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香の避難所
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香りの避難所――逃避と、触れ合う距離
夜。
森の奥の古い祠(ほこら)は、
香り研究部が秘密裏に作った “香り遮断の避難所(アロマ・セーフブース)” だった。
扉を閉じると、
外の気配も匂いもすべて遮断される。
クリスティンとルシオンは、息を切らしながら中に駆け込む。
パタン、と扉が閉まる。
静寂。
そして——
外から、狂気の気配が一歩ずつ近づいてきた。
■ ジェラルディンの声が森に響く
「クリスティン……
どこに行ったの……?」
遠くの闇の中で、香りがざわりと揺れる。
“好きだから、殺したい”
という狂った愛が、風に乗ってくる。
「君を壊して、
僕の香りだけで満たしたい……
逃げないでよ……?」
クリスティンの背筋が凍りつく。
「ルシオン……あいつ、すぐそこよ」
ルシオンは低く言った。
「わかってる。
でもこの避難所は破れない。
今だけは、安全だ」
彼はそっとクリスティンに布をかける。
肩が震えているのを見て、
眉を寄せた。
「……怖いのか?」
クリスティン「怖いに決まってるわ」
■ 急接近:距離ゼロの沈黙
避難所の中は狭く、
二人は自然と体が触れ合う。
クリスティン
「ルシオン……手、離さないで」
ルシオン
「離すわけない」
手を強く握り返す。
外では、
ジェラルディンの“狂気の香り”が森を舐めるように漂う。
「クリスティン……
愛してる……愛してる……
君がいないなら、全部壊すよ?」
その声が近づくたび、
クリスティンは震える。
ルシオンはクリスティンの肩を抱き寄せた。
「聞くな。
あいつの言葉は“呪い”だ」
クリスティン
「ルシオンの……胸、貸して」
「……ああ」
クリスティンはそっと寄りかかり、
彼の胸の鼓動を感じる。
それだけで、めまいが落ち着いた。
■ ルシオン、抑えきれない本音
すぐ側の闇で、
ジェラルディンの声が囁く。
「君を殺して僕のものにするんだ……
そのとき、誰にも触らせない……
自由なんて要らないよ……?」
クリスティン
「ねぇ、ルシオン。
好きだから殺すって、理解できる?」
ルシオンは即答した。
「できるわけない。
そんなの……愛じゃねぇ」
クリスティン
「でも……あの人、昔は優しかったのよ」
ルシオンは彼女の頬に手を添える。
「……優しかったなら尚更だ。
壊したのは“愛”じゃなく“執着”。
救えるのは……お前しかいない」
クリスティン
「私、そんなに大した人じゃないわ」
ルシオン
「クリスティン」
声が低く、震えていた。
「国が狂って、
ジャルディンが狂って、
お前まで狂わされたら……
俺は……狂う」
クリスティンは目を見開く。
ルシオンの瞳は、
普段よりずっと熱かった。
■ “触れたい”感情があふれる
クリスティン
「……ルシオン。
あなた、そんな顔するのね」
ルシオン
「こういう時だけだ。
……お前を失うと思った時だけ」
胸が熱くなる。
鼓動が合わさる。
距離が近い。
息が当たる。
触れれば、キスができそうな距離。
外では、
ジェラルディンが扉の前に立っている気配がする。
「クリスティン……
そこにいるの……?
僕はここにいるよ……
君を迎えに来た……」
ルシオンの腕が、
自然とクリスティンの腰に回った。
「聞くな。
あいつの声は愛じゃない。
……俺が、お前を守る」
クリスティン
「……ルシオンがいると、安心する」
その瞬間——
近づきすぎた距離のまま、
二人は静かに見つめ合った。
⸻
■ 触れる直前の息
数センチ。
触れれば終わる距離。
クリスティン(心の声)
(キスしても、いいのかしら……
こんな状況で……?
でも、怖かった……
抱きしめてほしい……)
ルシオン(小声)
「クリスティン……
今お前を抱きしめても……いいか」
クリスティン
「……ええ、抱きしめて」
ふわり——
ルシオンの腕が強く閉じる。
クリスティンはその胸に顔を埋めた。
外で狂気が叫ぶ。
「クリスティン!!
