1 / 139
第1話《佐倉さくらの事情》
しおりを挟む
ここは世田谷豪徳寺 (三訂版)
第1話《佐倉さくらの事情》
五十メートル手前の十字路のところに『車両通行止め』の看板とオジサンのガードマンが立っている。『車両通行止め』ということは自転車とか歩行者は通っていいんだ。
迂回するのは面倒だし、期末テストの初日だし。
それで、いつもの通り十字路を左折すると、四メートル幅の生活道路の半分を塞いで水道工事をやっている。
五十メートル向こうに工事現場。
で、あたしは視線を感じてしまったのだ。工事現場に立っている若者ガードマンの視線。
明らかにルーキーで、誘導のタイミングを計ってあたしの方をチラチラ見ている。
これがベテランのオジサンガードマンだったら、程よい距離まで視線なんか送ってこない。四五メートルの距離で、少しだけニッコリして赤いプラスチックの誘導灯を揺らし、あたしは、ほんの少し頭を下げておしまい。
でも、このルーキー君は、角を曲がった時から、ずっとあたしを見続けている(^_^;)。
チラチラじゃなくて、メットの下の目でガン見。
あ、ひょっとして、この制服のせい( ゜Д゜)!?
あたしは、渋谷にある帝都女学院の一年生。
東京の女子高のベスト5に入るほど、白を基調としたセーラー服は人気がある。『セーラームーン』のモデルになったほど有名なんだ。
だから、それだけで目をひく。あたし個人じゃなく帝都の制服が。
初冬なのでカーディガンは羽織っているけど、前のボタンは開けたままだ。余計に白のセーラーが強調されてるぞ。
きまりが悪い。
手前の道で曲がっておけばよかったよ(-_-;)。
でも、今さら引き返すのは不自然。
忘れ物したふりとか……ああ、演技には自信ない。
ああ、意識するぅ……向こうもしてるしぃ。
意識すると怖い顔になるんだあたしって。
失礼だと思われるかもしれない。思う、思うよね? あたし個人としてではなく帝都の女生徒として、帝都が失礼だと思われる……学校の看板しょってるんだ、この制服を着ているときは。
あたしはタイミングの悪い子だ。
入学して半年以上になるというのに、まだ入部するクラブを決めかねている。仲良しのマクサと里奈は入学と同時にクラブを決めていたぞ。
性格改造のために演劇部に入ろうと思ったけど、帝都の演劇部は週二回しか活動していなくて、見学に行ったときもショボかった。
それでも文化祭の出来次第ではではと思ったんだけど、クラス劇の方が面白いというシロモノだった。
でも、この状況、演劇部なら忘れ物のふりして引き返せる?
せめて、怖い顔やめられる? 無理無理無理(;'∀')!
いっそ、吹部に入って、中学以来のフルートでもやろうかと思った。
でも、これは文化祭の演奏見て体中で感じた吹部の迫力と実力に尻込みしてしまった。
あたしは引っ込み思案というほどじゃないけど、人とテンポが合わない。
たいていの子は、流れに乗って適当に遊んだり、喋ったり。
あたしは、それが苦手。
間違っても、渋谷の駅とかビルのトイレで私服に着替えて遊ぶことなんかできない。
友だちとのお喋りでも、ほとんど聞き役。
たまに返事しても気のない「あ、そう」と、間の抜けた「そうなんだ」の二つしかない。「でもさ」とか「ところでさ」などと会話を中断して自己主張したりするのが苦手。
「あいつ嫌い」と誰かが言ったとする。「なんで?」と聞くと、相手の思いに反対か賛成の意を表さなければならない。それは別にいいんだけど、必要以上に同調したり、反発したりはしない。女の子の好き嫌いなんて、ほとんど退屈しのぎか、憂さ晴らしのネタでしかない。で、そういうのが、いつのまにか本当めかしくなって、場合によってはイジメっぽくなったりするんだよ。
聞いたら考えてしまう。なんで「嫌い」って言うのか。なんであたしに言うのか。だから、とりあえずの返事は「ああ、そう」「そうなんだ」になってしまう。
それから……あたしには名前コンプレックスがある。
さくらって名前はいい。
でも苗字が佐倉。
呼んだら「さくらさくら」になってしまう。アクセントが苗字と名前とじゃ微妙に違うんだけど、ちゃんと区別して呼んでもらったのは保育所の卒園式ぐらい。あとはみんな「さくら」のリフレイン。
