも……何が悪かったのか、理解はしている」
軋む胸の前で腕を組み、虚勢を張って微笑して見せると、メイアンは目を瞠った。
「……え?」
「お前は知らないだろうが……令嬢は……驚くほど勘がいいんだ。だからきっと、気付かれたに違いない……俺が嘘をついていることに。それで怒っているんだ。たぶん間違いない」
思わず額を押さえて言うと、メイアンはきょとんと首を傾げる。
「嘘?」
ああ、と俺は苦い息を吐く。
「直近で思いつくのは、あれだ。昨日、ディクソン公爵邸で『もうあんなことはされませんよね?』って聞かれて、『もちろんです、うんたら』……などという嘘八百並べ立てた件だ……。だが、考えてもみろ。あの状況で、『いいえ、口封じのためにまるっと始末するつもりでした』とは、どうしたって言えな――」
言いかけた途中で、ひゅっと息を吞む音が聞こえて、俺は顔を上げる。メイアンは目玉をこぼれ落としそうなほど眼を剥いていた。
「……な、な、な、ま、ま、ま、まさか、ディクソン公爵様を……? あ……あんな聖人のようにすばらしい方を? まるっとって……そんな……そんな……う、嘘でしょう……っ」
若い従騎士の澄んだ瞳が恐怖と悲嘆に潤むのを見て、またぎっくーっと胸が冷える。
「い、いや!! も、もちろん、ほんの一瞬、小指の先っぽくらい、ちらっとそう思っただけで、今はまったく思っていない!」
「あ、あ……当たり前ですっっ!!」
どうして……? とメイアンは幼子のように両手で顔を覆い、肩を震わせ啜り上げた。
「うっ……どうして、こんなことに……! 憧れてた……ううっ、副団長を……尊敬してた……だけなのに……っ」
なんかもう、とてつもない罪悪感がこの胸に押し寄せた。自分がゴミ以下の最低なクズであることに気づき、今すぐ死にたくなってくる。
「……わ、悪かった!! も、もちろん、これからは心を入れ替えるつもりだ! や、約束する!」
だくだくと汗が出るのを感じながら、昨日、アナベルとオデイエまで言っていたのを思い出す。
――『男性の魅力が容姿ばかりとは限りません』
――『伯爵の真価はあの中身にあるのです。どんな相手にも分け隔てなく穏やかで親切――云々』
このままではまずい。その説でいくと、俺の中身は壊滅的だから、クリームパンに余裕で負けてしまう。
メイアンの顔が、希望を見出したかのようにぱっと輝く。
「……副団長……っ!」
「どれほど困難な道のりであるかは計り知れないが、俺はきっと、善い人間になるよ……やり遂げてみせる」
はっきり言い切ると、まるで子犬のように嬉しそうに頷きながら、メイアンは鼻を啜った。
「……大丈夫ですよ! 世の中の九割九分九厘の人は、普通に暴力振るったりしませんから! 普通にしてたらなれます!」
「…………!?」
そう考えると世間の人々ってすげえな――どんだけ厳しい修行に耐えてきたんだろう。
目尻に光るものを拭いながら、メイアンが、おそるおそるの体で口を開く。
「それで……それでですね。……万が一の、あくまでも空想の世界のお話なんですけど」
「ああ」
「……レディ・リリアーナのハンカチを破ったという犯人が名乗り出てきたとします。そいつが、ものすごーく反省して、謝り倒しているとしたらですね……副団長は、どうされます……?」
「…………? ああ、それは……メイアンはすごい想像力あるな……。いやー、さすがにそれは、脊髄反射で手が勝手に剣をふるっ――」
苦笑して言いかけた途中で、メイアンの顔がまたみるみる泣きそうに歪むので、俺は慌てて口を噤む。
――ハンカチを破られて、笑って許す……?
世間の人々は、そんなアクロバティックな技を日常的にやってのけているのだろうか……?