好きだ!
だから殺したいんだよ!!!!」
だが、中の二人だけは、
互いの温度だけを感じていた。
偏愛の破壊音 —— 避難所崩壊と捕獲
森が震えた。
「クリスティン……
そこにいるんだろう?」
ジェラルディンの声は、
甘く、優しく、そして狂っていた。
避難所を包む結界に、
どん、と衝撃が走る。
ルシオン
「……くそ、来たか」
クリスティン
「避難所は破れないはずじゃ……!」
ルシオン
「普通の香りならな。
だが、あいつの“偏愛香”は……規格外だ」
もう一度、破砕音。
ピキ————ッ
結界に亀裂が走る。
クリスティン
「嘘……割れてる……!」
ルシオン
「クリスティン、こっちへ!」
ルシオンが抱き寄せる。
だがその瞬間――
バリンッ!!!
避難所が粉々に砕け散った。
■ 狂気の襲撃
ジェラルディンが足元の破片を踏みつけながら現れる。
穏やかな微笑。
瞳だけが、完全に壊れていた。
「見つけた……
ようやく……」
クリスティン
「……来ないで……ジェラルディン……」
ジェラルディン
「来るよ。
君が、逃げたから」
彼の香りが爆発する。
ルシオン
「クリスティン、目を閉じろ!!」
だが遅かった。
偏愛香は、まずルシオンを襲う。
「っ……!!」
ルシオンの膝が崩れ、
呼吸がゆっくりと落ちていく。
クリスティン
「ルシオン!? 眠らされて……!」
ジェラルディン
「邪魔だから。
君と僕の邪魔だから」
淡々とした声。
愛の声色。
その実、殺意そのもの。
■ 王家の兵が駆け込むが——
「そこの賊、止まれ!!」
十数名の兵士が飛び出す。
ジェラルディンがゆっくりと一歩踏み出すたび、
兵士たちは“息苦しさ”に顔を歪めた。
「動け……ない……っ……」
「香り……が……重……い……」
倒れる。
膝をつく。
次々と。
ジェラルディンは笑う。
「君に触れたら殺すよ。
兵士でも、国王でも。
クリスティンは、僕だけのものだから」
そのまま、
倒れているクリスティンの腕を取る。
■ 捕まったクリスティン
クリスティン
「っ……やめ……!」
彼の腕は驚くほど優しく、しかし強制的。
抱き上げられた瞬間、
香りが全身にまとわりつき、呼吸が浅くなる。
「……っ……っ……(苦しい……)」
ジェラルディン
「いい子だ。
もう逃がさない。
だって君は、僕の起爆剤だろう?」
クリスティンの意識が白く薄れていく。
「手に入らないなら……
壊すしか、ないよね……?」
狂気の愛が囁く。
クリスティン
「(ルシオン……)」
視界が暗くなった。
次の瞬間、
完全に意識が途切れる。
■ 狂気の抱擁と死の決意
気を失ったクリスティンを抱きしめ、
ジェラルディンはその額にキスを落とす。
「一緒に逝こう、クリスティン。
世界が邪魔するなら、壊すよ。
全部、全部、全部……」
彼の香りが、森全体に広がり始めた。
黒い花が咲くように。
偏愛の香り——
“殺香(さっこう)”が目覚めつつあった。
■ その時、彼女の香りが目覚める
ジェラルディンが彼女を抱えた瞬間。
ふわり。
クリスティンから、
淡い、でも確かな香りが漏れた。
まだ弱い光。
でも確かに“彼にだけ反応する香り”。
ジェラルディンの動きが止まる。
「……え?」
腕の中のクリスティンが、
眠りながら微かに指を動かした。
その香りは——
ジャルディンを“破壊せず、縛る”香り。
クリスティンの核香が、
自衛のために初めて外へ出た瞬間だった。
ジェラルディン
「……クリスティン……
これは……君の……?」
その香りを吸い込んだ時——
彼の狂気の香りが、一瞬だけ弱まった。
世界が、揺れた。
夜。
森の奥の古い祠(ほこら)は、
香り研究部が秘密裏に作った “香り遮断の避難所(アロマ・セーフブース)” だった。
