『愛に狂う香り、愛を選ぶ香り ――離婚から始まる私の香り』

夢窓(ゆめまど)

文字の大きさ
17 / 24

緊急会議――ジャルディン捕縛計画、始動、王室

しおりを挟む
王城の会議室。
重厚な扉を閉めると、空気はさらに重く、冷えきっていた。

国王、宰相、大臣たち、そして香り研究部の長が揃う。

その中央で、
クリスティンとルシオンが硬い表情で立っていた。



■ 研究部長の報告

「以上が……黒香の解析結果です。
ジャルディンは、禁忌の“殺香”を使用できる危険人物。
放置すれば、国が壊滅します」

大臣たちはざわめいた。

「そんな……毒より速く、心臓を止める香りなど……」
「街が依存状態とは……本当に人間の仕業か?」

研究部長は首を縦に振る。

「はい。彼は“鬼才”です。
悪用すれば、大陸の支配も可能でしょう」

会議室の空気が凍った。



■ 王の判断:捕獲命令

国王がゆっくりと立ち上がる。

「……ジャルディンの捕縛を命じる」

その場に緊張が走る。

「可能な限り“生け捕り”にせよ。
彼の香技は、我が国の武器になる」

研究部長
「しかし陛下、彼は異常者です。
制御は困難かと——」

国王
「制御できぬなら……
する方法を研究すればよい」

(冷たい……!)



■ クリスティンの反発

クリスティンがたまらず声を上げた。

「陛下!
ジャルディンを利用するつもりですか?」

国王
「違うとは言わぬ。
あれほどの香技、失うには惜しい」

クリスティン
「彼は街を破壊しました!
助けるどころか、国を危険に晒したのに!?」

宰相
「だからこそだ。
危険だからこそ、“我々の側”に置かねばならぬ」

クリスティン
「牢に閉じ込めて、実験道具にするおつもりですか?」

宰相は淡々と答えた。

「必要とあれば、そうなる」

(最低……!)

胸の奥に怒りが沸き上がる。



■ ルシオンの怒り

クリスティンの隣で、ルシオンが低く唸るように言った。

「……陛下。
あんたら、本気でジャルディンを従わせられると思ってるのか?」

国王
「不可能ではあるまい。
連れてくれば研究部が解析し——」

ルシオン
「無理だ。
あいつは“狂気の愛”で動く。
理屈も命令も通じない」

研究部長
「しかし彼の香りをコントロールできれば、
外交・軍事・医療……あらゆる分野で——」

ルシオンは机を叩いた。

「死ぬぞ!?
あいつは人を香りで殺すんだぞ!!!」

会議室が静まり返る。



■ さらに恐ろしい提案

大臣のひとりが静かに言った。

「……ならばクリスティン様を“餌”にして誘き出すのはどうか?」

クリスティン
「は?」

ルシオン
「おい、待て」

大臣
「彼はクリスティン様に異常な執着を持っている。
囮として連れ出せば、
捕獲部隊が安全に動ける」

国王
「……確かに。それが最も効率的かもしれぬ」

クリスティン
「冗談じゃないわ!」



■ クリスティン、決意の反抗

「私は囮になるために生きているんじゃない!
香りを武器にする国なんて最低よ!」

ルシオンが立ち上がり、国王を睨む。

「もしクリスティンを利用する気なら……
俺が国王でも王宮でも敵に回す」

(ルシオン……)

大臣たちが蒼白になる。



■ 国王、最終判断

国王はゆっくりと2人を見つめた。

「……よかろう。
クリスティンを囮に使うのは、やめる」

クリスティンは胸をなでおろす。

「だが——
ジャルディンの捕縛は最優先だ。
そして可能ならば、香りを我が国のために使わせる」

(やっぱり諦めてないのね……!)

ルシオンは歯を食いしばった。

「……最低だな、この国の政治は」


追放と逃避行――国が狂い始めた

会議室を出た瞬間、
クリスティンの背筋に冷たいものが走った。

王城の空気が変わっている。
香りではない。
“政治の匂い”だ。

ルシオンも気づいたように小さく呟く。

「……誰かが見てるな」

廊下の影から、
見知らぬ兵士や研究員がじろりとこちらを伺っている。

(……この国、本気で狂い始めたのね)