「世間の人々は、剣を……抜かない……のか? もしそれが本当ならば、人間とは忍耐力と善意の塊ということになる。そこまでの悟りを開くに至る秘訣が、何かあるんだろうか……? まずはそれを探って……」
自問自答するように呟く俺を、哀れむような眼差しでメイアンは見ていた。
「……副団長……」
言わんとするところを察し、はっと胸を押さえる。
――そうだ、彼女はきっと、外見よりも中身で人を見る。
そういうことなら……四の五の言っている場合ではない。やるしかない。俺は決意を口にする。
「……わかっている。人にできて、己にできないはずはない。善い人間になる。そうして、リリアーナについてしまった嘘を、真実に変えるよ」
それならきっと、彼女の怒りも解けるはず……。もうこんな俺が生きてゆくには、その方法に賭けるほか、道は残されていないように思えた。やると決めたからには、全力だ――。
「命をかけて極めよう、善人道を……!」
「副団長……! 俺も、命がけで応援します……!!」
まるで我がことのように嬉しそうに、手本にしたいほど善良なメイアンは顔を輝かせた。
§
苔で覆われた石壁に、冷たい風が吹きつける。
ブルソール公爵邸は数百年前に造られた古い石造りの城だった。周囲をナラの森に囲まれ、日中でも樹影に遮られ陽の差さぬ灰色の古城は、夜の闇に包まれる。
乾いた咳を繰り返していると、ダーバーヴィルズがわざとらしく眉根を寄せた。
「国務卿閣下、暖炉に火を入れさせましょうか? お体が冷えるといけません」
大袈裟に眉尻を下げて声をかけるこの男を信用したことは、一度たりともない。シオドア・ダーバーヴィルズ侯爵。この男が尻尾を振って見せるのは、国務卿という地位に対してに他ならない。
「いらん。この年になると寒さも暑さも、たいして感じん」
ダーバーヴィルズは、「失礼を」と恭しく頭を下げた。
自身に尻尾を振る傍ら、他の枢密院貴族にも付け届けを欠かさず、繋がりを絶やしていない――カメレオンめが。
だが……ドーンの若造の猛攻を躱した辺りは、評価してやらねばなるまい。
後ろ暗い疑惑を、この男は、知らぬ存ぜぬ、覚えがございません――のらりくらりと詭弁を弄し、最終的に変わらぬ地位にしがみついた。あっさりと落ちて行った他の側近達よりは、ずっと見どころがある。
あれよりは、ずっとマシか――
「伯父上!」
どすどすと重い足音を立てながら、ヒューバート・ディクソンがドアを開けて現れた。
娘婿であったディクソン公爵家とは、建国以来の付き合いで血縁的にも近い関係にあった。
その支流であった下級貴族から拾ってやった男。
拾ったばかりの頃は少しは見込みがあるかと思っていたが……木偶の坊、というあだ名がこれほどぴったり当てはまる男もいない。
「伯父上……お風邪を召されていると聞きました……。おい、誰か、暖炉に火を入れてくれ! 伯父上の身体に障る」
つい今しがた終わったばかりの話で、自身は暑苦しい汗をかきながらこうして大騒ぎするあたり、人を苛つかせることにかけては一級品である。
この男が他の側近のように落ちなかった理由はただ一つ――愚鈍が過ぎ、不正のひとつすらなしえないからだ。
「いらん。暑苦しい木偶の坊が現れたお陰で、部屋が暑くなった」
「あ……すみません、伯父上」
木偶の坊は、狼狽えて汗を拭く。
「……そういえば、貴様、黒鷹どもを邸に呼んだそうだな。その言い訳でもしに来たか?」
ディクソン公爵邸にも当然ながら、手の者は置いている。ぎろりと睨みつけて言うと、ディクソンは狼狽えて瞬きを繰り返す。
「いえ……あれは……! す、少しばかり誤解がありまして、実は――」
木偶の坊が口にした内容は、自身を激昂させるに充分すぎるものだった。
「……では何か? 貴様はあの紅眼の騎士を含む、四人もの黒鷹を絞首台に送る機会を得ながら、みすみす逃した……?」
「ええっ、絞首台……!? あっ、あれは! 怪我人すら出ませんでした。絞首刑だなんて、とんでもな――」
「……っこのっ! たわけが!!」
振り上げた杖は、ディクソンの額をしたたかに打ち付けた。
「そんなものは!! どうとでも作るものだと何度も教えてやったろうが!! 貴様の配下の深緑の騎士のうち、使えん者の亡骸を一つ二つ用意し、黒鷹にやられたと貴様が証言すれば良いのだ!! 貴様は腐っても公爵、奴らはたかが騎士爵!! どちらの言い分が通るかはっ、明白であろうが!!」
何度も振り下ろした杖はディクソンの身体をしたたかに打ったが、木偶の坊は振り払いもせず、愚鈍な瞳に憐れむような涙を溜めて、ただ黙って立ち尽くしていた。
「……閣下、もうそのくらいで。閣下のお体にも障ります」
ダーバーヴィルズがやんわりと止めに入る。ようやく杖を降ろすと、喉の奥から乾いた咳が出る。
額と鼻から血を流しながら、木偶の坊は悲しげに顔を歪ませた。愚鈍もここまでくれば、才能だろう。
「誰か、ディクソン公爵閣下の手当てを」
ダーバーヴィルズの声に、ディクソンに付き従う深緑の騎士の一人が素早く駆け寄ってくる。額から流れ出る血をハンカチで押さえようとするのを、木偶の坊は制止した。
「いや……僕は大丈夫だ。ダーバーヴィルズ侯爵、ありがとう。……伯父上、お尋ねしたいことがございます。……ブランシュ・ロンサール伯爵令嬢を傷つける画策をされている、というのは本当でしょうか?」
「……誰に聞いた?」
こうして、物事を直球でしか問えないあたり、もはや救いようがない。
「……言えません」
咳と一緒に、嘆息が落ちる。この愚鈍な男はとうてい、政界ではやってはいけない。
「さあ、知らんな。二人とも、もう帰れ。儂は疲れた。もう休む」
かしこまりました、と礼をしたダーバーヴィルズに促され、ディクソンはまだ何か言いたそうに何度も後ろを振り返りながら、部屋を出て行った。
誰もいなくなった部屋で、木製のロッキングチェアに腰掛ける。ぎいっぎいっと軋む音だけが、飾り気を払った簡素な室内に響く。
――誰もいない。
己の周りには、誰も――。
「皆様、お帰りになられました」
己と同じくらいに年老いた女が、ドアの隙間から音もなく現れた。思考に沈みかけた意識が浮かび上がる。
曲がった腰に真っ白な髪、深い皺の刻まれた老女。かれこれ、長い付き合いになる――もうずいぶん昔、かつて花のような笑顔を見せたこともあったことを、ふと思い出す。まあそんなこと、もはやどうでもよい――。
老女の、暗闇を丸めて詰め込んだような双眸を見返す。この屋敷に居るものは皆、いつからか、こんな目をするようになった。
「そうか、静かでよい……」
はい、と老いて枯れた女の声が応える。
誰も彼も、こうして老いて死に向かいゆく。いや、もうとうに、死んでいるのかもしれない。
窓の外には、あの夜と同じ赤い月が浮かぶ。不吉な月を洞穴のような目で見やり、老女が口を開く。
「例の件ですが――紫の騎士を一人、お借りできますか?」
「……いいだろう。使え」