扉を閉じると、
外の気配も匂いもすべて遮断される。
クリスティンとルシオンは、息を切らしながら中に駆け込む。
パタン、と扉が閉まる。
静寂。
そして——
外から、狂気の気配が一歩ずつ近づいてきた。
■ ジェラルディンの声が森に響く
「クリスティン……
どこに行ったの……?」
遠くの闇の中で、香りがざわりと揺れる。
“好きだから、殺したい”
という狂った愛が、風に乗ってくる。
「君を壊して、
僕の香りだけで満たしたい……
逃げないでよ……?」
クリスティンの背筋が凍りつく。
「ルシオン……あいつ、すぐそこよ」
ルシオンは低く言った。
「わかってる。
でもこの避難所は破れない。
今だけは、安全だ」
彼はそっとクリスティンに布をかける。
肩が震えているのを見て、
眉を寄せた。
「……怖いのか?」
クリスティン「怖いに決まってるわ」
■ 急接近:距離ゼロの沈黙
避難所の中は狭く、
二人は自然と体が触れ合う。
クリスティン
「ルシオン……手、離さないで」
ルシオン
「離すわけない」
手を強く握り返す。
外では、
ジェラルディンの“狂気の香り”が森を舐めるように漂う。
「クリスティン……
愛してる……愛してる……
君がいないなら、全部壊すよ?」
その声が近づくたび、
クリスティンは震える。
ルシオンはクリスティンの肩を抱き寄せた。
「聞くな。
あいつの言葉は“呪い”だ」
クリスティン
「ルシオンの……胸、貸して」
「……ああ」
クリスティンはそっと寄りかかり、
彼の胸の鼓動を感じる。
それだけで、めまいが落ち着いた。
■ ルシオン、抑えきれない本音
すぐ側の闇で、
ジェラルディンの声が囁く。
「君を殺して僕のものにするんだ……
そのとき、誰にも触らせない……
自由なんて要らないよ……?」
クリスティン
「ねぇ、ルシオン。
好きだから殺すって、理解できる?」
ルシオンは即答した。
「できるわけない。
そんなの……愛じゃねぇ」
クリスティン
「でも……あの人、昔は優しかったのよ」
ルシオンは彼女の頬に手を添える。
「……優しかったなら尚更だ。
壊したのは“愛”じゃなく“執着”。
救えるのは……お前しかいない」
クリスティン
「私、そんなに大した人じゃないわ」
ルシオン
「クリスティン」
声が低く、震えていた。
「国が狂って、
ジャルディンが狂って、
お前まで狂わされたら……
俺は……狂う」
クリスティンは目を見開く。
ルシオンの瞳は、
普段よりずっと熱かった。
■ “触れたい”感情があふれる
クリスティン
「……ルシオン。
あなた、そんな顔するのね」
ルシオン
「こういう時だけだ。
……お前を失うと思った時だけ」
胸が熱くなる。
鼓動が合わさる。
距離が近い。
息が当たる。
触れれば、キスができそうな距離。
外では、
ジェラルディンが扉の前に立っている気配がする。
「クリスティン……
そこにいるの……?
僕はここにいるよ……
君を迎えに来た……」
ルシオンの腕が、
自然とクリスティンの腰に回った。
「聞くな。
あいつの声は愛じゃない。
……俺が、お前を守る」
クリスティン
「……ルシオンがいると、安心する」
その瞬間——
近づきすぎた距離のまま、
二人は静かに見つめ合った。
⸻
■ 触れる直前の息
数センチ。
触れれば終わる距離。
クリスティン(心の声)
(キスしても、いいのかしら……
こんな状況で……?
でも、怖かった……
抱きしめてほしい……)
ルシオン(小声)
「クリスティン……
今お前を抱きしめても……いいか」
クリスティン
「……ええ、抱きしめて」
ふわり——
ルシオンの腕が強く閉じる。
クリスティンはその胸に顔を埋めた。
外で狂気が叫ぶ。
「クリスティン!!
