『愛に狂う香り、愛を選ぶ香り ――離婚から始まる私の香り』

夢窓(ゆめまど)

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ブラボーな妻

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社交界が大騒ぎ&パーティのお誘い


レオンと優雅に踊り終え、私はシャンパンを一口。
気分は不思議なほど軽かった。

周囲を見渡すと――

拍手。

え?と思った瞬間、女性たちが次々に近づいてきた。

「クリスティン様……! 最高でしたわ!」
「あのオーディン様が真っ青になるなんて!」
「従順な奥様、って評判だったのに……ついに反旗を翻されたのね!」
「拍手喝采よ。本当に!!」

――え、そんなに有名だったの?私。

女性たちは目を輝かせ、次々に私の手を握る。

「次、うちのパーティに来てくださらない?
あなたの“あの堂々たる態度”、ぜひうちの夫にも見せたいわ!」

「そうよ、オーディン様だけじゃないの。
あれで震えた男……何人もいたわよ?」

「えっ」

会場の端では――

■ 足を崩し落ちるオーディン
■ 顔色ひとつ変えず失望の眼差しを送る夫の姉
■ その横で絶句している夫の父
■ そして、しがみついて離れないアデル

……地獄の家族図。

オーディンの姉がつかつかと近づいてきた。

「クリスティン。
あなた……よくやったわね」

「え?」

「今まであの子、あなたに甘えてばかりだったもの。
はっきり言って家族全員、あなたに申し訳なく思っていたわ」

夫の父も深く頷いた。

「まさか、あの従順なクリスティンが反旗を翻す日が来るとは……
社交界の伝説になるぞ」

伝説……!?

その言葉に、周囲の令嬢たちが一斉に拍手を送る。

――なんで私、こんなに盛り上がられてるの?

でも、悪くない。
むしろ、心がふわっと熱くなる。

そんな中、別の夫人が声をかけてきた。

「クリスティン様、うちの夜会にもぜひ。
あなたの“新しい人生の始まり”を、みんなで祝いたいの」

「……新しい人生……?」

私はその言葉を噛みしめる。

そうだ。
オーディンの妻として閉じ込められていた時間なんて、もう終わり。

これからは――

私の人生が始まるのよ。

「ええ、喜んで伺いますわ」

にっこり微笑むと、周囲がぱあっと明るくなった。

レオンも後ろで微笑んでいる。

「素敵です、クリスティン。
あなたの輝きに、誰も勝てませんよ」

私はそっと息を吸い、心の中で宣言した。

――これからの人生、誰にも邪魔されない。


<クリスティン、女社会のスター爆誕>

パーティ翌日。

私は朝から招待状の山に囲まれていた。
本当に“山”だった。
机から溢れ、床に落ち、さらに玄関前にも積まれている。

「……なんなの、これ?」

侍女が肩を震わせ、控えめに説明した。

「奥様……昨日の件が、
“女たちの革命”として、
大変な話題になっておりまして……」

革命……?

侍女によれば、こうらしい。

・従順で有名だったクリスティンが
 → 夫の浮気現場で反旗を翻し
 → 新しい男性とダンスし
 → 夫を黒焦げにし
 → 浮気相手を凍らせ
 → 女としての自立を宣言した

その勇姿に――

女性陣が一斉に拍手喝采した
と。

そして今や、

「クリスティン様は“自由と誇りを象徴する新星”ですわ!」

「……え、そんな扱い?」

侍女は力強く頷いた。

「はい!
奥様は――社交界における“女神アイコン”となりました!」

女神……!?
急に大きすぎない!?

だが実際、招待状にはこんな言葉が並んでいた。

■「女性同士の秘密のお茶会にぜひ」
■「あなたのあの勇気、うちの娘たちに教えてほしい」
■「旦那を教育する講演会をお願いしたい」
■「クリスティン様のファンクラブを作ってよろしいですか?」

……最後のはさすがにどうかと思うけど。

そんなとき――

コンコン、とノック。

「クリスティン様、奥様(夫の母)がお見えです」

え、義母?
あの義母が?

扉が開き、義母が入ってきた。
いつもの冷たい表情ではない。むしろ、驚くほど柔らかい。

「……クリスティン。
まずは昨日のことを、謝りに来たの」

「え?」

「オーディンの愚かさを、家族として本当に恥じているわ。
あなたは……あんな男の妻では収まらない。
女たちがあなたを支持する理由、よく分かったわ」

義母が私の手を握る。

「これからの社交界は、あなたが引っ張っていく時代よ。
堂々と胸を張りなさい」

……
生まれて初めて、義母に“認められた”瞬間だった。

胸がじんと熱くなる。



★そして数日後:クリスティン大フィーバー

次に参加した昼餐会では――

女性たちが私を囲み、まるで姫のようにもてはやす。

「クリスティン様、いらしてくださって光栄です!」
「この前の件、私も見てました!最高でした!」
「あなたの言葉で、夫に自由時間を要求したんです!」

「私の夫にも“甘えるだけじゃダメよ”って言ってやりました!」

どこもかしこもクリスティン旋風。

男性達は遠巻きに眺め、
その中には、見慣れた金髪の男――オーディンがいた。

……顔面蒼白で。

(クリスティンが……社交界の中心に……?
俺がいないところで……?
あれほど輝いて……?)

自分が押さえつけていた妻が、
自由になった瞬間、
誰よりも輝き出した。

その事実に、オーディンは打ちのめされていた。

ええ、ざまあよ。

私は新しい笑顔で、女性たちと杯を交わす。

「これから人生が始まるのよ」

そう告げると、歓声が上がった。

女たちの時代――
その先頭に、私が立っていた。
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