そんなこんなで友だちは少ない。
出席番号で一つ前の「まくさ」、フルネームで呼ぶと「佐久間まくさ」
分かるでしょ、この子も名前コンプレックス。
四月のクラス開きでは、妙な名前が二人も続いたんで、初日から笑いのタネになってしまった。
もう一人の友だちは山口恵里奈。
大阪出身の子で、バレー部でセッターをやっている。ボールも人の気持ちを受け止めてセットするのがうまい。学年の最初で隣同士だったこともあって、恵里奈だけは普通に喋れる。
もっとも恵里奈はセッターだけあって、たいていの人間とはうまくやっているんだけどね。
多感な年頃であることを差し引いても、あたしのは、やや度を超している。
親が女子高に入れたがったのがよく分かる。
共学ではとてもだろう。男の子と喋るなんて、まるで動物を相手にしているようなものだ。
その男の子と言っていい若者ガードマンが目前に……迫ってきたよ(;'∀')。
その子も緊張しているのが側を通るとよく分かる。
「狭いっす……気をつけ……」
彼は誘導灯を大きく振った。あたしはカバンを右手で持っていたので、左側にいる彼との距離は二十センチほどになってしまった。で、彼の誘導灯が、あたしのスカートをひっかけてしまった!
「あ!」「う!」「お!」
三つの感嘆詞がいっしょになった。
「あ!」はガードマンのニイチャン。「う!」はあたし。「お!」は後ろを歩いていた学生風。
「ご、ごめん(#'∀'#)!!」
o(≧◇≦)o…………!!
あたしはミサイルみたいになって豪徳寺駅に走った!
グヌヌ……
その日のテストがさんざんだったのは言うまでもない。
第1話《佐倉さくらの事情》
五十メートル手前の十字路のところに『車両通行止め』の看板とオジサンのガードマンが立っている。『車両通行止め』ということは自転車とか歩行者は通っていいんだ。
迂回するのは面倒だし、期末テストの初日だし。
それで、いつもの通り十字路を左折すると、四メートル幅の生活道路の半分を塞いで水道工事をやっている。
五十メートル向こうに工事現場。
で、あたしは視線を感じてしまったのだ。工事現場に立っている若者ガードマンの視線。
明らかにルーキーで、誘導のタイミングを計ってあたしの方をチラチラ見ている。
これがベテランのオジサンガードマンだったら、程よい距離まで視線なんか送ってこない。四五メートルの距離で、少しだけニッコリして赤いプラスチックの誘導灯を揺らし、あたしは、ほんの少し頭を下げておしまい。
でも、このルーキー君は、角を曲がった時から、ずっとあたしを見続けている(^_^;)。
チラチラじゃなくて、メットの下の目でガン見。
あ、ひょっとして、この制服のせい( ゜Д゜)!?
あたしは、渋谷にある帝都女学院の一年生。
東京の女子高のベスト5に入るほど、白を基調としたセーラー服は人気がある。『セーラームーン』のモデルになったほど有名なんだ。
だから、それだけで目をひく。あたし個人じゃなく帝都の制服が。
初冬なのでカーディガンは羽織っているけど、前のボタンは開けたままだ。余計に白のセーラーが強調されてるぞ。
きまりが悪い。
手前の道で曲がっておけばよかったよ(-_-;)。
でも、今さら引き返すのは不自然。
忘れ物したふりとか……ああ、演技には自信ない。
ああ、意識するぅ……向こうもしてるしぃ。
意識すると怖い顔になるんだあたしって。
失礼だと思われるかもしれない。思う、思うよね? あたし個人としてではなく帝都の女生徒として、帝都が失礼だと思われる……学校の看板しょってるんだ、この制服を着ているときは。
あたしはタイミングの悪い子だ。
入学して半年以上になるというのに、まだ入部するクラブを決めかねている。仲良しのマクサと里奈は入学と同時にクラブを決めていたぞ。
性格改造のために演劇部に入ろうと思ったけど、帝都の演劇部は週二回しか活動していなくて、見学に行ったときもショボかった。
それでも文化祭の出来次第ではではと思ったんだけど、クラス劇の方が面白いというシロモノだった。
でも、この状況、演劇部なら忘れ物のふりして引き返せる?
せめて、怖い顔やめられる? 無理無理無理(;'∀')!