はい、と静かに頭を下げて、女は足音も立てずに影のように去った。
紫紺の外套に包まれた騎士。
ブルソール公爵家に代々忠誠を誓った四つの家の者たち。
せめて、それを護衛につけていれば良かっただろうか――――
あの日――
領地に向かわせた娘夫婦を乗せた馬車が、事故に遭ったという伝令がこの城に届いた。
駆けつけた現場。
血のような赤い月の下、起き上がれぬ馬のいななきだけが響いていた。
この二十年の間、一日たりとも忘れたことはない。
「……レイモンド……」
乾いた咳を何度も繰り返しながら、赤い月に向かってそっと笑う。
「……何も心配いらない……この爺にまかせて、安心して眠るといい……。この体が朽ちる前に、必ず、思い知らせてやるから……」
そうでなければ――
「……あまりに、不公平というものだろう……? なあ、レイモンド……?」
昏い唇からゆるりと紡がれた独り言は、赤い月の浮かぶ闇にほどけて溶けた。
「リリアーナ様はただいま、アナベルのことで泣いていらっしゃいます。だから、お会いになりたくないそうです」
「…………」
――は? 意味がさっっぱり分からない俺は彼女の婚約者だが? 泣いていると聞いて慌てて飛んで来たんだが? むしろ抱き寄せてよしよしするのが普通だろう!――という心の声を口にした場合、使用人部屋で七十五日間に渡り笑い者にされるだけで事態はまったく好転しないことくらい、こんな変わり者の自分にも容易に想像できたので、しばしの絶句の後、俺は平静を装って頷いた。
「ああわかった。じゃあまた改める。花だけ渡しておいてくれ」
もちろん、わかってなどいない。改めたくもない。戻る途中の廊下で行き会ったロンサール伯爵に「あれー? ウェイン卿、リリアーナのとこ行ったんじゃないの?」と能天気に声を掛けられたが聞こえないフリでやり過ごし、騎士の控室として使われている応接室のひとつのドアをよろめくように開けた。はずみでドア枠にがつんと右肩をぶつけたが、そのままよろよろとソファに向かう。
「あっ……! ふっ、副団長!! お疲れ様です!! だっ、大丈夫ですか!? 今、すごい音がしましたけど……」
先に部屋にいたメイアンが、ソファからがばっと立ち上がった。
「ああ、問題ない」
もちろん事態は深刻な問題だらけだったが、まずは座ることが先決だ。じゃないと倒れる。よろよろとメイアンの向かいに腰を下ろし、俺は頭を抱える。
「……だっ、大丈夫そうには……見えませんけど……」
問題ない、と繰り返しながらちらと視線だけ上げると、メイアンの顔色もひどい。
「……そうですか……?」と蚊の鳴くような小声で言って、メイアンは腰を下ろす。しん……と静けさが部屋に降りた。
そう言えば、メイアンの様子が昨日からおかしい。カマユーが折を見て話しておくと言っていたが……カマユーのさっきのらしからぬ呆然ぶりを思い出す――たぶんあいつ、しばらく無理だな。そして、今の俺にとっても、激しくどうでもいい。
俺をじっと見やり、唇を舐めて湿らせてから、メイアンがぎこちなく口を開いた。
「………あのう……レ、レディ・リリアーナは、大丈夫ですか? アナベルが急に辞めたって聞きましたけど……」
「ああ」
いや、泣いているらしいんだけど会ってもらえないんだ――と口にした途端、暴れ狂う狂戦士化してしまいそうなので俺は手短に会話を切る。
最近、そうじゃないかと思ってはいたのだ。恐ろしすぎて考えたくもなかったが……こうなってはもう、間違いない。
――リリアーナが、怒っている。
……何がいけなかったんだろう。思い当たる節が……たくさんありすぎて怖い。
落ち着きなく視線を彷徨わせ、メイアンはまた口を開く。
「……そ、それじゃ、レディ・リリアーナの副団長への態度がおかしい……? なんてことは、あったり……なかったり……なんか……しません?……か?」
ぎょっとして思わず顔を上げると、青ざめたメイアンが目が合う。こいつ、どうしてそれを?――と思って、はっとする。
そう言えば、昨日のディクソン公爵邸でのリリアーナの挙動を、メイアンも目にしているのだ。
「……あ、ああ、昨日、な、何か怒っているようだったな……」
平静を装ったつもりが、超絶弱々しい声が出た。
いつもおっとりと微笑んでいるリリアーナが、まさかのテーブルに拳ドンっである。しかも、細い眉をむうっとひそめて俺を睨んでいた。
ああ……とまるで自分のことのように青くなって唇を噛んだメイアンは、ダークブラウンの瞳を何度も瞬かせる。そういった仕草をすると、メイアンは実年齢よりもずっと幼く見えた。まるで、年端もいかない子どもだ。
「……あ、あの! ……ふ、副団長、……ひとつ、訊いてもいいですか?」
もちろん、と俺は年長者らしく首を縦に振る。
「……お、お訊きしたいのは……ニーナ・ナディンさん、のことです……!」
ひどく思い詰めた調子で、メイアンはそこで言葉を切った。ごくり、と咽喉を鳴らして唾を呑み込んだかと思うと、黙ってしまう。
「………………」
「………………」
恐ろしくも長い沈黙が、その場を支配した。
ひどく思い詰めた眼差しを若い従騎士から向けられて、俺は自身の失態に気付く。
カマユーが無理でも、エルガーかアイルが同席している時に話すべきだった。
若い従騎士の子どものように澄んだ瞳を見つめ返して、俺はおそるおそる問う。
「…………誰? それ?」
有名人? と続けて尋ねる前に、「うわああああっ!」とメイアンは絶望的な悲鳴を上げた。
さすがに仰天し、胸がぎっくーっと冷える。
――なんてことだ。どうやら、絶対に知っていないとまずい人間だったらしい。
「い、いや、悪い、メイアン……俺は、その、己と関わりの浅い人間を覚えることが、極端に苦手なんだ。だ、だが、今後はできるかぎり改善しよう、約束する」
まるで、子どもがイヤイヤをするように、頭を抱えたメイアンは、ううっと嗚咽を漏らした。
「……そ、それで? その、ニーナ・ナディンとかいう人物が、一体どうした? 令嬢と何か関係でもあるのか?」
まるでぎょっとしたように真っ青な顏を上げたメイアンは、泣き出しそうな声で叫ぶ。
「……どっ、どうもしません……っ!! ぜんっぜん! まったく! 何も関係ありませんっ!!」
「……え、ええー? いや、しかし――」
脈絡がわからなすぎて怖い。人付き合いの繊細さと難しさを痛感する。
――それもこれもきっと、この俺の社交スキルが極端に低いせいなのだ。
この場にせめて、外見だけは人好きのするキャリエールでもいてくれれば……!――と心から願わずにいられなかった。
涙を堪えるように目を瞑って、メイアンはううっと呻きながら言う。
「とにかく、とにかくっ、おれっ、自分は……っ! 副団長がレディ・リリアーナとお幸せになれるように、全力を尽くします……っ! 何でもしますから……! だから……っ!!」
「……メイアン……! お前……!」
己の胸が、感動で震えるのがわかった。
――なんって善いやつだ……!
自らも悩みを抱えているようなのに、俺のことをそこまで気遣う……普通の男にできることではない。
年長者であり上司でもありながら、激しくどうでもいい――などと思っていたさっきまでの自分の器の小ささに気づき、愕然とする。できることなら、己の足で己を踏みつけてやりたいほどだった。
「……いや、メイアン……心配かけてすまない。だが、自分でも……何が悪かったのか、理解はしている」
軋む胸の前で腕を組み、虚勢を張って微笑して見せると、メイアンは目を瞠った。
「……え?」
「お前は知らないだろうが……令嬢は……驚くほど勘がいいんだ。だからきっと、気付かれたに違いない……俺が嘘をついていることに。それで怒っているんだ。たぶん間違いない」
思わず額を押さえて言うと、メイアンはきょとんと首を傾げる。
「嘘?」
ああ、と俺は苦い息を吐く。
「直近で思いつくのは、あれだ。昨日、ディクソン公爵邸で『もうあんなことはされませんよね?』って聞かれて、『もちろんです、うんたら』……などという嘘八百並べ立てた件だ……。だが、考えてもみろ。あの状況で、『いいえ、口封じのためにまるっと始末するつもりでした』とは、どうしたって言えな――」
言いかけた途中で、ひゅっと息を吞む音が聞こえて、俺は顔を上げる。メイアンは目玉をこぼれ落としそうなほど眼を剥いていた。
「……な、な、な、ま、ま、ま、まさか、ディクソン公爵様を……? あ……あんな聖人のようにすばらしい方を? まるっとって……そんな……そんな……う、嘘でしょう……っ」
若い従騎士の澄んだ瞳が恐怖と悲嘆に潤むのを見て、またぎっくーっと胸が冷える。
「い、いや!! も、もちろん、ほんの一瞬、小指の先っぽくらい、ちらっとそう思っただけで、今はまったく思っていない!」
「あ、あ……当たり前ですっっ!!」
どうして……? とメイアンは幼子のように両手で顔を覆い、肩を震わせ啜り上げた。
「うっ……どうして、こんなことに……! 憧れてた……ううっ、副団長を……尊敬してた……だけなのに……っ」
なんかもう、とてつもない罪悪感がこの胸に押し寄せた。自分がゴミ以下の最低なクズであることに気づき、今すぐ死にたくなってくる。
「……わ、悪かった!! も、もちろん、これからは心を入れ替えるつもりだ! や、約束する!」
だくだくと汗が出るのを感じながら、昨日、アナベルとオデイエまで言っていたのを思い出す。
――『男性の魅力が容姿ばかりとは限りません』
――『伯爵の真価はあの中身にあるのです。どんな相手にも分け隔てなく穏やかで親切――云々』
このままではまずい。その説でいくと、俺の中身は壊滅的だから、クリームパンに余裕で負けてしまう。
メイアンの顔が、希望を見出したかのようにぱっと輝く。
「……副団長……っ!」
「どれほど困難な道のりであるかは計り知れないが、俺はきっと、善い人間になるよ……やり遂げてみせる」
はっきり言い切ると、まるで子犬のように嬉しそうに頷きながら、メイアンは鼻を啜った。
「……大丈夫ですよ! 世の中の九割九分九厘の人は、普通に暴力振るったりしませんから! 普通にしてたらなれます!」
「…………!?」
そう考えると世間の人々ってすげえな――どんだけ厳しい修行に耐えてきたんだろう。
目尻に光るものを拭いながら、メイアンが、おそるおそるの体で口を開く。
「それで……それでですね。……万が一の、あくまでも空想の世界のお話なんですけど」
「ああ」
「……レディ・リリアーナのハンカチを破ったという犯人が名乗り出てきたとします。そいつが、ものすごーく反省して、謝り倒しているとしたらですね……副団長は、どうされます……?」
「…………? ああ、それは……メイアンはすごい想像力あるな……。いやー、さすがにそれは、脊髄反射で手が勝手に剣をふるっ――」
苦笑して言いかけた途中で、メイアンの顔がまたみるみる泣きそうに歪むので、俺は慌てて口を噤む。
――ハンカチを破られて、笑って許す……?
世間の人々は、そんなアクロバティックな技を日常的にやってのけているのだろうか……?