好きだ!
だから殺したいんだよ!!!!」
だが、中の二人だけは、
互いの温度だけを感じていた。
偏愛の破壊音 —— 避難所崩壊と捕獲
森が震えた。
「クリスティン……
そこにいるんだろう?」
ジェラルディンの声は、
甘く、優しく、そして狂っていた。
避難所を包む結界に、
どん、と衝撃が走る。
ルシオン
「……くそ、来たか」
クリスティン
「避難所は破れないはずじゃ……!」
ルシオン
「普通の香りならな。
だが、あいつの“偏愛香”は……規格外だ」
もう一度、破砕音。
ピキ————ッ
結界に亀裂が走る。
クリスティン
「嘘……割れてる……!」
ルシオン
「クリスティン、こっちへ!」
ルシオンが抱き寄せる。
だがその瞬間――
バリンッ!!!
避難所が粉々に砕け散った。
■ 狂気の襲撃
ジェラルディンが足元の破片を踏みつけながら現れる。
穏やかな微笑。
瞳だけが、完全に壊れていた。
「見つけた……
ようやく……」
クリスティン
「……来ないで……ジェラルディン……」
ジェラルディン
「来るよ。
君が、逃げたから」
彼の香りが爆発する。
ルシオン
「クリスティン、目を閉じろ!!」
だが遅かった。
偏愛香は、まずルシオンを襲う。
「っ……!!」
ルシオンの膝が崩れ、
呼吸がゆっくりと落ちていく。
クリスティン
「ルシオン!? 眠らされて……!」
ジェラルディン
「邪魔だから。
君と僕の邪魔だから」
淡々とした声。
愛の声色。
その実、殺意そのもの。
■ 王家の兵が駆け込むが——
「そこの賊、止まれ!!」
十数名の兵士が飛び出す。
ジェラルディンがゆっくりと一歩踏み出すたび、
兵士たちは“息苦しさ”に顔を歪めた。
「動け……ない……っ……」
「香り……が……重……い……」
倒れる。
膝をつく。
次々と。
ジェラルディンは笑う。
「君に触れたら殺すよ。
兵士でも、国王でも。
クリスティンは、僕だけのものだから」
そのまま、
倒れているクリスティンの腕を取る。
■ 捕まったクリスティン
クリスティン
「っ……やめ……!」
彼の腕は驚くほど優しく、しかし強制的。
抱き上げられた瞬間、
香りが全身にまとわりつき、呼吸が浅くなる。
「……っ……っ……(苦しい……)」
ジェラルディン
「いい子だ。
もう逃がさない。
だって君は、僕の起爆剤だろう?」
クリスティンの意識が白く薄れていく。
「手に入らないなら……
壊すしか、ないよね……?」
狂気の愛が囁く。
クリスティン
「(ルシオン……)」
視界が暗くなった。
次の瞬間、
完全に意識が途切れる。
■ 狂気の抱擁と死の決意
気を失ったクリスティンを抱きしめ、
ジェラルディンはその額にキスを落とす。
「一緒に逝こう、クリスティン。
世界が邪魔するなら、壊すよ。
全部、全部、全部……」
彼の香りが、森全体に広がり始めた。
黒い花が咲くように。
偏愛の香り——
“殺香(さっこう)”が目覚めつつあった。
■ その時、彼女の香りが目覚める
ジェラルディンが彼女を抱えた瞬間。
ふわり。
クリスティンから、
淡い、でも確かな香りが漏れた。
まだ弱い光。
でも確かに“彼にだけ反応する香り”。
ジェラルディンの動きが止まる。
「……え?」
腕の中のクリスティンが、
眠りながら微かに指を動かした。
その香りは——
ジャルディンを“破壊せず、縛る”香り。
クリスティンの核香が、
自衛のために初めて外へ出た瞬間だった。
ジェラルディン
「……クリスティン……
これは……君の……?」
その香りを吸い込んだ時——
彼の狂気の香りが、一瞬だけ弱まった。
世界が、揺れた。
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