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敗北と絶望。そして――もっと狂う
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■ 花園の中心
“彼女のためだけにつくった世界”
白い花が永遠に咲き続ける庭。
香りは澄み切っていて、邪悪な香りは一滴もない。
ジャルディンは腕の中のクリスティンを見つめていた。
やっと……
やっと、捕まえた。
ジャルディン(心の声)
(やっとだ。
何年、何十年、君を見て、求めて、狂ってきたか……)
(ここなら誰も邪魔できない。
誰も触れられない。
誰も、君を奪えない)
クリスティンが瞼を開いた。
光の中で、
彼女はどんな女よりも強く、美しかった。
ジャルディン
「……やっと、捕まえた。僕の君」
声は甘く、震えていた。
クリスティンは彼から一歩離れ、
白い花畑を見渡した。
クリスティン
「この花畑……香りがとても美しいわ。
邪悪な香りが一つもないのね」
ジャルディンは微笑む。
ジャルディン
「当たり前だよ。
ここは……君の花園だから」
だが、その返答にクリスティンは首をかしげた。
クリスティン
「あなた……気づかなかったのね?」
ジャルディン
「……何を?」
クリスティンは白い花に指先を触れた。
その瞬間、花弁から光が広がり――
彼女の“自由の香り”が花畑の力を吸い上げる。
クリスティン
「ここは、結界なんて張れないはず。
私が“自由”の香りを使えば――
力が増強される場所よ?」
瞳が光る。
クリスティン
「つまり――
閉じ込めるなんて無理。」
ジャルディンの胸が凍りつく。
(……え?)
(この花園は……
僕の全てを注いだ“愛の檻”のはずだ……)
(なのに……なのに……!)
クリスティン
「ふんっ」
軽く力を入れると、
ドン――ッ!!!!
花園の結界が
簡単に、粉々に砕け散った。
白い破片が光になって舞う。
ジャルディンは膝をつく。
ジャルディン
「……そんな……
僕の……君のために作った世界が……」
クリスティンは振り向き、
ぽん、と彼の肩を叩いた。
クリスティン
「ジェラルディン。
甘いわね」
ジャルディンの世界から、
すべての音が消えた。
クリスティン
「では、出て行くわ」
ふわりと飛び立つクリスティン。
白い花びらの中を軽やかに、
まるで風のように自由に。
ジャルディン
「待って!
クリスティン……!
行かないで……!!
僕には……君しか……!」
クリスティンは立ち止まり、
ちょっとだけ振り返った。
そして、にっこり笑って――
クリスティン
「べーっ!」
舌を出して、
小悪魔のように笑い、
自由そのものの香りをまとって飛び去った。
ジャルディンの膝が震える。
胸を押さえ、
崩れ落ちる。
ジャルディン(心の声)
(……ああ……
自由で残酷で……触れられない……
それでも求めてしまう……)
(君は……
僕の初恋で……僕の生きる理由で……
僕の終わりだ)
(なら――)
(君が逃げても逃げても……
僕は追う)
(もっと狂っても構わない)
(愛に溺れて死ぬのなら……
君の香りがする場所で死にたい)
⸻
ジャルディンは立ち上がる。
ゆっくり、
ゆっくりと。
崩れた花園の中で、
再び歩き出す。
ジャルディン
「……逃げるのなら。
もっと深く追うよ」
目が狂気に染まる。
ジャルディン
「君が自由なら――
僕は、君を追う狂気になる」
そして、静かに、残酷に笑った。
<帰還の抱擁>
怒りと安堵と、どうしようもない恋の形
■ 香防室・深夜
ルシオンは、
部屋中を狂ったように探し回ったあと、
膝に手をつき、
ただただ空気を荒く吸い込んでいた。
――クリスティンが、消えた。
ジャルディンが連れ去った。
胸の奥が焼けるように熱く痛い。
不安、怒り、恐怖。
全部が彼の体を削っていた。
扉が、そっと、静かに開いた。
光が差し込み、
クリスティンが、ふわりと立っていた。
クリスティン
「ただいま戻ったわ」
ルシオンは一瞬固まり、
次の瞬間――
強く、激しく抱きしめた。
ルシオン
「……っ……!
どこに行ってた……!
心臓が止まるかと思った……!」
震えている。
彼の腕も声も、全部が震えていた。
クリスティンは驚いて目を丸くする。
クリスティン
「そんなに心配したの?
大丈夫よ、生きて帰ってきたわ」
ルシオンは彼女の肩を掴み、少し離して顔を覗き込んだ。
ルシオン
「大丈夫なわけあるか!
ジャルディンは……狂ってるんだぞ!」
クリスティンは、どこか涼しげに言う。
クリスティン
「あの人、たしかに“やばいやつ”だったけど……」
ルシオン
「だったけど……?」
クリスティン
「花園は、私の好きな純度だったわ。
どうしてかしらね」
ルシオンは一瞬で固まった。
次の瞬間、頭を抱える。
ルシオン
「…………好きだからだろう、
お前を」
クリスティン
「そうなの?
私、ただ“好みが合う”のかと思ってたけど」
ルシオンは深く溜息をつき、
吐き出すように言った。
ルシオン
「……ジェラルディンが、かわいそうに思えてきた」
クリスティン
「え? なぜ?」
ルシオンは、少しだけ苦笑した。
その笑みは、悲しみと嫉妬と安堵が入り混じっている。
ルシオン
「君、好きなものに一直線で、
自分では無自覚で……
“天然”じゃないと言い張るくせに、
実質いちばん天然だ」
クリスティン
「そんなことないわよ?」
ルシオン
「ある。
……ジャルディンは一生、振り回され続けるだろうな」
⸻
クリスティンは少し考えてから、言った。
クリスティン
「じゃあ、ルシオンも?」
ルシオンはハッと息を呑んだ。
彼女は無邪気に聞いただけ。
悪気も、気づかいもない。
でもそのひと言は、彼の胸を深く突いた。
ルシオン
「……俺は……
振り回されてもいい」
クリスティン
「え?」
ルシオンは目を逸らさない。
ルシオン
「君が……自由でいたいのなら。
その自由を守りたい。
誰かに閉じ込められるくらいなら……
俺が側にいたい」
クリスティンの心臓が跳ねた。
ジャルディンの狂気から逃げ切った彼女にとって、
この言葉は――まっすぐすぎた。
優しすぎて、痛いほど。
クリスティン
「……帰ってきて、よかったわ」
ルシオンは瞳を閉じ、
そっと彼女の頭を寄せた。
ルシオン
「……ほんとうに。
無事で、よかった……」
香防室、静かな夜。
追いかける狂気と、
守ろうとする理性と、
自由を求める心。
三者のバランスが崩れた瞬間だった。
“彼女のためだけにつくった世界”
白い花が永遠に咲き続ける庭。
香りは澄み切っていて、邪悪な香りは一滴もない。
ジャルディンは腕の中のクリスティンを見つめていた。
やっと……
やっと、捕まえた。
ジャルディン(心の声)
(やっとだ。
何年、何十年、君を見て、求めて、狂ってきたか……)
(ここなら誰も邪魔できない。
誰も触れられない。
誰も、君を奪えない)
クリスティンが瞼を開いた。
光の中で、
彼女はどんな女よりも強く、美しかった。
ジャルディン
「……やっと、捕まえた。僕の君」
声は甘く、震えていた。
クリスティンは彼から一歩離れ、
白い花畑を見渡した。
クリスティン
「この花畑……香りがとても美しいわ。
邪悪な香りが一つもないのね」
ジャルディンは微笑む。
ジャルディン
「当たり前だよ。
ここは……君の花園だから」
だが、その返答にクリスティンは首をかしげた。
クリスティン
「あなた……気づかなかったのね?」
ジャルディン
「……何を?」
クリスティンは白い花に指先を触れた。
その瞬間、花弁から光が広がり――
彼女の“自由の香り”が花畑の力を吸い上げる。
クリスティン
「ここは、結界なんて張れないはず。
私が“自由”の香りを使えば――
力が増強される場所よ?」
瞳が光る。
クリスティン
「つまり――
閉じ込めるなんて無理。」
ジャルディンの胸が凍りつく。
(……え?)
(この花園は……
僕の全てを注いだ“愛の檻”のはずだ……)
(なのに……なのに……!)
クリスティン
「ふんっ」
軽く力を入れると、
ドン――ッ!!!!
花園の結界が
簡単に、粉々に砕け散った。
白い破片が光になって舞う。
ジャルディンは膝をつく。
ジャルディン
「……そんな……
僕の……君のために作った世界が……」
クリスティンは振り向き、
ぽん、と彼の肩を叩いた。
クリスティン
「ジェラルディン。
甘いわね」
ジャルディンの世界から、
すべての音が消えた。
クリスティン
「では、出て行くわ」
ふわりと飛び立つクリスティン。
白い花びらの中を軽やかに、
まるで風のように自由に。
ジャルディン
「待って!
クリスティン……!
行かないで……!!
僕には……君しか……!」
クリスティンは立ち止まり、
ちょっとだけ振り返った。
そして、にっこり笑って――
クリスティン
「べーっ!」
舌を出して、
小悪魔のように笑い、
自由そのものの香りをまとって飛び去った。
ジャルディンの膝が震える。
胸を押さえ、
崩れ落ちる。
ジャルディン(心の声)
(……ああ……
自由で残酷で……触れられない……
それでも求めてしまう……)
(君は……
僕の初恋で……僕の生きる理由で……
僕の終わりだ)
(なら――)
(君が逃げても逃げても……
僕は追う)
(もっと狂っても構わない)
(愛に溺れて死ぬのなら……
君の香りがする場所で死にたい)
⸻
ジャルディンは立ち上がる。
ゆっくり、
ゆっくりと。
崩れた花園の中で、
再び歩き出す。
ジャルディン
「……逃げるのなら。
もっと深く追うよ」
目が狂気に染まる。
ジャルディン
「君が自由なら――
僕は、君を追う狂気になる」
そして、静かに、残酷に笑った。
<帰還の抱擁>
怒りと安堵と、どうしようもない恋の形
■ 香防室・深夜
ルシオンは、
部屋中を狂ったように探し回ったあと、
膝に手をつき、
ただただ空気を荒く吸い込んでいた。
――クリスティンが、消えた。
ジャルディンが連れ去った。
胸の奥が焼けるように熱く痛い。
不安、怒り、恐怖。
全部が彼の体を削っていた。
扉が、そっと、静かに開いた。
光が差し込み、
クリスティンが、ふわりと立っていた。
クリスティン
「ただいま戻ったわ」
ルシオンは一瞬固まり、
次の瞬間――
強く、激しく抱きしめた。
ルシオン
「……っ……!
どこに行ってた……!
心臓が止まるかと思った……!」
震えている。
彼の腕も声も、全部が震えていた。
クリスティンは驚いて目を丸くする。
クリスティン
「そんなに心配したの?
大丈夫よ、生きて帰ってきたわ」
ルシオンは彼女の肩を掴み、少し離して顔を覗き込んだ。
ルシオン
「大丈夫なわけあるか!
ジャルディンは……狂ってるんだぞ!」
クリスティンは、どこか涼しげに言う。
クリスティン
「あの人、たしかに“やばいやつ”だったけど……」
ルシオン
「だったけど……?」
クリスティン
「花園は、私の好きな純度だったわ。
どうしてかしらね」
ルシオンは一瞬で固まった。
次の瞬間、頭を抱える。
ルシオン
「…………好きだからだろう、
お前を」
クリスティン
「そうなの?
私、ただ“好みが合う”のかと思ってたけど」
ルシオンは深く溜息をつき、
吐き出すように言った。
ルシオン
「……ジェラルディンが、かわいそうに思えてきた」
クリスティン
「え? なぜ?」
ルシオンは、少しだけ苦笑した。
その笑みは、悲しみと嫉妬と安堵が入り混じっている。
ルシオン
「君、好きなものに一直線で、
自分では無自覚で……
“天然”じゃないと言い張るくせに、
実質いちばん天然だ」
クリスティン
「そんなことないわよ?」
ルシオン
「ある。
……ジャルディンは一生、振り回され続けるだろうな」
⸻
クリスティンは少し考えてから、言った。
クリスティン
「じゃあ、ルシオンも?」
ルシオンはハッと息を呑んだ。
彼女は無邪気に聞いただけ。
悪気も、気づかいもない。
でもそのひと言は、彼の胸を深く突いた。
ルシオン
「……俺は……
振り回されてもいい」
クリスティン
「え?」
ルシオンは目を逸らさない。
ルシオン
「君が……自由でいたいのなら。
その自由を守りたい。
誰かに閉じ込められるくらいなら……
俺が側にいたい」
クリスティンの心臓が跳ねた。
ジャルディンの狂気から逃げ切った彼女にとって、
この言葉は――まっすぐすぎた。
優しすぎて、痛いほど。
クリスティン
「……帰ってきて、よかったわ」
ルシオンは瞳を閉じ、
そっと彼女の頭を寄せた。
ルシオン
「……ほんとうに。
無事で、よかった……」
香防室、静かな夜。
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自由を求める心。
三者のバランスが崩れた瞬間だった。
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