いっそ、吹部に入って、中学以来のフルートでもやろうかと思った。
でも、これは文化祭の演奏見て体中で感じた吹部の迫力と実力に尻込みしてしまった。
あたしは引っ込み思案というほどじゃないけど、人とテンポが合わない。
たいていの子は、流れに乗って適当に遊んだり、喋ったり。
あたしは、それが苦手。
間違っても、渋谷の駅とかビルのトイレで私服に着替えて遊ぶことなんかできない。
友だちとのお喋りでも、ほとんど聞き役。
たまに返事しても気のない「あ、そう」と、間の抜けた「そうなんだ」の二つしかない。「でもさ」とか「ところでさ」などと会話を中断して自己主張したりするのが苦手。
「あいつ嫌い」と誰かが言ったとする。「なんで?」と聞くと、相手の思いに反対か賛成の意を表さなければならない。それは別にいいんだけど、必要以上に同調したり、反発したりはしない。女の子の好き嫌いなんて、ほとんど退屈しのぎか、憂さ晴らしのネタでしかない。で、そういうのが、いつのまにか本当めかしくなって、場合によってはイジメっぽくなったりするんだよ。
聞いたら考えてしまう。なんで「嫌い」って言うのか。なんであたしに言うのか。だから、とりあえずの返事は「ああ、そう」「そうなんだ」になってしまう。
それから……あたしには名前コンプレックスがある。
さくらって名前はいい。
でも苗字が佐倉。
呼んだら「さくらさくら」になってしまう。アクセントが苗字と名前とじゃ微妙に違うんだけど、ちゃんと区別して呼んでもらったのは保育所の卒園式ぐらい。あとはみんな「さくら」のリフレイン。
そんなこんなで友だちは少ない。
出席番号で一つ前の「まくさ」、フルネームで呼ぶと「佐久間まくさ」
分かるでしょ、この子も名前コンプレックス。
四月のクラス開きでは、妙な名前が二人も続いたんで、初日から笑いのタネになってしまった。
もう一人の友だちは山口恵里奈。
大阪出身の子で、バレー部でセッターをやっている。ボールも人の気持ちを受け止めてセットするのがうまい。学年の最初で隣同士だったこともあって、恵里奈だけは普通に喋れる。
もっとも恵里奈はセッターだけあって、たいていの人間とはうまくやっているんだけどね。
多感な年頃であることを差し引いても、あたしのは、やや度を超している。
親が女子高に入れたがったのがよく分かる。
共学ではとてもだろう。男の子と喋るなんて、まるで動物を相手にしているようなものだ。
その男の子と言っていい若者ガードマンが目前に……迫ってきたよ(;'∀')。
その子も緊張しているのが側を通るとよく分かる。
「狭いっす……気をつけ……」
彼は誘導灯を大きく振った。あたしはカバンを右手で持っていたので、左側にいる彼との距離は二十センチほどになってしまった。で、彼の誘導灯が、あたしのスカートをひっかけてしまった!
「あ!」「う!」「お!」
三つの感嘆詞がいっしょになった。
「あ!」はガードマンのニイチャン。「う!」はあたし。「お!」は後ろを歩いていた学生風。
「ご、ごめん(#'∀'#)!!」
o(≧◇≦)o…………!!
あたしはミサイルみたいになって豪徳寺駅に走った!
グヌヌ……
その日のテストがさんざんだったのは言うまでもない。
0
あなたにおすすめの小説
美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~
root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。
そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。
すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。
それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。
やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」
美人生徒会長の頼み、断れるわけがない!
でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。
※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。
※他のサイトにも投稿しています。
イラスト:siroma様
初恋♡リベンジャーズ
遊馬友仁
青春
【第五部開始】
高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。
眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。
転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?
◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!
第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件
マサタカ
青春
俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。
あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。
そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。
「久しぶりですね、兄さん」
義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。
ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。
「矯正します」
「それがなにか関係あります? 今のあなたと」
冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。
今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人?
ノベルアッププラスでも公開。
先輩から恋人のふりをして欲しいと頼まれた件 ~明らかにふりではないけど毎日が最高に楽しい~
桜井正宗
青春
“恋人のふり”をして欲しい。
高校二年の愁(しゅう)は、先輩の『柚』からそう頼まれた。
見知らずの後輩である自分になぜと思った。
でも、ふりならいいかと快諾する。
すると、明らかに恋人のような毎日が始まっていった。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる