『愛に狂う香り、愛を選ぶ香り ――離婚から始まる私の香り』

夢窓(ゆめまど)

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香り対決

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<香りの戦争の幕開け>

― 光の調香師 vs 闇の黒香師 ―

ジャルディンが闇に消えた後、
サロンの空気は重く沈んでいた。

ルイが静かに口を開く。

「クリスティン様……どうかご無事で……
奴は本気で貴女を手に入れようとするでしょう。」

クリスティンは首を振った。

「違うわ。
ジャルディンは、手に入れるのではなく――
“閉じ込める”つもりよ。」

ルイの拳が震える。

「香りで人を奪うなど……狂っている。」

クリスティンは深く息を吸った。

「だから。
私も香りで戦う。」



<クリスティンの反撃>

《対黒香師専用の香り》の開発

クリスティンは調香室に閉じこもった。

棚には祖母のレシピ、
香りの原料が並ぶ。

クリスティンは一つずつ瓶を手に取り、
慎重に香りを嗅ぎ分けていく。

「黒香師の香りは“心を絡め取る”香り。
だったら私は――
心を解き放つ香り を作る。」

ルイが助手ノートを開きながら聞く。

「どんな構成に?」

クリスティンの瞳が強く光る。

「恐怖を払う香り。
心を軽くする香り。
“自分の意志”を取り戻す香り。」

彼女が選んだのは――

● ホワイトアンバー(恐怖の解除)
● ブルーローズの抽出液(心の再生)
● 朝露レモン(意識を覚醒させる)
● 月光ジャスミン(自分を愛する力)

クリスティンは瓶を混ぜ合わせて呟いた。

「私は戦う。
香りで支配するジャルディンに――
香りで自由を取り戻す私が。」

これは、
クリスティンの反撃の始まりだった。



<ジャルディンの闇>

《クリスティンを堕とす香り》の製造

同じ頃――
ジャルディンは黒い地下室で小さなランプを灯していた。

黒香師の工房。
腐敗した香油、毒草、禁断の樹脂――
危険な香りが渦巻いている。

ジャルディンはクリスティンの名を呟きながら、
黒い液体をゆっくり混ぜた。

「クリス……
君の心の弱さも、強さも……全部知ってる。」

「君が“愛を渇望している”ことも、
“孤独に震える”ことも……
全部……知っているんだ。」

彼が選んだ原料は――

● 黒睡蓮(判断力を奪う)
● 禁断のムスク(依存を生む)
● 夜の毒花“ダークベル”(精神を曇らせる)
● 亡国の香木“アビスウッド”(人を支配する)

黒い液体が静かに混ざり合い、
妖しく光を放つ。

ジャルディンは瓶を手に取り、
狂気にも似た優しさで囁いた。

「これが、俺の“クリスティン専用の香り”。
君だけが纏うべき、君だけを閉じ込める香りだ。」

そして彼は、
その香りに名前をつけた。

《エテルネル・エンプリズォン》――
永遠の監禁。



★二人の香りが動き出す

クリスティンは自由の香りを。
ジャルディンは束縛の香りを。

二人の想いが、香りに宿り始めた。

そしてそれは、
国の空気すら変え始めるほどの力を帯びていく。

<ルシオンの登場>

― 黒香師対策として送り込まれた男 ―

クリスティンが《対黒香師香水》の試作を進めていた頃。
サロンの扉が軽く叩かれた。

ルイ「……どなたでしょう?」

扉を開くと、
そこには風をまとうような気配の男が立っていた。

銀に近い淡金の髪。
深い青灰色の瞳。
長い外套に、香りのボトルが吊られたベルト。

その雰囲気は、
調香師でも商人でも貴族でもなかった。

圧倒的に“訓練された者”。

男は静かに一礼した。

「初めまして。
王立調香防衛局――“対黒香師部門”所属、
ルシオン・アークレイドです。」

ルイが目を見開いた。

「……王宮の……!?
まさか黒香師対策の専門機関が実在していたとは……!」

ルシオンは淡々と笑みを見せる。

「ええ、黒香師は古くから“国家レベルの脅威”です。
今回は……あなたがたの工房が標的ですから。」

そして視線をサロン内へ移し、
クリスティンを見つけた。



★初対面:クリスティンとルシオン

クリスティン「……あなたが、王宮からの?」

ルシオンは丁寧に頭を下げた。

「クリスティン・エステル様。
あなたを守るために派遣されました。」

その声は静かで低く、
だが少しの嘘も混ざらない。

ジャルディンの甘い狂気とは違う、
研ぎ澄まされた“理性の声”。

クリスティンは一瞬迷ったが、
言葉を返した。

「黒香師……ジャルディンのことを?」

ルシオン「もちろん。
彼は国内でも最も危険な香りの使い手です。
執着・束縛・依存を生む“深層香”。
国家機密級の脅威とされています。」

ルイ「クリスティン様を狙っていると……ご存知なのですか?」

ルシオンは一瞬だけ視線を伏せ、
静かな怒りを帯びた瞳を見せた。

「ええ。
ジャルディンが“個人的執着”を理由に標的を固定した……
最悪のケースです。」

クリスティンの胸が痛む。



★ルシオンは、クリスティンの香りを知っている

ルシオンは、机に置かれた小瓶を見て言った。

「これは……《朝露レモン》ですね。
恐怖を払う香りの基盤に相応しい選択です。」

クリスティンは驚いた。

「香りだけで分かるの?」

ルシオンは微笑んだ。

「貴女の香りは、私の仕事の“重要資料”ですから。」

ルイ「……つまりルシオンさんは、
以前からクリスティン様を?」

ルシオンははっきりと答えた。

「ええ。
黒香師から“守るべき重要人物”として。」

クリスティンの心がざわめいた。

守られるために生まれた香りじゃない。
戦うための香りを作りたいのに――

そこに、ルシオンは続けた。

「ただ一つ、誓います。
私は貴女を閉じ込めない。
香りで支配することもしない。
ただ、生かすために側に立つ。」

その言葉は、
ジャルディンとは正反対の“真逆の愛”の形。

支配ではなく、
自由を守るための隣。



★ルシオンの決意

ルシオンは外套から一つの黒い石を取り出した。

「これは黒香師の使う“香りの追跡符”。
ジャルディンはすでにこの町に入っています。」

クリスティンは息を呑んだ。

ルシオンは淡々と言った。

「戦いはすでに始まっている。
貴女の側には、私が立ちます。」

その瞳は、
凪いだ湖面のように静かで、
しかし底に鋼の意志が宿っていた。

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