■ クリスティン、小声で吐き出す

「ルシオン……
私たち、監視されてるわ」

「だろうな。
囮案を却下したとはいえ、
王城は“クリスティンを確保”したがってる」

クリスティンは唇を噛む。

「このままじゃ……
私、ジャルディンと一緒に“牢”に入れられる」

ルシオンは足を止めた。

「は?」

クリスティン
「だって……あの人の起爆剤は私よ。
狂気も、香りも……全部“私が核”だから。

国から見れば、
私は“危険物”であり、
ジャルディンを操るための“道具”でもある」

声が震えた。

「……怖いわ」



■ ルシオンの強い決意

ルシオンが肩をつかんだ。

「クリスティン。
逃げるぞ」

クリスティン
「……え?」

「ここにいたら、お前、利用される。
ジャルディンの狂気と同じくらい、
この国の政治も狂ってる」

クリスティン
「逃げたい……
私、ほんとうに逃げたいの」

ルシオン
「逃げよう。
俺がお前を守る」

その声は、
これまででいちばん強かった。



■ 逃避行の理由:クリスティンの本音

クリスティンは胸に手を当てて言った。

「ジャルディンの狂気は……
私のせいでもあるのよ」

ルシオン
「お前のせいじゃない」

「でも……
彼は私という“香り”を核にして狂ったの。
私が捕まれば、彼も暴走する。
この国も巻き込まれる。

だから……
逃げないと」

ルシオン
「ジャルディンを……“助けたい”のか?」

クリスティンは一度目を閉じて、

「——ええ。
あの狂気を止められるのは、
きっと私だけだと思うから」

と静かに答えた。



■ 城からの追放宣告

そこへ、兵士たちが駆け込んできた。

「クリスティン・オーベルン殿!
国王の命により、あなたの身柄を“保護”します!」

保護?
それは事実上の拘束だ。

ルシオンの顔が怒りで歪む。

「保護?
牢の中にか?」

兵士は答えない。

クリスティンの背中に冷たい汗が流れた。

(やっぱり……!
私は“道具”として扱われる……!)



■ 火花が散る

ルシオンはクリスティンの手をつかんだ。

「行くぞ」

「止まれ!
命令だ!!」

「うるせぇ。
俺はクリスティンの剣だ。
国より彼女を選ぶ」

そして2人は走り出した。



■ 逃避行、始まる

王城の門が見える。
その向こうには夕暮れの街が広がっている。

“香り災害”の余韻で空気はまだ不穏だが、
その先にしか道はない。

クリスティンは走りながら呟いた。

「ルシオン……
ありがとう」

「礼は逃げ切ってから言え」

「ええ……逃げましょう。
私と、あなたで」

(ジャルディンも、国も、
私を捕まえる前に)

2人の逃避行が、ここから始まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

【完結】恋が終わる、その隙に

七瀬菜々
恋愛
 秋。黄褐色に光るススキの花穂が畦道を彩る頃。  伯爵令嬢クロエ・ロレーヌは5年の婚約期間を経て、名門シルヴェスター公爵家に嫁いだ。  愛しい彼の、弟の妻としてーーー。  

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

【完結】嘘も恋も、甘くて苦い毒だった

綾取
恋愛
伯爵令嬢エリシアは、幼いころに出会った優しい王子様との再会を夢見て、名門学園へと入学する。 しかし待ち受けていたのは、冷たくなった彼──レオンハルトと、策略を巡らせる令嬢メリッサ。 周囲に広がる噂、揺れる友情、すれ違う想い。 エリシアは、信じていた人たちから少しずつ距離を置かれていく。 ただ一人、彼女を信じて寄り添ったのは、親友リリィ。 貴族の学園は、恋と野心が交錯する舞台。 甘い言葉の裏に、罠と裏切りが潜んでいた。 奪われたのは心か、未来か、それとも──名前のない毒。

邪魔者はどちらでしょう?

風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。 私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。 ある日、そんな私に婚約者ができる。 相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。 初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。 そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。 その日から、私の生活は一変して―― ※過去作の改稿版になります。 ※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。 ※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

もう何も信じられない

ミカン♬
恋愛
ウェンディは同じ学年の恋人がいる。彼は伯爵令息のエドアルト。1年生の時に学園の図書室で出会って二人は友達になり、仲を育んで恋人に発展し今は卒業後の婚約を待っていた。 ウェンディは平民なのでエドアルトの家からは反対されていたが、卒業して互いに気持ちが変わらなければ婚約を認めると約束されたのだ。 その彼が他の令嬢に恋をしてしまったようだ。彼女はソーニア様。ウェンディよりも遥かに可憐で天使のような男爵令嬢。 「すまないけど、今だけ自由にさせてくれないか」 あんなに愛を囁いてくれたのに、もう彼の全てが信じられなくなった。

処理中です...