「世間の人々は、剣を……抜かない……のか? もしそれが本当ならば、人間とは忍耐力と善意の塊ということになる。そこまでの悟りを開くに至る秘訣が、何かあるんだろうか……? まずはそれを探って……」
自問自答するように呟く俺を、哀れむような眼差しでメイアンは見ていた。
「……副団長……」
言わんとするところを察し、はっと胸を押さえる。
――そうだ、彼女はきっと、外見よりも中身で人を見る。
そういうことなら……四の五の言っている場合ではない。やるしかない。俺は決意を口にする。
「……わかっている。人にできて、己にできないはずはない。善い人間になる。そうして、リリアーナについてしまった嘘を、真実に変えるよ」
それならきっと、彼女の怒りも解けるはず……。もうこんな俺が生きてゆくには、その方法に賭けるほか、道は残されていないように思えた。やると決めたからには、全力だ――。
「命をかけて極めよう、善人道を……!」
「副団長……! 俺も、命がけで応援します……!!」
まるで我がことのように嬉しそうに、手本にしたいほど善良なメイアンは顔を輝かせた。
§
苔で覆われた石壁に、冷たい風が吹きつける。
ブルソール公爵邸は数百年前に造られた古い石造りの城だった。周囲をナラの森に囲まれ、日中でも樹影に遮られ陽の差さぬ灰色の古城は、夜の闇に包まれる。
乾いた咳を繰り返していると、ダーバーヴィルズがわざとらしく眉根を寄せた。
「国務卿閣下、暖炉に火を入れさせましょうか? お体が冷えるといけません」
大袈裟に眉尻を下げて声をかけるこの男を信用したことは、一度たりともない。シオドア・ダーバーヴィルズ侯爵。この男が尻尾を振って見せるのは、国務卿という地位に対してに他ならない。
「いらん。この年になると寒さも暑さも、たいして感じん」
ダーバーヴィルズは、「失礼を」と恭しく頭を下げた。
自身に尻尾を振る傍ら、他の枢密院貴族にも付け届けを欠かさず、繋がりを絶やしていない――カメレオンめが。
だが……ドーンの若造の猛攻を躱した辺りは、評価してやらねばなるまい。
後ろ暗い疑惑を、この男は、知らぬ存ぜぬ、覚えがございません――のらりくらりと詭弁を弄し、最終的に変わらぬ地位にしがみついた。あっさりと落ちて行った他の側近達よりは、ずっと見どころがある。
あれよりは、ずっとマシか――
「伯父上!」
どすどすと重い足音を立てながら、ヒューバート・ディクソンがドアを開けて現れた。
娘婿であったディクソン公爵家とは、建国以来の付き合いで血縁的にも近い関係にあった。
その支流であった下級貴族から拾ってやった男。
拾ったばかりの頃は少しは見込みがあるかと思っていたが……木偶の坊、というあだ名がこれほどぴったり当てはまる男もいない。
「伯父上……お風邪を召されていると聞きました……。おい、誰か、暖炉に火を入れてくれ! 伯父上の身体に障る」
つい今しがた終わったばかりの話で、自身は暑苦しい汗をかきながらこうして大騒ぎするあたり、人を苛つかせることにかけては一級品である。
この男が他の側近のように落ちなかった理由はただ一つ――愚鈍が過ぎ、不正のひとつすらなしえないからだ。
「いらん。暑苦しい木偶の坊が現れたお陰で、部屋が暑くなった」
「あ……すみません、伯父上」
木偶の坊は、狼狽えて汗を拭く。
「……そういえば、貴様、黒鷹どもを邸に呼んだそうだな。その言い訳でもしに来たか?」
ディクソン公爵邸にも当然ながら、手の者は置いている。ぎろりと睨みつけて言うと、ディクソンは狼狽えて瞬きを繰り返す。
「いえ……あれは……! す、少しばかり誤解がありまして、実は――」
木偶の坊が口にした内容は、自身を激昂させるに充分すぎるものだった。
「……では何か? 貴様はあの紅眼の騎士を含む、四人もの黒鷹を絞首台に送る機会を得ながら、みすみす逃した……?」
「ええっ、絞首台……!? あっ、あれは! 怪我人すら出ませんでした。絞首刑だなんて、とんでもな――」
「……っこのっ! たわけが!!」
振り上げた杖は、ディクソンの額をしたたかに打ち付けた。
「そんなものは!! どうとでも作るものだと何度も教えてやったろうが!! 貴様の配下の深緑の騎士のうち、使えん者の亡骸を一つ二つ用意し、黒鷹にやられたと貴様が証言すれば良いのだ!! 貴様は腐っても公爵、奴らはたかが騎士爵!! どちらの言い分が通るかはっ、明白であろうが!!」
何度も振り下ろした杖はディクソンの身体をしたたかに打ったが、木偶の坊は振り払いもせず、愚鈍な瞳に憐れむような涙を溜めて、ただ黙って立ち尽くしていた。
「……閣下、もうそのくらいで。閣下のお体にも障ります」
ダーバーヴィルズがやんわりと止めに入る。ようやく杖を降ろすと、喉の奥から乾いた咳が出る。
額と鼻から血を流しながら、木偶の坊は悲しげに顔を歪ませた。愚鈍もここまでくれば、才能だろう。
「誰か、ディクソン公爵閣下の手当てを」
ダーバーヴィルズの声に、ディクソンに付き従う深緑の騎士の一人が素早く駆け寄ってくる。額から流れ出る血をハンカチで押さえようとするのを、木偶の坊は制止した。
「いや……僕は大丈夫だ。ダーバーヴィルズ侯爵、ありがとう。……伯父上、お尋ねしたいことがございます。……ブランシュ・ロンサール伯爵令嬢を傷つける画策をされている、というのは本当でしょうか?」
「……誰に聞いた?」
こうして、物事を直球でしか問えないあたり、もはや救いようがない。
「……言えません」
咳と一緒に、嘆息が落ちる。この愚鈍な男はとうてい、政界ではやってはいけない。
「さあ、知らんな。二人とも、もう帰れ。儂は疲れた。もう休む」
かしこまりました、と礼をしたダーバーヴィルズに促され、ディクソンはまだ何か言いたそうに何度も後ろを振り返りながら、部屋を出て行った。
誰もいなくなった部屋で、木製のロッキングチェアに腰掛ける。ぎいっぎいっと軋む音だけが、飾り気を払った簡素な室内に響く。
――誰もいない。
己の周りには、誰も――。
「皆様、お帰りになられました」
己と同じくらいに年老いた女が、ドアの隙間から音もなく現れた。思考に沈みかけた意識が浮かび上がる。
曲がった腰に真っ白な髪、深い皺の刻まれた老女。かれこれ、長い付き合いになる――もうずいぶん昔、かつて花のような笑顔を見せたこともあったことを、ふと思い出す。まあそんなこと、もはやどうでもよい――。
老女の、暗闇を丸めて詰め込んだような双眸を見返す。この屋敷に居るものは皆、いつからか、こんな目をするようになった。
「そうか、静かでよい……」
はい、と老いて枯れた女の声が応える。
誰も彼も、こうして老いて死に向かいゆく。いや、もうとうに、死んでいるのかもしれない。
窓の外には、あの夜と同じ赤い月が浮かぶ。不吉な月を洞穴のような目で見やり、老女が口を開く。
「例の件ですが――紫の騎士を一人、お借りできますか?」
「……いいだろう。使え」
はい、と静かに頭を下げて、女は足音も立てずに影のように去った。
紫紺の外套に包まれた騎士。
ブルソール公爵家に代々忠誠を誓った四つの家の者たち。
せめて、それを護衛につけていれば良かっただろうか――――
あの日――
領地に向かわせた娘夫婦を乗せた馬車が、事故に遭ったという伝令がこの城に届いた。
駆けつけた現場。
血のような赤い月の下、起き上がれぬ馬のいななきだけが響いていた。
この二十年の間、一日たりとも忘れたことはない。
「……レイモンド……」
乾いた咳を何度も繰り返しながら、赤い月に向かってそっと笑う。
「……何も心配いらない……この爺にまかせて、安心して眠るといい……。この体が朽ちる前に、必ず、思い知らせてやるから……」
そうでなければ――
「……あまりに、不公平というものだろう……? なあ、レイモンド……?」
昏い唇からゆるりと紡がれた独り言は、赤い月の浮かぶ闇にほどけて溶けた。
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